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圧電ゴムの圧電性能向上に関する研究

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(1)

圧電ゴムの圧電性能向上に関する研究

2015 年 3 月

間々田 祥吾

首 都 大 学 東 京

(2)
(3)

目次

1

章 緒言 --- 1

1.1 研究の背景 --- 2

1.2 圧電材料における圧電性能の原理 --- 4

1.2.1

誘電体の分類

--- 4

1.2.2 キュリー温度 --- 7

1.2.3 強誘電体(圧電体)の分極 --- 7

1.3 既存の圧電材料の圧電性能 --- 10

1.3.1 圧電材料の圧電性能 --- 10

1.3.2 PZT

の利点および欠点 --- 11

1.3.3 PVDF

の利点および欠点 --- 13

1.4 複合圧電材料 --- 15

1.4.1 複合圧電材料の分類 --- 15

1.4.2 0-3

複合体 --- 16

1.4.3 1-3

複合体 --- 17

1.4.4 0-3

複合体および

1-3

複合体以外の複合体 --- 17

1.4.5 圧電ゴム --- 18

1.5 研究の目的 --- 19

参考文献 --- 20

2

0-3

複合体圧電ゴム --- 27

2.1 圧電ゴムの概要 --- 28

2.2 圧電ゴムの原理 --- 29

2.3 0-3

複合体圧電ゴムの作製--- 29

2.3.1 作製材料 --- 29

2.3.2 作製方法 --- 33

2.4 0-3

複合体圧電ゴムの物性評価 --- 38

2.4.1 物性評価方法 --- 38

2.4.2 物性評価結果および考察 --- 40

2.5 0-3

複合体圧電ゴムのまとめ--- 46

参考文献 --- 48

(4)

3

章 配向型圧電ゴム

--- 49

3.1 疑似的な 1-3

複合体の概要 --- 50

3.2 圧電セラミック粒子の配向方法の検討--- 51

3.2.1 電気粘性(ER)流体における強誘電体粒子の配向 --- 51

3.2.2

シリコーンオイル中における

PZT

粒子の配向

--- 52

3.3 配向型における粒子配列の影響 --- 53

3.3.1 作製材料 --- 53

3.3.2 作製方法 --- 54

3.3.3 評価方法 --- 56

3.3.4 評価結果および考察 --- 57

3.4 配向型における PZT

粒子の粒子径の影響 --- 62

3.4.1 作製材料 --- 62

3.4.2 作製方法 --- 63

3.4.3 評価方法 --- 63

3.4.4 評価結果および考察 --- 63

3.5 配向型における母材の影響 --- 71

3.5.1 作製材料 --- 71

3.5.2 作製方法 --- 72

3.5.3 評価方法 --- 74

3.5.4 評価結果および考察 --- 74

3.6 パターニング配向型の提案 --- 83

3.6.1 パターニング配向型の概要 --- 83

3.6.2 作製材料 --- 84

3.6.3 作製方法 --- 84

3.6.4 評価方法 --- 85

3.6.5 評価結果および考察 --- 85

3.7 配向型圧電ゴムのまとめ --- 89

参考文献 --- 93

4

章 圧電ゴムの適用 --- 95

4.1 圧電ゴムの適用箇所 --- 96

(5)

4.2

圧電ゴムの振動低減材への適用の検討

--- 96

4.2.1 圧電材料に接続した外部回路による振動低減の原理 --- 97

4.2.2 検証試験方法 --- 99

4.2.3 検証試験に用いた圧電材料 --- 99

4.2.4

検証結果および考察

--- 101

4.2.5 振動低減効果検証のまとめ --- 104

4.3 圧電ゴムの鉄道分野におけるセンサへの適用の検討 --- 105

4.3.1 軸受の異常振動検知センサへの適用の検討 --- 105

4.3.2 車両側扉戸先における異物挟み込み検知センサへの適用の検討 --- 114

4.3 圧電ゴムの適用のまとめ --- 125

参考文献 --- 127

5

章 結言 --- 129

主論文を構成する論文 --- 133

主論文に関連する特許 --- 134

謝辞 --- 135

(6)
(7)

1

第 1 章

緒言

(8)

2 1.1

研究の背景

近年,高付加価値な機能性を有する材料の研究が盛んに行われている.このような機能性 材料の一つに圧電材料がある.

圧電材料の大きな特徴は,機械/電気エネルギーの変換性能である.つまり,入力された 力や荷重等の機械エネルギーの一部を電荷や電圧といった電気エネルギーに変換して出力 でき,逆に,電荷や電圧の電気エネルギーが入力された場合,その一部をひずみ等の機械エ ネルギーに変換して出力することができる.機械エネルギーから電気エネルギーへの変換 性能を利用した場合は,力や荷重等を検知するセンサとして,電気エネルギーから機械エネ ルギーへの変換性能を利用した場合は,入力された電気信号によって駆動するアクチュエ ータとして,一般に使用されている.

現在では,機械エネルギーから電気エネルギーへの変換性能を利用した振動発電材料や

[1-3],入力された動的な荷重を高精度に測定する荷重センサや構造物などの健全性を評価

するセンサ等としての利用が期待されている[4-11].さらに,圧電材料の場合は,センサと アクチュエータの両方の性能を利用することによって,入力された荷重を一度,電気信号に 変換した後,変換された電気信号を再度入力することもできる.この機械/電気エネルギー の相互変換の際に,外部に接続した電気回路による共振,増幅,位相の反転等を利用すると,

入力された機械エネルギーを電気エネルギーとして消費することができ,その結果,入力さ れた荷重によって生じる振動を低減させることができる.このような圧電材料を用いた振 動低減は,省電力,省スペース,高性能なスマート構造材料として,現在,盛んに研究が進 められている[12-20].さらに,振動を低減させることによって,振動に起因する騒音も低減 させることができるため,新たな騒音低減材料としても期待されている[21-24].

圧電材料の発見は,2000 年以上前とされており,自然に存在する電気石等の一部の鉱物 による焦電現象が確認されてきた.その後,学術的な詳細な研究が,1900 年前半から盛ん に始められ,現在に至るまで様々な材料が発見されてきた.

現在の圧電材料は,材料の種類によって大まかに

2

つに分類される.1つは,セラミック スのような無機材料を用いた圧電セラミックスであり[29-31],もう

1

つは,高分子材料のよ うな有機材料を用いた圧電フィルムである[32-45].

当初,圧電材料として,盛んに研究されたのは,圧電セラミックスであり,1900 年代前 半から盛んに研究が進められた.1952 年には,白根らによって,圧電性能が非常に高く,

現在,最も一般的に使用されるチタン酸ジルコン酸鉛

Pb(Zr

x

,Ti

1-x

)O

3(以下,PZT とする)

の基本的な組成が発見され[25],

B. Jaffe

らの研究により,非常に大きな圧電性能を持つこと

(9)

3

が見出された[26].その後,鉛を使用しない,非鉛系の圧電セラミックスとして,代表的な 強誘電体である,チタン酸バリウム

BaTiO

3や,チタン酸ストロンチウムバリウム

SrBaTiO

3

の研究も盛んに進められている[27-31]が,価格等を考慮して,PZT の代替となりえる材料 は,現在に至るまで発見されていない.欧州において

2006

年に施行された,「危険物質に関 する使用制限」

Restriction of Hazardous Substances (RoHS)では,鉛の使用を規制している.た

だし,

PZT

には,鉛が含まれているにもかかわらず,工業製品として,大量に流通しており,

代替となる材料も発見されていないため,規制の対象外となっている.現在,一般に使用さ れている圧電セラミックスは,主に

PZT

を使用したものであるが,

PZT

における

Zr

および

Ti

の配合率の選択,ニッケル

Ni

等の

Zr

および

Ti

以外の混合物の選択により,その圧電性 能は大きく異なる.つまり,使用用途に合わせて,圧電性能が非常に高いが,使用できる温 度環境が狭いものや,圧電性能は比較的低いが,使用できる温度環境が幅広いものまで,

様々な材料を選択することができる.

一方,圧電フィルムは,1950 年代に研究が進められた.当初,高分子材料の圧電性能に 関する研究は,深田らによって木材等の生体高分子を対象としてなされていた[32-34].その

後,

1969

年に,河合らによって,高分子材料の中でも非常に高い圧電性能を示すポリフッ

化ビニリデン(以下,

PVDF

とする)が発見された[35].さらに,

1970

年代後半には,

PVDF

の結晶構造解析や分極方法等が改良され,村山や

Broadhurst

らによって,現在でも使用され る非常に高い圧電性能を示す

PVDF

が研究された[36-37].その後も,現在に至るまで

PVDF

の研究は進められ,機能性材料として,使用の幅を広げている[38-43].合成高分子では,

PVDF

の他にも,ポリプロピレン,ポリウレタン,ナイロン

11

およびポリ乳酸等の圧電性 能も研究されてきたが,現在のところ

PVDF

の圧電性能が最も高い[44-45].

現在,センサやアクチュエータとして一般的に使用され,さらに,高精度のセンサや振動 および騒音低減デバイスとして主に研究されているのは,

PZT

よび

PVDF

である.一方,詳 細については後述するが,PZT および

PVDF

には,利用する上で大きな利点があるのに対 して,課題も存在する.この課題によって,使用できる環境や箇所が制限される.このよう な課題を克服する材料として期待されているのが,複合圧電材料である[46-71].

複合圧電材料は,母材と圧電セラミックスまたは圧電フィルムの圧電材料を組合せた材 料であり,母材の特性と圧電材料の圧電性能を組合せることによって,

PZT

および

PVDF

で は得られなかった性能を得ることができる.さらに,材料面での母材と圧電材料の組合せ方 や母材内での圧電材料の接続性によって,特徴的な特性が得られるのも複合圧電材料の特 徴である.

(10)

4

複合圧電材料の研究が始められたのは,1970 年代前半である.当初は,水中マイクロホ ン等の圧電セラミックスではインピーダンスマッチングが問題となるような箇所での使用 を目的として,研究が進められてきた[47,55].その後,母材中での圧電材料の接続性に関す る研究によって,複合圧電材料の圧電性能は大幅に向上し,現在までに様々な材料の組合せ および圧電材料の接続性の複合圧電材料が開発されてきた[54-59].

本研究では,PZT および

PVDF

の課題を克服する材料として,複合圧電材料の圧電ゴム に着目し,圧電ゴムの圧電性能向上に向けた,新たな製法等の研究を進めてきた.本章では,

圧電材料の圧電性能の原理について述べるともに,PZT および

PVDF

における課題,複合 圧電材料の概要および圧電ゴムに着目した理由について述べる.

1.2 圧電材料における圧電性能の原理 1.2.1 誘電体の分類

電気的な性質によって物質を分類した場合,図

1-1

に示すように,大まかに導体,半導体 および誘電体の

3

種類に分類される.この中で,誘電体は,電気絶縁体であり,大まかな分 類として,抵抗率が

10

8

Ωm

以上のものとされている[71-73].

誘電体中の電子は拘束されているため,導体中の電子のように自由に動き回ることがで きない.一方,誘電体を電場中に置くと,正電極側に負電荷,負電極側に正電荷が寄り,電 荷の分布に偏りが生じる.電荷の分布の偏りによって,電気双極子モーメントが誘起される.

この電気双極子モーメントが誘起される現象が分極であり,分極の大きさは,電場の大きさ および誘電体内の電荷の偏り易さを示す誘電率の影響を受け,電場の大きさおよび誘電率 が高い程,大きくなる.また,電荷分布の偏りによって,誘電体自体にひずみが生じる現象 が電歪効果である[73-74].

誘電体の中には,電場以外に,一方向に応力を加えることによって分極する物質がある.

このような物質が圧電体である.圧電体が加えられた応力によって,電気分極を生じる性質 は,圧電体の結晶構造の非対称性に起因するものである.全ての結晶は,対称性によって

32

点群に分類することができ,この中で,対称中心のない

21

点群のうち

20

点群が圧電体と なる.圧電体の代表的な物質として,水晶

SiO

2がある[72].水晶の結晶構造は,力を加えた 場合に,結晶中のケイ素および酸素の配置が変化し,電気双極子モーメントが誘起される.

水晶は,古くから圧電材料として研究されている材料であり,現在では,発振子として時計 の部品として広く使用されている.圧電体は,電場中に置かれた場合に,結晶構造にひずみ が生じ,そのひずみに起因して誘電体自体がひずむ.このひずみは,通常の誘電体の電歪効

(11)

5

果と区別されて圧電効果と言われる.

圧電体の中には,電界や応力を加えることなく,結晶構造中の全体的な非対称性が保持さ れ,常に分極している物質がある.このように,常時,自然のままで生じている分極を自発 分極といい,自発分極を持つ物質を焦電体という.焦電体は加熱することによって,自発分 極の状態が変化し,その変化に伴って物質表面に電荷が生じる.焦電体が,加熱することに よって分極の状態が変化する性質を,焦電効果という.焦電体には,自然に存在する鉱物の 電気石や,有機化合物の酒石酸等があり,これらの物質が示す焦電性については,圧電体の 中で最も早く,1800 年代に研究が始められた.上述した水晶は,通常,結晶構造中のケイ 素と酸素による双極子モーメントが打ち消しあっているため,自発分極を持たないため,焦 電体ではない[72].

焦電体の中で,電場中におかれた場合に,外部から印加された電場の方向によって,自発 分極の方向を反転させることができる物質を強誘電体という.強誘電体は自発分極の大き さが大きく,大きな圧電効果があるため,現在使用されている圧電材料のほとんどは,強誘 電体である.最も一般的な強誘電体であるチタン酸バリウム

BaTiO

3の結晶格子を図

1-2

に 示す[29].図

1-2

に示すように,

BaTiO

3の結晶格子は,正方晶系のペロブスカイト型であり,

中央の

Ti

原子が格子の中心に位置していないため,対称中心がない.さらに,Ti原子の位 置が電場によって反転するため,自発分極の方向が反転する[74-75].強誘電体の結晶構造の ほとんどは,正方晶系のペロブスカイト型である.

結晶の対称性による分類を図

1-3

に示す.なお,焦電体中の強誘電性の有無は,結晶の対 称性のみからは分類できないため,焦電体の全ての点群が強誘電体となるとした[72].

(12)

6

Figure 1-1 Classification of materials according to electric properties.

Figure 1-2 Crystal structure change of barium titanium(IV) oxide, BaTiO

3

under electrical

filed.

(13)

7

Figure 1-3 Classification of dielectric materials according to the crystal symmetry.

1.2.2 キュリー温度

一般的に,ペロブスカイト型の結晶構造である強誘電体は,低温において自発分極を持つ 正方晶系(図

1-2

におけるa ≠ c)の強誘電相であるが,高温においては,自発分極を持たな い立方晶系(図

1-2

における

a=c)の常誘電相である[27-28].したがって,低温から温度を

上げていくと,ある温度で強誘電相から常誘電相に相転移し,逆に,常誘電相から温度を下 げていくと,同じ温度で強誘電相に相転移する.この相転移は,可逆的であり,相転移する 温度がキュリー温度である.PZTのキュリー温度は,一般的に

150~350 °C

であり,圧電性 能の高いものは,キュリー温度が低く,使用できる温度環境が制限される.一方,キュリー 温度が高いものは,圧電性能が比較的低いが,使用できる温度環境が幅広い.

1.2.3 強誘電体(圧電体)の分極

圧電セラミックス材料として成型された,代表的な圧電体である

PZT

の表面を

SEM

によ って観察した結果を図

1-4

に示す.

図に示すように,一般的な圧電セラミックス材料は,小さな圧電体の粒子の焼結体である.

これは,圧電体を単結晶の状態で成長させることが困難であり,圧電セラミックス材料を製 造する際,小さな粒子を集めて加圧成型した後に焼結するためである.さらに,圧電セラミ ックス材料を形成する粒子も単結晶ではなく,内部には,さらに細かい分域(ドメイン)が 存在する.

PZT

を含む強誘電体の代表的な結晶格子は,図

1-2

に示したような正方晶系のペ ロブスカイト型であり,格子中央の原子が格子の中心にないため,結晶の非対称性から圧電 効果を示す.分極する前の強誘電体の結晶は,図

1-4

に示すように,隣り合うドメインで格 子の中心にある原子の位置が異なり,自発分極の方向が直行または反平行となっている.し

(14)

8

たがって,自発分極の方向が打ち消し合うため,圧電効果を示さない[29,73-76].

一方,強誘電体を一定以上の電場中に置いた場合,自発分極の方向が電場方向と一致する ドメインは,電場方向にひずみ,一致しないドメインは,自発分極の方向が電界方向に近い

方向に

90 ˚または 180 ˚回転(ドメインスイッチング)する.ドメインスイッチングによっ

て,図

1-5

に示すように,ドメインよりも大きな領域で自発分極の方向が揃い,自発分極の 方向が電場方向と一致するドメインのひずみと併せて大きなひずみが生じる[73-76].

このドメインにおいて生じたドメインスイッチングを含むひずみは,電場を取り去った 後にも維持されるため,電場を取り去った後も圧電体は,大きな圧電効果を示す.このドメ インスイッチングによって自発分極の方向が揃うことを分極という.以後,本報告書におけ る分極とは,ドメインにおける自発分極の方向が揃うことを指し,その処理を分極処理とす る.

強誘電体を電場の中に置いた場合の電場と分極の関係を図

1-6

に示す[30-31,73-75].図中 の横軸

E

は電場(V/m),縦軸

P

は分極(C/m2

)である.図の場合,E>0

は正電場,E<0は負電 場を示す.

正電場を大きくする(図中①の過程)と,分極は急速に増大し,飽和値に達する.この時 の飽和曲線の外挿値

P

sが上述した自発分極の大きさである.つづいて,加える電場強度を 減少させて

0

にしても(図中②の過程),分極の値は

0

にはならない.つまり,分極が維持 されることとなる.この時の値

P

rが残留分極である.この残留分極を取り除くためには負 電場を加える必要があり,ある一定以上の負電場を加えると(図中の③の過程),分極の方 向が逆転する.さらに負電場を増加させると,正電場と同様に分極は飽和する.このように,

強誘電体は電場と分極の関係において履歴曲線(ヒステリシス)を描く.また,図中の外挿 線

A

は強誘電体に非常に弱い電場を加えたときの履歴曲線の傾きを示す.この外挿線

A

の 傾きは次式で示される.

( 𝜕𝑃

𝜕𝐸 ) = 𝜀

0

𝜒 (1)

ここで,ε0は真空の誘電率(8.85410-12

F/m),χ

は分極率である.

さらに,電界の中において誘電体表面における電気変位または電束密度

D(C/m

2

)は分極 P

と次式の関係で示される.

𝐃 = 𝜀

0

𝐄 + 𝐏 (2)

ここで,Dと

E

は次式の関係がある.

𝐃 = 𝜀𝐄 (3)

(15)

9

式(3)より,誘電体表面における電気変位

D

は電界

E

の強度に比例する.この時の比例定 数

ε

が誘電率(F/m)であり,誘電率は,物質に固有の値である.上述した(2),(3)式から,分 極率

χ

と誘電率

ε

との関係は次式のように表される.

𝜒 = 𝜀

𝜀

0

− 1 = 𝜀

𝑟

− 1 (4)

ここで,εrは物質の誘電率と真空の誘電率の比を示す比誘電率である.

式(1)~(4)をまとめると,誘電率

ε

が大きいほど分極

P

は僅かな電場

E

で増加することと なる.つまり誘電率

ε

が大きいほど分極し易く,分極の値も大きくなる.

Figure 1-5 Schematic image of ferroelectric materials cause d by polarization.

Figure 1-4 SEM image of lead zirconate titanate, PZT (5000) and schematic images of dipole moment alignment.

SEM image of PZT

(16)

10

Figure 1-6 Relationship between polarization (P) and electric filed (E).

1.3 既存の圧電材料の圧電性能 1.3.1 圧電材料の圧電性能

前述したように,既存の圧電材料は大きく分けて無機材料の圧電セラミックスおよび有 機材料の圧電フィルムに分けられる.表

1-1

にそれぞれの材料において最も一般的な

PZT

および

PVDF

の圧電性能等を示す[72-73].

表中の

g

および

d

は,圧電材料の圧電性能を示す指標であり,電圧出力定数および圧電 ひずみ定数といわれる.圧電材料の圧電性能は,以下に示す圧電方程式に従う[13,19].

[𝐒 𝐃 ] = [𝑠

𝐸

𝑑

𝑡

𝑑 𝜀

𝑇

] [𝐓 𝐄 ] (5)

[𝐒 𝐄 ] = [ 𝑠

𝐷

𝑔

𝑡

−𝑔 1

𝜀

𝑇

] [𝐓 𝐃 ] (6)

ここで,Tは応力,Sはひずみ,Dは電束密度、Eは電場,sは弾性コンプライアンスで ある.また,添え字の

E

E=0

E

が一定(電極間が短絡),Dは

D=0

D

が一定(電極 間が開放)および

T

T=0

T

が一定(圧電材料が自由な状態)であることを示し,tは転 置行列であることを示す.

式(5)および式(6)より,dおよび

g

は,以下の式で表される.

𝑑 = ( 𝐒 𝐄 )

𝑇=0

= ( 𝐃 𝐓 )

𝐸=0

(7) 𝑔 = ( 𝐒

𝐃 )

𝑇=0

= − ( 𝐄

𝐓 )

𝐷=0

(8)

式(7)は,圧電材料に力を加えずに電場を印加した際に生じるひずみおよび電場を印加せ

(17)

11

ずに力を加えた際に生じる電気変位を示す.また,式(8)は,圧電材料に力を加えずに電気変 位を印加した際に生じるひずみおよび電気変位を印加せずに力を加えた際に発生する電場 を示す.つまり,dは,電圧からひずみおよび応力から電流への変換効率を示し,gは,電 流からひずみおよび応力から電圧への変換効率を示す.

1

より,PZTは,

d

が大きいことを利用して,電圧を加えた際に駆動するアクチュエー タやモータのような材料として利用される他,力を加えた際に電荷を発生するセンサとし ても利用される.一方,圧電フィルムは

d

が小さいために,アクチュエータやモータとして の使用は困難であるが,

g

が大きいため,力を加えた際に電圧を発生するセンサのような材 料に利用される.また,比誘電率で比較すると,圧電セラミックスが圧電フィルムよりも非 常に大きいことから,前項で述べたように,圧電セラミックスは,分極が比較的容易である のに対し,圧電フィルムの分極は困難である.

Table 1-1 Properties of conventional piezoelectric lead zirconate titanate PZT, and poly(vinylidene difroride), PVDF.

PZT PVDF

Chemical Fomula Pb(Ti,Zr)O

3

-(CF

2

-CHF)

n

-

g (10

-3

[V·m/N]) 23 216

d (10

-12

[m/V]) 110 23

Relative Dielectric Constant 1200 12

General Use Actuate, Sensor Sensor

1.3.2 PZT

の利点および欠点

圧電セラミックスである

PZT

は,1952年に基本的な組成が発見され,その後の圧電性能 の性能向上に伴って,現在,最も一般的な圧電材料として使用されている.PZTは,表

1-1

に示したように,

d

が非常に高く,高い周波数でも大きな変位が得られることから,超音波 振動子や超音波モータとして一般的に利用される.さらに,原理等の詳細については

5

章で 述べるが,近年は,

PZT

を振動騒音低減デバイスとして利用することによって,従来の振動 騒音低減手法と比較して,省力化,省スペース化したスマートダンパーシステムとして期待 されている.

PZT

を振動低減デバイスとして利用する最初の提案は,Forwardによって,光学センサの 振動対策として研究された[12].この研究では,振動する

PZT

に接続した抵抗やコンデンサ

(18)

12

の外部電気回路により,振動する

PZT

から発生する電気エネルギーを消費させ,受動的に 振動を低減させる手法が提案されており,現在でもこの振動低減方法が利用されている.そ

の後,

Hagood

らによって,振動低減現象が圧電方程式を用いて理論的に説明され[13],宮山

らや藤田ら,久松らによってスマートダンパーの構造が提案された[14-15].また,久松や山 田らの研究により,機械モデルを等価電気モデルに置き換えることによって,振動低減が動 吸振器と同様の機構によって発現することがわかった[18-19].さらに,同理論により,PZT 自体の振動や

PZT

を張り付けた板の振動が抑制されることを利用して,山田らは遮音率や 吸音率の向上による騒音低減デバイスを提案している[19].受動的な振動低減以外にも,近 年では,PZTに電場を印加しながら,加振することによって,弾性率を変化させる研究[17]

や,

PZT

のセンサおよびアクチュエータの両性能を利用して能動的に振動を制御し,低減す る手法も研究が進められている[20,22].

上述した,振動騒音低減デバイスとして

PZT

を利用する場合に重要になるのが,電気エ ネルギーと機械エネルギーの変換効率を示す電気機械結合係数である.電気機械結合係数 が大きい程,振動低減効果は大きい.PVDFの電気機械結合係数が約

10 %であるのに対し

て,一般的な

PZT

は電気機械結合係数が

40~60 %であるため,振動騒音低減デバイスとし

ては,PZTの方が有利である.また,電気機械結合係数が高い

PZT

は,機械エネルギーか ら電気エネルギーへの変換効率が高いた得ため,振動発電材料としても研究されている.近 年の研究では,Richardら,Shuらおよび安達らによって,PZT に常時,振動および荷重が 加わる状態において発生する電荷を,全波整流回路を通じて整流することによって疑似的 な直流電流を作り出し,発電および蓄電する技術が提案されている[1-3].ここで,電気機械 結合係数は,以下の式で表される[19].

𝑘 = 𝑑

√𝜀𝑠 (9)

ここで,kは電気機械結合係数である.

式(9)からわかるように,

k

d

が大きく,弾性コンプライアンスおよび誘電率が低いほど 大きくなる.

PZT

は表

1

に示すように,dが大きく,セラミックスであるため,弾性率が高 く,弾性コンプライアンスも小さいため,電気機械結合係数が大きい.

一方,一般的な

PZT

の縦弾性率(以下,ヤング率とする)は,10 GPaである[72-73].こ れは,PVDFのヤング率が約

0.3 GPa

であるのと比較すると,数

10

倍高い[72-73].PZTの 場合,この高いヤング率が欠点となる.ヤング率が高い材料は,堅い一方で,非常に脆く,

PZT

の場合,大きな変形が加わると図

1-7

に示すように割れてしまう.割れることを保護す

(19)

13

るためには,

PZT

を単体ではなく,板などに張り付けて使用する必要があり,さらに,セン サとして利用する際には,センサ自体が保護材のために大きくなってしまう.

もう一つの欠点としては,大面積や複雑な形に

PZT

を成型するのが困難なことである.

これは,

PZT

の製造工程における成型の過程において,加圧および加熱が必要であり,大面 積の成型には向かないためである.また,ヤング率が高いことから,非常に脆いため,わず かなひずみ等によって割れてしまうことも大きな面積での作製を困難にしている.現在,作 製されている

PZT

の大きさは,最大でも

100 mm100 mm厚さ 1 mm

程度である[72].

Figure 1-7 Photo image of ductile property of PZT plate.

1.3.3 PVDF

の利点および欠点

現在,圧電フィルムとして最も一般的に使用されている

PVDF

は,1969年に河合によっ て発見された[35].PVDFの圧電性能は,それまでに圧電性能が見出されていた生体高分子 のセルロース等と比べて,約

10

倍大きいものであった[32-34].また,Bergmanらにより,

PVDF

による

2

次高調波発生(以下,SHGとする)材料の提案がなされた[38].SHGは,入 射した光の周波数に対して,2倍の周波数の光を発生させる現象であり,PVDFの大きな焦 電性によって生じる.さらに,その後の

PVDF

の結晶構造の解析によって,

PVDF

の圧電現 象は

PVDF

の結晶構造によって生じるものであることが解明された.PVDFには,図

1-8

に 示すように,

晶,

晶および

晶の

3

種類の結晶構造がある[37-38].この中で,

晶が最も 安定的に存在できるため,通常の結晶構造は,

晶となるが,

晶は双極子モーメントの方 向が結晶格子内で互いに打ち消し合うため,自発分極はなく,圧電性能も示さない.一方,

PVDF

100~150 °C

の比較的低温で延伸(ネッキング延伸)した場合には,

晶および

の結晶構造が現れる.この状態のまま,高電場を印加しながら冷却することにより,

晶お

(20)

14

よび

晶の結晶構造が固定化され,圧電性能を示す圧電フィルムとなる[37-38,40,42].その後,

Hahn

らによって,PVDF にポリメタクリル酸メチル(PMMA)をブレンドすることによっ て,

PVDF

の結晶構造に影響を与えることが見出され[39],吉田らによって,

PMMA

とのブ レンドによる結晶構造の変化が示差走査熱量測定(DSC)および赤外分光分析(FT-IR)に よって,詳細に観測された[41].さらに,現在では,

PVDF

の(-CH2-CF2-)を(-CHF-CF2-)に置 き換えたフッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンの共重合体

P(VDF/TrFE)によって,さら

に圧電性能が向上し,現在,一般的に使用されているような圧電フィルムとなった[43].現 在では,センサや

PZT

と同様の騒音低減デバイスとしても利用が期待されている.

PVDF

は,表

1

に示したように

g(単位力当りの発生電圧量または)が大きいため,荷重

センサとしての提案が数多くなされている[4-11].近年におけるそれらの例を以下に示す.

Luo, 1999

:構造物のハリ等に

PVDF

フィルムを貼付け,ハリを加振した際に

PVDF

から

発生する電荷を周波数解析することにより,損傷を発見する手法の提案がなされた[4].

Roberto, 2000:車のタイヤに PVDF

を適用することにより,タイヤと地面の接触面にお

ける荷重分布を測定した[5].

Odan, 2003:PVDF

の焦電性能を利用した光の照射量を測定する装置のセンサ[6].

Wang

ら,2003:睡眠時の呼吸や鼓動のモニタリングセンサとして

PVDF

を使用するこ とを提案した[7].

Khanna, 2004:低圧の圧力を小型の装置で測定する際のセンサ[8]

・ 中原,2004:ボルトのゆるみをモニタリングするセンサ[9]

Gu,2005

PVDF

を用いて構造物の健全性をモニタリングし,モニタリング結果を非接触

で受信するセンサを提案した[10].

・ 藤本,2007:荷重の有無を検知するだけでなく,荷重と出力電圧または電荷を校正するこ とにより,加わった動荷重の大きさを測定する測定器への

PVDF

の適用を提案した[11].

さらに,

PVDF

PZT

よりも

d(単位電圧あたりの発生ひずみ)が小さいが,騒音低減デ

バイスとしての提案もなされている.PVDF の騒音低減デバイスとしての最初の提案は,

1999

年に

Guigou

らによってなされた.Guigouらは,飛行機の操縦席の内装材に

PVDF

使用し,騒音の入射に伴う

PVDF

の振動を検知するセンサ,検知した振動と逆位相の電圧 を出力する変換機および出力された電圧によって駆動するアクチュエータの構成によるア クティブノイズコントロール(以下,ANC とする)によって,操縦席内の騒音を低減させ た[21].その後,伊達らによって,PZTを用いた振動騒音低減と同様に,外部電気回路の接 続によって

PVDF

の弾性率を変化させることにより,遮音率を向上させる提案がなされた

(21)

15

[16,23].さらに,児玉らによって,外部電気回路への負性容量回路の導入およびフィルムの

形状を湾曲させるなどの改良により,大幅な遮音率の増加が見出された[24].

以上のように,

PVDF

はセンサや騒音低減デバイスとして数多く提案されており,今後も 利用が期待される材料であるが,以下に示す欠点がある.

1

に示すように,dが低いことに加え,PVDFは,分極状態を固定化することが困難で あり,延伸を加えながら,約

10 kV/mm

の高電場を印加しなければならない.これは,PZT

2~3 kV/mm

の印加電場であることと比較すると数倍の大きさである.また,100 μm程度

の厚さが限界であり,厚い材料は作製することが困難である.これは,様々な箇所における 適用への支障となる.この他,大面積での作製が可能であるが,現在,一般的な大きさは,

300 mm300 mm

程度の大きさであり,それ以上の大きさのものは,非常に高価となる.

Figure 1-8 Crystal structures of PVDF.

1.4 複合圧電材料

1.4.1 複合圧電材料の分類

PZT

および

PVDF

の欠点である,脆さや厚さ,大きさ等の成型上の課題および脆さ等の 物性の課題を克服する圧電材料として,圧電材料と高分子材料とを複合した複合圧電材料 がある.複合圧電材料の研究は,1970年代に始められ,1976年には,古川らにより,エポ キシ樹脂と

PZT

を複合した複合圧電材料を用いて複合圧電材料の誘電率および圧電性能に 関する理論的な研究がなされた[46].さらに,

Newnham

らによって複合圧電材料における圧 電セラミックスと母材との接続性に関する理論が研究され,その後,この理論に基づいた新 たな複合圧電材料が多く開発された[47].

(22)

16

複合圧電材料における圧電材料と母材の接続性は,圧電材料が接続していないことを示 す

0

から,3次元(方向)に接続していることを示す

3

までの

4

種類の接続性,および母材 についても,0から

3

までの

4

種類の接続性の組合せである.Newnhamらは,複合圧電材 料の接続性を表記するため,圧電材料の接続性の次元(方向)を最初に記載し,母材の接続 性の次元(方向)をその次に記載する記載方法を示した[47].

Newnham

らが示した複合圧電 材料の接続性は,0-0,0-1,0-2,0-3,1-1,1-2,1-3,2-2,3-2,3-3の

10

種類に分類される が,過去に主に研究されたもの,および現在でも開発が進められているものは,0-3および

1-3

複合体である.0-3および

1-3

複合体の接続性を示す概略図を図

1-9

に示す.

Figure 1-9 Schematic images of piezoelectric composite according to connectivity and alignment of piezoelectric materials.

1.4.2 0-3

複合体

0-3

複合体は,作製が比較的容易であることから,複合圧電材料において最も始めに,数 多く研究された.0-3複合体は,圧電セラミックスの接続性が無いのに対して,圧電セラミ ックスを覆う母材は

3

次元(方向)の接続性がある.前述した古川らの研究した複合圧電材 料は,圧電材料に

PZT

を用い,母材にエポキシ樹脂を用いた

0-3

複合体であった[46].

1983

年には,坂野らによって,母材にクロロプレンゴムを用い,圧電材料に

PZT

およびチタン 酸鉛(PbTiO3)を用いた

0-3

複合体が作製された[48].その後,1984年には,Newnhamら によって,シリコーンゴムと

PZT

および

PbTiO

3の組合せの

0-3

複合体が作製された[49].

これらの研究により,0-3複合体の

d

は,混合する圧電セラミックス粒子の量および粒子

(23)

17

径が大きいほど大きくなることが示された.これらの作製された

0-3

複合体の多くは,水中 マイクロホンに用いるために開発されたものである[47-49].水中マイクロホンは,受信感度 を高めるために,水との密度差や弾性率差の小さいインピーダンスマッチングの良い材料 をマイクロホンの形に合わせて成型することが求められる.圧電セラミックスは,密度およ び弾性率が非常に高く,成型性にも乏しいため,これらの材料としては適さない.一方,0-

3

複合体は,密度および弾性率が圧電セラミックスよりも水に近く,成型性にも富むため,

水中マイクロホンに適しており高い性能を示すことが方向されている[47-49].現在では,エ ポキシ樹脂に

PZT

粒子およびカーボンナノチューブを複合させた

0-3

複合体の圧電性能を 利用した制振材料が

Tian

らによって提案され[70],Osama らによってそのような材料のメ カニズムモデルが示された[54].また,谷本らによっても,CFRPの内層に

PZT

粒子を混合 し,CFRPの板の振動を制振する技術が提案されている[53].

1.4.3 1-3

複合体

0-3

複合体の次に開発されたのが,

1-3

複合体である.

1-3

複合体は,母材に

3

次元(方向)

の接続性があり,圧電セラミックスにも

1

次元(方向)の接続性がある.1-3複合体は,0-

3

複合体とほぼ同時に,

1970

年代後半から

Newnham

らによって開発が進められ,

1980

年に

は,

Klicker

らによって,柱状の

PZT

とエポキシ樹脂を組合せた

1-3

複合体が作製され,0-3

複合体よりも高い

d

を示すこと,および

PZT

の混合比の増加に伴って

d

が増加することが 確認された[56].そのご,Safariらによって球状の

PZT

とエポキシ樹脂に加え,球状の

PZT

とポリウレタン樹脂を組合せた

1-3

複合体が作製され,dおよび

g

ともに高い値を示すこと が確認された[55].また,Fakri らや

Zhen

らによって,1-3複合体の弾性的な挙動が研究さ れ,10~20 Vol%の低い体積分率の

PZT

の混合でも,弾性率が急激に増加し,PZTの体積分 率の増加に伴って弾性率が増加することが報告された[63,65].さらに,Odegardは,有限要 素法を用いた理論計算から,

0-3

複合体と

1-3

複合体の圧電性能およびヤング率を求め,

0-3

複合体の場合,少量の圧電セラミックス粒子の混合量では,圧電性能およびヤング率の増加 が小さいのに対して,1-3複合体の場合は,少量の混合量でも大幅に増加することを理論的 に求めた[52].

これらの作製した

1-3

複合体の応用として,Chanらは,柱状の

PZT

とエポキシ樹脂によ る

1-3

複合体の高い

d

および

g

を利用して,超音波変換機への適用を検討し[61],Smithら は,水中マイクロホンへの適用を検討した[62].さらに,

Ren

らは,

1-3

複合体の水中マイク ロホンの感度への適用において,複合体内の柱状の

PZT

の配列方向とマイクロホンの感度 について研究した[64].また,現在も,Lawらおよび

Poizat

らによって,1-3複合体に,外

(24)

18

部電気回路として抵抗を接続することにより,振動を低減する手法が提案されている[68-

69].これまで述べた, 1-3

複合体の多くは,柱状および球状の圧電セラミックスとエポキシ

樹脂等の高分子材料の母材との組合せで製作されており,このような組合せでは,Fakri ら が求めたようにヤング率が高く,1-3 複合体としての柔軟性を確保することが困難である.

そのため,比較的変形の少ない箇所などでは適用が可能であるが,変形の大きな箇所等では 適用が困難である.

そこで,近年になって,PZTを繊維状とする技術が開発されたことから,現在では,PZT 繊維とゴム材等の弾性体との組合せの

1-3

複合体が開発されている.現在の

1-3

複合体の多 くは,この組合せで製作される.このような

1-3

複合体の代表的なものとして,

McAlpine

ら は,シリコーンゴムの上に繊維状の

PZT

をプリントする手法を開発し,柔軟な

1-3

複合体 としてエネルギー変換機等への適用を検討している[57-59].

Yi

Chen

らも,

PZT

繊維と高 分子材料との組合せの新たな

1-3

複合体の作製方法を開発している[60,66].その他にも,

Sporn

らは,配列させた

PZT

繊維を高分子フィルムに積層させて

1-3

複合体を作製した[49].

以上のように,1-3複合体は,高い圧電性能を利用して,センサやアクチュエータとして の研究が盛んに行われている一方で,高い性能を持つ

1-3

複合体は,

PZT

繊維が高価である ことや,作製方法が煩雑である等の課題がある.

1.4.4 0-3

および

1-3

複合体以外の複合体

0-3

複合体および

1-3

複合体以外の複合圧電材料としては,3-3 複合体や

2-3

複合体があ る.3-3複合体は,Newnhamらによって,サンゴの骨格中に

PZT

を含浸した後にサンゴを 溶解し,そこにシリコーンゴムを注入するといった方法で作製された[47].3-3 複合体は,

圧電性能が高いのに対して,作製方法が非常に複雑である.また,2-3複合体として,現在

では,

Micro-Fiber Composite(以下, MFC

とする)と呼ばれる,編み込んだ

PZT

繊維とエポ

キシ樹脂のような高分子材料を積層した複合体が開発され,MFC を用いることにより,高 分子材料の非線形やヒステリシスを制御する集合が

Schröck

によって提案されている[67].

1.4.5 圧電ゴム

複合圧電材料の中で,比較的容易に作製できるため,大面積や複雑な形への成型ができ,

さらに柔軟性を有する材料として,圧電ゴムがある.圧電ゴムは,ゴム材と母材とした複合 圧電材料であり,複合圧電材料が開発された当初から研究がなされている代表的な複合圧 電材料である.本研究において,筆者らは圧電ゴムに着目した.圧電ゴムの詳細については,

2

章で述べる.

(25)

19 1.5

研究の目的

本研究の目的は,ゴム材の柔軟性を確保したまま圧電性能を向上させることにより,

PZT

および

PVDF

の課題を克服し,幅広い箇所で適用が可能な圧電ゴムを開発することである.

開発する圧電ゴムは,従来の

1-3

複合体の圧電材料よりも容易に作製できることに加え,具 体的な目標値として,ヤング率は,PZTおよび

PVDF

のヤング率(50~150 GPaおよび

1~3 GPa [73])よりも低い 500 MPa

以下,dは,PVDFの

d (約 30 pC/N)よりも大きく,PZT

d

(80~700 pC/N)よりも僅かに小さい 100 pC/N

以上と設定した.

さらに,開発した圧電ゴムについて,従来の圧電材料では適用が困難であった箇所への 適用可能性についても検証する.

(26)

20

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(32)

26

(33)

27

第 2 章

0-3 複合体圧電ゴム

(34)

28 2.1

圧電ゴムの概要

1

章でも述べたように,現在,一般的に利用されている

PZT

のような圧電セラミック スは,硬くもろいことや,大きな面積や複雑な形状に作製することが困難であるといった課 題がある.そのため,図

2-1

に示すような,振動の変位が大きい箇所,振動伝達を防止する 箇所,さらに,衝撃荷重の加わる箇所等での使用には適さない.また,同様に

PVDF

のよう な圧電フィルムも延伸しながら分極するというように作製方法が特殊であるため,大面積 で作製する場合は非常に高価となることや,フィルム状の薄い材料の作製に限られるため 振動伝達を防止する箇所での適用は困難である.さらに,

PZT

よりも圧電性能に劣る等の課 題がある.

そこで,従来からの防振材,緩衝剤であるゴム材に圧電性能を付加した材料(以下,圧電 ゴムと称する)が,ゴム材の利点である柔軟性や成型性の良さを活かして,前述した箇所や 幅広い分野で使用できる圧電材料として期待される.

通常,ゴム材には,多くの充填剤が混合されるため,ゴム材中への混合技術等が確立され ている.したがって,圧電ゴムは,他の高分子材料を母材とした複合圧電材料よりも作製が 比較的作製が容易である.また,圧電ゴムは,ゴム材中に圧電セラミックス粒子を混合して いるため,エポキシ樹脂等の高分子材料を母材とする複合圧電材料よりも柔軟性が高いと いう利点がある.さらに,ゴム材の成形性の良さを活かし,複雑な形状や大面積の圧電ゴム も作製できる.これらの利点を利用して,複合圧電材料が開発された当初から研究され,

様々な圧電ゴムが製作された[1-3].当初の研究のほとんどは,圧電セラミックスよりも水と の密度差や弾性率差が小さく,インピーダンスマッチングの良い圧電ゴムを水中マイクロ ホンへ適用することを目的としたものであった[4].また,水中マイクロホン以外の適用箇 所として,圧電ゴムの利点である柔軟性等を保持したまま,圧電性能を向上させることがで きれば,現在,ゴム材が利用されている振動伝達を防止する箇所や衝撃力を緩和する箇所等 での使用が可能となる.さらに,防振材料や緩衝材料としての性能に加え,圧電性能も利用 することによって,そのような箇所でのセンサやアクチュエータとしての利用の幅が大き く広がることが期待される[5].

本章では,ゴム材中に圧電セラミックス粒子が分散して存在する

0-3

複合体圧電ゴムにつ いて,混合するゴム材の材質および圧電セラミックス粒子の圧電性能や粒子径が圧電ゴム の圧電性能に与える影響について検討した.

(35)

29

Figure 2-1 Application images of piezoelectric rubber.

2.2 0-3

複合体圧電ゴムの原理

圧電ゴムは,図

2-2

に示すように,ゴム材中に圧電セラミックス粒子を混合した材料であ り,分極処理することによってゴム材中の圧電セラミックス粒子が圧電性を示すため,材料 全体として圧電性を示すことになる.

圧電セラミックス粒子の分極処理の際には,粒子を混合したゴム材に高電場を印加する ため,ゴム材表面に電極を付与する必要がある.

Figure 2-2 Schema images of piezoelectric rubber and polarization.

2.3 0-3

複合体圧電ゴムの作製

0-3

複合体圧電ゴムの作製に用いた材料および作製方法を以下に示す.

2.3.1 作製材料 2.3.1.1 ゴム材

圧電ゴムの作製には,ニトリルゴム(以下,

NBR

とする),クロロプレンゴム(以下,CR とする),フルオロシリコーンゴム(以下,FVMQとする)およびエチレンプロピレンゴム

Figure 1-2    Crystal structure change of barium titanium(IV) oxide, BaTiO 3  under electrical  filed
Figure  1-4    SEM  image  of  lead  zirconate  titanate,  PZT  (5000)  and  schematic  images  of  dipole moment alignment
Figure 2-16    Relationship between the relative dielectric constant,   r , and the poling time for  Mixed DPZ in EPDM at 35 Vol% (a) and Mixed DPZ in NBR at 35 Vol% (b)
Figure 2-19    SEM image of piezoelectric rubber mixed DPZ particles in FVMQ-A at 45 Vol%
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参照

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