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研究2 拡張自己評価維持モデルで予測される感情反応の検肘

第3章  親密な友人関係における自己評価維持と関係性維持:自己 評価維持モデルおよび拡張自己評価維持モデルで予測される感情

第2節  研究2 拡張自己評価維持モデルで予測される感情反応の検肘

(1)問題と目的

 研究2の目的は、親密な友人関係において拡張自己評価維持モデルで予測される感情反 応がみられるかを確認することであり、Beach et aL(1998)の手続きに基づいて検証を 行う.kた、親密な友人と比べ、相対的に親密度が低い他者に対しては、共感的な反応が

.」、され難いと考えられる.そこで本研究では、親密な友人関係の結果と比べるため、知人 との関係についても検討をそjうr本研究では、Beach et a1.(1998)に基づいて、他者と の街J比較状況を想起させる方法を用いるため、比較他者はある程度相互作用のある人物 である必要がある そのため、本研究では「あまり親しくはないが会話をする程度の同性 の同級生」を知人として設定する.さらに、これまで日本人を対象に拡張自己評価維持モ デルでf’測される感情反応を直接的に検証した研究は行われていないため、恋愛関係にっ いても検,ilEをIJい、 Beachθt aL(1998)と同様の結果が示されるかを確認する。拡張自 己評価維持モデルで力則される感情反応は、遂行と他者関与度の交互作用効果のパターン によって示される.具体的には、(a)親密な他者よりも自己の遂行が高いこと(SelfBetter)

に対する自己の相対的なポジティブ感情は、その遂行領域の他者関与度が高い場合よりも 低い場合に高くなる(親密な他者にネガティブな比較過程が生起するという認識vs.親密 な他者に反映過程が生起するという認識), (b)親密な他者よりも自己の遂行が低いこ と(Other Better)に対する自己の相対的なポジティブ感情は、その遂行領域の他者関与 度が低い場合よりも高い場合に高くなる(親密な他者にポジティブな比較過程が生起しな いという認識vs.親密な他者にボジティブな比較過程が生起するという認識),以上のよ うに、本研究では、大学生の親密な友人関係において拡張自己評価維持モデノレで予測され る感情反応が示されるかどうかを検討する.

(2)方法 1)鯛査対象者

 都内大学生254名を対象に質問紙調査を行った.そのうち、記入漏れや記入ミスのあっ たll11答を除き、有効回答者232名(男性86名、女性146名c平均年齢20.24歳、 SD =1.42)

を分析対象とした。

2)実施時期

本調査は、2006年10月卜旬に実施した.

3)鯛査手続き

 個別白記人形式の質問紙調査で実施した。講義時間の一部を利用し、集合調査形式で実 施した,実施時間は約20分であった.

4)質問紙構成  1.対象人物の選定

 現在付き合っている恋人がいるか否かについて尋ねた。「現在、恋人がいる」と回答し た調査対象者には、その恋人のイニシャルを記入するように求め、以降の質問には、その 恋人にっいて回答するように教示した.’現在、恋人はいない.」と回答した調査対象者に は、最も親しいと思う同性の友人」(親密な友人)、もしくは、一あまり親しくはないが、

会話はするくらいの知り合い程度だと思う同性の同級生」(知人)を1人挙げ、その人物の イニシャ・レを記入するように求めた一同様に、以降の質問にはその対象人物について回答 するように教示した一親密な友人と知人のどちらに回答するかは、調査対象者間でランダ

ムに割り当てた.この質問項目により、恋人、親密な友人、知人のいずれかを対象人物す るように振り分けられた,

 2.対象人物との付き合っている期間

 対象人物といっ頃からの付き合いであるかについて回答を求めた.恋人では、その期間 を具体的に数値(年月)で記入を求めた,親密な友人では、一大学から」、一高校から」、一中 学から」、「小学校以前から」のいずれかに回答を求めたc知人には、この質問項目を設けな

かったtt

 3.関係満足度の測定

 対象人物との関係にどのくらい満足しているかにっいて回答を求めたe恋人では、「1、

全く満足していない」から「7.とても満足している」までの7段階で回答を求めたc親密な 友人、知人では、加藤(2001)の友人関係満足感尺度(6項目、4件法)を、それぞれの 対象人物との関係にあてはまるように項目を一一一部変更し、-1.あてはまらない」から「4.

よくあてはまる」までの4段階で回答を求めた。

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 4.自己評価維持状況での感情評定

 対象人物との拡張自己評価維持モデルで想定される8つの自己評価維持状況(自己関与 度(高or低)×他者関与度(高or低)×遂行(SelfBetter or Other Better))のうち、他者関与 度を被験者間要因とした4つの状況を過去の経験から想起するように求めたc例えば、自

己関与一度高、他者関与度低、遂行Self Better状況では、「あなたにとって良い結果を果た すことが重要であるが、あなたの恋人(or親密な友人or知人)にとっては重要ではない 活動や事柄で、あなたの方が結果が良かった時のことを思い出してくださいc」と教示した.

次に、それぞれの状況において想起した活動や事柄がどのようなものであるかについて、

「学業に関すること」、一スポーツに関すること」、’文化的活動に関すること」、「対人関係に 関すること」、[外見に関すること」、’その他」のいずれかに回答を求めた,これは、予備調 査において得られた自由記述を用いてカテゴリー分けを行った項目を使用した7.最後に、

それぞれの自己評価維持状況を思い出した際に、rポジティブな感情」と’ネガティブな感 情」をそれぞれとのくらい感じたかを、r1.全く感じなかった」から’10.非常に感じた」

}{での10段階で回答を求めた.

(3)結果

1)対象人物ごとの有効回答者数の内訳

 全有効回答者数232名のうち、対象人物の内訳は、恋人98名(男性26名、女性72名)、

親密な友人81名(男性39名、女性42名)、知人53名(男性21名、女性32名)であっ

た一

7大学生109名(女性69名、男性40名,:平均年齢19.55歳、SI)=1.10)を対象に、自己 関与度と他者関与度で定義される4種類の活動や事柄について自由記述を行った.この自 lh記述から得られた内容を用いて分類が行われた、分類は、研究1やBeach et aL(1998)

で分類された項目を参考にし、社会心理学を専攻する大学院生2名が行った。分類の一致 率は88.50/oであった.分類が一致しなかった回答にっいては、上記2名の話し合いにより 決定した,分類の結果、各項目の構成は「学業」(32.5%)、一スポーツ」(21.1%)、「文化 的活動」(15.8%)、「対人関係」(8.1%)、「外見」(8.1%)、rその他」(13.4%)であった。

2)対象人物との関係満足度

 親密な友人と知人が適切に認識されていたことを確認するために、友人関係満足感尺度

(IJII藤,2001)をそれぞれの比較他者との関係にあてはまるように修」Eした6項目の合計 得点を算出し(α=.95)、t検定をそJった.その結果、有意差が示され、親密な友人(M=18.81,

SD=4.6 1)のノ∫が、知人(M=11.75,,SID =3.71)よりも有意に得点が高かった(t(132)=9.34,

ρ 〈.OOI, d =1.69),このことから、親密な友人と知人が適切に認識されていたと解釈され た、恋人に対する関係満足度の’IL均値は、5.64(SI)ニ1.13)であり、理論的中間値(4)

との1サンプルのt検定を行った結果、有意に理論的中間値よりも高いことが示された(t

(97)=14.38,p<.OO 1,dニ2.05).このことから、恋人に対する関係満足度は、十分に高いこ とか小唆された

3)対象人物との付き合い期間

 恋ノ、と付き合/)ている期間の’F均は14.46ヶ月(SD=15.00)であり、範囲は、最大で 79ヶ月間、最小で1ヶ月であった一親密な友人では、r高校から」の付き合いが、25名(30.

9‘Y。)で最も多く、’大学から」が23名(28.4°/6)、一小学校以前から」が17名(21.0%)、’中 学から」が16名(19.8%)の順であった,

4)想起した自己評価維持状況における活動のカテゴリー

 想起した自己評価維持状況は、全体で’学業に関すること」(36%)が最も多く、次にrス ポーツに関すること」(17.9%)、’その他」(14.3%)、’対人関係に関すること」(13.8%)、

「文化的活動に関すること」(11.2%)、r外見に関すること」(5.8%)の順であった。

5)自己評価維持状況における感情反応

 Beach etaノ.(1998)の手続きに基づいて、それぞれの自己評価維持状況から得られた ポジティブ感情得点からネガティブ感情得点を差し引いた得点を相対的なポジティブ感情 としたrそれぞれの’P均値と標準偏差を表3・2に示す。対象人物ごとに、相対的なポジテ ィブ感情を従属変数とした自己関与度(高vs.低)×他者関与度(高vs.低)×遂行(Self Better vs. Other Better)の3要因混合計画の分散分析を行った(他者関与度のみ被験者 間要因)。以卜、結果は対象人物ごとに記述するc

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      表3-2

対象人物ごとの各条件における相対的ポジティブ感情得点の平均値と標準偏差

自己関与度:高 自己関与度1低

Other Better Self Better Other Better Self Better

他者関与度 M〔SD? M(SD) M(SD) M(SD)

高低

     1恋人(N=98・女性=72,男性;26)1

・0.74(4.02)      2.07(3.86)       1.45(4.90)

-0.73(4.03)      1.70(4.27)      O.57(396)

0.24(4.07)

1.77(3.47)

高低

    1親密な友人(N=81i女性=42,男性=39)1

-1。17(4.08)      2.06(3.07)       1.69(3.23)

-1.22(3.91)      2.95(3.24)      -0.04(2.90)

一〇.11(3.23)

2.67(2.39)

高低

     1知人(・N「=53・女性=32,男性=21)】

0.00(3.65)       2.33(3.28)       0.93(3.66)

-2.54(2.79)      3.27(2.72)       -O.31(3.43)

0.70(3.43)

1.65(2.91)

 1.恋人に対する反応

 遂行の}:効果(F(1,96)=8.42,ρ<.001.partial n2ニ.08)、自己関与度×遂行の交互作用 効果(F(1,96)=18.47、 p 〈.OOI、 partial n2ニ.16)、自己関与度×他者関与度×遂行の2次

交互作用効果(F(1,96)=5.22,p<.05, partial n2=.05)が有意であった。2次交互作用効 果にっいて、拡張自己評価維持モデルで予測される感情反応のパターンを確認するために、

自己関与度別に単純交互作用効果を分析した.その結果、自己関与度高領域における遂行 の主効果(F(1,96)=23.67,p<OO1, partial n2=.20)、自己関与度低領域における他者関 与度×遂行の交互作用効果(F(1,96)=4.87,p<.05, partial I12=.05)が有意であった.自 己関与度高領域における遂行の主効果は、Other Better(.M=-0.73)よりもSelf Better

(MニL89)で相対的なポジティブ感情が高いことを示しているeこれは、従来の自己評 価維持モデルでf’測されるネガティブ、ポジティブな比較過程に対する相対的な感情反応

のハターンである,自己関与度低領域における他者関与度×遂行の交互作用効果は、Self Betterの場合、その遂行領域の他者関与度が高い場合(M=0.24)よりも低い場合(M=1.77)

に相対的なポジティブ感情が高く、Other Betterの場合には、他者関与度が低い場合(M

=O.57)よりも高い場合(Mニ1.45)に相対的なポジティブ感情が高いことを示している。

これは、拡張自己評価維持モデルでf’測されるバターンである。この単純交互作用効果に 対し、単純・単純}1効果検定を行ったところ、SelfBetterにおける他者関与度の主効果の

傾向差が認められた(F(1,384)=3.37,Pニ.07. partia1112=.01)(図3・3)。