第 4 章 圧電ゴムの適用
4.3 圧電ゴムの鉄道分野におけるセンサへの適用の検討
4.3.1 軸受の異常振動検知センサへの適用の検討
鉄道車両は,車体下の台車によって駆動する.台車には,モータをはじめ車軸および車輪 が含まれており,台車の車輪および車軸の回転を支える装置に車軸軸受(以下,軸受とする)
が使用されている.この軸受内部に損傷が発生した場合,車軸が軸受内において正常に回転 できず,車軸の焼きつき等,重大な事故に発展する可能性がある.そのため,早期に軸受の 損傷が発見できるセンサの開発が期待されている.一方,軸受の損傷は,軸受の外観から判 断することができず,車両走行中に検知する必要がある.軸受に損傷等の異常が発生した場 合,通常では発生しない異常振動が発生する.そのため,現在,検知が可能なセンサは,軸 受の振動を測定する振動加速度センサであるが,振動加速度センサの場合,軸受外部にセン サを取付けるため,車両走行の際に常時損傷を監視するには取付け方法等に課題がある.
そこで,軸受外部にセンサを取付けずに軸箱の異常振動を検知するセンサとして,圧電ゴ ムの適用を検討した.
4.3.1.1 圧電ゴムを内蔵した軸受防振ゴム
通常,軸受を封入する軸箱の上には,図4-10に示すように,軸受の保護および振動伝達 の防止を目的として軸受防振ゴム(以下,防振ゴムとする)が設置されている.そこで,こ の防振ゴムを利用して,軸箱の異常振動の検知が可能か検討した.
センサを軸受外部に取付けないためには,防振ゴム内に圧電ゴムを設置する必要がある.
そこで,圧電ゴムを内蔵した防振ゴム(以下,センサ防振ゴムとする)を作製し,異常振動 の検知性能を検討した.防振ゴムには,車両の走行状態に応じて衝撃荷重が加わるため,セ
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ンサ防振ゴムに使用できる圧電材料には,圧電ゴムが適している.センサ防振ゴムの内部の 内部および外観を図4-11に示す.
センサ防振ゴムを作製する際は,図4-11 に示すように,未加硫の防振ゴムの半面上に圧 電ゴムを設置した後にもう半面の防振ゴムを上面に設置し,加硫成型する.加硫成型する際 は,約150 °Cに加熱するため,内蔵する圧電ゴムには,耐熱性に加え,センサとして高い 感度および大きな荷重に対する耐久性が求められる.そこで,圧電ゴムには,母材をシリコ ーンゴムとし,圧電セラミックス粒子をPZT Z-711とした配向型を用いた.PZT粒子の平均 粒子径は約0.9 mmであり,粒子濃度は約30 Vol%である.図4-11に示すように,配向型は 4枚(P-R1~4)使用し,軸受に加わる荷重分散を評価した.検証試験における4枚の配向型 の配置および人工傷の位置を図4-12に示す.損傷軸受における人工傷は,配向型P-R1の下 に存在する.また,センサ防振ゴムからは,配向型の電極に接続している配線が外部に出て いる.この配線から,センサ防振ゴムに荷重が加わった際に配向型から発生する信号を取り 出す.
Figure 4-10 Schematic image of the railway bogie installed vibration isolating rubber.
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Figure 4-11 Photo image of inside and outside of sensing vibration isolating rubber.
Figure 4-12 Schematic image of the placement of the aligned-type inside of the sensing vibration isolating rubber.
4.3.1.2 軸受損傷検知試験 (1) 試験概要
検証試験には,実際の台車の車軸軸受を模擬した軸受試験機を用いた.軸受には,損傷の 発生していない軸受(以下,正常軸受とする)および損傷として幅35 mmの人工傷を軸受 外輪に付けた軸受のある軸受(以下,損傷軸受とする)を用いた.
試験では,軸受の回転試験(以下,回転試験とする)に加え,軸箱に軸箱に正弦波の荷重 を加える試験(以下,正弦波試験とする)も併せて実施した.試験状況を図4-13に示す.
センサ防振ゴムから発生した電気信号を測定する方法は,チャージアンプを介した電荷の 測定(以下,電荷測定とする)および直接電圧を測定(以下,電圧測定とする)する2種類 の測定方法を検証した.
正弦波試験は,荷重条件を50 kN10 kN,周波数条件を1,3,5,7,10Hzとした正弦波
Inside Outside
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荷重をセンサ防振ゴムに加え,荷重およびセンサ防振ゴムからの信号を測定した.正弦波試 験におけるセンサ防振ゴムからの信号は電荷測定によって測定した.
回転試験は,センサ防振ゴムに50 kNの荷重を負荷した状態で軸受を70および150km/h 相当で回転させ,荷重およびセンサ防振ゴムからの信号を測定した.回転試験におけるセン サ防振ゴムからの信号は,電荷測定および電圧測定の2種類で測定した.測定した信号は,
周波数解析し,軸受けの回転に起因して発生する振動の周波数を求めた.また,回転試験で は,正弦波試験において,荷重と発生電荷の関係から得られるセンサ防振ゴムの荷重に対す る発生電荷の校正値を用い,発生電荷から荷重を算出した値と試験機の荷重センサの荷重 とを比較した.
Figure 4-13 Photo image of the detecting test of bearing defect for sensing vibration isolating rubber.
(2) 試験結果および考察-1(正弦波試験)
正弦波試験における1Hzの載荷試験の電荷測定結果を図4-14に示す.
荷重に応じた電荷が,荷重に遅れて発生している.荷重に遅れて電荷が発生する要因は,
センサ防振ゴムの場合,配向型が防振ゴム内に設置されているため,防振ゴムの粘性によっ て内部に伝達する荷重が遅れるためである.また,配向型から発生する電荷は,4枚の配向 型(P-R1~4)において,その差が小さい.これは,4枚の配向型にほぼ均一に荷重が加わっ ていることを示している.次に,荷重および電荷の時間波形を周波数解析した後,加振周波 数における荷重の振幅値を発生した電荷の振幅値で除した値を算出した.ここで,算出した 値は,印加した荷重に対する単位力当りの発生電荷量であるため,センサ防振ゴムの圧電ひ ずみ定数d33となる.結果を図4-15に示す.
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周波数の増加とともにd33は減少しているが,7 Hz以上の周波数域でほぼ一定となる.こ こで,得られたd33の妥当性を評価するため,センサ防振ゴムの静的ばね定数およびセンサ 防振ゴムに内蔵する前の配向型のd33を用いて,センサ防振ゴムとした場合のd33を算出し た.以下に結果を示す.
配向型を2枚内蔵したセンサ防振ゴムの静的ばね定数は38.1 kN/mm,4枚内蔵したセン サ防振ゴムの静的ばね定数は36.7 kN/mmであった.配向型以外のゴムのばね定数が高いた め,配向型の枚数が多い程,ばね定数は低下する.ここで,以下の式より,配向型以外のゴ ムのばね定数を求めた.
𝐾𝐴= 𝐾1(𝑆 − ∆𝑆) + 𝐾2∆𝑆 (7) 𝐾𝐵= 𝐾1(𝑆 − 2∆𝑆) + 𝐾22∆𝑆 (8) ここで,𝐾𝐴は配向型を2枚内蔵した軸バネ防振ゴムの静的ばね定数,𝐾𝐵は配向型を4枚 内蔵した軸バネ防振ゴムの静的ばね定数,𝐾1は配向型が存在しない部位の防振ゴムの単位 面積当たりの静的ばね定数,𝐾2は配向型が存在する部位の単位面積当たりの静的ばね定数,
𝑆は軸バネ防振ゴムの面積,∆𝑆は配向型が存在する部位の面積である.
式(7)および式(8)を用いて求められた配向型の存在する部位のばね定数は,1.7 kN/mm,配 向型2枚の場合の配向型以外の部位の防振ゴムのばね定数は,34.7 kN/mm,4枚の場合は,
29.9 kN/mmであった.これらの値を用いて,4枚の配向型を内蔵したセンサ防振ゴムの1枚
の配向型に加わる力の割合を算出すると,0.046と求められる.これは,センサ防振ゴムに
荷重を10 kN加えた際に配向型1枚に加わる力が0.46 kNであることを示す.
センサ防振ゴムに内蔵する前の配向型のd33はP-R1:15.1 pC/kN,P-R2:16.3 pC/kN,P-R3:15.9
pC/kNおよびP-R4:16.8 pC/kNであった.ここで,センサ防振ゴムに内蔵する前の配向型の
d33は,荷重条件2 kN1 kN,周波数100 Hzで測定した際の結果である.このd33に,配向 型に加わる力の割合Fp 0.046をかけた値が配向型内蔵軸バネ防振ゴムのd33となる.計算結 果から求めたd33と実測のd33を比較した結果を表4-3に示す.
計算結果と実測結果は良く一致しており,実測から求められたd33は妥当な値と判断でき る.また,この結果より,センサ防振ゴムのd33を求めることで,センサ防振ゴムに加わる 荷重を測定できることが示された.一方,センサ防振ゴム内に設置した場合の配向型のd33
は設置前の約5 %に減少している.これは,センサ防振ゴムの場合,配向型以外のゴムの面 積が大きく,さらにばね定数も高いため,配向型に加わる荷重が全体に加わる荷重の約5 % に減少するためである.この結果より,センサ防振ゴムに用いる圧電ゴムとして,0-3複合 体圧電ゴムは設置前のd33が小さいため,検知感度の問題から使用に適さず,d33が高い配向
110 型の使用が適していることが示された.
Figure 4-14 Time output waves of force and deformation during vibration test at 1 Hz.
Figure 4-15 Frequency dependence d33 obtained from vibration test.
Table 4-3 Comparison of d33 between experimental result and calculation.
Aligned-Type
d33(pC/N)
Calculation Experimental
P-R1 0.70 0.67
P-R2 0.75 0.75
P-R3 0.74 0.78
P-R4 0.78 0.76
-20 -10 0 10 20
-20 -10 0 10 20
0 0.5 1 1.5
Force(kN)
Charge (103pC)
Time(s)
P-R1 P-R2
P-R3 P-R4
Force
0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0
0 5 10 15
d33(pC/N)
Frequency(Hz)
P-R1 P-R2 P-R3 P-R4
111 (3) 試験結果および考察-2(回転試験)
回転試験における正常軸受と損傷軸受との電荷測定時の周波数波形比較を図4-15に示す.
正常軸受,損傷軸受ともに,速度70 km/h相当の場合は7.5 Hz,速度150 km/hの場合は
16.5 Hzにおける発生電荷が大きい.この周波数は,車軸の回転周波数と一致しており,車
軸の回転によって発生した振動に起因して,配向型から電荷が発生していることを示して いる.一方,正常軸受と損傷軸受における発生電荷の違いは,100 Hz 以下の周波数域で小 さいのに対して,100 Hz 以上の周波数域で大きくなる.ここで,異常の軸受の損傷に起因 する振動は,速度70 km/h相当の場合,55 Hzに発生し,速度150 km/h相当の場合,118 Hz に発生する.したがって,結果では,基底周波数における発生電荷は小さいが,2次および 3次の高次の周波数における発生電荷が大きくなっていることがわかる.この結果より,線 セ防振ゴムから発生する信号を周波数解析することにより,軸受の損傷の判断が可能であ ることが示された.
次に,70 km/h相当の回転試験における試験機のロードセルの荷重値とセンサ防振ゴムの 荷重値との比較を図4-16に示す.図の(a)は正常軸受の回転試験結果,(b)は損傷軸受の回転 試験結果である.
正常軸受,損傷軸受ともに100 Hz以下の周波数域において,P-R1から算出した荷重は試 験機のロードセルの荷重よりも大きく,P-R2 から算出した荷重はロードセルの荷重よりも 小さい.一方,P-R3および4から算出した荷重はロードセルの荷重と良く一致している.
正弦波試験の場合,4つの配向型から発生した信号はほぼ同じであったため,これは,車 軸の回転に伴って,荷重の分散が変化したためと考えられる.結果より,車軸方向の荷重は,
軸端側に大きく付加され,車輪側はその反作用によって付加量が小さい.一方,車軸と垂直 方向の場合の荷重の分散は小さいものと考えられる.また,正常軸受には見られない,110 Hzの軸受の損傷に起因する振動に伴って発生する荷重は,車軸方向が大きく,その垂直方 向は小さい.これは,P-R1 の下に軸受の損傷が存在するためであり,損傷の検知感度を向 上するためには,センサ防振ゴム内に設置する圧電ゴムの配置を車軸方向と一致させる必 要があることが見出された.
回転試験における正常軸受と損傷軸受との電圧測定時の周波数波形比較を図4-17に示す.
損傷軸受の周波数波形には,正常軸受の周波数波形に存在しない周波数に電圧のピーク がみられる.このピークの周波数は,外輪に損傷がある場合に発生する周波数と一致してい る.また,電荷測定の場合と同様に,基底周波数における電圧値は小さいが,2次および3 次の高調波の電圧値が顕著に大きい.圧電材料に力を加えた際の加えた力と発生する電圧