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第6章  総合考察

第1節  本研究のまとめ

 本研究では、親密な友人関係における自己評価維持と関係性維持について拡張自己評価 維持モテルの観点から検討を行った,拡張自己評価維持モデルは、従来の自己評価維持モ デルを親密な他者との関係に適用し、他者関与度の変数を考慮することで、個人が親密な 他者との遂行比較状況において、自らの自己評価維持だけでなく、親密な他者の自己評価 維持にも共感的に反応すること、すなわち、関係性維持を志向した反応を示し、また、そ のように反応する二者関係はうまく機能していることが示されてきた。このように、拡張 自己評価維持モデルは、従来の自己評価維持モデルでは捉えきれなかった親密な二者関係 における自己評価維持の問題、さらには対人関係の親密さの諸問題に有用な示唆を与えて きたといえる。しかしながら、拡張自己評価維持モデルでは、親密な他者として夫婦関係 や恋愛関係を中心に検討がなされ、親密な友人関係においては検討されてこなかった。ま た、拡張自己評価維持モデルに関する実証研究では、個人の自己評価維持や関係性維持を 示す感情反応として、ポジティブ感情の程度からネガティブ感情の程度を差し引いた指標

(相対的ポジティブ感情)を用いて、他者関与度と遂行の交互作用効果のパターンからの み検討されてきた。そのため、拡張自己評価維持モデルで規定される個々の状況において

自己評価維持や関係性維持を志向した反応が必ずしも明確にはなっていないということが 考えられる.

 以Lのような観点から、本研究では、親密な友人関係における自己評価維持と関係性維 持にっいて、拡張自己評価維持モデルの観点から検討を行ったc以下では、第3章から第

5章で行われた実証研究で得られた結果について章ごとにまとめを行う。

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(1)第3章の概要

 第3章では、大学生の親密な友人関係を対象として、自己評価維持モデルおよび拡張自 己評価維持モデルでf’測される感情反応について検討した.研究1では、拡張自己評価維 持モデルでr・測される感情反応の検討に先立ち、自己評価維持モデルで予測される感情反 応と}観的評定の2っの側面から検討を行った,その結果、主観的評定の側面では、日本 での先行研究と類似して、自己評価維持モデルの予測に反し、自己関与度高領域において

自己と親密な友人の評定値に差がみられず、友人に対して肯定的に評価することが示唆さ れた, 方で、感情反応の側面では、自己評価維持モデルの予測通り、自己評価の低下や

L冒に伴う感情反応の変化が示された.

 研究2では、親密な友人関係において拡張自己評価維持モデルで予測される感情反応が みられるかを検討した.その結果、親密な友人関係において自己関与度低領域のみ拡張自 己評価維持モデルでf’測される親密な他者への共感的な反応が示された,この結果から、

個人の自己評価に脅威を及ぼす可能性がある自己関与度高領域では、個人の自己評価維持 と親密な友人の目己評価維持への共感的な反応との葛藤が生じているという可能性が示唆 された しかしながら、これらの研究は、先行研究に沿って、相対的なポジティブ感情を 用いた交互作用効果のパターンからの検討であるため、これらの結果が具体的にどのよう な反応によるものなのかについては、モデルで規定されるそれぞれの状況についてより具 体的に検討する必要性を述べた,

(2)第4章の概要

 第4章では、拡張自己評価維持モデルで予測される感情反応にっいて、より具体的な検 討をfrうため、 Exline&Lobe1(2001)のSTTUCフレームワークに基づいて、自己関与 度高領域において他者よりも優れている状況に限定し、他者関与度の認識が個人の感情反 応に及ぼす影響について検討したr研究3では、過去の実際の状況を想起させる方法によ

って、親密さの要因から検討を行った。その結果、他者関与度高領域、低領域ともに、他 者がネガティブであると推測するほど、自己のネガティブ感情が高く、他者がポジティブ であると推測するほど、自己のポジティブ感情が高かった。他者の感情推測を統制した場 合、他者との親密度が自己の感情反応に及ぼす影響は、他者関与度によって異なることが 示めされた.他者関与度高領域では、他者との親密度の高さが、自己のポジティブ感情の 低さ、自己のネガティブ感情の高さを予測した。その具体的な感情内容について検討した

結果、自己のポジティブ感情においては、他者と親密であるほど、「相手を傷つけてはいな いかと不安に感じた」、「相T・に申し訳なく感じた」が高いことが示され、これらは親密な 他者にネガティブな比較過程が生起することで、その他者にとってもネガティブな事態で あるという個人の認識による共感的なネガティブ感情(「共感的ネガティブ感情」)である

ことが示唆された,,また、白己のポジティブ感情においては、他者と親密であるほど、「相 fよりも優れていることについて心地よさを感じた」、「自分が優れていたことにっいて喜 びを感じた]が低いことが示され、これらは、自己にポジティブな比較過程が生起するこ

とに対するポジティブ感情、すなわち、自己評価維持を志向したポジティブ感情(「高揚的 ポジティブ感情」)であることが示唆された,

 ・方で、他者関与度低領域では、他者との親密度の高さが、自己のポジティブ感情の高 さをf’測したeその具体的な感情内容について検討した結果、他者と親密であるほど、相 千から賞賛されることを嬉しく感じた」、’相手から尊敬されることを嬉しく感じた」が高 いことが示され、これらは親密な他者に反映過程が生起することで、その他者にとっても ポジティブであるという個人の認識によるポジティブ感情(「賞賛的ポジティブ感情」)で あることが示唆された.

 この結果は、拡張自己評価維持モデルで予測される感情反応と一致する結果であり、親 密な他者に対する自己の感情反応の具体的な内容として、’共感的なネガティブ感情」、r高 揚的ポジティブ感情」、「賞賛的ポジティブ感情」の3つの側面が示唆された.

 研究4では、これらの3つの側面の感情反応について、親密な友人、知人、好ましくな い他者との比較を行った,その結果、親密な友人に対しては、全ての感情反応において拡 張自己評価維持モデルの観点と一致した他者関与度の効果が示された。すなわち、「共感的 ネガティブ感情」は、特に他者関与度が高い場合に、「賞賛的ポジティブ感情」は他者関与 度が低い場合に、知人や好ましくない他者と比べ、親密な友人で最も高く、「高揚的ポジテ ィブ感情」は、他者関与度が高い場合に、知人や好ましくない他者と比べ、親密な友人で 最も低いことが示された、

 「共感的ネガティブ感情」に関して、幾分、検討の余地が残されたものの、過去の実際 の状況の想起(研究3)と、シナリオ法(研究4)で一貫して拡張自己評価維持モデルの 観点から解釈し得る結果が得られたことにより、本章の研究の結果の妥当性が示されたと いえる。また、本章では、拡張自己評価維持モデルで予測される感情反応にっいて、親密 な友人関係を対象にその具体的な内容から検討を行い、親密な友人関係における自己評価

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維持と関係性維持について有用な知見を示した,本章の研究の問題点として、社会的望ま しさ反応の影響について述べられた.

(3)第5章の概要

 第5章では、親密な他者との関係において、h二いの自己評価を維持するように反応でき ていることが個人の適応に結びつくという観点から、第4章で検討された他者よりも優れ ていることに対する感情反応を用いて、個人の精神的健康(主観的幸福感)との関連を検 討した.また、親密な友人に対する感情反応と社会的望ましさ反応との関連についても検 討をIJった,その結果、社会的望ましさ反応は、親密な友人よりも優れていることに対す

る自己の感情反応および他者の感情推測との関連は示されなかった,個人の精神的健康(主 観的i「福感)は、他者関与度低領域における他者のポジティブ感情推測、賞賛的ポジティ ブ感情と正の相関関係があることが示された.この結果から、拡張自己評価維持モデルの 観点から、自他双方にとってポジティブな事態をより認識し、そのように反応すること、

Eた、そのkうな関係性を構築していることが個人の適応と関連していることが示唆され