奈良教育大学学術リポジトリNEAR
文法規則の組織化と学習(IV) ― 拡大コントロー ル文脈 ―
著者 高橋 孝二
雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要
巻 17
ページ 1‑12
発行年 1981‑03‑23
その他のタイトル On Learnability of Grammatical Rule Classes (IV) : Consolidated Structures of Obligatory Control
URL http://hdl.handle.net/10105/6449
文法規則の組織化と学習(1V)筆
一拡大コントロール文脈一
⊥ 一 ホホ
局 橋 孝 _ (英語学教室)
O. r自己組織化」としての文法の構築は観察(observations)の集積による組織化を統一 しつつこれを超えるものである。言語理論上の諸原理は規則体系(rule SyStemS)の特質を扱う のであって、単に観察された現象によって直接的に左右されるものではない。本シリーズで既に 考察した原理論はその存在意義を独力して保有していて、学習者が他の文法現象にも適用可能な 制約のパラダイムとして自ら意識するとき、文法規則のr自己組織化」の糸口が発見されたと言 えるのである。変換領域としての文脈の場(domains)に発現する制約の体系は本質的にパラメ ーターなのであり、これを固定(fix)することから始まる言語学習が望ましい姿に発達して行く ためには、学習者が自らの演澤構造(deductive structure)を「自己組織化」することが必 須の作業となり、『教育英語学』の視点もこのところに基本的に置かれることになる。理論言語 学の成果がメタ・理論として与えられるとき、我々がこれを具体的にr教材化」しr授業化」す るためには、両者を結びつけるところの調整レベルを志向する枠組み(modular framework)
の確立が急務である。ここでKoster&May(1980)の洞察が確実な方向を示唆していると
思われる。
11〕人問の言語(human1anguage)を研究するとき、中核文法理論が現実の言語経験 (empirical issueS)に接近する仕方には、基本的に次の二つが相互に関連し合 うものとして与えられる。
① 一定の言語現象が記述レベルを超えて説明(explanation)の妥当性に達すると き、これが言語能力(language faculty)各部門の相互作用によってのみ達成さ れるものであるか、あるいは獲得文法能力(knowledge oflangua誰=compe_
tenCe)は他の認識能力(cOgnitive CapaCities)と相互に係わることによっての み達成されるものであるのか。
② 文の文法論の原理体系内で十全な動機を与えられた一定の具体的構造分析が、他 の構造部門と有機的に係わるパラダイムの性質を有すると認定される場合に限っ て、言語の性質と使われ方(nature and use)の究明の有効な証拠となり得る ものであるのか。
ある統語構造がいかに意味解釈と関係し、どのような理解と発表に至るかという①の「含意」
* On Le arnability of Grammatical Rule Classes(lV):Consohdated Structures of Obligatory Contro1
榊 Koj i Takahashi(Department of English Lin馴istics,Nara University of
Education, Nara,Japan)
現象(phen㎝ena)接近法を筆者は『発達英文法論』(1980,秋)で考察しているが、本r学 習」ソリーズは②の証拠基盤(evldentlary bas1s)への接近が中心課題となっている。
本論考(W)は、表層構造の適格性(well−fomedness)条件を指定する「表層フィルター レ ベル(surface川ter)」の体系化を志向する「構造評価学』に位置づけられるものとして、自 律的に制御される補文主語(PRO=[Npeコ)の構造文脈を拡大する試みである。
1.同一名詞句消去(Equi NP Deletion)をめぐる問題
Chomsky&Lasnic(1977)の段階では表層フィルターから解釈規則としての義務的制御
(obligatory contro1)規則を分離させていたが時制を欠く補文の主語位置だけが母体文のNP によって義務的にコントロールされる構造上の必然性は、次の制約原理から既に明らかである。
12〕①時制文条件(Tensed_SCondition)
これは時制を含む文中の照応カテゴリー(anaphor)と、時制文外の先行カテゴリ 一(ant㏄edent)との間の照応関係を断ち切る。
a一ホ Joんπthought that加mse ∫ was cleve r.
b.ま rんeツexpected thatωcん。舳e r would win. l c.* 山〃 was reported that[4had won a pris巳
(Freidin(1978)による)
②指定主語条件(SpecifiedSubjectCondition)
これは埋め込まれた文の主語又は対応名詞句表現の主語N Pのみが外の先行カテ コリーと照応関係によって結びつけられることを許す。
a.Pe er㎝d M恢ツtold Bill which pictures of eαcゐ。肋er to bum.
b.亙㏄ん one of them wonders which picture of〃mseびMary burnt.
(Rouveret& Vergnaud(1980)による)
この場合、eαcん。肋〃や〃msψは主語領域から離れてCOMP内に位置している。
c. Joんπ be1ieved ゐ π一3eJ/ tc be c lever.
d1 ㎜e expec t eαcん。tんer to succeed.
e.J〃was reported[e]to have insulted Jack.
(Freidin(1978)による)
ここで、①aと②cとの文法性に関する判断は学生に自然に定着している(E教室)。
12〕の不透明な構造文脈を規定する原理(opacity princip1e)から、かくして、義務的にコント ロールされる文脈が次のように基底生成形式(base−g㎝erated forms)として得られる。
制①[;[cwトphrase,十WHコ[sPROtoVPココ
②John⑦ers㎜ded,ρro㎜{8ed)Bill[言[c−WHコ[spROtoVPココ (ここで C=COMP→士WH)
(3②)は主文動詞(matrix verbs)の特質によってPROを制御する母体文のNPが次のよ うに「ゆれる」が、この決定は日本語の意味から十分に可能である。
③matrixsubjectNPごmatrixobjectNPごmatrixobliqueNP
④<inform>,<Proveto〉,<Pleadwith〉,<apPea1to>,…
これはr意味の理解」が構造理解に直結する好例であるが、学生の意味解釈はこの場合も自然
である。
14〕 She persuaded Car]otta to ride over with her.
& 彼女はカルロッタを説得して車に乗せてもらった。
h 彼女は、カロレッタに、自分といっしょに車できてくれることを説得した。
(F教室)
コントロール文脈のこのような分析から、P R Oと語いN P(トレースを含む)が表層で「相 補分布(complementary distribution)」の関係にあることが判明したことになる。従って、
語い名詞句(lexical NP)が自由に出没する同一名詞句消去(Equi)の構造文脈と切り離すこと が必要となる。
15〕a.We want very much for B川 to win.
bl We want Bill to win.
c.We want(very much)to win
?We want very much for o〃se〜es to win.
{
?We want o〃se〜es to win.
(Chomsky&Lasnik(1977)による)
単なる再帰形消去(reflexive deletion)としてのEquiではあるが、次のような構造変化の 過程で教育的には重要であると考えられる。
16〕a.I don tω 耐 her poking her nose into my affairs.
b.*I don,t㎜㎜f poking my nose into your affairs.
c.I don t㎜枇to poke my nose into your affairs. (K教室)
<want>タイプのEqui文脈を切り離すことによって、次のような組織化が可能となる。
17〕①Lakoff(1970)の構造記述特性(SDfeatures)としての規則素性(m1e f・atu・e・)[十Equiコは不要となり、13〕の下位範ちゅう特性(subcategori−
zation feature)が補文主語位置の必然的な空結節性を指定すること。
②Postal(1970)の循環的な[十Doomコの付与も改めて不要な目印(mark−
ing)であること。
③Brame(1976;1978)のEquiを否定することによって関連する規則群 (Pαss〜e等)をも捨て去る give−up方式 も容認できないこと。
(§2でとりあげる。)
④Grinder(1970)の8ψ〃Equiをめぐる下記のr介在制約」はO脾。ity12)
を中核概念とする文法原理に帰着させ得ること。
Intervention Constraint
「二つの名詞句NPaとNPbとの間の同一名詞句消去は・消去回路(deletion
path)に可能な制御名詞句(contro11er NPc)が介在するならば阻止される。」
この「自己組織化」は制約のリストとそれらの単なる組み合わせではなく、それらの相互作用 が「系」として学習者に見えて来る原理体系の断片なのである。
2.範ちゅうの対応と実現(rea1ization)
今ここに、明白な(OVert)補文化辞も、明白な補文の語い化された主語も表面には発現してい いない不定詞補文(infinitival com1ements)がある。
{8〕 a. John tried to Ieave,
b. John aPPeared to leave.
(7③)のフレーム方式ではこの不定詞がSではなくV Pと認定するが、これは次のように
「なしくずし的」に議論を進める。
19〕Mary tried to be examined,
19〕の派生(derivation)プロセスをr変形」の連動によって規定して行く。,
a.Mary tried』the doctor to examine Mary]・⇒ Passive b.Mary tried露Mary to be examined by the doctorコ⇒ Equi c.Mary tried_to be examined by the dし。tor.
この派生過程ではr受動化」が採用され、次にEquiが要求されている。かくして、rもし受 身変形が存在するならば同一一名詞旬消去も存在する。しかしEquiは存在しないのであるから
Passiveは存在しない。従って受動構造(passive str㏄tures)はVPとして直接的に生成され るべきである」ということにな孔この分析では、for NPなしの不定詞(baru infinitives)
を従える動詞、形容詞、名詞がVP補語に対して下位範ちゅう化され、移動(movement)、消去
(de1etiOn)、制御(COntrol)規則の一切に関与しないことになり、補文化辞や補文主語の欠如 はすべてこの不定詞句がSではなくVPであることに帰せられる。この方式の最大の難点は次の ようなr拡充規則」を文法理論に許すところにある。
ω S→COMP+VP(ω乃移動はS規則であることに留意しなければならない。)
a.It iS unClear〃ん0tO ViSit.
b. John asked Bi11ω片。 to visit.
c.John told Billωん。 to visit、
この方式に対して、我々の立場は、181の補文構造の表層をKoster&Mayと共に下記のよ
うに定立する。
ωa・J・h・・t・i・d[;[。。Mβ][。[。島小1・…ココ
b・J・h・・・・・・…d[ξ[。。。青コ[。[。。、eコt・1・…コ]
この視点からは、すべての不定詞形式がSとしての資格を与えられ、18〕の文例はすべて(12)の文 例と範ちゅう上対応させられ(categorica11y parallel)、異なるのは単に語い成分の実現を決 定する格(Case)と接合(binding)の条件に関してのみとなる。
(12)a・ It is i11ega一[ξ[COMP for][s John to leaveココ
b・Mary wants very much[言 [COMPforコ [s John to Ieaveココ 上述の基本分析の理論的強みは次の通りである。
(13〕①基本的な補文のタイプが定形(finite)と非定形(nonfinite)の二種のみに定ま ることを、内部句構造の成分図から直接的に表明できること。
②それぞれの文(S)領域の述語動詞([十V])は、ただ一つの主語(subject NP)のみ持ち得ること。この場合、補文主語がコントロールによってのみ決定 されるPRO文脈では、下の受動化は成立しないことが予知できる。
* Do you intend us[your remark to be taken seriouslyコ?
■エコ (K教室)
③S分析に立ってこそ完全文構造が存立し得るのであるから、文を巻き込む前方照 応過程(anaphoric process)を、V Pを巻き込む同過程は勿論のこと、予知 できる。
a。〃is a waste of time〔…PRO to read so many comic booksコ・
ここで代名詞(文法形式素)Itは補文と同一指標(coindex)を付与される。
(Extrapositionについては稿を改めなければならない。)
b.らpRO to read so many comic booksコis a waste of time.
ここで任意(arbitrary in reference)のPROを含む不定詞補文は話題化 (topicalized)されていて[ eコの主語に接合されていると考えられる。
NP
もし不定詞がVPであるとすると、VPとNPとの同一指標付与を許すこと になり、文法(=学習)が複雑となる。
④S分析はCOMPの存在とその特異な機能を必須のものとするのに対して、VP 分析はいかなるCOMPノードも予測しない。
次のデータは前者を支持する。(cf.ω)
I t is unclear [; what[s e to doコ]
⑤S分析の主語の定立は(cf.②)、再帰代名詞(reflexives)や相互代名詞(r㏄i−
procals)のような照応句(anaphors)が極小(minimal)支配領域としてのS 内に拘束されるという原理論から(§3でとりあげる)、これらの照応カテゴリー を含む不定詞補文や動名詞補文も義務的にコントロールされる代用主語(PRO:
[ eコ)を目には見えないが(invisible)持っていることが示されること。
NP
a.Stop PRO gawking atツ。〃8e〃/ (丁教室)
b. I haven t the energy PRO to getηsψto bed. (K教室)
cf.*John thought that〃m8e4was clever.(亡12〕①a)
c. John proposed to Mary PRO to help eαcゐ。肋〃.
r適正支配(proper govemment)」という原理からSが絶対拘束カテゴリーであると認定さ れ、次のωの表層構造において、
(1④J・h・t・i・d[ミ[。[NP・]t・1・…コ](一18〕・)
補文主語[Npeコは、この場合支配されてはいないので(not governed)トレース(t.ac。)
ではあり得ない。S境界が移動を許さないからである。我々はこのNP空結節をPROと認定す
る。
皿5・H [一[ PRO to VPコ]
S S ↑
u㎎ovemed Position
1固がr実現」する文脈を更に探して行くことにしよう。第一に、[十Vコの統語素性を有する 主文のフレディケットカ和5ゆ構造文脈と相補い合う肛⑤の文脈にフィルターとして確認されている ことをおさえていることが必要である。 (cf.筆者(1977))
㈹ *[αNP to VPコU条件:αが[一N]に隣接するか同一領域内にあること。
語い化された名詞旬(lexical NP)とトレースに特徴的な文脈フィルタ■1⑤は仮定法形式へと 実現する傾向が強い。 (K教室)
伍確①Subjunctive
a.We require that the grammar accomt for an infiI1ite number of sentences.
b. Rowe proposes that the United States buy a−l surp−us wheat.
c.. It is necessary that the room be air−conditioned.
②Infinitive
a. Jimmy wi.shed HopPer not to examine him so c1osely.
b, Well,what do you propose to do about i t?
c. I,d prefer for him to tell lies.
母国語話者は、形態的に異なっていても(morpho!ogically dissimi1ar)文法的にパラダイ ムを形成していることを知っているのであり、SyntaXを無関係な例文のコレクションで満足す る方向を我々は注意深く避けなければならない。
支配カテゴリー(gσveming category)を持たないとされるPRO文脈(15〕はqOの間接野間文
(indireCt queStiOnS)の基本的な性質を一定の形容詞クラスの不定詞補文に実現する。
㈹ a. John was 肌后ツ [PRO to winコ
b・ It is impossible〔言[s pRO to go homeココ c. It wasゾ。o〃s加。f Mary [PRO to go thereコ
もし主文の主要句(matrix head)がSの消去を許すなら、不定詞補文の主語位置は支配さ れることになる。従ってS消去を引き起こす(trigger)形容詞クラス<certain>の補文には PROが生起しないことになる。 (cf.Raising adjectives)
(19 a。*It is c2rεα三π [s pRO to go homeコ b・ John is cer地ゴπ[、[NPfコto go homeコ ([NPjeコはJohnのトレース)
これに対して(ユ8b)の<i岬。ssible〉はSの消去を引き起こさない(S de1etionをめぐる
構造条件については後出)。
からである。
S境界が埋め込まれた主語位置の支配(govemment)を阻止する
・1…㎞・・/幾開ible/・1[[・・、・lt・・・・…ll
([・・。・コはJo㎞のトレ・ス)
これまでのところ、トレースとPROとは次の三点で異質であることが判明している。
(21)①トレースは支配されること。(cf.(19b))PROは支配されないこと (cf.(18b))
②トレースはS消去を要求し、PROはしないこと。
③ PROは素性(features)の束を持つがトレースは指標(index)しか持たな いこと。
(18c)のテータはム山の補文がコントロール文脈に入ることを示していて、補文 のCOMPが空(empty)のままで主語が語い化される構造文脈が存在しないことを示唆する。
(22) * it is ADJ(of NP)[Tom to VP]
*1ti・・吻〃。fJoh・[M・ryto・i・it・・chafi1thyplace]
(cf. フィルター(16〕)
この反証データは直ちに(意味的には異なるが)次の構造文脈も存在しないことにつながる。
* John is ADJ(of NP)[Tom to VPコ * John wasω{8e[Mary to leave earけコ
(cf.John isρm阯d of Bi1−for PRO having done that.)
]
空のCOMP(=[COMPeコ)は補文主語NPも空(nu11)であることを必須条件として 要求し、この空のNPがPROであるためには更に下記の構造条件が課せられる((21)参照)。
(23)①[言[COMPeコ[PROtoVPコ(cf.(3①))
②ここでCOMPは[一Nコの主要カテゴリーにC下接(c−subjacent)しな
いこと。
③C−subjacency
Df.カテゴリーBはカテゴリーAに、AがBを。統率(c−command)し、B またはBの領域(dOmain)がAを。統率するときに限られる。
(Rouveret &Vergnaud(1980) p.102)
この構造条件は結局のところ(21)のrPROはS消去を要求しない」性質に帰着するものと筆 者には思われる。問題は「要求しない」ことの説明原理の発見にしばられて来る(§3)。
④ C へ 一
千 入(=S) (ここでCOMP=[・・M・・コ;
[一N] D E 結節Dが結節Aの支配特性を吸 収(absorb)する。)
COMP NP(=PRO)
次に名詞句内でのPROの実現について吟味する。構造配置図の支配される位置(govemed position)にPROは分布不能なのであるから、下のNPは不適格となる。
(24)a.* I hit PRO.
b.* I think that a picture of PRO…
c、‡The destruction of PRO・・
(24a)はフレディケットの他動性(transitivity)に係わり、(24b)は絵画NPと再帰代名 詞(reflexives)との共起の問題に発展するが(筆者『発達英文法論』(1980)§7参照)、
(24c)の構造文脈もローカルな照応形式に帰着する。
(25) a. the death of π昭(cf. mツdeath)
b. the look of 乃{m (cf.んj8 1ook)
c. the life of んer(cf.んer life)
d. the hke(s) of ツ。阯 (cf.ツ。ωr like(s))
e.the very sight of肋em(cf.肋eかvery sight)(K教室)
この形式の。f NPが。f itとなるとき、動名詞構造のr素構造(G−structure)」を提供
する。
(26)①He1en:Anyway,it syourhfe,ruinityourow1way.
Jo :That s what you said,but really you think you could make a better job of it,don t you?
H : What?
J : Ruining my life.After all,you ve had plenty of
practlce (S Delaney,幽から K教室)
動名詞補文のing一形式が[十Nコの統語素性を持ち、しかも[十Vコとは区別されない
(nondistrict)性質は次の素構造となって実現を待っている。
②theNof[PRO[NP[VP]ココ
It,s a waste of time [the ACT of PRO interfering wi th other peopleコ
(25)の所有格形式の関与には規則(27)が想定される。
(η)N・→[N.N・十P…コ/ X(一N・・V)
ここで特別な文法形式素Possは支配カテゴリー(govemor)としての資格を与えられてい るので、PROがPoss( s)に支配される実現形式は存在しない。もしX=VならばP ROが実 現する可能性については上述の通りである。
(Zη a・*John 1ikes [NPpRO s bookコ
し1・・・…f…/臣高・/・汕i・・t・・・…
his
指示作用の任意性(arbitrariness)は動名詞解釈から派生名詞(derived nominals)の解釈
に拡大される。
(28) a.John s attitudes about how PRO to solve the problem (NP−p−S)
b. John s attitude towards PRO excessive concentration on schooI wo rk(NP−P−NP)
the
c・ ・・…ml・1・f・・1。。。1・t…lt1・…mmltt・・b・th・1・・…m一 mentS
the the
・・1。。。}・…lt・…1・t・・tm・…m…m・1。。。lm…1・・
・.1。貴。1・・・…1・t・…f1指1t・…
f....must㎏the resu1t of PRO boredom,of PRO too much security... (N教室)
この章では、筆者が担当している授業から具体的な資料をr拡大コントロール文脈」という視 点から注目し直すと、いかにChomsky(1979;Pisa1ectures)の「支配と接合(Govem−
ment−Binding)」のメタ・理論が具体化するかを吟味したことになる。
鵬)PROは支配カテゴリーを付与されない構造文脈(structural contexts)内にの み実現(発現)が許される。
要約(29)は次のような構造学習のr授業化」を可能にする。
(30)①構造領域の内部(intemalstructure)
②外的分布(externaldistribution)
③ 下位範ちゅう化の方向性(dir㏄tionalityof subcategOrization)
④隣接の要請(adjacencyrequirement)
一見無関係ないくつかの構文(COnStruCtiOnS)もカテゴリーの対応レベルを固定して「一般 制約」の相互作用(interaCtiOn)のr系」として把握する我々の姿勢は、r教材」を無規定
(unspecified)のまま学習者に提示しつつ強化しようとする態度を否定するものである。
3.指標(indices)の衝突
これまで検討したように、PROは支配されない(ungovemed)構造位置に限って生起するが、
(21③)の素性の束は名詞句に共通するものをすべて持つと考えられる。
(31)PRO=[αperson,βnumber,γgender…コ戸trace
また・空結節[Npeコに課せられる一般原理132)はトレースに適用が限られ乱 G2)Empty Category Principle (Chom吐y(1979))
[NPe]は適切に支配されなければならない。
ここでαがβを適切に支配する(properly−govems)と言えるのは、α=[±N,
±V]で、αがβを支配しているかαがβと同一指標を付与されている(coindexed1)
ときだけである。
単一規則が一般化を損うことなくいくつかの構造条件(COnditiOnS)に拡大されて行く種々相 を肥え、一見奇妙でユニークな構文の諸特徴のすべてを説明しようとする「可換方式(modular apProach)」はPROの実現する文脈を(32)との関連でフィルター化できないものであろうか。
句構造形式[NP to VPコの分布を阻止するフィルター(16)にはPROlが早手伊 (invisible)
のであろうか。PRO㈹lexical NP・トレースという二分法はこれまでの考察から次の分布位置 を保証はしてくれる。
(33)①[一Nコ(=V,A,P)[NPtoVP](cf.㈹)
②[十Nコ(土N,A)[PROtoVPコ(cf.l15〕)
(・f一*[NPth・NトNPt・VP]
* Pe「sua si On J o hn t o stay)
③[一N][PROtoVPコ(cf.(23))
分布図(33)とECP(32)とに共通するパラメーターはコントロールの性質上「同一指標付与」と いう解釈上の機能であることが判かる。そこでこの機能が発現する構造の性質を改めて考えてみ
る。
(34)COl NDEX(Chomsky(1978))
NP−PRO関係はPROが先行詞NPによってC−commandされることによっ て成立する。 C
〈 [α βコ
(34)の一般規約はNP−traceのCOMP回路によるωん一移動規則にも当てはまるのであるから、
伽)、(23)、(33)の説明原理は構造領域を更に狭く規定する方向に求められなければならない。
(35)Government(Chomsky1979)
αとβとが途中にSやNPを介在させない極小(minima11y)C一統率の関係にある こと。(尚、この概念については筆者の独立した考察が既にある。)
コントロール文脈にはまさに大範ちゅう境界が必要であるが、主要フレディケット(α)と補文 解釈主語(PRO=β)との間にNPが介在していて勿論よい(33②)。従ってこの構造文脈の決定 にはCOMP[十WH]の介在が必須条件となる。 (23)のC一下接を阻止するのが絶対有界 e
(bounding)カテゴリーとしてのSなのである。抽象的統語格(syntactic case)の付与は
「支配」関係からなされるが(Cagoそのものについてはr二つの格理論」という題目による独 立した論述が必要である)、この格付与(Case Assignment)の動機は次の三つである。
(36)① さまざまなフィルターに伴う mless−condition の文脈が格付与の過程に自 然な配置形式図(configuration)となって発現すること
②この背景には名詞旬を下位範ちゅう化する動詞と前置詞との間に明示的な (overt)格合図(case−marking)に係わる相互作用が認められること。
③文形式内に限られる大範ちゅう(majorCategOrieS)間に内在するローカルな
現象が格付与によって捉えられること。
このr抽象格」とr支配」の概念を同一レベルで文法化するとき、求めるフィルターは指標付 与機能の相補分布性から次のように与えられることになる。
(37) *PRO [αCa・e]
ここで注意すべきはフィルターの一般性質から(37)が言語学習にいかなる負担(burden)も課 すことはないという経験的事実である。実際に学習者は次の文脈を自然に理解している。
(38) The owner of the shop was trying PRO to p1acate four men who wished PRO to be shaved at once. (K教室)
しかし文法理論そのものの展望としては、wわ一移動適用後の表層構造環境が支配されない NPに格をつける可能性の問題は残されている。この究明は次の方向からなされるであろう。
(39)支配(Govemment)を二つの原理に分ける。
①浸透支配(perColatiOngovemment)
② 構成要素統率(C−command)
このようなレベルの二分は(37)の格フィルターを依然として「支配フィルター(Govem−
ment Filter)として保持し、矛盾する指標(contradictory index)を規制する{i,{i}}
モデルの有効性を支持するものと考えられる(cf.筆者(1980b))。
「不透明条件(opacity condition)」を組み込んだ空のNPの指示特徴を決定する一組の指 標付与手1順(indexing procedures)としてのr拡大コントロール文脈」の構造学習には・以 上の考察により下記のフレディーケッ・トを含むr教材」の作成が有効であることが示唆される。
(40)PROXIMATE[十V](NP)[PRO non−finite VPコ
この視点が確立されてはじめてHomby(1956)のような実用文典が生きて来るのであり、
A and B are also used inγP C のパラダイムが有機的に見えて来ると言えるのである。
(41)aI/言:幾二11,lf輸㍍耐.
し/lllllll11篶篶箏ニサ・
α/二1㌫㍗ぶ1二㌘、㍗1、.
主格(nominative)のコントロールは「主格の島条件(NI C)」によって除外されるという原理 論から、働⑪の proximate の学習は次の構造の生成不能の理解へと導いて行く筈である。
(42)*…{さ;/[∴H1C.M、[s…t…1
本論考は、学習者の頭脳に自己組織化される言語構造が決して文法的に気まぐれ(Caprト CiouS)なものでないことを、コントロール文脈の拡大という一面から確認したことになる。
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