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第 3 章 混相内部流への適用と検証

3.2 二次元解析(One-way 解析)

3.2.1 固液二相噴流の解析

(1) 対象流れ場と解析目的

ここでは,非定常外部流を対象に,速度せん断層の不安定性から発生する非定常乱流 渦による固体粒子の混合現象を解析する.固体粒子が混じった乱流噴流は,反応・燃焼 装置や混合装置等,様々な工業機器に見受けられる.単純な流れであるにも関わらず,

流れ場の非定常な渦運動が固体粒子運動を支配するため,固体粒子の乱流拡散やエント レイメント現象等を調べる実験・解析[6] - [8], [17], [20], [88], [89]が多く行われている.

ここでは,単相の非定常流れ場に関して,既存実験と比較検討することで,解析モデ ルの特徴,解析精度を把握することを目的とする.対象とした乱流噴流の概略[88]とDNS による解析例(流体物理研究所:Institute of Fluid Physics, Ltd.による計算結果)を図3.2.1-1 に示す.

ノズル

(a) 解析対象

(b) DNSによる解析例

図3.2.1-1. 解析対象と解析例

(2) 解析条件

解析モデルを図3.2.1-2に示す.ここでは,本研究で開発した渦法と粒子追跡法を用い た内部流れ混相流解析の妥当性を評価するため,二次元スリット噴流(外部流)をあえ て内部流としてモデル化した.二次元の解析領域の左側面中央に噴流の流入境界となる スリットがある.左側面の流入境界,右側面の自由流出境界を除き,その他の境界面は スリップ壁面境界とした.解析領域は,噴流出口のスリット幅 H に対して,流れ方向,

流れと垂直方向ともに20Hとした.

ス リ ッ ト 幅 H と ス リ ッ ト 出 口 平 均 速 度 U を 代 表 と し た レ イ ノ ル ズ 数 は ,

Re=UH/ =26700である.ここで,流体は水とした.

固体粒子は平均粒子径dp=0.01Hであり,液相である水との密度比はs= p / f =2.0で ある.ストークス数は,St=0.3 である.ここでは,流れ場の非定常な渦運動が固体粒子 運動に与える影響を調べた.また,固体粒子の投入位置に対して,固体粒子の軌跡がど のように変化するかを検討した.

(3) 解析パラメータ

境界パネルの長さ : lbp / H =0.2 境界パネル枚数 : Nbp=400

図3.2.1-2. 解析モデル H

x y

Inlet

Outlet Slip wall

Slip wall Slip wall

Solid particles 20H

20H

Inlet of particles U

流れ解析の時間刻み : tfU /H =0.05 粒子解析の時間刻み : tpU /H=0.005 一個の標本粒子が代表する実際の粒子数: Np=1

(4) 解析結果と考察

① 液相流れの様相

解析例として渦要素分布・速度分布の時系列結果を図3.2.1-3に示す.噴出過渡時は 噴流先端が静止液中で左右にかき分けられ,左右対称なせん断層が巻き上がりキノコ 状になる.このキノコ状の渦は,時間の経過とともに成長し,速度せん断層の乱れに よって噴流出口からおよそ 2H 下流では非常に不安定な流れになっている.この不安 定性によって対称性が崩れ,小規模渦が合体・分裂する過程が観察された.この組織 渦の挙動によって流れの拡散や,噴流中心方向へのエントレインメントが発生すると 考えられる.

既存の研究例[6] - [8], [17], [20], [88], [89]と本解析結果を比較すると,ポテンシャルコア領域 の長さ,乱れや拡散(噴流の広がり)の様子が定性的に類似することを確認できた.

② 既存実験との比較検証

Re=26700のHussainら[89]の実験との比較を図3.2.1-4に示す.流れ方向の時間平均

速度 uaveと変動速度u は実験結果と最大誤差 5%以内で定量的に一致し,本手法の有 効性・精度を確認した.噴流出口における速度せん断層の不安定性から発生する非定 常乱流混合の現象は,非定常性が強いため一般的な時間平均乱流モデル(RANS)等 の解析では困難とされている.このような高レイノルズ数非定常流れの解析には,せ ん断層の挙動を高解像度で直接的に追跡できる渦法が有効であり,本解析法で非定常 乱流現象を的確に再現できることを示した.

u/U H/U

tU/H=55 tU/H=55

u/U H/U

tU/H=5

tU/H=20

tU/H=35

tU/H=5

tU/H=20

tU/H=35 u/U H/U

u/U H/U

図3.2.1-3. 液相流れの様相

(a) 渦要素分布 (b) 速度分布

,

0 5 10 15

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

x/H u

ave

/U , (u '

2

) /U

u

ave

u'

-3 -2 -1 0 1 2 3

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

y/H u

ave

/U , (u '

2

) /U

x/H=2 u

ave

u'

-3 -2 -1 0 1 2 3

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

y/H u

ave

/U , (u '

2

) /U

x/H=4 u

ave

u'

○ , △

: Present numerical data

: Experimental data (Hussain et al.)

図3.2.1-4. 既存実験との比較検証(液相)

(b) 横断面上の時間平均速度と変動速度(x/H=2, 4)

(a) 中心軸上の時間平均速度と変動速度

uave u

x/H=2 x/H=4

③ 固体粒子の挙動

解析結果の一例を図3.2.1-5に示す.直径4H内に乱数で分布させた固体粒子を噴流 出口から噴流軸方向に 4H 離れた位置に投入した時の粒子挙動である.噴流は固体粒 子群を両側に撒き散らして突き抜けるが,その後分散した粒子がエントレインメント 作用によって噴流中心に巻き込まれ,周辺に拡散しながら後流へ運ばれる様子が捉え られた.エントレインメントや拡散による固体粒子の混合現象は,大規模渦が固体粒 子の挙動に及ぼす非定常な作用を時々刻々計算しなければ再現できないため,本手法 が有効であることがわかる.

ここで取り上げた高レイノルズ数の固液噴流に対して,DNS や LES による非定常 解析を行うには一般的に数週間あるいは数ヶ月オーダーの多大な計算時間を要する.

これに対して本手法では,上記解析を二次元ではあるが数時間オーダーで解析できた.

④ 固体粒子の投入位置の影響

粒子投入位置による粒子軌跡の変化を検討した結果を図3.2.1-6に示す.③に記した 噴流軸上に投入した場合とは異なり,噴流中心軸上から流れと垂直方向外側に 2H ず らして粒子を投入した.この場合は,ほとんどの粒子が噴流に巻き込まれずにその場 に停滞してしまうことがわかった.このような解析技術は混合装置等を設計する際に 必要となり,数値シミュレーションにより設計指針を迅速に提供することができるこ とを示した.

up /U up /U tU/H=0

tU/H=20

tU/H=30

tU/H=50

up /U up /U

図3.2.1-5. 固体粒子の瞬時分布

0 5 10 15

-5 -2.5 0 2.5 5

x / H

y / H

(a) 噴流中心に投入 (b) 噴流中心から2H外に投入 tU/H=50

0 5 10 15

-5 -2.5 0 2.5 5

x / H

y / H

tU/H=50

図3.2.1-6. 固体粒子の投入位置による粒子軌跡の違い(点線内に粒子を投入)

3.2.2 混合層を伴うチャネル内での固液二相流の解析