奈良教育大学学術リポジトリNEAR
文法規則の組織化と学習(VII) ― サイクル構 造の連作 ―
著者 高橋 孝二
雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要
巻 21
ページ 1‑12
発行年 1985‑03‑23
その他のタイトル On Grammar Learnability (VII) : Repeated Chain‑composition of Cyclic structures.
URL http://hdl.handle.net/10105/6594
文法規則の組織化と学習(V皿).
一サイクル構造の連作一
高 橋 孝 二 舳
(英語学教室)
は し が き
学習者が文法規則を自ら組織化し、これらを原理的に習得して行くプロセスを背景において支 える文法特質(prOper6ieS)が、生物学的機構によって自明(6rivial)に与えられると言うとき、
現実に学習者が接する言語資料(一般には教材)の複雑度に応じた特有の訓練(S碑CiiiC6mi卜 i㎎)の教育的意義を忘れてはならない。言語能力の発達が発生論的に決定づけられたプログラ ムの成長開陳であると把える姿勢には、「教育言語学」の方法上の重要性を否定し去る一切の独 断も含まれてはならないのである。学習者に固有の演輝構造(dod㏄Hve s6m舳re)があまねく 豊かであるという立論の前提に立って、発達の具体的路線のいかなる取捨(opユi㎝s)に教師が
コミットするかの教育目標に応じて、文法構造の抽象的研究(abstrac6studies)の位相が定ま 1)
ることになる。
本論考(w)は、複雑構造の習得理解がどのような制約原理群の相互作用によって得られるか を、句構造のr変異型」を役立たせる方向から究明しようとする試みである。
1 類型としての構造依存(dependθnc工es)
文の述部(VP−predica6e)内での動詞とその補足語句(complem㎝ts)との関係は、動詞に 特有な性質によらて補足語句の数と範ちゅう型が決定される依存関係である。N.チョムスキーに
よって明確にされたこの素性の枠組み(feat皿e fram㎜ork for categories)は、1965年以来 の文法理論における工作法(mod皿1es)の変遷に応じて、下位範ちゅう化(s皿bcategorizati㎝)
の理論から主題関係(6hema6ic relati㎝s)の理論へ、更にはピサ講義(1979)以降の投影原 理(Projection Principle)へと組み入れられて来ているが、その文法学習に持つ理論的価値は 不変である。具体例を示せば、統語操作的にも意味解釈的にも、英語学習者に構文の主要部位
(head)に関する次の理解が欠如している場合には、学習は停止する。(これを方法的に排除す ることはできない。)
(1)文中に動詞<pe閑凹aホ>が採用されたとき、
①動詞句の展開はVP→PersmdeNP百によって与えられ、目的語
・0n Gra㎜a川ambiliけ(W):Repeated Ch劃in−com岬iti㎝of Cyc1ic stm舳es.
納 Koi i Takahashi (Departmen6of Engユish Lim卯i sHcs,Nara Universi−y of Ed皿。at ion)
NPと節補語(c1舳sa1㏄mplem㎝土)とには一定の主題役割(θ一role)
が標示されること。(尚、補文の主語は義務的にPR0となる(後出)。)
②文法機能を担う文中の位置(GFpositi㎝s)がこの主題役割を付与 される文法項(argum㎝tS)に合致し、この位置に語彙がまず第一に挿 入されること。
③文の主語位置(NP−s凹bj㏄t)のθ標示はVP−pred1ca eの組立て終 了後に成立するものであること。2〕
④変形適用後に認められる連鎖(Cbai・S)にも主題役割が付与されるこ と。
依存関係11)は、構造の基底生成形式のスプラウトを規定するものであり、伝統的な文型指導は この関係規定に組み込まれる。次に、要素間に自然に発生する前方照応的に決定される指示(ref−
er㎝㏄)上の依存関係が、ピサ理論のもう一つの柱である接合(Binding)の理論化に貢献する。
今、具体例(2〕があるとき、
(2) jo hates herse1f.
herse1fのreier㎝㏄はJoのそれに依存していて、二つのNPが同前要素(clause ma−e)にな るという資質を特有の構造領域内(gOVemi㎎Ca6昭Ory)で与えられている。(1〕の成分配置図的 に決定される(c㎝Hgmti㎝al)依存関係と、(2)の前方照応的に定まる(anaphoric)接合依存 関係とは、より一般的な統語依存関係(Sy.EaC O dep・。d㎝・ieS)の具現例であり、成分間の依 存形式が個々の具体的構文から独立した(co.stmc6i㎝一i.dep㎝d㎝t)中核文法特質として統一 的に得られていなけれぱならない。言語習得(language aCquiSi【i㎝)のモデル化は、本質的に 論考に値する文法構造の内面に直接に迫るべきものであって、類型(types)としての構造依存 は、Kos6er(1984)と共に、次の radical au6㎝o町 理論に位置づけられる。3〕
13)依存要素βと先行詞αとに関与する文法依存形式が成り立つとき、
①αとβとは義務的に連結(1i・k)される。
②各βには伍がただ一つだ付定まる。
③αはβを構成素統率(C一。。㎜・。d)している。
④αとβとは相同(h・m・1・g・鵬)領域の範囲内に分布する。
構造の変容と解釈が、依存関係を(3)の方向で落着させるように作動する事実が明らかとなれば、
境界づけ条件(Bo凹nding C㎝出ion)と接合理論(binding theory)との相互作用から、一見し て優良ではない学習者の言語能力が、どのように改善されて行くかの実相が見えて来るにちがい
ない。
2.句構造の二重性(bi脾rtition)
前節(3)の構造条件が連動してr構造の連作」に機能するとき、多重(mu1tipl・)範ちゅう化と
は異なる句構造標識の性質を決定する必要がある。従来の構造の並び替わワ(舵S6mCt皿ri㎎)に
は、「変形」による説明様式が採用されていたが、Man.i.i(1984)は、このプロセスの性質規
定と文法組織上の位置づけに新しい視点を導入している。ここでは広義の並び替わワ現象が、次 の二種の文法過程にまず区分される。
(4)①再構成(res6ru舳ri㎎)
句構造標識(p㎞ase markers)が枝分かれ構造として表示できない 場合。
②再分析(reanalySiS)
文領域を異にする主要部(head)としての二個の述語動詞が同一化 の指標を与えられる(CoSupe閑Cri㎎)関係に立つ場合。
次に、句構造標識の樹枝構造が適正分析によって決定できる、先行し(pr㏄ede)支配する(dom−
ina6e)関係が得られる単層記号例(m㎝os6rings)の集合を標準(mrma1)句構造標識とし、
それ以外を再構成される句構造標識として区別する。ここで教育言語学的に重要なのは、(4①)
の旬標識がそれに対応する標準形式を通して再生されるという文法的事実である。
(5)今Pが旬標識であるとき、P がPの壌準句標識であるようなP が存在する。
これは学習者に期待される具体内繕造の出現順序(o他r of ap脾mn㏄)に関して、旬標識P,
P の学習順序に決定的手順は存在しないことを主張するものと思われる。(尚、具体的実践例と して本シリーズ(lV)r拡大コントロール文脈」(1981)を参照されたい。)更に、(5〕が無制限に 発動することを抑えるために、標準句構造標識にD,S両構造レベルを与え、変形M㎝e一αが一 般制約に従って表層での連鎖を形成するに至るという原理論が生かされることになる。
(4②)の再分析は、格相関(Case sequence)という概念化から得られ、Manziniは次のよう に定義づけを試みる。
(6)要素の連続α1、。・・、α・があるとき・格関係がαiとαi+1に及び・この 連続の外領域に伽とγないしrとα1との間に格関係が及ぶようなrが存 存しないこと。
ここでは格付与(Case assig口m㎝t)を行う格付与成分(C㈹assi帥er)と、再分析を行う再分 析因子(reanaly2er)との作動する構造領域(domins)が二分することになる。例えば・英語 の<make>が格付与成分として機能する使役構文(蜆ns州ve oonstmcti㎝s)では、再分析因子 として機能するフランス語の<faire>構文とその文法上のふるまいが異なる。
(7) a. I rnade脆ry wr16e a le・:ter.
b. ‡I ma化wri6e Mary a1eけer.
c.J alfa1.㏄rlre㎜1州reaMane.
(7a)の<m批e〉はMaWに格を付与し、<write>はa1舳erに格を付与していて、それぞれ 格相関が一つずつ成立している。(7c)の再分析された<f出㏄rire>はun1舳記 に格を付 与し、並び替わった前置詞句の中でMarioは<6〉によって格を付与されることになる。
Mao{iは言及していないが、英語の<make>も補文がsma11 c1舳sesの場合に再分析を引き起こ
すことが予測され、事実 oo岬1眺verbs の一種として重名詞旬推移(Heavy NP Sh帆)に
実現する。
(8)a.・・一n e o〔make挑pHciリaHIf㏄1…
b.… 山e facH㎞〜S we〔regard as nat㎜ral〕… (0教室)
この他にもく㎜ake of(So㎜e1hi㎎)〉 のようなイディオム規則によって作られる表現形式や、
前置詞の取り残し(S士raoding)を許す移動規則に並び替わりが多く貝。出される。
格相関規定16〕の原理はr隣接(Adjac㎝cy)」であワ、これが語順決定に関与するが、サイクル 構造の組換えには有限下接条件(Subja㏄ncy)が作動する。今、Move一αが次のような成分図を 表層で連作するとき、
制 処〔s...〔言〔c虫〕〔s...〔;〔c吐〕〔s...吐… (ここでC二COMP)
αiはCOMP−o−COMPの通常軌道(C㏄㎝けic pa血s)を経由しているwh一移動の具体的条件 を満足させており、ζ消去によって(αi… ei)の連鎖が各文領域の主語位置を軌道として経由 しているならば、NP−to−NPの通常NP一移動の具現例となって問題はない。(通常連作の例)
但①・・lw㎝d・・〔堕i〕iH・・1・〔皇i〕1・b・w舳㎝t・・ジ…?
b、 〔旦曳堕i〕wasヒ1ieved〔£i〕to have si mply been bumod〔£i〕away.
(K教室)
一方、今日的問題となっている複雑形容詞句(Complex Adj㏄ti田1s)の連作には空の演算子 として機能するCOMPが複数の連鎖の組をドッキ1/グしていることが判明して来ている。 Joh.
iseasy to pleaSe タイプの構文にはこのempty opera6orが存在していて、次の通常軌道とは 異質な移動回路の利用を可能にしている。 〕
ω 補文目的語θ一位置→COMP→母体文主語θ一位置 〔。4…〔す〔。εi〕〔。…性ポ・・〕
このような内心的に「ゆれる」連鎖形成(筆者は Abducted Endocentric Linki㎎ と呼ぶ)に は、上述(4)からパラメータ化される文法過程としてのレベルの二重性が認められる。即ち、従来 の有限下接条件とピサの接合理論(Bindi㎎Theory)とには相補性(c㎝pl㎝㎝tarity)があ り、文法原理群の組み合わせによる構造の連作にはドメイン・レベル両方の再構成が必要となる。
Taralds㎝(1984)も独立してこの方向を示唆しておワ、言語構造の学習理論がこのような相補 性決定の抽象レベルに位置づげられるべきものであることを示しているのである。
3.変異形(mu仇枇s)の変革
これまで検討を加えて来たのは条件の理論(此eory of㏄nditi㎝s)であったが、構造教育が 授業学として方法的に確立されるためには、条件の作用域(scope)が究められなければならな
い。
組織としての構造が形態発生するとき、そのいかなる部位においても句構造(phraSe Stru卜 6ure)という一定の大きさの単位として生み出され、異質な句構造がまず連続して並置する
(Pamtaxis)。次に、並置された句構造の一部位がある文法的刺激(impu1se)によって一定の
方向に移動し安定する(migmtOry hypOt挑iS)。構造関係のこのような最終決定には素性形態論
上の要因(1)、(3)、(6)が作用するが、旬構造の根元は次の発端構造によって与えられる。
鯛 Cortex→(COMP〔±N〕〔±V〕) (ここでのCOMP=CONFL)
範ちゅうと補語構造を内包する⑫が分化し、他の独立して生成される句構造との置換(subs舳u一 士ion)によって発達する領域が条件の作用域に合致する。この成長過程としての句構造投影
(巾a鉛1pmj鮒i㎝)が最大(m弧ima1)になるとき、本論考でのr連作」が実現するが、連 作操作(COmpu趾ion)が不能な負の相関関係にある構文をはじめに吟味しよう。
03 a. ‡Boris promi記d fai tMu1to6he parけ。
b. .Boris pers皿aded I van fai t肘111 to the pa r6y.
<promise>、<persuade>は補文主語にPR0を要求するコントロール文脈内に生起し、PR0 はこれらの述語動詞によって統率支配されない(㎜govemed)。この名詞句が不透明領域(o脾q㏄
do㎜ios)内で自由であリ得る構造に対して・<believe>、<consider>グループのとる補文 ではSが消去され、補文主語が統率され格標識される。従って補文主語がPROではあワ得ず、ト
レニスか前方照応の代名詞だけがこの位置に生起することになる。(Chomsky(1981)107)
(地 (1) ■Jdm considers〔PR01oolish〕
Oi) Jo㎞isoonside・ed〔6fooHsh〕 (tはJohnのトレース)
仰)山・y・㎝・id・・〔…h・lh・一・・li・h〕
ωの埋め込まれた節構造内にはINFLと。op㎜laが欠如していて、この意味では伝統的なr未成 節」ないし Nax皿s に等しいsma11cla阯seであワ、この補文は先述の最大投影(maximal
proj㏄tio・・)となる資質を欠いている。この補文を切ワ取ってコントロール文脈に埋め替えし たのが1ユ3の非文である。この非文法性の説明には主題基準(θ一。riterion)が有効である。5〕
㈹ 各文法項(}(2))はただ一つだけの主題役割を担い、各主題役割はただ 一つだけの文法項に付与されること。
この基準は一見だけでは同語反復のように思われるが、実は前節(4)の句構造の二重性に言及した 説明様式なのである。Schein(1981)は、この路線から仁3の文法項(Boris Ivan)がそれぞれ二 つの主題役割を付与される(15の違反であるとするが、これは正しい指摘である。
r.■θ1
03 a. Borisi promised 〔fai士hfu1 6o the party〕i
b・B.mp・・馳 f・i山f・11・山・p・岬〕i θ2
ここには、θ1を支配する述語動詞がθ2を支配している述語を支配してはならないという統率 支配(govem㎜耐)の連作を禁じる原理がひそんでいて、Equi verbsとN跳us sma11clauses
との組み立ては<tO㎏〉を介在させるだけで可能となるのである。
ω a. Boris promised6o be fait阯u16o t㎞party.
b. Boris porsuaded I田n to be faれhf皿1 to the party.
我々がその中で育って来た「学校文法」での補語(CompIeme舳)の概念も、主要述語の支配 作用が再帰的(refleXiVe)であワ他動性を持つ(肘anSi6iVe)ことを肥えていたのである。
㈹ a. … make it a m1e to VP
1〕. John a1=e .=hem u−lwashed.
c.We par6ed the bes6of friends:We we肥the bes6or friends
whe n w6 pa I−ted、サイクル領域の特質をr切り出し」てm・xim・1なスコープを与えるのが mod阯ari・・tio。
ないしは Param鮒i2ati㎝ のプログラムであるが、基本的には独立した制約原理群が複雑に かつ予想を超えた位相で接続し合い、そのjoint pmductとして新に適格構造が決定されるわけ である。このような統語上の融和(hamony)過程は、一つの変異形質がそれを受けつけない不 透明な(Opa叩e)構造領域に遭遇するとき(具体的には学習者の理解困難に伴う誤生成(miS−
g㎝erati㎝)となって発現する)、優良な句構造を指導者が発掘して接続構造全域に伝播する
(pmpagate)ように。paci6yを取ワ除く作業であると言える。十分な言語理論上の支えを必要 とする境界条件(b㎝ndary c㎝di6i㎝)を、二つめの連作例で検討しよう。
学習者が複雑構造を連続処理して行くときに、句構造を連続させる力(fOrCe)が途切れる現象 が認められる。ここで問題とする句構造は、前述の投影原理(Projec6ion Principle)に従う maCrOな文法カテゴリーである。基本的に成分配置図を持つ(COofig㎜ati㎝a1)言語としての英 語が、もしもMow一αの作動しない状況に置かれたとしたら、n㎝一。o.figurati㎝alな言語に 特有の構造戦略(strategies)としてのAss凹me GF(cf・Chomsky(1981)がこれに代って機能
を分担すると考えられ、これが一定の深さ(dep6h)を欠く句構造の途切れを救うことになる。
R㎝1and(1982)がオランダ語に求めた文法機能連鎖(GF chai・s)のための共役モデルは、
我々の場合にどのような洞察を与えるであろうか。6)ここで手がかりになるのは、この連作モデ ルに構造上透明な(transparent)位置が関与するという方向であワ、従って我々は、〔COMP,
S〕と〔NP,S〕との二種の回路がgovemi㎎categoryの面で合体するレベルを究めることに
なる。
今、}Inverted C㎝diti㎝als とも呼ぶべき統語現象があるとき、
(岬 a. AH of us wo皿1d have remained si1ent
had s[abiユy and01=der been secured.
b. ...Hadst【hou descended from another house.
この統語操作を支える規則(18が作動している。 (丁教室)
十V
{18 a. If→φ/ 〔 〕
一N
b.COMP NP Aux (Aux−to−COMP 移動)
より原理的には、潜在的統率要繁(pot㎝tia1govemors)の集合に含まれるSのheadとしての COMPとSのheadとしてのINFLとの間に、句構造の発生レベルから特別な呼応(a即ee−
me趾)関係が成立していて、構造の変容を見分ける仕組としてのCOMPがその主要成分を欠く とき、分化したI NFLノードをCOMP内に入れ戻すという調節機構が存在していると考えられ る。一つめの連作例㈹が、<to be>の介在による主語位置の母体文動詞への露出(exposure)
であるように、構造成長の途切れを回復させる二つめの連作例も、INFLを作動させCOMPを
活性化することによって、外領域からの統率支配に影響されない(impemeab1e)領域を作り、
その後に0paci6y領域の「ちらし」(resolu ㎝)へと移行する。この領域を拓く(open叩 domains)概念規定に「手に入る主語」(a㏄essible SUBJECT)の再検討が必要となる。こ の概念が登場した背景には、Move一αの許容される帰着位置が、同時にAs馴me GFの発動位 置に合致することを見究めた上で、川FL=〔〔±T㎝se〕、(AGR)で与えられるAGRが PR0と同性質を示すことに注目し、主格の島条件(N I C)と指定主語条件(SSC)とを統合さ せた唯一の不透明構造領域(opaqm domain)の決定には、〔NP,S〕で与えられる通常の主 語位置に加えてこのAGRも参加し、両者がSUBJECTとして得られることになるという㎜arked な理論化があった。学習者にはこの文(ないし名詞句)の範囲内で最も顕著な(promin㎝t)名 詞成分に意を用いさせる必要がある・rCOMPのドメイン分化」に連動する〔COMP,S〕、
〔INFL,S〕、〔NP,S〕の三つの成長因子(量㎜c6ors)が機能的に分業することによって 構造の可塑性(plaS6iCity)につながるからである。具体例に入ろう。
(Ig A凹x−to−COMPの場合㈱には主格付与の主語(nomina6ive s皿bjec6)
が存在し、これがCOMP中のAUXによって統率されているためにN I C 効果を引き起こし、従って新な連作は不能である。 〔〔c A㎜〕NP VP〕
(C=COMP)
. … 上he s6abi1i6y and order which had 6 beell secured … (cf.0切)
. … aIlother ho㎜se from whid− hads6 ユhou descended t
変異形(19の根底には、Fi.i6eD㏄larativesが<此at>に隣接するかどうかによって領域指定を 受けるフィルター(Chomsky&Lasoik(1977)、(175))があって、^〔αNP6eosevP〕で のαがNPかどうかの問題ではなく・COMP(究極的にはCONFL)のドメイン分化によって
INFLが位置を替えるとき、INFL(=t㎝se)のトレースをカバーするCOMPが定形補文標 識<that>を伴って生起しなければならないという原理が働いている。この変異形からの連作
は、ゲルマン語族にnomin州ve anaphorsが存在しない以上、避けるべきである。
次に、COMP→〔±WH〕を要求するma阯x verbが同時にINFLの値(㎜lue)を指定する ことが出来ないために、SとSの二つの主要部位がsubca6egori2a onの枠組み決定に関して機 能を分担する例の吟味に移ろう。英語にも数多く認められる節形式(C1auSe帥eS)は、補文標 識のクラスと屈折形式とによって性格づけられるが、τ〕COMPとINFLの実現形式が分詞形態 素(partiCipial mo叩hemeS)であるならそれは形容詞節としての修飾構造となる。づまり、範ち
ゅうの同一性(ca6egorial ide趾i6y)と範ちゅう素性(fe伽記s)そのものは別なのである。
COMPは名詞節の主要語として母体文動詞からの選択制限を受けるが、それ自体は成長因子とな りえない。この補文からの連作は、主文への文法項NPとして機能するに留まり、補文範囲内で はWh一句の受容体としてのみ機能する。
20 a.Iwonderifweeverca6chupw舳。urse1ves?
b.I wanリ。 knowwhaけ。u do/why yo㎜do it. (K教室)
一方川FLは、その投影領域を文法項にも成長因子にも利用できる性質を持っている。R㎝land
が一貫して追求しているr関係を㎝t舳ai0する」仕組みは、統率要素(90VemOr)を文法形式素 としての n㎝一跳ica1d㎝bleピ に資質換えするという通時的な文法現象が、本論考でのモデ ル化に役立つことを示している。INFLが分化したCONFLのCOMP機能を代役する一つの機
作なのである。
今、次例ωがあるとき、sitH㎎をto si6に変更すると学習者に混乱が見られた(K教室)。
盤カ a.Ican 6bea−oth舳。f 口sitH㎎hereiothisd凹mp!
b. .I ca111t bear to thi11k of yom6o si 比re i口this dump1
何1c1a説。と分析されるNP−i㎎構文が時制を欠く定形節として通常の時制文と同じふるま いを示す一方で、この構文はやばワ成長促進因子となる前置詞領域に分布する。この点で時制文 と不定詞節とか分かれることになる。主文の動詞はCO㎜〜のみを統率しかつ下位範ちゅう化する が、COMPが上例のように空(e岬ty)である場合にはSの主要部位が主動詞との関係を保つこ とになワ、川FLの投影領域としてのi㎎付構文がさまざまに生成される。I WLの持っ名詞 性が動名詞節の主語を属格にする(9㎝i6ive form汕㎝)ことはあるが、<beliew>タイプの 不定詞補文に認められる例外的格標識(ECM)と異なリ、NP−i㎎補文の格付与は屈折形式が 獲得した格(Case)を主語位置に転移(transf町)するメカニズムが採用される。
⑳ a.M町フ11ated〔s a good mao l〕emg ha11ged〕/〔s PRO bemg haoged〕
b.Mary卿㏄6ed〔s a good m舳上£些hanged〕/‡〔s PR0旦三三 hanged〕
(22b)と異なワ、(22a)のa good maoは<hate>に統率支配されず、目的格がINFL(一 t㎝se)の実現であるing形態素にまず付与され、その後Move Casoの規則によってこの名詞旬 主語に伝えられる。このような構造領域間の関係保持(㎝t舳ain)と飽和(S訓mte)を規定する I N肌の機能を全開させることによって、Ass㎜m GFとMove一αとを共有する連作が可能にな
る。
㈱①〔十6㎝se,十AGR〕:定形時制文として発現 ②〔十t㎝se,一AGR〕1?(パラダイム・ギヤツプ)
③〔一t㎝se,十^GR〕:NP−i㎎構文として発現(ここでNPは主格または対格)
④〔一t舳。,一AGR〕:不定詞補文として発現
CONFLの分化によって得られるCOMP−INFLの相互選択性には、形態的なformati欄の 他に、もう一つのAnapho冊系統が成立しているものと考えられる。言語的認識(lioguis c
COg口ition)の新しい一面をこの視点から明確にしてみる。
PROとNPトレースが機能的接近法(f㎜cti㎝al appmach)からでは判別できない例が見出 されて来ている。(cf.Rimi(1983))
⑫4 〔」虫I〕seemed〔三i to ha鴉won〕〔㎝en』一〇re P RO ㎜nnmg〕
更に文脈的定義(contextm1ωini6i㎝s)では肥えられないとされるPR0と舳 トレースとの
区別も問題となる。(これとは異質なr寄生トレース」(pamsitic gaps)による連作について
は筆者(1984b)参照。)
鮒〔幽i〕did〔王室旦…i㎎hi・f・th・・〕Pl・…εi?
曲ほ通常NP一移動(1Ob)とコントロール文脈との連作であワ、鮒は通常wh一移動(1Ob)とコ ントロール文脈との関連である。補文標識の中でも主文動詞の選択とほ直接的に関連しない接続 詞(c㎝iu㏄6i㎝s)に導かれる補文の主語(PR0)は固有の表現内容を持つr変異形」であると 傲すならば、⑫4ほ逆にwhile−i㎎形式を発端とする分詞補文(p舳icipi21oo岬1em㎝t)へと 導いてくれる。e4 に分布する空範ちゅう(EC)はいずれもCOMPに関与していて、PR0がA
−bOmd pr㎝0mina1であワ、£iがτ一bo㎜d a皿aphorの資質を与えられる。8)二例とも代用主 語のPR0が「生起の特権」(priviIege of㏄㎝n㎝ce)を反映しているのであワ、これがサイ
クルを加えることによって得られる(23②)の補強であると思われる。「変異形式」を役立たせ る方向からのこれまでの吟味から、次の二種の句構造が解き明かされる見通しを得たことになる。
蝸①負の変異形(ne刺iVemu6an6S)は統語的に不飽和であること(最大 投影ではない)。
②正の変異形(pO舳iVem舳趾S)は統語的に過飽和になワ得ること。
勿論(1〕の例で指摘したように、基本句構造を未習得な学習者にとって、文法原理の発現様式(3〕は 閉塞され、いかなる連作経路も成泣し得ない。英語の基本的な句構造ないし文型指導は古くて新 しい教育的営みなのであ糺質の高いr語法研究」もまたここに位置づけられる。
本論考の結びとして、屈折形式の〔NP VP〕をINFL投影(pmj㏄6i㎝)の範ちゅう(caト egOrial S6出S)に帰属させる役割の具現例としての・<60>の出没についてまとめることに
する。
鯛 a.I sawadogmn.
b、.A dog was s㏄n6mo.→A dog柵s s㏄ o r㎜. (0教室)
知覚動詞の補文.として埋み込まれた不定詞節は統語的に不飽和状態なのであって、受動化には
(23④)の作動によって母体文への統合のために d㎝b1e6 が必要となる。次に、構造の「伸 び」の統合には文法機能連鎖(GF一,… ,GFn)の形成が必須であるが、M㎝e一αの循環適用 性に対してAs削me GF一θは只一回適用といラ制約を受ける。 前述のように、機能連鎖を付与
されるNPは主語位置に固定され(GF1=〔NP,S〕,n>2は不可能となワ、移動変形による 先行詞とトレース間に課せられる制約が同じくAssnm GF一θにあてはまる6 即ち、サイクル 構造の連作(Chain Compositi㎝)への制約は格フィルター(Case H16er)とθ一基準蝸に依拠
し、ランダムなGF付与はいかなる場合も許容され鮎㌔
今、次の使役形式(蜆uS汕Ve lOmS)があるとき、
⑫田 NPl caus働NP26o㎜趾NP3 (r親は子供にいい服を着せる」のタイプ)
三つの文法項(NPs)の位置交替には格の吸収(abso叩H㎝)が伴い、W2is c舳sed6o we舳
NP3(byNP1)の成立は多くの<㎞過去分詞to VP>形式を連作に役立たせることにっなが
るが・NP3to be wom by NP2の並び替わワは主文動詞が<cause>からく阿mit>タイプに
変更することによって可能となワ、変異の幅を広げる。passive mo叩hologyが主語へのθ一標
識と目的語への格標識を消すこの操作には、投影原理の下での1eXiC㎝構造にr主要語のピスト
ロジー」という概念が更に必要なのである。
あ と が き
ある個別言語のSy口跡を学習者が自己組織化によって習得する過程は、学習者が児童(Chil−
dr㎝)として母国語を習得する場合と、成人(ad山s)として第二(外)国語を習得する場合と では、質的に異なると一般に考えられている。成人にはそれぞれの成熟段階に応じた一般学習方 法(genemL leami㎎s6rat㎎ies)が備わっておワ、児童にはr言語習得装置」(LAD)として の中核文法(core g胞㎜ar)とその構造原理があるのみであるからである。本論考シ1一ズに向 付られて来ている批判は、このL1,L2の混同にあると考えられる。αahsen&M皿ysk㎝(1984)
は、ドイツ語の語順習得についてあこの視点からの報告であるが、構造保持の原則に従ってCOMP 位置に移動する時制つき動詞(t舳ed verb)のふるまいが、成人のL2がはじめ文法理論の埼 外にはみ出る現象を経由して、究極的には児童のL1に原理的に合致すると分析している。ここ では、Move一α(α=〔十丁〕cf.(23))の伍指定と帰着位置が、未分化の状態から次第にはっき りと筆者の格子表示(Grid−represen舳i㎝s)と同じ描画形式に収束する事実が肥えられている。
本論考(W)ほ、広く学習が当面の文法と矛盾する現実言語資料に直面する際に、L2を修正し っつL1に近づける一面をr連作」としてモデル化したものである。自然言語の学習(一般には認 識文法の獲得)は、学習者の言語背景が何であれ、コスターの oonfigum6i㎝al matrix (3)の 路線上に成ワ立ち、 「文法教育学」は教師の力量を侯ってこれを具体的に授業化するのである。
①ある操作が義務的(obligatory)であること。
②成分間に唯一の(mique)関係が成立すること。
③文の主語位置が他に比して目だつ(pmmio㎝t)こと。
④ある操作が局地的(i㏄al)であること。
註
1〕言語の生物学(biology o{langmge)としての文法理論は、教育による発達成長を第一の 目標として設定し、知的責任の問題として授業の創造を自らに課すのである。
2)屈折形式(I皿{1)の領域(domain)にある主語位置は動詞旬(VP)領域から切れていて・
いかなる選択制限も形式的に働くことはない。「形式主語」の理解はここから生れる。
3)ただしコスターの理論的方向は、PR0とtra㏄(痕跡)を区別せずに、下接の条件(subja−
cency)と接合理論(bin舳g theory)を部分的に統合しようとするものであることに注意しな ければならない。本論考は筆者(1984α)のr変形の格子回路」に組み入れられるべきものであ
る。
4)このwh一移動とNP移動との連作については筆者に独立した論考がある。またrサイクル構 造」の連作であるから、言語的モデルとしての「輪作」は不可能となる。(Freidi・,R.(ユ978)
参照)
5〕従って、ある名詞句が二つの述語動詞によって統率支配されることも、主題役割を付与され
ることもない。この意味でApo koi㎜uは興味ある構文である。
6〕英語と主語なし(PR0−drop)言語との中問的性質を示すナラソダ語のVP構造について、
コントロール動詞、引き上げ動詞、知覚動詞の場合に、D一構造で成分配置図的に決定される文 法関係機能(GFs)がS一構造で非成分配置図的に(o㎝一。㎝fig凹mtionaHy)正しく付与される
ことを示したもの。句構造の再構成(res6m伽ri㎎)とAss口me GFとの特異な組み合わせによ って、INFLのトレースが不透明(叩aq凹e)領域を作らないように工夫し、補文の主語が母体 文動詞(ma6rix verb)によって統率支配(gowm)を受けるようにする機構が存在することを
明らかにしている。ここで採用されているr実質的範ちゅう」(Vi・舳a1Ca6ego・y)の概念は、
本論考第2節のr句構造の二重性」に酷似している。
7〕補文標識(C6mplem㎝6izers)の値(田1m)が主文動詞の下位範ちゅラ化と選択(se1㏄一 tiOn)とに、要請(requimm㎝6)と容認(a ㎞iSSi00)との両面から貢献することは常識となっ ている。この意味でBresn舳(工970)やRos㎝b8um(1967)は依然として価値を持つ。(K教室)
8)空範ちゅう(Emp二y categories)が先行詞の帰着位置の性質に応じて転調し、これが連鎖の 組み立てに役立つ諸相については筆者に独立した論文(1984b)がある。局地的な拘束形式がグ
ローバルな形質を新に獲得する可能性は大きいのである。
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(筆者)