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博 士 ( 医 学 ) 福 島 紘 司

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 福 島 紘 司

学 位 論 文 題 名

新 規 シ ン ナ モ イ ル ・ フ ェ ニ ル ア ラ ニ ン 誘 導 体に よる    イ ン ス リ ン の 消 化 管 吸 収 促 進 と 血 糖 調 節 作 用

学 位 論 文 内 容の 要 旨

I.緒言

  現 在 , イ ン ス ル ン 依 存 型 お よ び 非 依 存 型 糖 尿 病 患 者 に 使 用 さ れ て い る イン スリ ン製 剤は 注 射剤 の み で あ る , イ ン ス リン 注射 剤は ,投 与 方法 の利 便性 が著 し く改 善さ れ, 薬 物コ ンプ ライ アン ス も向 上 し て き た . し か し なが ら, 現在 のイ ン スリ ン療 法は ,皮 下 組織 ある いは 末 梢静 脈内 にイ ンス リ ンを 投 与 せ ざ る を 得 な い ため ,生 理的 な内 因 性イ ンス ルン の膵 臓 から の分 泌や 肝 臓へ の標 的化 を考 慮 する な ら ば . 消 化 管 か ら 吸収 され た外 因性 イ ンス リン が門 脈を 経 由し て最 初に 肝 臓へ 移行 し, 肝臓 に おい て イ ン ス ル ン 作 用 が 発 揮 さ れ , 血 糖 制 御 が 可 能 な 手 段 で あ る 経 口 ル ー ト が 望 ま し い と 考 え ら れ る .   こ の よ う な 観 点 から ,多 くの 研究 者 らに より 経鼻 ,経 肺 ,直 腸, 子宮 内 ,経 口投 与な ど注 射 以外 の 投 与 ル ー ト の 可 能 性に つい て研 究さ れ てき た. しか しな が ら, これ ら非 注 射に よる イン スリ ン 療法 に は 分 解 に よ る 失 活 など の未 解決 の問 題 が多 く残 され てお り ,特 にイ ンス ル ンの 経口 投与 法は 臨 床上 実 用の域に 達していないのが現状である ,

  本 研 究 で は イ ン スリ ンの 経口 投与 を 臨床 上可 能に する た めの 基礎 的知 見 を得 るた めに ,シ ン ナモ イ ル ・フ ウニ ル アラ ニン(Cin‑P he)誘導 体に よる イ ンス ルン の腸 管吸 収 促進作用をインスリ ン分解抑制作 用 お よ び イ ン ス リ ンの 吸収 動態 の面 か ら解 析し た. さら に ,糖 尿病 モデ ル 動物 にお ける 血糖 調 節作 用 について も検討したので報告する.

u,対象と 方法

1.シンナ モイル・フェニルアラニン 誘導体

  Cin‑ Phe誘導体として主にN‑a‑ Chloro‑ cinn amo yl‑D・ phenylala nine(A.3989)とN.a・Chloro‑4 ‑ m eth yl ‑ci nna mo yl‑D ‑phen yl ala nine(A‑4266)を用いた.上記の化合物を含む約80種類の誘導体は味 の素株式 会社中央研究所から供与され た.

2. イ ン ス リ ン ・ シ ン ナ モ イ 冫 レ ・ フ ェ ニ ル ア ラ ニ ン ニ ン (IN・ Cin‑ Phe)誘 導 体 溶 液 の 調 製   イン スリ ン とし てブ タイ ンス リ ン(Connaught社 製) およ び ヒト イン スリ ン (Novo社 製) を用 いた.

な お、 イン ス リン は0.0 5N‑ HC1で溶 解し ,Cin‑ Phe誘導 体はO.lN‑N aoHで溶解後,0.OIMリン酸緩衝 液‑ 0.9% 生 理 食 塩 液(PBS)で 希釈 した .こ れ らの 溶解 液を 氷冷 下 で等 量(1:1)で 混 合し た後 ,PBS で希釈しIN. Cin‑ Phe誘導体調製液 として用いた.  ・

3.動物

  6週 齢 の 雌ICR‑CニDlマ ウ ス ( 体 重15‑20g) お よ び8週 齢 の 雌Wistar系ラ ット (体 重150‑200g)を 用 い ,16‑18時 間 絶 食 後 , 実 験 に 使 用 し た . 糖 尿 病 モ デ ル 動 物 と し て は , 常 法 に 従 っ て ,Strepto‑

zotocin(Sigma社 製 ) を マ ウ ス は120 mg/kg, ラ ッ ト は65mg/kgを 尾 静 脈 よ り1回 注 射 し , 注 射 後7日 な い しlO日 目 にSTZ誘 発 糖 尿 病 動 物 を 得 , 実 験 に 使 用 し た . さ ら に , ブ ド ウ 糖 負 荷 試 験 に お い て 2 g/kgの ブ ド ウ 糖 を 腹 腔 内 投 与 す る こ と に よ り , 耐 糖 能 試 験 を 行 い そ の 耐糖 能の 程度 を確 認 した . 4.マウス 腸管内酵素によるインスリ ン分解の測定

  絶 食 後 の 雌ICR ‑ CD1マ ウ ス の 全 腸 管 粘 膜 を 擦過 した 後5mlのPBSでホ モ ジナ イズ し, 遠心 分 離後 の

‑ 87 ‑

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上清を得,Lichroprep DIOLカラムを用いたHPLCで精製した.このプールした精製酵素(タンバク濃 度 ;160 ug/ml)をイ ンス リン (1.25U/ml)分解の検討に供した.なお,イ ンスリン濃度はRadio‑

lmmunoassay (RIA法 ) で2抗 体 法 を 用 い た イ ン ス ル ン 栄 研 キ ッ ト に よ り 測 定 し た . 5.マウスおよびラットにおけるインスリン経口投与賦活効果の検討

  種々のインス リンおよびIN. Cin‑Phe誘導体調製液を経口,十二指腸,空腸,回腸および筋肉内投 与し,投与後所 定時間毎に動物を屠殺後,頚動脈血および門脈血を採取し,血清を分離した.血清中 のプドウ糖濃度は常法に従って,酵素法(GOD‑PAP法)により測定した,ー 方,血清中のインスリン濃 度としてI'RIレ ベルを測定し,インスリンの吸収量は台形法により血清 中濃度下面積(AUC)として 求め,さらに,インスリンの生物学的利用率(Bioavailability)は,十二腸投与時のIN.  Cin ‑ Phe誘導 体 調 製 液 のAUCと 筋 肉 内 注 射 時 のAUCの 比 (AUC i.d./AUC i.m.)お よ び 投 与 量か ら求 めた . III.結果

1.マウス消化管内酵素によるIN. Cin‑Phe誘導体調製液のインスリン分解抑制作用を検討した結果,

濃 度 に 依 存 し て 、 阻 止 作 用 が 認 め ら れ た こ と か ら 十 二 指 腸 投 与 の 有 効 性 が 示 唆 さ れ た . 2.正常マウスにおけるIN. Cin‑ Phe誘導体調製液の十二指腸投与により,インスリン吸収促進効果 による顕著な血 糖降下作用が認められた.これらのインスリン血中濃度曲線から求めたAUCより.イ ンスリンのBioa vailabilityは約30%と良好な吸収性を示した.

3. STZ誘発糖尿病およびSTZ誘発亜糖尿病動物におけるブドウ糖負荷試験においてもIN. Cin‑Phe誘 導体の経口投与 および十二指腸投与によルインスリン吸収促進効果による血糖調節が可能であった.

4. STZ誘発糖尿病ラットを用いたインスル ンの腸管吸収部位の検討では,十二指腸あるいは空腸部 位の方が回腸部位より吸収能が良いことを確認できた・

5.  IN. Cin‑Phe誘導体調製液の腸管吸収 後の門脈血および末梢血のインスリン動態の解析をSTZ 亜糖尿病ラット で検討した結果、経口投与後15分後で比較すると門脈血 のインスリン濃度が末梢血 の濃度より約8倍高いことが認められた.

N.考察

  本研究では, インスリンの吸収効率を高め,吸収速度の調節が可能でかつ長期連用でも安全性の高 いインスリン経口授与賦活剤を開発することを目的とし,IN. Cin ‑ Phe誘導体調製液のインスルン経 口投与賦活化作 用について検討した.消化管内での安定性についての結 果から,これら誘導体のマ ウス消化管内酵 素に対するインスリン分解抑制作用が認められ,かつその作用は濃度に依存すること が明らかとなっ た.これらCin‑Phe誘導体に よるインスリン分解抑制機序については未だ解明されて いない点が多い が、少なくともT rypsin活性にはほとんど影響しないが,Chymotrypsin活性に対し阻 止作用(IC50;4.44mg/ml)を示すことも判明している.また,Shillingらのインスリン生物活性の保 持には胃酸によ る分解と小腸上部におけるd ‑chymotrypsinからの防御が共に必要であるとの知見と も一致している .インスリンの凝集によるタンパク分解酵素に対する影響およびインスリン分子サイ ズの増大が,少なくとも一部paracellular透過による吸収を妨げるとぃう可能性の点からも.Cin‑Phe 誘導体によルイ ンスリンは余り不活性化されずに生物活性の保持された状態で消化管内に存在してい ることが示唆さ れた.一方,IN.A‑3989およびIN. A‑42 66調製液を絶 食マウスに十二指腸投与し たところ,顕著 なインスリン吸収促進効果と血糖降下作用を示した.インスリンの血中濃度曲線から AUCを求め,Bioavailabilityを計算したところ,約30%と良好な吸収性を示した.正常状態のみでは なくSTZ誘発糖尿病動物においても,これらIN. A‑3 989およびIN. A‑42 66調製液はインスリン活性 保持作用による 血糖降下作用を示し,かつ,ブドウ糖負荷試験においてもIN. A‑4266調製液は耐糖 能異常を改善す る作用を有していた.また,IN. Cin‑Phe誘導体調製液によるインスルンの腸管吸収 促進作用は回腸 部位に比ペ十二指腸あるいは空腸部位の方がインスリン 吸収能に優れていることが STZ糖尿病ラットで確認できた.これらの結 果は,インスリンの胃酸による分解を抑制し,十二指腸 部位に送り込むことがIN.  Cin‑ Phe誘導体によるインスリンの吸収ひいては活性発現を著しく高める ことを強く示唆 するものである.STZ亜糖尿 病ラットにおけるIN. Cin‑ Phe誘導体調製液の経口投

88 ‑

(3)

与後15分 後で比較 すると 門脈血の インス リン濃度が末梢血の濃度より約8倍高いことが認められ・

Cin‑Phe誘導体(150 mg/kg)のみの経口投与により,絶食マウスにおいてインスリン濃度およぴ血糖に 対し何等の影響も及ぼさなかったとぃう事実からも,膵臓から分泌された内因性のインスリンではな く,少なくとも投与されたインスリンが消化管から吸収され門脈に移行したとぃう証明となり得ると 考えられる,     Cin‑ Phe誘導体によるインスリンの吸収促進メカニズムおよび投与量の設定などについ ては多くの基礎的検討が必要であるが,糖尿病モデル動物を用いて得られたIN. Cin ‑ Phe誘導体調製 液の有効性の結果は,インスルンの腸溶性製剤を含めた経口投与製剤のための基礎的知見として極め て有用と思われる。

‑ 89

(4)

学位論文審査の要旨

     学位論文題名

新規シンナモイル・フウニルアラニン誘導体による    イ ン ス リン の消 化管 吸収 促進 と血 糖調 節作用

  

現在,イ ンスリン依 存型およ び非依存 型糖尿病 患者に使 用されて いるインス リン製剤は 注射剤の みである. インスリ ン注射剤 は,投与 方法の利 便性が著 しく改善さ れ,薬物コン プライア ンスも向上 してきた が,現在 のインス リン療法 は皮下組 織あるいは 末梢静脈内に インスリ ンを投与せ ざるを得 ないため 種々の問 題点があ る,生理 的な内因性 インスリンの 膵臓から の分泌や肝 臓への標 的化を考 慮するな らば,消 化管から 吸収された 外因性インス リンが門 脈を経由し て最初に 肝臓ヘ移 行し,肝 臓におい てインス リン作用が 発揮され,血 糖制御が可能な経口ルートが望ましいと考えられる.

  

このよう な観点から ,申請者 は,イン スリンの 経口投与 を臨床上 可能にする ための基礎 的知見を 得るために ,シンナモイル・フェニルアラニン(Cin ,Phe )誘導体によるインスリ ンの腸管 吸収促進作 用をイン スリン分 解抑制作 用およぴ インスリ ンの吸収動 態の面から解 析 し , 糖 尿 病 モ デ ル 動 物 に お け る 血 糖 調 節 作 用 に つ い て も 検 討 を 加 え た .

  Cin‑Phe

誘導体と して主にN‑ ば

‑Chlorocinnam oyl

,D‑phenyl‑alanine (A ・3989 )とN ・ ば‑ Chloro ‑4 ・met hyl‑ cinnamoyl ‑D‑ph en yl alanine (A ・4266 )を用い,インスリンはブ タイ ン スリ ン (

Connaught

社製) およびヒト インス1J ン (Novo 社製) を用いた .動物は ,

6

週 齢 の 雌

ICR‑CD1

マ ウ ス ( 体 重

15‑20g

) お よ び

8

週 齢 の 雌

Wistar

系 ラ ッ ト ( 体 重

150‑200g

) を 用 い,

16 ‑18

時間 絶 食後 , 実 験に 使 用した. 糖尿病モ デル動物 としては , 常法 に 従っ て

Streptozotocin

(Sigma 社製) を尾静脈よ り1 回注射 し,STZ 誘発 糖尿病動 物 を得た. マウスおよ びラット における インスリ ン経口投 与賦活効 果の検討に おいて,種々 のインス リンおよぴ 【N . Cin‑Phe 誘導 体調製液 を経□,十二指腸,空腸,回腸および筋肉 内投与し ,投与後所 定時間毎に動物を屠殺後,頚動脈血および門脈血を採取し,.血清中の インスリン濃度とプドウ糖濃度を測定し効果を判定した.

  

マ ウス 消 化 管内 酵 素に よるIN .Cin‑Phe 誘導 体調製液 のインス ルン分解 抑制作用 の検討 より,濃 度に依存し て阻止作用が認められたことから十二指腸投与の有効性が示唆された.

これ ら

Cin‑Phe

誘 導 体 によるイ ンスリン分 解抑制機 序につい ては未だ 解明され ていない 点 が多 い が、 少 な くと も

Trypsin

活 性 に はほ と んど 影 響 しな い が ,Chymotrypsin 活 性に対 し阻止作 用(IC50; 4.44 mg /ml )を 示すこと が判明している,従って,Cin ・Phe 誘導体に よルイン スリンは生 物活性を 保持した 状態で消 化管内に 存在して いることが 示唆された,

また , 正常 マ ウ スに お けるIN .Cin‑Phe 誘導 体調製液 の十二指 腸投与に より,イ ンスリン 吸収促進 効果による 顕著な血 糖降下作 用を認め た,これ らのイン スリン血中 濃度曲線から 求 め た

AUC

よ り , イ ン ス リン の

Bioavail‑ ability

は 約30 %と 良 好 な吸 収 性を 示 し た.

90

巳 哉

勝 秀

崎 藤

宮 齋

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

さらに,STZ 誘発糖尿病動物におけるプドウ糖負荷試験においてもIN .Cin ,Phe 誘導体の 経口投与および十二指腸投与によルインスリン吸収促進効果による血糖調節が可能であっ た.STZ 誘発糖尿病ラットを用いたインスリンの腸管吸収部位の検討では,十二指腸ある い は 空 腸 部 位 の 方 が 回 腸 部 位 よ り 吸 収 能 が 良 い こ と も 確 認 で き た , これらの結果は,インスリンの胃酸による分解を抑制し,十二指腸部位に送り込むこと がIN . Cin ・Phe 誘導体によるインスリンの吸収ひいては活性発現を著しく高めることを 強く示唆するものである.また,STZ 亜糖尿病ラットにおける【N .Cin ・Phe 誘導体調製液 の経口投与後15 分後で比較すると門脈血のインスリン濃度が末梢血の濃度より約8 倍高 いことが認められ,Cin ・ Phe 誘導体(150 mg/kg )のみの経口投与により,絶食ラットに おいてインスリン濃度および血糖に対し何等の影響も及ぼさなかったとぃう事実からも,

膵臓から分泌された内因性のインスリンではなく,少なくとも投与されたインスリンが消 化 管 か ら 吸 収 さ れ 門 脈 に 移 行 し た と ぃ う 証 明 と な り 得 る と 思 わ れ る .      これらの結果は,IN .Cin‑Phe 誘導体を凍結乾燥品とし腸溶性顆粒あるいは錠剤とし て 製 剤 化 す る た め の 基 礎 的 知 見 と し て 極 め て 有 用 で あ る と 考 え ら れ る .    審査員一同は,これらのインスリンの消化管からの吸収促進と血糖調節にかんする基礎 的検討の成果を高く評価し,申請者が博士(医学)の学位をうけるのに充分な資格を有す るものと判定した.

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参照

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