第 3 章 配向型圧電ゴム
3.4 配向型における PZT 粒子の粒子径の影響
3.4.4 評価結果および考察
各測定による評価結果およびその考察を以下に示す.
3.4.4.1 配向関与率
粒子A~Eの印加電場と配向関与率の関係を図3-15に示す.
粒子径の小さい粒子A~Cは,電場1.5 kV/mm~2 kV/mmの場合に配向関与率が高いのに対 して,粒子径の大きい粒子D~Eの配向関与率は,電場1.5 kV/mmと比較して2 kV/mmの場 合に明確に高い.この要因について以下に考察する.
本検討におけるPZT 粒子の配向方法では,配向の初期段階において,粒子表面の帯電等 によって粒子が上側の正極に引きつけられる.ここで,粒子が上側の正極へ移動するために
0 10 20 30 40 50
0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4
Volume fraction (%)
Particle diameter (mm) A
B
C D E
64
は,粒子と電極の間に働くクーロン力が,重力と浮力の差および周りの媒体から受ける抵抗 力よりも大きい必要がある.粒子径の増加に伴って重力および抵抗ともに増加するため,粒 子の移動には,大きなクーロン力が必要となり,そのクーロン力を得るために大きな電場が 必要となる.
配向関与率の結果より,印加電場を2 kV/mmとした場合に,全ての配向型において高い 配向関与率が得られたため,以後の評価対象は,同電場を印加して作製した配向型とした.
Figure 3-15 Relationship between the Y (the ratio of the number of particles involving the alignments) and the strength of electric field for aligned-type using particle A ~ E.
3.4.3.2 比誘電率
配向型の粒子径と比誘電率の関係を図3-16に示す.
比誘電率は,粒子径の増加に伴って減少している.この要因について,以下に考察する.
配向型が母材と配列したPZT粒子の2部位から構成されているとする.この場合,図 3-17に示すように,配向型の上下面も母材および配列したPZT粒子が表面に露出した部位の 2部位から構成される.ここで,さらに,以下のように仮定する.
① 評価対象とした配向型では,配列に関与していないPZT 粒子が少なく,電極間での接 続もないため,比誘電率に影響を与えない.
② 配列したPZT粒子列の比誘電率は,上下電極間でPZT粒子が接続しているため,PZT
Z-711自体の比誘電率である3700と等しい
以上のように仮定した場合,配向型の静電容量は,母材と配列したPZT粒子の2つのコ ンデンサが並列に接続していると仮定され,比誘電率𝜀𝑟は以下の式で表される.
𝜀𝑟𝐴 = 𝜀𝑟𝑝𝐴𝑝+ 𝜀𝑟𝑚𝐴𝑚 (7) 60
70 80 90 100
1 1.5 2 2.5 3 3.5
Y(%)
Electric Field(kV/mm)
A B C
D E
65
ここで, 𝐴𝑝はPZT粒子の配向列が表面に露出した面積,𝐴𝑚は母材の面積である.
式(7)は,𝐴𝑚+ 𝐴𝑝 = 𝐴であることを考慮すると, 𝐴𝑝は以下の式で表される.
𝐴𝑝= 𝐴(𝜀𝑟− 𝜀𝑟𝑚) (𝜀⁄ 𝑟𝑝− 𝜀𝑟𝑚) (8) 式(8)の𝐴に配向型の上下面の面積,𝜀𝑟に図 3-16 に示す測定結果,𝜀𝑟𝑚= 3.2および𝜀𝑟𝑝 = 3700を代入すると𝐴𝑝が求められる. 𝐴𝑝と粒子径との関係を図3-18に示す.
粒子径の増加に伴って露出面積が減少している.これは,同じ PZT 粒子濃度の配向型で 比較した場合,粒子径の増加に伴ってPZT 粒子の数が減少し,配向列数も減少するためで ある.以上の計算で得られた露出面積と実際の露出面積を比較するため,粒子 E を用いた 配向型の露出面積を走査型電子顕微鏡S-3400N(㈱日立ハイテクノロジー製,以下,SEMと 称する)を用いて観察した.詳細は後述するが,粒子の配列10列に対してSEM観察を実施 した結果,配列1列当りの露出面積の平均値は約710-4 mm2であった.この露出面積に対 して,式(3)~(6)から求めた粒子Eを用いた配向型におけるPZT粒子の配向列数である約500 本を掛け合わせると,約0.35 mm2となる.図3-18に示す計算で求めた露出面積は,2.6 mm2 であるため,実際の露出面積と比較すると,計算で求めた露出面積や約7倍大きい値となっ た.これは,露出面積の周辺の粒子が占有する面積の影響によるものと考えられる.一方,
今後の評価によって影響を判断する必要があるが,試料面の面積が約1950 mm2であること を考慮すると,その誤差は小さいと考えられる.
Figure 3-16 Relationship between the relative dielectric constant, r, of and particle size for aligned-type applied 2 kV/mm.
6 7 8 9 10
0.0 0.5 1.0 1.5
εr
Particle Diameter(mm)
66
Figure 3-17 Schematic electrical image of aligned-type piezoelectric composite (a) and its electrical model (b). Cmand Cp represent the capacitances of the matrix and the aligned PZT particles, respectively. Am and Ap correspond to the areas of the matrix-region and the exposed-regions, respectively.
Figure 3-18 Relationship between the calculated AP and particle diameter. The AP values was calculated using the 𝜀𝑟 value of measurement result, εrm value of 3.2, and εp value of 3700 in equation (7).
3.4.3.3 圧電ひずみ定数
粒子径とd33の関係を図3-19に示す.
粒子径の増加に伴ってd33は増加しており,平均粒子径が最も大きい粒子Eを用いた場合
のd33は12.5 pC/Nである.一方,前項では,配向列数の増加に伴ってd33が増加したのに対
して,粒子径の増加に伴って,配向列数が減少するにも関わらずd33は増加している.配向 列数が減少する要因は,同じ粒子濃度の配向型で比較すると,粒子数は減少するためであり,
式(3)~(6)を用いて配向列数を算出しても,粒子Aを用いた場合と比較して粒子Eを用いた 2
2.5 3 3.5
0 0.5 1 1.5
Ap(mm2)
Particle Diameter(mm)
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場合には,約1/4である.この要因について,以下に考察する.
比誘電率の場合と同様に,図3-20に示すように,配向型が母材と配列したPZT粒子の2 部位から構成されているとし,さらに,以下のように仮定する.
① 評価対象とした配向型では,配列に関与していないPZT 粒子が少なく,電荷を取り出 すことができないため,d33に影響を与えない.
② 配向列のd33は,上下電極間でPZT粒子が接続しているため,PZT Z-711自体のd33で ある610 pC/Nと等しい.
以上のように仮定すると,配向型のばね定数Kは,図3-20(b)に示すように,ばね定数Km
の母材のばねおよびばね定数Kpのこれらの和となる.この場合,Kpおよび Kmは同じ変位 量であるが,加わる力は母材と配列したPZT 粒子の列に作用する力の和となる.このよう な機械モデルにおいて,ばね定数とヤング率の関係を考慮すると,PZT粒子の配向列のヤン グ率は以下の式で表される.
𝑌𝑝=𝑌𝐴 − 𝑌𝑚𝐴𝑚
𝐴𝑝 (9) ここで,YpはPZT粒子の配向列のヤング率,Ymは母材のヤング率,Yは配向型のヤング 率である.
式(9)によって求めたYpを用いて配列したPZT粒子の列に加わる力を求める式は,次式で 表される.
𝐹𝑟𝑝= 𝑌𝑝𝐴𝑅
𝑌𝑚+ 𝐴𝑅(𝑌𝑝− 𝑌𝑚) (10) 𝐹𝑟𝑝+ 𝐹𝑟𝑚= 𝐹 = 1 (11)
𝐴𝑅 =𝐴𝑃
𝐴 (12) ここで,Frpは配列したPZT 粒子の列に加わる力の割合,Frmは母材に加わる力の割合,
𝐴𝑅は配列したPZT粒子の列の配向型表面の面積に対する割合である.
さらに,配向型から発生する電荷は,配向列のみから発生するため,②の仮定より,配向 型のd33は以下の式で表される.
𝑑33=𝐶
𝐹= 𝐶
𝐹𝑝 𝐾𝑝
𝐾 = 𝑑𝑃33
𝐾𝑝
𝐾 = 𝑑𝑃33
𝐹𝑝
𝐹 = 𝑑𝑃33𝐹𝑟𝑝 (13) ここで, 𝐹は配向型全体に加わる力,𝐶は配向列から発生する電荷,𝐹𝑝は配向列に加わる 力, 𝐾𝑝は配列のばね定数,𝐾は全体のばね定数,𝑑33は配向型のd33, 𝑑𝑃33は使用したPZT Z-711のd33(610 pC/N)である.
68
上述した方法を用いて計算によって算出した d33と実測の d33との比較を図3-21に示す.
計算によって算出したd33の値と実測のd33の値とは10倍以上異なり,傾向も一致してい ない.この要因としては,配向型の露出面積が粒子占有面積に対して小さいため,露出面積 周辺の粒子占有面積(以下,周辺面積)のばね定数が大きく影響したことが挙げられる.粒 子Eを用いた配向型の場合,粒子占有面積は約520 mm2であるのに対して,比誘電率の結 果から求めた露出面積は約2.6 mm2であり,SEM観察の結果から求めた露出面積は約0.35 mm2である.この結果から,露出面積が粒子占有面積に占める割合は,0.007~0.005 と推定 される.計算では,配向列に加わる全ての力が露出面積に加わると仮定されるが,周辺面積 に加わる力が大きいため,実際に露出面積に加わる力は小さいものと考えられる.周辺面積 のばね定数は,粒子径によっても異なるため,直接把握することが困難であり,上記の方法 によって,d33 を予測することは困難であると考えられる.比誘電率の場合も,計算で求め た露出面積と実測の露出面積とは約7倍の違いがあったが,比誘電率の場合は,電機絶縁物 であるシリコーンゴムに周辺面積が覆われているため,影響が小さかったものと考えられ る.
d33の予測は困難であるが,式(10)~(13)を用いることによって,得られた配向型のd33から 配向列のヤング率を推定することは可能と考えられる.図3-22に粒子径と配向列のヤング 率の関係を示す.
粒子径の増加に伴ってd33は増加するため,配向列のヤング率は増加する.本検討におい て最もヤング率の高い,粒子Eを用いた配向型の場合のヤング率は,約1.5 GPaであり,計 算で求めた露出面積の代わりにSEM観察で得られた実際の露出面積を用いた場合は,約10 GPaである.この値は,PZT Z-711のヤング率が約50 GPaであるのに対して,低い値であ る.これは,粒子配列が分岐して直線的でないことや水平方向が弾性率の低いシリコーンゴ ムによって拘束されているため,変形時に屈曲する可能性があるためと考えられる.
以上の考察より,粒子径の増加に伴ってd33が増加する要因は,PZT粒子の配向列のヤ ング率が粒子径の増加に伴って増加するためと考えられる.粒子径の増加に伴って配向列 のヤング率が増加する要因を以下のように考察する.
同じ粒子濃度の配向型で比較した場合,粒子径の増加に伴って配向型に含まれる粒子数 が減少する.したがって,粒子径の増加に伴って厚さ方向における粒子同士の接触回数も 減少することから,分岐等の欠陥が減少し,粒子列における粒子同士の接続がより強固に なると考えられる.
さらに,式(10)は,ヤング率の増加に伴ってPZT粒子の配向列に加わる力が増加するこ