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(1)拡張自己評価維持モデル(Extended Self’Evaluation Maintenance Model)

 拡張自己評価維持モデル(Beach&Tesser,1995)では、コミソトメントの高い関係(個 人がその関係を維持するようにコミットした関係)における個人は、互いの要求を把握し、

共感的に反応するなどの「共有志向」(communal orientation)を示すという知見(Clark,

1g84;Clark, Mills,&Powell,1986)に基づき、自らの自己評価維持だけでなく、親密な 他者の白己評価維持にも敏感であり、その敏感さは、個人の感情反応や、行動に影響を及 ぼすと考えられている.そのため、個人のポジティブな比較過程もしくは、反映過程によ って得られるポジティブな反応は、その個人の結果によって親密な他者がネガティブな比 較過程({,しくは、反映過程によるポジティブな反応を失うこと)により親密な他者の自 己評価が低Fする(自己評価を高めることができない)という認識によって相殺されるで あろうとf’測される.また、個人の優れた遂行(ポジティブな比較)によって、親密な他 者に反映が生じるならば、ポジティブな比較よる個人のポジティブな反応が高められると

f’測される一例えば、“夫婦関係において、妻が夫にとって関与度の高い遂行領域で夫より も優れていた場合、関与度の低い遂行領域である場合と比べ、夫はネガティブな比較の生 起によって脅威を感じる,妻は、そのような夫の状態に対して敏感で、配慮するため、夫 にとって関与度が低い遂行領域よりも、高い遂行領域で夫よりも優れていることに対して、

ポジティブな反応を抑えようとする.同様に、妻の自己評価維持に対して敏感である夫は、

妻にとって関与度が低いと認識している遂行領域で、妻よりも優れていることに対して比 較的ポジティブに反応すると考えられる”(Mendolia, Beach,&Tesser,1996, p.281)。

 このような観点から、拡張自己評価維持モデルでは、親密な関係にある個人が、ある遂 行領域における自己関与度だけでなく、その遂行領域に対する親密な他者の自己関与度

(other’relevance:「他者関与度」と略記する)も認識していると仮定し、従来の自己評 価維持モデルにおける自己関与度に加え、個人が認識する他者関与度の変数を考慮に入れ て検討を行っている。自己と親密な他者双方の関与度を考慮した場合、図1・3で示される ような4つの領域が想定される。

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Set of All Pe㎡ormance Dimensions Having VaIue

         A・Highly important to PartnerAbut not Partner B          B・Highly important to PartnerBbut not Partner A          C・H輌ghly important to both Partners

         D・Not important to eighter Partner

図1-3 Venn diagram of four categories ofcouple importance.(Beach&Tesser,1995, p.

150,Figure 1.よりイ乍h文)

 Aの領域は、自己にとって重要であるが、親密な他者にとっては重要ではない遂行領域 である(自己関与度高・他者関与度低領域).Bの領域は、親密な他者にとっては重要であ るが自己にとっては重要ではない遂行領域である(自己関与度低・他者関与度高領域),ま た、Cの領域は自己と親密な他者ともに重要な領域(自己関与度高・他者関与度高領域)、

Dの領域は自己と親密な他者ともに重要ではない遂行領域である(自己関与度低・他者関 与度低領域).このように、拡張自己評価維持モデルでは、4つの領域を想定し、個人の親 密な他者の自己評価維持への共感的な反応を予測しているc

 拡張自己評価維持モデルの予測を直接的に実証した研究の多くは感情反応の側面から 検討されているc実証研究の理解のために、本論文では、まず拡張自己評価維持モデルで

r’測される感情反応にっいて述べ、その後、実証研究の紹介に入る.

(2)拡張自己評価維持モデルで予測される感情反応

 L述したように、拡張自己評価維持モデルでは、親密な一者関係にある個人は、自らの 自己評価維持だけでなく、その相手の自己評価維持にも敏感に反応すると考えられているc そのような敏感さは個人の感情反応に影響を及ぼす.そして、その反応を規定する主要な 変数は、他者関与度であり、それは親密な他者が当該の遂行領域を重要だと思っているか 否か(という個人の認識)である,図1・4で示すように、親密な他者よりも自己の方が優 れている場合(図1・4,Self Better)、その遂行領域の他者関与度が高い場合よりも低い場 合に、個人の相対的なポジティブ感情は高いと考えられる。これは、他者関与度が高い場 合には、親密な他者にネガティブな比較過程が生起し、その他者にとってネガティブな事 態となるが、他者関与度が低い場合には、反映過程が生起する(もしくは、ネガティブな 比較1箇程が生起しない)ために、相対的にポジティブな事態となるという個人の認識を示 す結果である.また、自己よりも親密な他者の方が優れている場合には(図1・4,0ther Better)、その遂行領域の他者関与度が低い場合よりも、高い場合に、自己の相対的なポジ ティブ感情が高いと考えられる,これは、他者関与度が高い場合には、親密な他者にポジ ティブな比較過程が生起しポジティブな事態となるが、他者関与度が低い場合には、ポジ ティブな比較過程が生起せず、相対的にポジティブな事態となり得ないという個人の認識 を示す結果である.

 このように、拡張自己評価維持モデルで予測される感情反応は、図1・4で示されるよう な遂行と他者関与度の交互作用効果のパターンで規定される(e.g., Beach&Tesser,1995)。

以トでは、親密な二者関係において、このような交互作用効果のバターンを示した実証研 究を紹介する.

自己の相対的なポジティブ惑情 15

 ㎏ 一鶴

^ら

Other Better Self Better

e他者関与度高 ロ他者関与度低

遂行

図1・・4拡張自己評価糸佳持モデルで予測される遂行と他者関与度の交互作用効果

(Beach&Tesser,1995の拡張自己評価維持モデルに関する説明を基に著者が作成)

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(3)拡張自己評価維持モデルに関する先行研究

 Mendolia, Beach,&Tesser(1996)は、夫婦を対象に、電話調査によって拡張自己評 価維持モデルでf’測される感情反応を検証した。Mendolia et al.(1996)は、調査対象者 に拡張自己評価糸駐与モデルで仮定される8つの状況について想起するように教示した。そ の状況とは、ヒ記した図1・3において示されている4つの領域に該当する活動において、

親密な他者よりも自己の方が優れている場合(Self Better)と自己よりも親密な他者の方 が優れている場合(Other Better)のそれぞれを組み合わせた8つの状況である(自己関

り度(高vs.低)×他者関与度(高vs.低)×遂行(SelfBetter vs. Other Better))。調査対象者に 対して、これら8つの状況を想起した際に、ポジティブ感情(e.g., active, ela ted,

enth usiastic)とネガティブ感情(e.g., distressθd, nθrvous, hostilθ)をそれぞれ感じた程

度を示すkうに教示した.そこで得られたポジティブ感情の合計得点からネガティブ感情 の合言}得点を差し引いたものを相対的なポジティブ感情とし、2 (自己関与度:高vs低)

×2(他者関1ナ度:高vs.低)×2(遂行:Self Better vs. Other Better)の3要因の分散 分析を行った一その結果、従来の自己評価維持モデルで予測されるように、自己関与度と 遂hの交1L作用効果がみられた一すなわち、調査対象者は、ある遂行領域において親密な 他者よりも自己の遂行が高かった場合、その領域の自己関与度が低い場合よりも高い場合

により相対的なポジティブ感情が高いと報告し、逆に、自己よりも親密な他者の遂行が高 かった場合には、その遂行領域の自己関与度が高い場合よりも低い場合により相対的なポ ジティブ感情が高いと報告した。この結果は、ある遂行領域において親密な他者よりも自 己の遂行が高く、その遂行領域の自己関与度が高い場合には、ポジティブな比較過程が生 起し、自己評価が上昇するために、相対的に(その遂行領域の自己関与度が低い場合と比 べ)ポジティブ感情が高くなったと考えられる。また、親密な他者の遂行が高い場合には、

その遂行領域の自己関与度が低い場合に、反映過程が生起(もしくは、ネガティブな比較 過程の回避)し、相対的に(自己関与度が高い場合よりも)ポジティブ感情が高くなった と考えられるのであるcさらに、他者関与度と遂行の交互作用効果もみられた.調査対象 者は、ある遂行領域において親密な他者よりも自己の遂行が高かった場合、その遂行領域 の他者関与度が高い場合よりも低い場合に、より相対的なポジティブ感情が高いと報告し、

逆に、親密な他者の遂行が高かった場合、その領域の他者関与度が低い場合よりも高い場 合に、より相対的なポジティブ感情が高いと報告したのである.これは、拡張自己評価維 持モデルのr・測を支持する結果である。すなわち、調査対象者(自己)は、親密な他者よ