第 3 章 配向型圧電ゴム
3.3 配向型における粒子配列の影響
3.3.4 評価結果および考察
各測定による評価結果およびその結果に対する考察を以下に示す.
3.3.4.1 粒子配列の状態
作製時に印加する電場の大きさを変えて作製した配向型の投影図を図3-8に示す.図の黒 色部分は,PZT粒子が存在する部分である.
電場によって,PZT部位の面積が変化している.これは,電場を印加していない場合に沈 殿していたPZT 粒子が,電場の印加によって動いたことを示している.ここで,試料の上 下面の面積に対してPZT 粒子が存在する部分の面積の割合(以下,粒子占有面積割合とす る)と電場強度との関係を図3-9に示す.
電場を印加する前の粒子は,下面全体に分散して沈殿していたのに対して,電場の印加に よって厚さ方向への粒子の配向が進行し,粒子が配向した列(以下,配向列とする)を形成 するため,粒子占有面積割合は減少する.この結果より,提案した作製方法によって,配向 型の作製が可能であることが示された.
ここで,PZT粒子の配向状態を定量的に表すため,使用した全体の粒子の中で配向に関与 している粒子の割合を配向関与率と定義し,その値を求めた.以下に,粒子占有面積割合を 用いて配向関与率を求める手順を示す.
粒子占有面積割合を以下の式で表す.
𝜋𝑟2(𝑎 + 𝑏)
𝑆 × 100 = 𝑋 (3) 𝑏 = 𝑧 − 𝑎𝑐 (4) ここで,Xは粒子占有面積割合,rは平均粒子径,aは配向列数,bは配向していない粒子 数,Sは試料面積,zは総粒子数,cは配向列に必要な粒子数である.
zは,粒子の画像によって粒子1個当たりの重量を求め,総重量で除した値とし,cに代入 する粒子数は,試料の厚さを平均粒子径で除した値とした
次に,配向関与率を以下の式で表す.
𝑎𝑐
𝑧 × 100 = 𝑌 (5) ここで,Yは配向関与率である.
式(4)を式(3)に代入した後,a を求める式に変換し,式(5)に代入すると以下の式が求めら れる.
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𝑌 =𝑐(𝑆𝑋 − 100𝑧𝜋𝑟2)
𝑧𝜋𝑟2(1 − 𝑐) (6) 式(6)を用いて得られた配向関与率と印加電場との関係を図3-10に示す.電荷を印加して いない場合にも,投影画像における粒子の重なりにより,配向関与率が0%以上となったが,
試料を観察した結果,配向は存在していなかったため,配向関与率は0%とした.
配向関与率は,印加電場の増加に伴って増加し,印加電場1.5 kV/mm~2 kV/mmの場合に 最大となる.この電場では,全体の約80 %の粒子が配列に関与している.一方,2 kV/mm 以上の印加電場では,配向関与率が減少傾向となる.この要因は,PZT粒子の配向列の状態 が変化したためと考えられる.そこで,印加電場によるPZT 粒子の配向列の状態の変化を 把握するため,配向型を約1 mmの幅で切断し,その断面を拡大観察した結果を図3-11に 示す.(a)は電場を印加せずに作製した試料,(b)は印加電場1.5 kV/mmで作製した試料,(c) は印加電場3.5kV/mmで作製した試料である.
電場を印加せずに作製した試料は,全てのPZT粒子が試料下面に沈殿しているのに対し,
印加電場 1.5 kV/mm で作製した配向型は,ほぼ全ての粒子が配向に関与し,配向列が分散
して存在している.一方,印加電場3.5 kV/mmで作製した配向型は,粒子が試料上面の正電 極側に集まり,一部が配向列を形成している.同じ面積における配向列数で比較すると,3.5
kV/mmで作製した配向型の配向列数は明確に少ない.断面観察の結果より,2 kV/mm以上
の印加電場の際に配向関与率が低下した要因は,試料上面の正電極側に存在する粒子が多 くなったためと考えられる.この要因を以下に考察する.
配向型を作製する際の電極は,上側が正電極,下側が接地電極である.印加電場の増加に 伴ってPZT粒子内で誘起される双極子モーメントが大きくなるため,粒子同士が引き付け 合う力よりも正電極と粒子の間に働く力が大きくなり,正極である上側の電極に粒子が引 きつけられ易くなったと考えられる.
59
Figure 3-8 Projection images of the aligned-types PZT/silicone rubber composites prepared at various strength of direct electric fields.
Figure 3-9 Relationship between X (the ratio of the occupied area of PZT to total area) and the strength of electric field.
0 10 20 30 40 50 60 70
0 1 2 3 4
X(%)
Electric Field (kV/mm)
60
Figure 3-10 Relationship between Y (the ratio of the number of particles involving the alignments) and the strength of electric field.
Figure 3-11 Cross-sectional observation of the aligned-type using particle C; (a) without the electric field, (b) at 1.5 kV/mm, and (c) at 3.5 kV/mm.
0 20 40 60 80 100
0 1 2 3 4
Y(%)
Electric Field (kV/mm)
61 3.3.4.2 比誘電率εr
配向関与率と比誘電率の関係を図3-12に示す.
比誘電率は,配向関与率の増加に伴って増加している.これは,配向の進行によって,比 誘電率が増加することを示している.配向型の比誘電率は,配向型に使用されている PZT の比誘電率は3700であり,シリコーンゴムの比誘電率3.0よりも顕著に高いため,PZT粒 子が配向し,上下の電極間が粒子の配向列によって接続されることで増加すると考えられ る.これは,前章でも述べたように,積層したPZT 板の比誘電率の積層枚数の増加による 変化が小さかったことからも示唆される.さらに,配向関与率の増加に伴って,電極間を接 続する配向列数が増加するため,比誘電率は増加すると考えられる.
Figure 3-12 Relationship between the Y (the ratio of the number of particles involving the alignments) and the relative dielectric constant, εr, for aligned-type using particle C.
3.3.4.3 圧電ひずみ定数
配向関与率とd33の関係を図3-13に示す.
配向関与率が60 %以上の領域において,顕著にd33が増加している.この領域の配向関与 率が得られる電場は,断面観察の結果から,PZT粒子の配向が顕著に進行する印加電場と一 致しており,d33の測定の際,配向型から発生する電荷は,PZT 粒子の配向列から発生する ことを示している.また,配向型から発生する電荷は,力を加えた際に個々の配向列から発 生する電荷の総和である.したがって,配向関与率とともにd33が増加する要因は,配向関 与率の増加によって配列数が増加するためである.さらに,配向関与率の増加に伴って,配 列における粒子の分岐等の欠陥も減少すると考えられ,配列内での欠陥の減少によって,配 列に加わる力が直接PZT 粒子に伝わり易くなることや,電荷の移動が容易となることも,
0 2 4 6 8 10
0 20 40 60 80
εr
Y(%)
62
d33が増加する要因の一つと考えられる.本項の検討により,配向型のd33を最も高くするた めには,配向関与率が最も高い最適な電場を選択する必要があることがわかった.
第2章で述べたように,作製した0-3複合体の圧電ゴムの多くは,混合する圧電セラミッ クス粒子の粒子濃度が50 Vol%以上の場合でも,得られるd33が5 pC/N以下であった.この d33と比較すると,本検討で得られたd33の最大値は約2倍の9 pC/Nである.さらに,本検 討におけるPZT粒子濃度が10 Vol%であることを考慮すると,1/5以下の粒子濃度で約2倍 の圧電性能が得られたことになる.この結果は,配向型が0-3複合体の圧電ゴムよりも少な い圧電セラミックス粒子量で,効率良く圧電性能を増加させられることを示している.
Figure 3-13 Relationship between the Y (the ratio of the number of particles involving the alignments) and piezoelectric strain constant, d33, for aligned-type using particle C.