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親密な友人関係における自己評価維持と関係性維持―拡張自己評価維持モデルからの検討― 利用統計を見る

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(1)

親密な友人関係における自己評価維持と関係性維持

―拡張自己評価維持モデルからの検討―

著者

下田 俊介

学位授与大学

東洋大学

取得学位

博士

学位の分野

社会心理学

報告番号

甲第265号

学位授与年月日

2011-03-25

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00003936/

(2)
(3)

2010年度博士学位請求論文

親密な友人関係における自己評価維持と関係性維持

  一拡張自己評価維持モデルからの検討一

東洋大学大学院 社会学研究科 社会心理学専攻

   博士後期課程 4550070002番

     下田 俊介

(4)

目次

論文構成..__.___...___.__._..._.__._.______..___.___..____1 序論__.____.___.___.____.__..__.____...___.__..______..2 第1部 理論的検肘______..___..___.______..____.__.____....6 za 1章 自己評価維持モデルと拡張自己評価維持モデル._._..__....__._..._......_7  第1節自己評価維持モデルと先行研究の紹介_____.._____._.____.7   (1)自己評価維持モデル(Self’Evaluation Malntenance Model).......___..7   (2)自己評価維持モデルに関する先行研究__.._.._._.__......_..._.__11   (3)第1節のまとめ______._.....___..______.______.__22  第2節 拡張自己評価維持モデルと先行研究の紹介.._.._._...一__.._...._...__23   (1)拡張自己評価維持モデル(Extended・Self-Evaluation・Maintenance・Mode1)        .23   (2)拡張自己評価維持モデルで予測される感情反応_、..._.._..__._......_...25   (3)拡張自己評価維持モデルに関する先行研究..._._._.__._..._..._..、.._.26   (4)第2節のまとめ___.___..._.___._.._.___.__.______.__2g 第2章 本研究の目的と構成_...____.______.______._____.....30  第1節本研究の目的______._..____.._____._.___.___._.__30  第2節本研究の構成______...______._____._◆______.__.37 第ll部 実証的検肘__........._..._..一....._.._._.__.___.._._._._._.._._一._.3g 第3章 親密な友人関係における自己評価維持と関係性維持:自己評価維持モデルおよ び拡張自己評価維持モデルで予測される感情反応の検肘_..__...._._._.__一_..40 一11

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 第1節 研究1 自己評価維持モデルで予測される感情反応と遂行の主観的評定か  らの検肘___._._.._____.____……・……・・…………・……・……一…・・………40   (1)問題と目的__..____._.____._._..__.__...__.___...。..._._.40   (2)方法__._.._...____.__.______.______.._.____....43   (3)結果_.._......._._...__.._.._..._.._.......__._...._..._........_._.__45   (4)考察_..._.___._._._......_◆......._.....◆__..____......_..一一.__...__48  第2節 研究2 拡張自己評価維持モデルで予測される感情反応の検肘..一....、._.50   (1)問題と目的__.__.._.______.___.___.______._.__.50   (2)方法______.___..__..______.______..______..._50   (3)結果_......_.._....._._....一一_._._._.◆_...._.___....___.._.._.__._.52   (4)考察...._.......◆.........一...._..._,......一._.._...__....._..___.......,..._..__58  第3節第3章のまとめ______.______..、______...______..__60 第4章 親密な友人関係における自己評価維持と関係性維持:STTUCフレームワーク および拡張自己評価維持モデルからの検討..___.__.._....._._._.._._....__._..61  第1節 研究3 他者よりも優れていることの喜びと苦痛:他者との親密さと他者関  与度からの検肘______..______.__.____.______.______61   (1)問題と目的_.__..__.___.___.____.__...___..__,.____61   (2)方法______.__.____.______.______._.__..__._64   (3)結果....___..一一_.._..s_._.._.._..._._._._.._.._...__......._..__._...67   (4)考察_..._.._._._._.._._._.._..._.__..s_.t._._.._._..__一一...__.._73  第2節 研究4 他者よりも優れていることの喜びと苦痛:親密な友人、知人、好ま  しくない他者との比較__...__.___._..._._....._._._....._...___一.一__......76

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  (1)問題と目的.______._____._.______..._____._.._._.._76   (2)方法_____._._____......____..._..______..______._76   (3)結果...._.__.◆_._.......一一_..__◆_._.._._._._..一一......_.___._..._._.79   (4)考察...._....◆.◆..◆.._._.....、...σ_.._......_._.._._....吟.㊤..._._._一.....’一..._...88  第3節第4章のまとめ.______.______.______.______.__g2 第5章 研究5 親密な友人よりも優れていることに対する感情反応と個人の適応と の関連_.____.______..______.______...______._____g3   (1)問題と目的___.___,_____.._.___.___._____.._.____g3   (2)方法__.____.___.___.___._.__.______.___.___._94   (3)結果_____..__.___.___.___.______.______._97   (4)考察....._.__._...____.___._.._.’_.._._._...__σ_..._._._.._103 第皿部 総括___...__..______..______.______..._._____....106 第6章 総合考察....一一.._._.._.._.._._._....._........._._......_._._.._.._.._.__107  第1節本研究のまとめ_____._.._____._.__..____.______._.107   (1)第3章の概要。.._一._._..._._.._._....._._...._.___._._._...._._-108   (2)第4章の概要_.__.___._____._..___.___.__..____。__108   (3)第5章の概要_._....___.___._.._..___....__.______.._..110  第2節 実証研究全体を通しての総括_._.__._.._._.__._....._._..一一_._....110  第3節 本研究の意義..__._...、._._一._一_..._._._._.....__一__._._.._._..113  第4節本研究の問題点と今後の課題____.__.______......._____.._.115   (1)感情反応の適応的意●__._._..._._一一_._._.一.._.__._......一._.一._.116 iv

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  (2)拡張自己評価維持モデルで規定される他の状況についての検肘の必要性       .116   (3)性差と文化差に関する問題______.___.__._.______.__117   (4)研究方法に関する問題__.___..___.__..._____.._..____.118  第5節 本研究の応用可能性_._一_......__._一一....__......_.._._......._._._._119 引用文献__.____.______....______.______..______.___122 本論文に含まれている研究の発表先一覧__.._._._____._._____._.._131 謝辞....__..____.._._._._._....._.ふ..._.__..__._◆.._.._...◆ふ◆._._..一一_._._.132 付録______.______.______..______、____._._._._.__.133

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論文構成

第1部理論的検討

第1章自己評価維持モデルと拡張自己評価維持モデル 第11部実証的検討 第3章親密な友人関係における自己評価維持と関係性維持: 自己評価維持モデルおよび拡張自己評価維持モデルで予測される感情反応の検討 第1節研究1自己評価維持モデルで予測される感情反応と遂行の主観的評定    からの検討 第2節研究2拡張自己評価維持モデルで予測される感情反応の検討 第4章親密な友人関係における自己評価維持と関係性維持:STTUCフレームワーク および拡張自己評価維持モデルからの検討 第1節研究3他者よりも優れていることの喜びと苦痛:他者との親密さと    他者関与度からの検討 第2節研究4他者よりも優れていることの喜びと苦痛二親密な友人、知人、    好ましくない他者との比較 第5章研究5 親密な友人よりも優れていることに対する感情反応と個人の適 応との関連 第皿部 総括 1

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序論

 人は他者との関係において自己の良さを感じ取り、自己を肯定しようと動機づけられて いる。このような自己高揚動機の存在は、多くの研究において検証されてきた(e.g.,Alicke, 1985;Brown,1986;Lewicki,1984;Taylor&Brown,1988).例えば、自己にっいての特 徴を記述させると、適応的な人はネガティブな特性よりもポジティブな特性を多く挙げ (Alicke,1985;Brown,1986)、自分が重要だと考える特徴ほど自分自身に良く当てはま るとみなす(Lewicki,1984)といったように、人は、自らを肯定的に捉えるために、自分 自身の認知を肯定的な方向に歪めていることが指摘されている.Taylor(1989)は、この ような自分自身を肯定的に捉えようとする傾向をポジティブ幻想(positive illusion)と名 付け、そのような傾向が個人の適応と結びついていることを指摘している。また、原因帰 属研究においても、人は一般に、成功を自分の能力や努力といった内的属性に帰属し、失 敗は課題の困難さなどの外的属性に帰属するといったセルフ・サービング・バイアス (self-serving bias)の存在が指摘されている(e.g., Bradley,1978;Mlller&Ross,1975; Zukerman,1979)。このように自己高揚動機は、様々な研究からその存在が検証されてき

た。それら自己高揚動機を扱った研究において中心となる概念は、自己評価

(self’evaluation)である。自己評価とは“様々な領域における自分に対する認知的評価” (伊藤,2002,p.97)であり、それぞれの評価領域において形成される、状況や他者から の評価に応じて変動するものであると考えられている。この自己評価を中心的な概念とし て扱った理論として社会的比較過程理論(Festinger,1954)が挙げられる。  Festinger(1954)の社会的比較過程理論は、「人には環境を理解し、環境に対して有効 な働きかけを行うために必要な基本的動因として自己評価への動因があるとし、正確で安 定した自己評価を得るために、自己と能力や意見が類似した他者との比較がなされる」と する理論である。この理論では、3っの基本的仮説が挙げられている。1つ目は、「人には 自らの意見や能力を評価しようとする動因が存在する」という仮説である。2つ目は、「人 は客観的、非社会的手段が用いられない程度に応じて、他者の意見や能力と比較すること によって、自らの意見や能力を評価しようとする」という仮説である,3つ目は、「他者と 自己を比較しようとする傾向は、他者との意見や能力の差が増大するにっれ減少する」と いう仮説である。これら3つの基本的仮説を基に、人が他者との比較を行う過程に関する 多くの研究が行われてきた(e.g., Hakmiller,1966;Latane,1966;Radloff,1966;Suls,

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1977;Wheeler,1966)。 Festinger(1954)の社会的比較過程理論では、人の正確で安定し た自己評価を得ようとする動機に焦点があてられているが、その後の様々な研究において、 社会的比較過程には、自己高揚動機も関連していることが指摘されている(e.g., Hakmiller, 1966;Latan6,1966;Thornton&Arrowood,1966;Wheeler,1966, Wills,1981),例えば、 Thornton&Arrowood(1966)は、社会的比較を求める欲求として、正確で安定した自己 評価を得ようとする動機と、自己よりも優れている他者との比較によって自分自身を高め ようとする自己高揚動機の2つがあると指摘している,また、Wills(1981)は、人が自 己高揚動機に基づいて、自分自身よりも劣った他者との比較を行う傾向があるとする下方 比較理論を提唱している,  これら自己高揚動機に焦点をあてた社会的比較過程に関する研究の中で、Tesser(1984) は、個人が他者との比較を通じて、如何に自己評価を維持・高揚するかを扱う自己評価維 持モデル(Self’Evaluation Maintenance Model)を提唱している,自己評価維持モデル では、「自己評価」を“個人が自分自身に対して抱く、あるいは、他者が自分自身に対して 抱いているとその個人が認知する相対的な良さの感覚”(Tesser,1984, p.272)と定義し ている。この自己評価を規定するのが、他者との心理的距離(closeness)、他者と比較し た自己の遂行結果(perfbrmance)、遂行領域の自己関与度(self-relevance)の3つの変 数であり、それらの変数の組み合わせが、個人の自己評価の上昇や低下に影響を及ぼすと される.そして、個人は自己評価を維持・高揚しようという動機を満たすために、それら 3つの変数を行動的・認知的に変化させると考えられている,自己評価維持モデルは、主 に友人関係を対象として多くの実証研究が行われ、それらの研究から個人が自己評価を維 持、高揚できる方向に認知的、行動的調整を行っていること(Pleban&Tesser,1981; Tesser&Campbell,1980;Tesser, Campbell,&Smith,1984;Tesser&Paulhus,1983; Tesser&Smith,1980)、個人が自己評価を維持、高揚できるような友人を選択しているこ と(Tesser, Campbell,&Smith,1984)、自己評価を維持、高揚することが個人の学級適 応や精神的健康に影響すること(磯崎,1997;Kamide&Daibo,2009)などの知見が見出 されている。このように自己評価維持モデルは、自己評価維持という観点から人の社会行 動、他者との親密さ、自己のあり方を包括的、力動的に説明することが可能であり、それ らの理解に有用な知見を提供するモデルであると考えられる。  一方で、このような自己高揚動機もしくは自己高揚傾向には、文化差があることが指摘 されており、日本を始めとする東アジア文化では、欧米で示されてきた自己高揚傾向に関 3

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する知見と必ずしも一致しないことが報告されている。例えば、ポジティブ幻想に関する 研究において、日本では適応的な人においても自己概念は否定的な側面が相対的に強く、

自己の望ましさを過大に評価する傾向がみられないということが報告されている

(Murkus&Kitayama,1991)。日本の小中学生を対象に自己評価維持モデルの観点から 検証した研究においても、モデルの予測とは異なり、心理的に近い他者をより肯定的に評 価する傾向が示されている(e.g.,磯崎,1994b)。日本での自己高揚傾向に関する研究を概 観した遠藤(1995)は、自己高揚傾向における知見に関して、“欧米ではひとは異質な存 在としての他者から屹立した自己完結的な個として存在し、個人はそれぞれ独自の欲求や 感情や思考をもち、それに基づいた行動や態度をとると考えられているのに対して、我が 国ではひとは個として存在するのではなく、相手との関係性や状況に応じた不定形的存在 様式をとるものと考えられている。”(p.139)と述べ、日本では、“ひととひととの関係性” の視点を適応の基盤として検討することの重要性を示唆している。  このような観点から、自己評価維持という問題にっいても関係性という観点からの検討 が必要であると考えられる、すなわち、他者との関係性という観点から考えると、必ずし も個人が他者との関係において自らの自己評価の維持、高揚のみを志向することが適応的 であるというわけではない。なぜならば、個人が親密な関係にある他者との比較において 自己評価を維持・高揚できていたとしても、その他者の自己評価が維持、高揚できている とは限らない。むしろ、個人の自己評価を維持、高揚しようとした結果、親密な他者の自 己評価維持を阻害する可能性もあり得る。このような状況は、親密な他者との関係を不安 定にする。このように、親密な他者との関係性維持を考慮に入れた場合、自己と他者の双 方の自己評価を維持、高揚できていることが、その個人にとって適応的であると考えられ る。このような観点から、Beach&Tesser(1995)は自己評価維持モデルを親密な他者と の関係に適用し、自他双方的な視点から捉えた拡張自己評価維持モデル(Extended Self’Evaluation Maintenance Model)を提唱している。このモデルでは、従来の自己評 価維持モデルで想定された3っの変数に加え、個人が認識する遂行領域に対する他者の自 己関与度(他者関与度)を考慮し、いくつかの実証研究が行われている,それらの研究か ら、親密な二者関係にある個人は、自らの結果において自己評価を維持、高揚されている かだけでなく、親密な関係にある相手の自己評価も維持、高揚できているかにっいても敏 感であり、共感的に反応することが示されている。言い換えれば、親密な二者関係にある 個人は、自らの自己評価の維持、高揚を志向するだけでなく、その他者との関係性維持を

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志向し、自他双方の自己評価維持のバランスをとっているといえる。このようなことから、 拡張自己評価維持モデルは、自己評価維持と関係性維持という観点から、他者との親密さ を捉える上で有用なモデルであると考えられる。  しかしながら、拡張自己評価維持モデルは、親密な他者として夫婦関係や恋愛関係を対 象に検討されてきたが、親密な友人関係にっいては検討されてこなかった。友人関係は、 生涯を通じて形成される対人関係であり、特に青年期の親密な友人関係は、自己概念に大 きな影響を与えると考えられるため、青年期の親密な友人関係を対象として検討すること は有用であり、検討すべきテーマであると考えられる,また、拡張自己評価維持モデルに 関する実証研究では、その多くが他者への共感的な反応として他者との比較状況における 感情反応を扱っているが、それらは相対的なポジティブ感情の交互作用効果のパターンか らの検討であり、モデルから予測される具体的な感情内容を用いた検討はされてこなかっ た.そのため、具体的な感情内容から検討することでより詳細な検討を行うことが可能で あると考えられる.  以上のような問題意識から本論文では、大学生の親密な友人関係における自己評価維持 と関係性維持について拡張自己評価維持モデルの観点から検討を行う。 5

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第1章 自己評価維持モデルと拡張自己評価維持モデル

第1節 自己評価維持モデルと先行研究の紹介

(1)自己評価維持モデル(SelfLEvaluation Maintenance Mode1)  自己評価維持(SEM)モデル(e.g., Tesser,1984)は、「人は自己評価を維持もしくは 高揚しようと動機づけられている」、「他者との関係は個人の自己評価に多大な影響を及ぼ す」という2つの基本的前提のもとに、個人が他者との比較を通じて如何に自己評価を維 持、高揚するかについて説明するモデルである。ここでいう自己評価とは、「個人が自分自 身に対して抱いている、もしくは他者が自分自身に対して抱いていると個人が認知する相 対的な良さ(goodness)」を指す.この自己評価への結果を規定する過程には、比較過程 (comparison process)と反映過程(re且ection process)の2っが想定されている.比較 過程とは、自己の優れた遂行によって自己評価が高揚する過程(ポジティブな比較過程)、 もしくは、自己の劣った遂行によって自己評価が低下する過程(ネガティブな比較過程) である1,また、反映過程とは、他者の優れた遂行によって自己評価が高揚する過程である. 図1・1で示されるように、この比較過程と反映過程のどちらが生じるかは、心理的距離 (closeness)、遂行(performance)、自己関与度(selfrelevance)の3つの変数に影響さ れる。心理的距離は、「二者間の心理的近さの程度」として定義され、Heider(1958大橋 訳1978)の認知的バランス理論におけるユニット関係と類似した概念であり、年齢、経歴、 容姿などの類似や物理的接近性によって近くなると考えられている。そして、自己にとっ て心理的に近い他者は、遠い他者と比べ、個人の自己評価に対して多大な影響を及ぼすと 1Tesser(1984)は、ポジティブな比較過程(positive comparison process)、ネガティブ な比較過程(negative comparison process)という名称を使用していない.後述する拡張 自己評価維持モデルに関する論文(e.g., Beach&Tesser,1995)において、比較過程にお ける自己評価の上昇をもたらす比較をポジティブな比較(positive comparison)、自己評 価の低下をもたらす比較をネガティブな比較(negative comparison)と表現している。 本論文においても、これらの区別を分かりやすくするため、それぞれの比較を「ポジティ ブな比較」、「ネガティブな比較」とし、それら比較の過程を「ポジティブな比較過程」、「ネ ガティブな比較過程」と表現する。 7

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心理的距離 自己関与度 遂行結果 個人の自己評価への結果 Other Better 自己評価の低下    ネカティブな比較過程 高い Self Better 自己評価の上昇    ポンティブな比較過程 近い Other Better 自己評価の上昇       反映過程 低い Self Better 不定 図1・1 自己評価維持モデルで予測される各変数と自己評価への結果との関係 (Tesser(1984)の自己評価維持モデルに関する説明を基に著者が作成) 仮定されている。遂行とは、ある活動や事柄(遂行領域)における自己と他者の遂行を比 較した結果のことである。すなわち、当該の遂行領域において、他者と比べて自己の遂行 が優れている場合(Self Better)と自己の遂行が劣っている場合(Other Better)の2っ の遂行が想定される.この遂行は、反映過程や比較過程を生起させる一つの要因となるが、 反映過程と比較過程のどちらが生起するかは、さらに当該の遂行領域の自己関与度に依存 する.自己関与度とは、遂行領域が個人の自己概念と関連している程度を意味している。 例えば、野球選手は、野球に対する自己関与度は高いが、サッカーに対する自己関与度は 低いと考えられるように、自己関与度は当該の活動や事柄が個人にとって重要か否かで規 定される,自己関与度の高い遂行領域は、自己を定義し、比較過程を生じさせる。従って、 自己関与度の高い遂行領域で自己の遂行が心理的に近い他者と比べて劣っている場合、ネ ガティブな比較が生じる,それによって、個人は自己評価に脅威を感じ、自己評価が低下 する。また、自己関与度の高い遂行領域で、心理的に近い他者よりも自己の遂行が優れて いる場合はポジティブな比較が生じ、自己評価が上昇する.他方、反映過程は、自己関与 度の低い遂行領域で生じる。すなわち、当該の遂行領域が個人にとって重要ではない場合、 心理的に近い他者の優れた遂行によって、個人の自己評価が上昇するのである。この反映 過程は、栄光浴(Basking in reflected glory)(Cialidini, Borden, Thorne, Walker, Freeman,&Sloan,1976;Cialdini&Richardson,1980)と呼ばれる現象と類似したもの であると考えられている.

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 Tesser(1988)は、自己評価維持モデルにおける自己評価維持過程の様々な側面につい て図1・2のように図式化している。図1-2の左側に示されている先行条件(ANTECEDENT CONDITIONS)と記された部分は、自己関与度、遂行、心理的距離の組み合わせを示し ている。これらの組み合わせは、ポジティブな比較や反映、ネガティブな比較を生じさせ、 個人の自己評価の上昇や低下をもたらす、すなわち、その先行条件が、自己評価維持過程 (SEM PROCESSES)の変化を引き起こすと考えられ、図1・2の中央に記された雪だる ま型の図で示されている。また、図1・2の右側に示されている行動調整(BEHAVIORAL ADJUSTMENT)は、個人が自己評価を維持、高揚するために行う行動調整、すなわち、 先行条件の3つの変数の行動的、認知的な調整である,例えば、ある個人が、自己関与度 の高い遂行領域で、心理的距離の近い他者よりも劣っていた場合、ネガティブな比較過程 が生起するため、その個人は自己評価を維持しようと、当該の遂行領域の自己関与度を低 く見積る(反映過程の方向への調整)、その他者との心理的距離を遠くする(個人の自己評 価へ0)影響を低下させる)、その他者よりも優れているように努力する(ポジティブな比較 過程の方向へσ)調整)といった行動調整を行うと考えられる, EMOTIONAL BEHAVIOR Relevance Performance Closeness

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Arousal Aff㏄t Ref1㏄tion Comparison \ぐ⑳〈、       /

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マ劃51/ / Relevance Performance Closeness 図1・2 自己評価維持モデルにおける先行条件、自己評価維持過程と感情反応、行動調整 の関係(Tesser,1988, p.209, Figure 6.より作成) 9

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 また、この図において実線で描かれている円(先行条件、自己評価維持過程、行動調整) と矢印は理論的実在を示し、破線で描かれている矢印は観察可能な関係を示す,自己評価 維持過程は、あくまで仮説的構成概念であり直接観察可能なものではない。例えば、Tesser &Campbell(1983)は、「自己評価」について“仮説構成概念、すなわち、観察可能な変 数(i.e.,自己関与度、遂行、心理的距離)間の関係の体系化と理解のために用いられる理 論的フィクションである。同様に、自己評価維持は、不協和理論における ‘不協和の低減’ のような仮説的プロセスである。不協和の低減だけでなく自己評価の維持も、直接的な測 定や観察はできないが、これらのモデルは、仮説化されたプロセスにおける観察可能な先 行要因と結果に関する特定の予測がなされるために検証可能である”(pp.8・9.)と述べて いる,このような観点から自己評価維持モデルに関する初期の研究は、上記の3っの変数 のうち、2つを操作し、残りの1つの変数への影響を検討する試み(図1・2破線“Previous Research”)によって、モデルの妥当性を証明している(e.g., Pleban&Tesser,1981; Tesser&Campbell,1980;Tesser, Campbell, Smith,1984;Tesser&Paulhus,1983; Tesser&Smith,1980),  初期の研究でモデルの妥当性が検討された後、自己評価の低下や上昇といった変化を捉 えようとする試みが行われてきた,上記のように自己評価や自己評価維持は、仮説的構成 概念とそれによって構成される仮説的プロセスであるが、自己評価のプロセスが実際に存 在すると仮定した場合、自己評価の上昇や低下といった変化は、個人の感情反応や喚起 (arousal)2を捉えることによって、間接的に測定できると考えられたのである。すなわ ち、自己評価維持過程は、瞬時に行われ、無意識的なプロセスであるが、自己評価維持過 程と行動調整との間には、感情反応の変化や喚起の上昇が媒介するため(図1・2中央上部 “EMOTION”)、それら(感情反応の変化や喚起の上昇)を捉えることによって、自己評 価の上昇や低下の事態を検証することが可能であると考えられたのである(図1・2 2ここでの喚起(arousal)は、“生活体の活性化の仮説的な水準”(Tesser,1991, p.124.) として扱われている.喚起の上昇は、自律神経系の機能による心拍数増加や血圧上昇など の生理的変化や、単純な課題や良く学習された課題への反応の促進、複雑な課題や新奇な 課題への反応の抑制(e.g., Spence,1956;Zajonc,1965)といった課題遂行に影響を及ぼ すことが知られている。

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ARROW 1およびARROW 2)3。具体的には、自己評価が低下する場合(ネガティブな 比較過程)では、ネガティブ感情が生起(もしくは、喚起が上昇)し、自己評価が上昇す る場合(ポジティブな比較過程や反映過程)では、ポジティブ感情が生起(もしくは、喚 起が上昇)すると考えられている。この観点は、Bers&Rodin(1984)やSalovey&Rodin (1984)などの「社会的比較による嫉妬」(social comparison jealousy)に関する研究に おいても支持されている。例えば、Salovey&Rodin(1984)では、自己定義に関連した 遂行領域、もしくは、関連しない遂行領域で、他者の遂行が優れていたというフィードバ ックを実験参加者に与える実験において、自己定義に関連しない遂行領域よりも自己定義 に関連した遂行領域でフィードバソクを受けた実験参加者は、不安や抑うっの高さ、ポジ ティブ・ムードの低下を報告したという結果が示されている。自己評価維持モデルの観点 から自己評価維持過程と感情反応や喚起との関連を示した研究は、Tesser&Collins(1988) やTesser, Miller,&Moore(1988)によって行われている。  以下では、これら自己評価維持モデルに関する先行研究の紹介を行う。 (2)自己評価維持モデルに関する先行研究  上述したように、これまで行われてきた自己評価維持モデルに関する実証研究は、(a) 3つの変数のうちの2っを操作し、残りの1つの変数への影響を検討した研究(図1・2の Previous Research)、(b)自己評価維持過程と感情反応の変化や喚起の上昇との関連を検 討した研究(3つの変数全てを操作して、その際に生じる感情反応を検討した研究)の2 つに大別できる.ここではまず、(a)について、それぞれの従属変数(2つの変数を操作 した残りの1つの変数)ごとに概観し、その後、(b)について概観する。最後に、自己評 価維持と個人の適応との関連を示唆した研究について紹介する。 3ARROW 1は、先行条件(自己関与度、遂行、心理的距離の組み合わせ)によって生起 した感情反応の変化や喚起の上昇が行動調整とは関連しない感情行動に及ぼす影響の部分 であり、ARROW 2は、先行条件によって生起する感情の表出の部分である。前者は、先 行条件によって自己評価の低下や上昇をもたらし、それに伴って喚起が上昇するために観 察し得る感情行動、すなわち、単純な課題遂行の促進や複雑な課題遂行の抑制の側面から 検討され(e.g., Tesser, Millar,&Moore,1988)、後者の感情の表出は、感情反応の自己報 告や顔面表情の変化から検討されている(e.g.,Tesser&Collins,1988)。これらの研究は、 後に紹介する。 11

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1)遂行と心理的距離が自己関与度に及ぼす影響  自己評価維持モデルでは、個人が遂行と心理的距離を変化させることができない場合、 自己評価を維持できる方向に自己関与度を変化させることが予測される。例えば、ある遂 行領域において自己が他者よりも優れている場合、その遂行領域の自己関与度が低い場合 よりも高い場合に自己評価が上昇すると考えられる(ポジティブな比較過程の生起)cその ため、個人は当該の遂行領域の自己関与度を相対的に高いと知覚すると予測される。また、 ある遂行領域において他者が自己よりも優れている場合は、その遂行領域の自己関与度が 高い場合よりも低い場合に、相対的に自己評価が高まると考えられる(ネガティブな比較 過程の生起vs.反映過程の生起)。そのため、個人はその遂行領域の自己関与度を相対的 に低いと知覚すると予測される。また、この傾向は、心理的に遠い他者よりも心理的に近 い他者で顕著になると予測される,  Tesser&Paulhus(1983)は、この予測を検証している,彼らは、実験参加者のペアに 対し、認知・知覚統合(Cognitive Perceptual Integration:CPI)課題と称する架空の課 題を行わせる実験を実施した。ともに実験を行う相手との心理的距離を操作するため、事 前に質問紙に回答させ、半数の実験参加者には、相手とよく似ているというフィードバッ クを与え(心理的に近い)、残りの実験参加者には相手とはあまり似ていないというフィー ドバックを与えた(心理的に遠い)。そして、CPI課題を行わせ、遂行を操作するために、 その課題の成績のフィードバックを与えた。半数の実験参加者には、相手よりも成績が良 いというフィードバックを与え、残りの実験参加者には相手よりも成績が悪いというフィ ードバックを与えた。最後に、それぞれの実験参加者にCPIが自己評価にどのくらい重要 であるかを測定した。その結果、相手よりも成績が良いというフィードバックを与えられ た実験参加者は、相手よりも成績が悪いというフィードバックを与えられた実験参加者よ りもCPIの自己関与度を高いと評定する傾向にあった。また、この傾向はともに課題を行 った相手が心理的に遠い場合よりも、心理的に近い場合に顕著であった。このように、自 己評価を維持できる方向に遂行領域の自己関与度の知覚を変化させるという自己評価維持 モデルの予測が支持されたのである。  他に、Tesser&Campbell(1980)の大学生に社会的感受性に関する課題と美的判断能 力に関する課題を行わせた後にその結果のフィードバックを与え、それらがそれぞれの課 題の自己関与度に及ぼす影響について検討した研究においても同様の結果が示されている.

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2)心理的距離と自己関与度が遂行に及ぼす影響  自己関与度と心理的距離を変化させることができない場合には、自己評価を維持できる 方向に遂行を変化させることが予測される。Tesser&Smith(1980)は、男性の実験参加 者に対して、友人や他人の遂行を手助けするか、もしくは、妨害するかを選択させる実験 を行った。彼らは、1人ずつの友人を伴った実験参加者のペア2組に対し、1人ずつ順番 に言語推測課題を行わせた、事前に、実験参加者の課題の自己関与度を操作するために、 半数の実験参加者には、この課題が重要な言語能力や指導性などを調べるものであると教 示し(自己関与度高条件)、残りの実験参加者には、重要な事柄には関係のないものである と教示した(自己関与度低条件)。その後、実験参加者に1人ずっ言語推測課題を行わせた, この課題は、手がかりに基づいて単語を推測する課題であり、回答を手助けする易しい手 がかりと回答を妨害する困難な手がかりが用意された,その手がかりは、課題を行ってい る実験参加者以外の残りの3名が選ぶことになっていた。まず、それぞれの実験参加者の ペアから2名ずつ順番に課題を行ったが、この2人には難しい手がかりが与えられ、回答 できないように操作されていた。次に、残りの2人が課題を行い、その際にどの手がかり を与えるかを従属変数として測定した。課題を行っている2名のうち1名は友人でもう1 名は他人である。その結果、課題の自己関与度が高い条件の実験参加者は、友人に対して 回答を妨害する手がかりを与え、課題の関与度の低い条件の実験参加者は、友人に対して 回答を手助けする手がかりを与える傾向があったcこれは自己評価維持モデルの予測を支 持する結果である。すなわち、実験参加者は、課題の自己関与度によって自己評価を維持 できる方向に他者の遂行を変化させようとしたのである。  他に、Tesser&Campbell(1982)の大学生に社会的感受性に関する課題と美的判断能 力に関する課題を行わせ、その正解を知らせた上で、同じ実験に参加した他者(友人、初 対面の他者)の遂行結果の推測に及ぼす影響を検討した研究においても自己評価維持モデ ルの予測に沿った結果が示されている。 3)自己関与度と遂行が心理的距離に及ぼす影響  自己関与度と遂行を変化させることができない場合には、自己評価を維持できる方向に 他者との心理的距離を変化させることが予測される。この予測を検証するため、Pleban& Tesser(1981)は、大学対抗のクイズゲームという名目で大学生に対し実験を行った。ま ず、実験参加者に様々なトピックの関与度を測定する質問紙に回答させた。そして、その 13

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回答に基づき、半数の実験参加者には自己関与度の高いトピックに関するクイズを出題し、 残りの実験参加者には自己関与度の低いトピックに関するクイズを出題した。その後、す べての実験参加者にクイズの結果が平均くらい、すなわち、50パーセンタイル(100人中 50位程度)であるというフィードバックを与えた,また、他の参加者(他者)の結果に関 するフィードバックも与え、それは条件間で20パーセンタイル、60パーセンタイル、80 パーセンタイルのいずれかであった。最後に、従属変数として、その他者に対する心理的 距離を示す指標を測定した(「その他者をどのくらい好きか」、「その他者とどのくらい似て いるか」、「その他者と一緒に仕事をしたいか」といった質問紙による測定と、その他者と どのくらい近くに座るかについての物理的距離に関する行動測定)。その結果、クイズの結 果が友人よりも良いというフィードバソクを与えられた実験参加者は、そのクイズの自己 関与度の高低に拘わらず、他者との心理的距離に差がみられなかった。しかし、他者の方 が結果が良いというフィードバックを与えられた実験参加者は、自己関与度が低いクイズ を出題された場合、他者の結果が良いほど、他者への心理的距離を近く認識する傾向にあ り、逆に自己関与度の高いクイズを出題された場合には、他者との心理的距離を遠く認識 する傾向にあった。この結果は自己評価維持モデルの予測を支持するものである。すなわ ち、実験参加者は他者の遂行結果が自己評価に脅威を及ぼす場合、その他者への心理的距 離をより遠いと認識し、逆に、自己評価を上昇させる場合には心的距離をより近いと認識 したのである。 4)友人選択と遂行評定  上で述べてきた実証研究は、心理的距離、自己関与度、遂行の3つの変数のうち2つを 実験的に操作し、残りの変数をどのように変化させるかという実験室実験による研究であ った。一方で、実際の対人関係において個人が自己評価を維持できるような友人を選択し、 自己評価を維持できるように自己と他者の遂行の評定を認知的に歪曲していること示した 研究も行われている。これらの研究は、遂行評定の認知的歪曲、すなわち、遂行領域の実 際の成績(客観的評定)とその個人自身の主観的評定とのズレから検討したものであり、 個人の遂行結果の認知的変化を扱った研究であるといえる。そのため、上述した枠組みで 分類すると、「心理的距離と自己関与度が遂行に及ぼす影響」に分類され得るが、実験的に 変数を操作した研究ではなく、現実場面に関する調査的研究であること、友人選択方略に まで拡張して解釈された研究であること、また、日本で行われた研究のほとんどが、ここ

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で述べる友人選択と遂行評定に関するものであり、その結果において自己評価維持モデル のあてはまりが良くないことが指摘されていることなどから、本論文では独立した形で分 類する。  1.Tesser, Campbell,&Smith(1984)による研究  Tesser, Campbell,&Smith(1984)は、小学生に対して、自己関与度の高い活動と自 己関与度の低い活動に関する主観的評定(生徒自身の評定)と実際の成績(教師の評価) とを比較している。彼らは、まず小学校5、6年生に対して、親密なクラスメイト(最も 一緒にいたいと思うクラスメイト)と親密ではないクラスメイト(最も一緒にいたいと思 わないクラスメイト)を挙げさせた。そして、学校活動のリストから自己関与度の高いも のと低いものを選択させた.約一週間後、生徒の選択した学校活動に対する主観的評定を 得るために、選択した学校活動に対する自己、親密なクラスメイト、親密ではないクラス メイトの成績をそれぞれ評定させた,さらに、実際の成績を得るために、教師にそのクラ ス全員の学校活動に関する成績を評定させた。その結果、成績の主観的評定において、生 徒は自己関与度の高い学校活動に対しては親密なクラスメイトよりも自己の遂行が高いと 評定し、逆に自己関与度の低い学校活動に関しては親密なクラスメイトの方が成績が高い と評定した。また、親密ではないクラスメイトに対しては自己関与度の高低に拘わらず、 自己と親密なクラスメイトよりも成績が低いと評定した4、さらに、認知的歪曲(成績評定 と実際の学業成績のズレ)の指標として、主観的評定の平均値から実際の成績の平均値を 引いた得点を用いて分析した結果、自己関与度の高い活動においては自己の成績を実際の 成績よりも高く評定しており、自己関与度の低い活動においては、実際の成績よりも低く 評定していることが示された,また、親密なクラスメイトの遂行についての評定では、自 己関与度の高い活動においてクラスメイトの遂行を実際の成績よりも低く評定し、自己関 4心理的に遠い他者(親密ではないクラスメイト)に関するの結果は、必ずしも自己評価 維持モデルの予測に合致したものではない.自己評価維持モデルでは、心理的距離が遠い 他者よりも近い他者で個人の自己評価に多大な影響を及ぼすと考えられているため、自己 関与度が高い遂行領域では、親密なクラスメイトよりも親密ではないクラスメイトの成績 を高く評定すると考えられる。この結果に対し、Tesser et aL(1984)は、心理的に遠い 他者の設定の問題を指摘している。すなわち、心理的距離に関する予測が得られたTesser &Campbell(1982)やTesser&Smith(1980)の実験室実験では、心理的に遠い他者と して、「見知らぬ他者」を用いているのに対し、ここでは、「一緒にいたくない他者」を用 いている。自己評価維持モデルで述べられている心理的に遠い他者とは、自己に対して多 大な影響を及ぼさない他者であると考えられ、「見知らぬ他者」と比べ「一緒にいたくない 他者」は、感情的な側面を含んでおり、自己にとってネガティブな方向で影響を持つ可能 性を指摘している。 15

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与度の低い活動では高く評定していた。この傾向は、男子でより顕著であった。このよう に、主観的評定、客観的評定、さらに認知的歪曲(成績評定と実際の学業のズレ)の指標 を用いた場合でも自己評価維持モデルの予測が支持された。このような結果から、生徒が 実際の成績において自己評価維持が可能となるような友人を選択していること (友人選択 方略の使用)と、自己評価が維持される方向に自己と他者の遂行の評価を認知的に歪曲し ていること(認知的歪曲方略の使用)、さらに、この傾向は男子で顕著であることが明らか となったのである。  2.日本人を対象とした研究  磯崎・高橋(1988)はTesser et aL(1984)の研究に沿って、友人選択と学業成績の評 定との関連から自己評価維持モデルの妥当性を検討し、さらに、自己評価維持モデルを発 達的視点から捉えるために、小学生だけでなく、中学生も対象に検討を行った。その結果、 自己評価維持モデルの予測通り、主観的評定において比較過程と反映過程の双方が関わっ ていることが認められた。すなわち、調査対象者は、高関与教科で自己の方が心理的に近 い他者よりも優れており、低関与教科で心理的に近い他者の方が自己よりも優れていると 認知していることが明らかになったのである。また、実際の成績でも類似した傾向がみら れた。この傾向は、Tesser et aL(1984)と同様に男子において顕著であり、主観的評定 において女子は 高関与教科で、自己と友人との間で差をつけない傾向があり、友人を好 意的に評価することが明らかにされた。しかし、心理的に近い他者と遠い他者に対するモ デルの予測と発達差に関する仮説は検証されなかった、この結果に対して、磯崎・高橋 (1988)は、学業成績が相対的に良い他者の方が、心理的に近い他者として選択される傾 向にあること、比較過程の生起は、小学生ですでに一定のレベルに達し、中学生ではそれ ほど変化しないという可能性を指摘している。  磯崎・高橋(1993)は、友人選択と学業成績およびその関与度の関連の時系列的変化を 調べるために磯崎・高橋(1988)の研究から一定期間経た後にその同一対象者に対して同 様の手順で調査を行っている。その結果、実際の成績においては自己評価維持モデルの予 測が支持されたが、成績の評定においては、高関与教科で、自己と友人との間に差がみら れなかった。すなわち、時系列的にみると、一定期間後には自己よりも友人をより過大評 価する傾向が強まっていた。  また、磯崎(1994a)は、年齢段階別に自己評価維持モデルを検証している。磯崎(1994a) は、小学校3、4年生、5、6年生、中学校1、2年生に対する質問紙調査において、実

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際の教科の学業成績と評定された学業成績、さらにその他様々な学校活動や行動特性を取 り」二げ、その関与度と遂行レベルや当該の行動特性を保有している程度との関連にっいて 自己評価維持モデルの予測を検証した。その結果、教科の実際の成績において、低い年齢 段階(小学校3、4年生)でも自己評価維持モデルが支持された。すなわち、小学校3、 4年生でも、高関与教科において自己が友人よりも優れ、低関与教科においては友人が自 己よりも優れているという結果が示された.さらに、学年が高くなるにっれて高関与教科 で自己と友人との差が大きくなることが示された。しかし、主観的評定においては、全て の年齢段階で、学業成績、学校活動、行動特性の順に自己評価維持機制は次第に弱まり、 関与度の高低に拘わらず、自己と友人との差がみられないか自己よりも友人を過大評価す る傾向がみられた。  以一ヒに述べた研究は、小学生や中学生を対象とした研究であるが、桜井(1992)では、 大学生を対象に自己評価維持モデルを検討している。桜井(1992)は、大学生に対し、高 校時代の教科の関与度と成績評定を行っている。その結果、大学生(による高校時代の想 起)においても、自己の関与度の高い教科においては、自分を友人よりも成績が優れてい ると評定し、関与度の低い教科においては、友人の方が自分よりも優れていると評定して いることが示され、自己評価維持モデルの予測が支持された。また、磯崎・高橋(1993) と同様に、評定対象が友人の場合にも高関与教科の成績のほうが低関与教科の成績よりも 高く評定されることが示された。  また、石田・水野(2005)は、年齢が上がるにつれて自己評価に関連する活動や行動の 特徴が多様化することを指摘し、自己関与領域を学業に限定せずに、高校生を対象に検証 を行った結果、男子では、SEMモデルに沿った結果が得られているが、女子においては 高自己関与領域、低自己関与領域ともに自己と友人に差がみられないことが示されている。  以上をまとめると、遂行の主観的評定および客観的評定から検討した研究では、いずれ の研究においても、客観的評定(実際の成績)の側面では、自己評価維持モデルに沿った 結果が示されている。しかしながら、主観的評定や客観的評定と主観的評定とのズレ、(す なわち、認知的歪曲)においては幾分異なる。日本での研究では、発達段階、性別、自己 関与領域の種類によって結果が幾分異なっているものの、高自己関与領域においても、自 己よりも友人を過大評価する傾向にあることが示されている。磯崎(2001a)は、このよ うな傾向にっいて、自己評価維持と関係性維持の2つの心理機制を仮定し、以下のように 述べている。“人には自己評価を維持しようとする動機(自己評価維持の動機)と他者との 17

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関係性を維持しようとする動機(関係性維持の動機)があり、自己評価維持の動機が作用 すると、人は、自己にとって関与度が高い遂行領域で、比較過程の生起を避ける(自己が 心理的に近い他者よりも優れている)とともに、自己にとって関与度が低い遂行領域で、 反映過程を生起させ(心理的に近い他者が自己よりも優れることによって)、自己評価を維 持しようとする.しかし、自己評価と同時に、自己と心理的に近い他者の自己評価を阻害 しないよう、なかば無意識的に調整を図ろうとする動機が作用するcこれが、関係性維持 の動機であるr関係性維持の動機が作用すると、自己にとって関与度が高い、低いに拘わ らず、心理的に近い他者の遂行を自己と同等かそれ以ヒに評価しようとする。そして、優 れた他者との結びつきを自己の喜びや誇りとし、そうした優れた他者との結びっきによっ て自己がさらに支持されることになる”(p.72.)tこのように、自己評価維持モデルに基 づいた研究において、個人は自己評価維持のみを志向しているわけではなく、関係性維持 という側面も少なからず影響していると考えられよう。このような観点は、第2節で述べ る拡張自己評価維持モデルにおいて検討されている。 5) 自己評価維持と感情反応や喚起との関連を示した研究  これまで示してきた実証研究は、先行条件と行動調整との関係(図1・2のPrevious Researchの矢印)、すなわち、自己評価維持過程の結果としての各変数の変化(行動調整) を捉えたものであった。ここでは、自己評価の上昇や低下の事態を捉えた自己評価維持過 程と感情反応の変化や喚起の上昇との関連を示した研究を概観する。  Tesser, Miller, Moore(1988)は、自己評価維持過程と喚起や感情反応との関連につい て実験的に検証した.Study1では、自己評価維持過程におけるポジティブな比較過程や 反映過程における自己評価の上昇やネガティブな比較過程における自己評価の低下には喚 起の上昇が伴うという予測を検証した,喚起の上昇は、課題の遂行に影響を及ぼすことが 知られており、単純な課題の遂行を促進、もしくは、回答速度を上げる傾向にあり、複雑 な課題の遂行を抑制、もしくは、回答速度を下げる傾向にある(e.g.、 Spence,1956;Zajonc, 1965)。彼らは、友人を伴った実験参加者のペアに、事前に自己関与度を測定した2種類 の課題(社会的感受性課題、美的判断課題)を行わせた後、それぞれの課題の成績のフィ ードバックを与えた。そのフィードバックは、比較相手(友人or他人)と遂行結果(自己 の方が成績が優れているor相手θ)方が成績が優れている)を組み合わせた4種類である, その後、複雑な課題と単純な課題を行わせ、その回答時間を測定した。その結果、比較相

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手の方が成績が優れているというフィードバックを受けた後には、その比較相手が、他人 よりも友人の場合に、複雑な課題の回答時間が遅くなり、単純な課題の回答時間が速くな った。また、白己の方が成績が優れているというフィードバソクを受けた場合には、この 結果が逆転した。これらの結果から、心理的に遠い他者と比べ、心理的に近い他者の遂行 が自己よりも高い場合、結果として喚起が上昇するという可能性が示されたのである5.ま た、Study 2では、反映過程に焦点を当て、ポジティブ感情の生起との関連を検討した, 彼らは、友人を伴ったペアに対し、自己関与度の低いトピックに関する問題を解かせ、自 己と友人、もしくは自己と他人(他の実験参加者)のどちらかの結果のフィードバソクを 与える実験を行った.結果のフィードバックは、自己と友人、もしくは自己と他人が同程 度の成績であったという条件と自己よりも友人、もしくは自己よりも他人の方が成績が高 かったという条件が被験者間要因として操作された,その後、ポジティブ感情を間接的に 測定するために、別の研究目的と称し、見慣れない単語(e.g., Ca tarhh, Obo1, Perdo1)を いくつか提示し、それらがどのくらい快・不快であるかを評定させた,その結果、結果のフ ィードバックが自己と友人で同じ成績である場合や自己よりも他人の成績が高い場合より も、自己よりも友人の成績が高い場合に、単語をよりポジティブであると評定した。この ことから、反映過程の生起によって相対的にポジティブ感情が高まるという証拠が示され たのであるcまた、Study 3では、顔面表情を従属変数としてStudy 1と同様の実験を行 ったe課題遂行時と結果のフィードバックが与えられた際に実験参加者の顔面表情がビデ オカメラで録画され、評価者によって快・不快の程度が評定された,その結果、自己関与度 が高い課題では、友人よりも自己の成績が高い場合に快表情がみられ、自己関与度が低い 課題では、自己よりも友人の成績が高い場合に快表情がみられることが示された。これら の研究から、自己評価維持過程と感情反応の変化や喚起の上昇との関連が確認されたので ある。  また、Tesser&Collins(1988)は、自己評価維持過程に関連した感情の質を検討した, 彼らは、実験参加者に対し、自己評価維持モデルで想定されている自己関与度(高or低)、 5ネガティブな比較過程によるネガティブな効果と、反映過程もしくはポジティブな比較 過程によるポジティブな効果のそれぞれで喚起が上昇すると予測されるが、それぞれの効 果によって喚起の強度が異なるかどうかは不明であるため、ここでは自己関与度の効果は 検討されていない. 19

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比較相丁・(友人or他人)、遂行(Self Better or Other Better)を組み合わせた8つの状 況を過去の経験から想起させた。それぞれの状況を想起させた後、その際に生じた感情を 18種類の感情語を用いて評定させた。その結果、「妬み」や「嫉妬」は、ネガティブな比 較過程を示す状況において最も高くなること6、「他者に対する誇り」は、反映過程を示す 状況で最も高くなることが示されている.  以tiのように、自己評価維持モデルでは、個人の自己評価維持過程の結果としての3っ の変数の調整だけでなく、自己評価の低下や上昇に伴う感情反応の証拠が示されている, このように感情反応の側面からの検討は、自己評価維持過程をより直接的に検討すること を可能にするため、個人の自己評価維持過程の理解に有用な方法であると考えられるcし かしながら、自己評価維持モデルを直接的に扱った研究において、感情反応の側面から検 討した研究は必ずしも1一分に行われているわけではない。特に、日本での研究においては、 その多くが遂行の主観的評定と客観的評定の側面から検討したものである。日本でのモデ ルのあてはまりが良くないといった傾向、すなわち、磯崎(2001a)によって指摘された 自L1評価維持と関係性維持機制の両側面が機能しているといった事態をさらに明確にする ために、「1己評価の低下やヒ昇の側面を捉えることができる感情反応の側面からも検討す ることによって新たな知見が得られると考えられる, 6) 自己評価維持と個人の適応との関連  これまで述べてきたように、個人が自己評価を維持、高揚しようとする個人の自己評価 維持の証拠は十分に示されてきた,ここでは、そのような個人の傾向が、実際に個人の適 応に関連していることを示唆した研究について概観する、  Tesser&Campbell(1982)は、自己評価維持モデルの学校場面への適用について触れ、 自己関与度の高い学校活動において、他者が心理的に近いほど、自己評価維持のために、 その活動で優れた成績をヒげようと努力することを指摘している。このような観点から磯 6反映過程における「他者に対する誇り」では、心理的距離の影響(個人の自己評価は心 理的に遠い他者よりも近い他者に影響を受ける」)が示されたが、ネガティブな比較過程に おける「妬み」や「嫉妬」の感情では、心理的距離の影響が示されなかった。この結果に 関し、Tesser&Collins(1988)は、心理的距離は、反映過程においてより重要な要因と なる可能性を指摘している。

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崎(1997,2001b)は、小学生を対象に、白己評価維持モデルを用いて遂行の主観的評定 や客観的評定の側面から、個人の自己評価維持傾向と学級適応(学習意欲や学校への関心 θ)高さ、級友との関係の安定や満足感の高さ)との関連について検討している。その結果、 友人との関係において自己評価維持モデルに沿って自己評価維持がなされていることと、 学習意欲(磯崎,1997,2001b)や学校への関心の高さ(磯崎,2001b)、級友との関係の安 定や満足感の高さ(磯崎,2001b)との関連が示されている,  また、Kamide&Daibo(2009)は、自己評価維持と個人の精神的健康との関連を検討 している,彼女らは、人学生を対象に、自己認知に関する質問紙(外山・桜井,2000)の 白己に関する5領域(社会性、調和性、知的能力、身体的望ましさ、誠実さ)それぞれの 領域が、自己にとってどのくらい重要であるかを評定させることで、自己関与高領域と低 領域を分けた.そして、それぞれの領域が自己と友人でどのくらい良くできると思うかに っいて評定させた,また、精神的健康の指標としてGHQ(General Health Questionnaire; Goldberg,1978)の日本語版(中川・大坊.1996)に回答させた,その結果、自己関与度 高領域において、親しい友人よりも自己の方が優れていると評定している回答者は、そう でないものと比べ、精神的健康が高いことが示されたcこの結果から、個人は自己評価維 持モデルで予測されるように、自己評価を維持できる方向に自己の有能さを認識している ことが個人の適応に結びついていることが示唆される.他に、個人の適応と結びっくと考 えられる特性との関連では、自己評価維持傾向の高さと抑うっ傾向の低さとの関連などが 示されている(e.g.,磯崎,1994a),  このように、自己評価維持モデルに沿って自己評価を維持できていることと個人の適応 とに関連があることが示唆されている. 21

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(3)第1節のまとめ  これまで述べてきたように、自己評価維持モデルでは、個人の自己評価を維持、高揚す る過程が示されてきた。個人は、自己評価維持過程による自己評価の低下や上昇に伴って、 感情反応を示し、自己関与度、遂行、心理的距離を行動的、認知的に変化させる試みに従 事することで、白らの自己評価を維持、高揚する.そして、そのように自己評価を維持、 高揚できていることがその個人の適応と関連しているのである.自己評価維持モデルは、 このような個人の自己評価維持機制について説明する有用なモデルである。しかしながら、 磯崎(2001a)で述べられているように、個人は自己評価維持のみを志向するわけではな い,他者との関係は個人の自己評価に多大な影響を及ぼすというモデルの前提から考える と、〔尼評価維持だけでなく、その他者との関係性維持という側面も重要となってくる。 自己評価維持モデルは、あくまで自らの自己評価維持という側面からのみを捉えたモデル であり、それと同時に重要となると考えられる関係性維持という側面にっいては検討され てこなかった,このような観点から、近年では、自己評価維持モデルに他者との関係性維 持という側面も考慮に入れた拡張自己評価維持モデル(Beach&Tesser,1995)が提唱さ れている一第2節では、この拡張自己評価維持モデルにっいて概観する。

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第2節 拡張自己評価維持モデルと先行研究の紹介

(1)拡張自己評価維持モデル(Extended Self’Evaluation Maintenance Model)  拡張自己評価維持モデル(Beach&Tesser,1995)では、コミソトメントの高い関係(個 人がその関係を維持するようにコミットした関係)における個人は、互いの要求を把握し、 共感的に反応するなどの「共有志向」(communal orientation)を示すという知見(Clark, 1g84;Clark, Mills,&Powell,1986)に基づき、自らの自己評価維持だけでなく、親密な 他者の白己評価維持にも敏感であり、その敏感さは、個人の感情反応や、行動に影響を及 ぼすと考えられている.そのため、個人のポジティブな比較過程もしくは、反映過程によ って得られるポジティブな反応は、その個人の結果によって親密な他者がネガティブな比 較過程({,しくは、反映過程によるポジティブな反応を失うこと)により親密な他者の自 己評価が低Fする(自己評価を高めることができない)という認識によって相殺されるで あろうとf’測される.また、個人の優れた遂行(ポジティブな比較)によって、親密な他 者に反映が生じるならば、ポジティブな比較よる個人のポジティブな反応が高められると f’測される一例えば、“夫婦関係において、妻が夫にとって関与度の高い遂行領域で夫より も優れていた場合、関与度の低い遂行領域である場合と比べ、夫はネガティブな比較の生 起によって脅威を感じる,妻は、そのような夫の状態に対して敏感で、配慮するため、夫 にとって関与度が低い遂行領域よりも、高い遂行領域で夫よりも優れていることに対して、 ポジティブな反応を抑えようとする.同様に、妻の自己評価維持に対して敏感である夫は、 妻にとって関与度が低いと認識している遂行領域で、妻よりも優れていることに対して比 較的ポジティブに反応すると考えられる”(Mendolia, Beach,&Tesser,1996, p.281)。  このような観点から、拡張自己評価維持モデルでは、親密な関係にある個人が、ある遂 行領域における自己関与度だけでなく、その遂行領域に対する親密な他者の自己関与度 (other’relevance:「他者関与度」と略記する)も認識していると仮定し、従来の自己評 価維持モデルにおける自己関与度に加え、個人が認識する他者関与度の変数を考慮に入れ て検討を行っている。自己と親密な他者双方の関与度を考慮した場合、図1・3で示される ような4つの領域が想定される。 23

参照

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