第3章 親密な友人関係における自己評価維持と関係性維持:自己 評価維持モデルおよび拡張自己評価維持モデルで予測される感情
第1節 研究1 自己評価維持モデルで予測される感情反応と遂行の主観的 評定からの検討
第3章 親密な友人関係における自己評価維持と関係性維持:自己
自己にとって心理的に近い他者は、遠い他者と比べ、個人の自己評価に対して多大な影響 を及ぼすと仮定されている,自己にとって重要な活動や事柄(高自己関与領域)において、
他者よりも自己の方が優れている場合には、ポジティブな比較過程が生起し、個人の自己 評価がL昇するが、他者の方が優れている場合には、ネガティブな比較過程が生起し、自 己評価が低ドする.また、自己にとって重要ではない活動や事柄(低自己関与領域)にお いて、自己よりも他者の方が優れている場合には、反映過程が生起し、自己評価が上昇す る.個人は、自己評価を維持、高揚するために、これら3つの変数を状況に応じて変化さ せるとr・測される.このようなf’測のもとに自己評価維持モデルは、主に上記の3つの変 数のうち2つを固定して残りの変数への影響を検討した研究(e.g., Pleban&Tesser,
1981;Tesser, Campbell, Smith,1984;Tesser&Paulhus,1983)や、個人の自己評価の上
}1、低トに伴うとされる感情反応の変化や喚起の上昇から検討した研究(e.g., Tesser&
Colhns,1988;Tesser, Miller,&Moore,1988)が行われ、モデルの妥当性が証明されてき
た
・方で、日本人を対象にした研究では、欧米と比べ、自己評価維持モデルのあてはまり か良くないことが指摘されている(e.g.、磯崎・高橋、1993).それらの研究では、 Tesser et aL(1984)を基に、友人選択と学業成績あるいは学業i成績の認知の関連から検討されてい
る一Tesser et a1.(1984)は、小学生を対象に自己にとって重要な教科および重要ではな い教科において、実際の成績(教師σ)評価)と主観的評定(生徒自身の評定)から検討を 行い、実際の成績では、自己にとって重要な教科で友人よりも自己の成績の方が優れてお
り、自己にとって重要ではない教科で自己よりも友人の方が優れているといった自己評価 維持モデルの瀬1」に沿った結果が得られている。また、主観的評定では、実際の成績より
も極端に評定する傾向があり、自己評価を維持できるように目己の評定を歪曲していると いうことが示唆されている.しかしながら、磯崎・高橋(1993)では、小学生と中学生を 対象に時系列的に検討した結果、実際の成績では、Tesser et a1.(1984)と同様に自己評 価維持モデノレに沿った糸占果が得られているものの、主観的評定では、自己にとって重要な 教科において、自己よりも友人をより過大評価することが示されている。このように自己 評価維持を度外視して友人を評価する傾向について、磯崎(1994b)は、日本での友人と の関係性を取視する傾lhJを指摘している.
中学生以降の友人関係を対象とした研究として、桜井(1992)は大学生を対象に高校時 代の友人関係を想起させ、学業成績に対する1三観的評定の側面から検証し、基本的に自己
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評価維持モデルに沿った結果が得られている,この結果に対し、石田・水野(2005)は、
年齢がkがるにつれて自己評価に関連する活動や行動の特徴が多様化することを指摘し、
自己関lj・領域(遂行領域)を学業に限定せずに、高校生を対象に検証を行った結果、男子 では、自己評価維持モデルに沿った結果が得られているが、女子においては高自己関与領 域、低1’|己関ti一領域ともに自己と友人に差がみられないことが示されている.このように、
日本では自己評価維‡与よりも友人との関係性を重視する傾向が示されているものの、発達 段階、性別、自己関li領域の種類によって結果が幾分異なっているc
これらの研究を踏Eえ、本研究の第・の目的は大学生の友人関係を対象に遂行の主観的 評定の側面から自L1評価維持モデルの妥当性を検討することである,大学生を対象とした 研究としてL記の桜井(1992)が挙げられるが、高校時代の友人関係を想起させているた め、本研究ではノ\学生の現在の友人関係に焦点をあてた検討を行う。また自己関与領域(遂 h’領域)は、イ1田・水野(2005)の指摘を考慮し、学業に限定せず、大学生活の中での活 動や事柄を自由記述させる方法を用いて検討を行う,
第:の日的は、}{観的評定の側面に加え、感情反応の側面から検討することである。自 己評価維持過}~ミにおける個人の目己評価のE昇や低下と、行動や知覚の変化との間には、
感情反応の変化や喚起のE昇が媒介するため(Tesser,1988)、自己評価維持過程における 個人の感情反応の変化を測定することによって、自己評価の上昇や低下の事態を捉えるこ
とが「・∫能となると考えられている(e.g..Tesser.1988).具体的には、自己評価が上昇する 場合(ポジティブな比較過程や反映過程)には、ポジティブ感情が生起し、自己評価が低
トする場合(ネガティブな比較過程)には、ネガティブ感情が生起すると考えられる。こ
のような観点から、先行研究(e.g., Tesser&Collins,1988; Tesser, Miller,&Moore,1988)
において、自己評価が上昇すると考えられるポジティブな比較過程や反映過程では相対的 にポジティブ感情が生起し、自己評価が低下すると考えられるネガティブな比較過程では 相対的にネガティブ感情が生起することが示されている。しかしながら、このような自己 評価維持モデルでf測される感情反応にっいて日本人を対象に直接的に検討した研究はほ
とんどみられない{tヒ記のn本人、を対象に主三観的評定の観点から検討した研究において、
目己評価維持モデルのあてはまりが良くないという傾向が指摘されていることから、感情 反応の側面において自己評価維持モデルの予測があてはまるかどうかについて検討の余地 があると考えられる。
以ヒのように、本研究では、大学生の親密な友人関係を対象に、遂行の主観的評定と、
白己評価の低トやヒ}1に伴う感情反応の2つの側面から自己評価維持モデルで予測される 1固人の自己評価維持への志向的な反応が示されるかどうかを検討する.本研究では、自己 評価維持モデルでr・測される感情反応や主観的評定の結果が示されるかどうかを検討する ため、自己評価維持モデノレでr・測される結果を仮説として以「に記述する.
仮説1.}:観的評定の側面において、(la)自己関与度が高い活動や事柄では、友人よ りも自己を優れていると評定するであろうft(1b)自己関与度が低い活動や事柄では、自 己、kりも友人を優れていると評定するであろう.
仮説2。感情反応の狽1順iにおいて、自己評価が低トすると考えられるネガティブな比較 過秒状況と比べ、自己評価がL昇すると考えられるポジティブな比較過程状況および反映 過程状では、相対的にホンティブ感情が高いであろう、
(2)方法 1)胴査対象者
人学’148名(女性28名、男性19名、不明1名)を対象に質問紙による調査を行った.
’1’均年齢は、21.19歳(SD =1.17)であった.
2)実施時期
本調査は、2007年6月下旬に実施した,
3)鯛査手続き
個別自記入形式の質問紙調査で実施した.講義時間の一部を利用し、集合調査形式で実 施したr実施時間は約20分であった,
4)質問紙構成 1.遂行領域の記述
人学生活の中で、良い結果を果たすことが重要だと思う活動や事柄(高自己関与領域)
および、良い結果を果たすことが重要ではないと思う活動や事柄(低自己関与領域)にっ いて、それぞれ1つずっ記述を求めたc例えば、高自己関与領域の場合には、’大学生活の 中であなたにとって良い結果を果たすことが重要だと思う活動や事柄は何ですか?」と教 示した。遂行領域の記述を促進するために、いくつかの例を示した。例は、先行研究(e.g.、
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イilll・水野,2005)を参考に、学業関係(e.g.,英語などの教科の成績や資格の取得)、ス ポーツ関係(e.g.,特定のスポーツでの活躍や運動神経の良さ)、文化的活動(e.g.,音楽活 動や絵画などσ)評価)、対人関係(e.g.,友人の多さ、コミュニケーション能力)、外見に関 すること(e.9.,ファッションセンスの良さ)の5種類を提示した.
2.親密な友人との自己評価維持状況に対する感情反応の評定
「大学の同級生の中で最も親しいと思う同性の友人」(親密な友人)との自己評価維持 モデルで規定される3つの自己評価維持状況、すなわち、ポジティブな比較過程状況(高 自己関与領域において親密な友人よりも遂行が高かった時の状況)、ネガティブな比較過程 状況(高自己関り’領域において親密な友人よりも遂行が低かった時の状況)、反映過程状況
(低自己関与領域において親密な友人よりも遂行が低かった時σ)状況)をそれぞれ想像さ せた そして、それぞれの状況で感じる感情として日本語版PANAS(佐藤・安田,2001)
の16項目(7」くジティブ感情語8項目:r活気σ)ある」、誇らしい」、’強気な」、「気合いの 人った]、 きっはりとした」、’わくわくした」、機敏な」、一熱狂した」;ネガティブ感情 語8項目: びくびくした」、おびえた1、 うろたえた」、心配した」、ぴりぴりした」、
;t’1:悩した]、’恥じた」、rいらだった」)にどのくらいあてはまるかをそれぞれ5段階C1.
全くあてはまらない」~’5.とてもあてはまる」)で評定させた.例えば、ポジティブな 比較過程状況では、㍗上で記述した)あなたが大学生活の中で、良い結果を果たすことが 重要だと思う活動や事柄で、最も親しい友人よりもあなたの方が結果が良かったときに、
あなたが感じる感情として、以下の言葉はどのくらいあてはまると思いますか?」と教示 した一それぞれの状況の提示順序は、調査対象者間でカウンターバランスされたc
3.遂行の主観的評定
一2.親密な友人との自己評価維持状況に対する感情反応の評定」において想起したr親 密な友人」に加え、’大学の中で会話をするくらいの知り合い程度の人」(知人)を1人想 起させた.そして、「1.遂行領域の記述」で記述された高自己関与領域および低自己関与 領域における遂行が、自己、親密な友人、知人でどのくらい良くできると思うかをそれぞ れ7段階(「|、全くできない」~「7.とてもよくできる」)で評定させた。
4.遂行領域の1要度の評定
操作チ;Lック項目として、最後に、高自己関与領域および低自己関与領域が自己、親密 な友人、知人にとって、どのくらい重要であると思うかを7段階Cl.全く重要ではない」
~「7.とても重要」)で評定させた、