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博士(医学)堤田 新 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(医学)堤田   新 学位論文題名

ヒト悪性黒色腫細胞でE 一カドヘリンが 発現低下・消失する機序の解析

学位論文内容の要旨

  E‑カドヘリンは、単に細胞同士の結合を担うだけでなく、細胞の極性、分化にも関与 し、発生段階における形態形成や成体における組織構築・機能の維持に重要な役割を果 たしている。

  癌においてはE‑カドヘリンの発現低下や消失がしぱしぱ認められる。E一カドヘリン の機能不全と癌の浸潤性との相関を示す報告がなされており、現在ではE―カドヘリン は「癌浸潤抑制因子」としても捉えられている。E―カドヘリンの機能不全の原因は、大 きく2つに分けることができる。ひとっは、E−カドヘリン自身の発現低下・消失である。

いまひとつは、E−カドヘリン・カテこン複合体の形成あるいは機能異常である。前者に は、食道癌、乳癌、胃癌、前立腺癌などでみられるEカドヘリン発現調節プロモーター 領域のメチル化、および胃癌、乳癌、大腸癌、膵癌、前立腺癌などでみられる転写抑制 因子SnailによるEカドヘリンの転写抑制が挙げられる。後者は、E―カドヘリン遺伝子 の変異による部分的に欠損したEーカドヘリン蛋白の産生、a−カテこンの発現低下や口

―カテニンの恒常的リン酸化によるE‑カドヘリン・カテこン複合体の機能不全である。

  悪性黒色腫は,ヌラノサイト由来の悪性腫瘍で,転移・浸潤性の高いことがひとつの 特徴であり、皮膚原発の悪性腫瘍のなかでも特に予後が悪い腫瘍である。悪性黒色腫に おいるEカドヘリンの発現低下は、細胞株を用いた実験で明らかにされ、その後、手術 検体を用いた免疫組織化学的解析がなされ、悪性黒色腫のEーカドヘリンの発現はヌラ ノサイト由来の良性腫瘍に比ベ低いことが示された。

  本研究では、ヒト悪性黒色腫におけるE−カドヘリンの発現低下・消失のヌカこズム について、8系のヒト悪性黒色腫細胞株を用い解析した。

  ヒ ト 正 常 ヌ ラ ノ サ イ ト お よ び8系 の 悪 性 黒 色 腫 細 胞 株(MM IV,MeWo,GAK, MMAc,AKI,A375M,9711、SKーMel)にお け るE― カ ドヘ リ ン、snailの発 現を調 べ た 。8株 中5株(MM lV,AKI,A375M,9711、SKMel)に お いて 正 常メ ラ ノサ イ 卜と比較してE−cadherinの発現は低下あるいは消失しておりそのすべての株でsnail が 発 現 し て い た 。Eー カド ヘ リン が 強 く発 現 して い た3株(MeWo、GAK、MMAc)の う ち1株(MMAc)で はsnailの 発 現 が 認 め ら れ ず 、 も う2株(MeWo、GAK)で は snailの 発 現が 強 く認 め られ た 。また、A375M細胞(Eーカ ドヘリンー/snai7+)に

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snailのアンチセンス発現ベクターを導入すると、E‑カドヘリンの発現がみられるよう にな った。逆に 、MMAc細胞(E‑カドヘリン十/snaロー)にsnaロセンス遺伝子を導 入すると、Eーカドヘリンの発現低下が認められた。次に、ヒト正常ヌラノサイトおよび 8系の悪性黒 色腫細胞株 におけるEトカド ヘリンDNAのメチル化 の有無をMSP法で調 べた ところEカドヘリンの発現が低下、消失した6株のうち3株においてC・pGisland のメチル化が検出された。これを脱ヌチル化剤で処理したところ発現の回復が見られた。

このことは、癌細胞によっては、Eカドヘリンの発現が、メチル化ならびにsnail発現 増 強 と い う 二 重 の シ ス テ ム に よ っ て 抑 制 さ れ る こ と を 示 し て い る 。   2系の細胞株 (MeWo、GAK) においては 、snaロが発現しているにもかかわらず、

Eトカドヘリンの強発現が認められた。この現象について以下の2つの可能性を考えてい る。ひとっは、これらの細胞では、E―カドヘリンプロモーターあるいはSnanに異常が 生じているという可能性である。sr齟は、E―カドヘリンのプ口モーター領域にある3 つのEボックスに結合し、Eーカドヘリンの転写を抑制することが証明されている。そ こで 、GAK細胞についてEトカドヘリンのプ口モー夕―領域に存在する3つのEボック スを含むー347から十48の塩基配列を調べた。しかし、その塩基配列に変異を見い出 すことはできなかった。次にsnaロのcoding領域の塩基配列を検討したが、これまで 報告 されている塩基配列と同じであった。ただし、GAKのコドン118番目はバリン、

154番目はフェニルアラこンであった。これまでに報告されているヒトsnaむの塩基配 列は 、コドン118番目がバリンあるいはアラニン、コドン154番目がフウニルアラニ ンあるいはセリンをコードしており、これらの違いが、遺伝的多型性なのか点変異なの か結論はでていない。従って、コドン118番目にパリン、154番目にフェニルアラニン をもつS班mは、他のアミノ酸配列を有するものに比ぺ、転写抑制活性が低しゝ可能性が 考えられる。二っめは、Snanと複合体を形成する分子が異常を起こしている可能性で ある。Snanは単独ではなく、転写因子複合体を形成し、転写抑制に働くはずである。

現在 のところ、どのような分子と複合体を形成するのか不明であるが、MeWoおよび GAK細胞のSn茄1に結合する分子に何らかの異常があり、転写抑制作用を発揮できな い可能性も考えられる。

  本研究により、Eトカドヘリンは悪性黒色腫の発生母地であるヌラノサイトには強く発 現しているが、悪性黒色腫細胞株では8系中5系において発現低下・消失していること が明らかになった。さらに5系の悪性黒色腫細胞株におけるEトカドヘリンの発現低下・

消失 は、転写抑制因子Snmlの発現あるいはE一カドヘリンのプ口モーター領域のDNA ヌチル化によることが強く示唆された。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

ヒト悪性黒色腫細胞でE −カドヘリンが 発現低下・消失する機序の解析

  本研 究で は、 ヒト 悪性 黒色 腫にお けるE― カド ヘリ ンの 発現低 下・ 消失 のヌ カ ニズ ムに つい て、8系の ヒト 悪性 黒包 腫細 胞株 を用 い解 析した 。悪 性黒 色腫 細 胞株 にお いて 高頻 度にE−カ ドヘ リン の発 現低 下・ 消失 が認め られ 、こ の原 因として転写抑.制因子Snailの発現あるしゝはE‑カドへルンのプロモーター領域 のDNAヌチル化の関与が明らかにされた。

  ヒ ト 正 常 メ ラ ノ サ イ ト お よ び8株 の悪 性黒 色腫 細胞 株に おけ るE− カド ヘリ ン 、snaUの 発 現 を 調 べ た 。5株 にお いて 正常 ヌラ ノサ イト と比 較し てE― カド ヘ リン の発 現は 低下 ある いは 消失し てお り、 その すべ ての 株でsnaロ が発 現し ていた。sロa口のセンスあるいはアンチセ ンス発現ベクター導入実験によりSnajl がE−カ ドヘ リン の転 写を 抑制 して いる こと が示 唆さ れた 。次に 、8株のE−カ ド ヘ リ ンDNAの メ チ ル 化を 調 べ た と こ ろ3株 に お い てヌ チ ル 化 が 検 出 さ れ 、 脱 メチル 化剤 で処 理に より 発現 の回 復が 見ら れた 。以上のことは、癌細胞によ っ ては 、Eー カド ヘリ ンの 発現 が、 ヌチ ル化 なら びにSn皿 発現増 強と いう 二重 の シ ス テ ム に よ っ て 抑 制 さ れ る こ と を 示 し て い る と 考 え ら れ た 。   snaむ およ びE―カ ドヘ リン の発現 が認 めら れた 株に 対し ては 以下 の2つ の可 能 性を 考え た。 ひと つは 、E― カド ヘリ ンプ 口モ ータ ーあ るいはSnmlに異 常が 生 じて いる とい う可 能性 であ る。そ こで 、こ のう ちの ーつ の細 胞に つい てEー カ ドヘリ ンの プ口 モー 夕一 領域 の塩 基配 列を 調べ たが、変異はなかった。次に sn捌 のcoding領 域 の 塩 基 配 列 を 検 討 し た 。 コ ド ン118番 目 は バ リ ン 、154番 目 はフ ウニ ルア ラニ ンで あっ たが、 これ まで の報 告の 塩基 配列 は、 コド ン118 番 目が パリ ンあ るい はア ラニ ン、コ ドン154番目 がフ 工二 ルアラ ニン ある いは

樹 也

平 哲

原 内

杉 守

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

セリンをコードしており、これらが、遺伝的多型性なのか点変異なのか結論は でていない。従って、この細胞のSnailは、転写抑制活性が低い可能性が考え られた。二つめは、Snailと複合体を形成する分子が異常を起こしている可能 性である。Snailに結合する分子に何らかの異常があり、転写抑制作用を発揮 できない可能性も考えられた。

  本研究の公開発表にあたって、副査の秋田教授から1) Snail以外のE一カド ヘリン転写制御因子について、2) Snailとメチル化の共同性について、3)カ テニンの発現、機能不全についての質問があった。これに対し申請者は、1) に対して最近の知見から転写抑制因子としてはSIP1およびIntegrin−linked kinaseの存在を挙げた。2)に対してはE一カドヘリンのSnailの結合部位とメ チル化をうける部位に共通する部位があることを挙げ、両者による二重の発現 抑制システムが存在する可能性がある旨を解答した。3)に関してはカテニン の発現程度に差はなかったが、文献的にはカテこンの機能不全の可能性がある 旨を述べた。次いで副査の守内教授から、Snailのアミノ酸配列の違いによる 転写活性について,また他の転写制御因子についての質問があった。これに対 して申請者は、今回検討した細胞株では遺伝的多型性なのか点変異なのか結論 はでておらず、アミノ酸配列により転写抑制活性がかわる可能性が考えられる 旨を述ベ、他の転写抑制因子の存在についても解答した。最後に主査の杉原教 授からE一カドヘリンの臨床的意義および臨床応用に関する質問があった。こ れに対し申請者は、免疫組織学的手法やマイク口ダイゼクション法を用いてE― カドヘリンの発現を見ることは可能であり、臨床検体を用いて腫瘍の進行度と E―カドヘリンの発現の相関に関する研究が必要である旨を解答した。いずれの 質問に対しても、申請者は学位論文の背景に関する詳細な説明を交え、最新の 知見を引用し、概ね適切に解答した。

  本研究は、ヒト悪性黒色腫細胞におけるE一カドヘリンの発現低下・消失の 原因の一部を明らかにした。さらに悪性黒色腫の浸潤・転移の解明においても 重要な研究である。今後、さらに詳しいE―カドヘリンの発現低下・消失の機 序解明が期待される。

  審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑽や取得 単位なども併わせ、申請者が博士(医学)の学位を受けるのに十分な資格を有 するものと判定した。

参照

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