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博 士 ( 医 学 ) 清 水 康

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 清 水    康

学 位 論 文 題 名

cjun  dominant negative mutant を用  V ゝた AP ― 1 阻 害 に よ る 非 小 細 胞 肺 癌 細 胞 増 殖 の抑 制

学 位 論 文 内 容 の 要旨

【背景】

  AP―1はJun,Fos,ATFファミリータンパク質から構成されるホモあるいはへテロ2量体 の転写 因子で あり,プ ロトオンコプロテインであるcjunはAP―1の主な構成成分である.

これまで報告された免疫組織化学的検討によると,正常肺組織では発現がみられないcjun が非小細胞肺癌組織で高い発現がみられ,cjunは肺癌の発癌や増殖に重要な役割を果たし ている可能性がある.最近,ヒト気管支上皮細胞株でCjrUflを過剰に発現させると足場非依 存性増 殖が増 強され, 一部の肺癌細胞株でc−junのdominant negative mutantにてAPー1 活性を阻害すると足場非依存性増殖は抑制されるが,足場依存性増殖は抑制されないこと が報告された.しかし,乳癌や大腸癌細胞株での検討では,cjunの足場依存性増殖への関 与が報告されている.また,肺癌細胞におけるin vivoでの腫瘍増殖に対してcjun dominant negative mutantによるAP―1阻害が与える影響については,これまで検討されていない.

【目的】

  cjunのdominant negative mutantであるTAM67が ,非小細 胞肺癌細 胞の足場依存性・

非 依 存 性 増 殖 お よ び in vivo造 腫 瘍 能 に 与 え る 影 響 を 検 討 し た .    /

【材料と方法】

  非 小 細 胞肺 癌 細胞株NCトH520(以下 ,H520)とNCIーH1299(以 下,H1299)にTAM67を 一過性遺伝子導入し,ルシフェラーゼ法にてTAM67のAP−1活性への影響を調べ,コロニー 形成法 にてTAM67による 増殖能 への影響 を解析 した.次にTAM67の発現がテトラサイクリ ンで誘導されるH1299細胞株(H1299 Tet−on TAM67クローン細胞)を作成し,TAM67による 足場依 存性増 殖への影 響をMTT法で,細胞周期への影響をフローサイトメトリー法で調べ た.  H1299 Tet−on TAM67クローン細胞の作成には,ドキシサイクリンの投与により遺伝子 発現のコントロールが可能なreverse tetracyclineーregulated (rtTA) system (Tet−on システ ム)と ,薬剤選 択マー カーのblasticidinSdeaminaseが 含まれる レ卜ロウイルス ベクターのpLRTーTAM67を用いた,コントロールとして,テトラサイクリンでGFPが誘導さ れるH1299 Tet―on GFPクローン細胞を作成し使用した.また,これらの細胞でTAM67によ る足場 非依存 性増殖へ の影響について,ソフトアガロース法で検討した.さらに,H1299 Tet―on TAM67クローン細胞由来の腫瘍を形成させたヌードマウスにドキシサイクリン含有 水 を 投 与 し ,TAM67のin vivoに お け る 造 腫 瘍 能 へ の 影 響 に っ い て 検 討 し た .

【結果】

1.TAM67発現によるAP−1活性の変化

  TAM67を非小細 胞肺癌細胞株H520とH1299に一過性遺伝子導入すると,両細胞株でAP―1 活性は抑制された.

2.コロニー形成の抑制

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(2)

  TAM67を一過性遺伝子導入するとH1299のコロニー形成は明らかに減少した,一方,H520 ではTAM67を遺伝子導入してもコロニー形成は減少しなかった,

3.TAM67誘導H1299細胞の作成とAP−1活性の測定

  H1299 Tet−on TAM67クローン 細胞を作成し,実験にはTAM67の高い発現が確認された2 つ のクロ ーン細胞(TAM67#8およぴTAM67 #34)を用いた ,また,コントロールにはH1299 Tet―on GFPク ロ ーン 細 胞(GFP#1およ びGFP #3)を 用いた ,これら の細胞 にて,TAM67 発 現によ るAP―1活性の 抑制をル シフェラ ーゼ法 で調べた ところ,TAM67#8とTAM67 #34 で ドキシサイクリン存在下にTAM67を誘導すると,APー1活性が抑制されることが確認され た , 一 方 , コ ン ト ロ ー ル のGFP#1とGFP#3では ,AP―1活 性 は抑 制 さ れな か っ た.

4.TAM67誘導による細胞増殖、細胞周期への影響

  MTT法を用いた足場依存性増殖の検討で,TAM67#8とTAM67 #34ではTAM67を誘導すると増 殖が抑制されたが,コントロールのGFP#1とGFP#3では抑制されなかった.TAM67#8とGFP

#3を用いたフローサイトメ卜リー解析では,TAM67の誘導にてTAM67 #8ではS期細胞の割合 が減少し,GO/G1期細胞の割合が増加したが,コントロールのGFP#3ではそのような変化は みられなかった・

5.TAM67誘導による足場非依存性増殖の抑制

  ソフトアガロース法を用いた足場非依存性増殖の検討で,TAM67#8とTAM67 #34でばrAM67 を誘導すると増殖が抑制されたが,コントロールのGFP#1とGFP#3では抑制されなかった,

6.TAM67誘導によるinvivo腫瘍増殖の抑制

  TAM67#8とGFP#1をヌードマウスに皮下注射した.腫瘍形成後,ドキシサイクリンを投 与 されたマウスのTAM67#8由来の腫瘍は,ドキシサイクリンを投与されなかったマウスと 比 べ,明らかに増殖が抑制された.しかし,コントロールのGFP#1由来の腫瘍では,ドキ シ サ イ ク リ ン 投 与 の 有 無 に よ っ て 腫 瘍 増 殖 に 差 が み ら れ な か っ た .

【考察】

  コ ロニー形成法とMTT法では,TAM67によるAP―1活性の抑制がH1299の足場依存性増殖の 抑制に関与していることが示された, AP−1活性阻害による同様の細胞増殖抑制効果が,大 腸癌細胞株と乳癌細胞株でも報告されており,非小細胞肺癌細胞を含む一部の癌細胞では,

その足場依存性増殖がAP―1に依存していることが示唆される.この増殖抑制の主な機序は,

TAM67の誘導後にGl期細胞の明らかな増加がみられたことから,Gl期での細胞周期の停止で あると考えられる.

  本 研究では,AP−1活性を抑制するとH1299の足場非依存性増殖は明らかに抑制され,in vivoでの腫瘍 増殖も抑 制する ことが示された,APー1活性の抑制によるinvivoでの腫瘍増 殖の抑制は,大腸癌や乳癌といった他の癌細胞でも報告されており,AP−1活性の抑制が非 小 細 胞 肺 癌 を 含 む 癌 の 有 望 な 治 療 戦 略 と な り う る こ と を 示 唆 し て い る .   最 近,一 部の肺癌 細胞株 でcーjunのdominant negative mutantによりAP−1活性を阻害 す ると足場非依存性増殖は抑制されるが,足場依存性増殖は抑制されないことが報告され た ,しかし,本研究ではAP−1阻害によりH1299の足場非依存性増殖のみでなく,足場依存 性 増殖にっいても抑制された,乳癌細胞でも,足場依存性増殖が抑制されるのは細胞株に よって異なることが報告されており,こうした増殖におけるAP―1の役割は癌種だけでなく,

個々の細胞株毎に異なっていることが示唆される.

【結語】

  H1299細胞 では,TAM67によ ってAP−1活性と足場依存性増殖が共に抑制され,Gl期から S期へ の移行が抑制された.さらに,足場非依存性増殖とin vivo造腫瘍能も抑制された.

少 なくともー部の非小細胞肺癌細胞ではTAM67によるAP−1阻害によって細胞増殖が抑制さ れ , AP− 1が 非 小 細 胞 肺 癌 の 治 療 標 的 に な る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た ,

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(3)

学位論 文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授   秋 教授   守 教授   近 教授   西

田 弘 俊 内 哲 也 藤    哲 村 正 治

学 位 論 文 題 名

cjun dominant negative mutant を用¥r ゝた AP −1 阻害に よる非 小細胞肺癌細胞増殖の抑制

  AP‑1はJun,Fos,AI`Fファミリータンパク質から構成されるホモあるいはへテロ2量体 の転写因子であり,cJunはAP‐1の主な構成成分である.これまでの報告によると,cJunが 非小細胞肺癌組織で高い 発現がみられ,cJunは肺癌の発癌や増殖に重要な役割を果たして いる可能性がある.最近,一部の肺癌細胞株でAP‐1活性を阻害すると足場非依存性増殖は 抑制されるが,足場依存 性増殖は抑制されないことが報告された.しかし,乳癌や大腸癌 細胞株での検討では,cJ弧の足場依存性増殖への関与が報告されている,また,肺癌細胞 における血uv0での腫瘍増殖に対してcJ弧do血n孤tnegぬvemutantによるAP‐1阻害が与え る影響にっいては,これ まで検討されていなぃ,そこで,cJunのdominantneganvemutant で あるTAM67が ,非 小 細胞 肺癌 細胞 の足場依存性増殖、足場非依存性増殖および血uv。 造腫瘍能に与える影響を 検討した,

  非小 細胞 肺癌 細胞 株NCI_H520( 以下,H520)とNCI‐H1299(以下,H1299)にTAM67 を 一過 性遺伝子導入し,ルシ フェラーゼ法にてTAM67のAP.1活性への影響を調べ,コ ロ ニ ー 形成 法に てTAM67に よる 増殖 能へ の影 響を 解析 し た.TAM67をH520とH1299に 一過 性遺伝子導入すると,両 細胞株でAP‐1活性は抑制さ れ,H520ではコロニー形成は減少し な かっ たが,H1299のコロニー形成は明らかに減少した, 次にTAM67の発現がテ卜ラサ イ クリンで誘導されるH1299細胞株を作成し,1:AM67による足場依存性増殖への影響をMTT 法で,細胞周期への影響 をフローサイ卜メ卜リー法で調べた,実験には口M67の高い発現 が 確認 された2つのクローン細胞(TAM67#8およびTAM67#34)を用い,コン卜ロール に はGFPクロ ーン 細胞 (GFP#1お よびGFP#3) を用 いた .TAM67#8とTAM67#34でドキ シ

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(4)

サ イ ク リ ン 存 在 下 にTAM67を 誘導 する と,AP‑1活性 が抑 制さ れた .MTT法で は,TAM67

#8とTAM67 #34でTAM67を誘 導す ると 増殖 が抑 制さ れた が, コン ト ロー ルのGFP#1と GFP#3では 抑制 さ れな かった.TAM67#8とGFP#3を用いたフローサイトメトリー解析で は ,TAM67の 誘 導 に てTAM67#8で はS期 細胞 の割 合が 減少 し,GO/G1期細 胞の 割合 が増 加したが ,コントロールのGFP#3ではそのような変化はみられなかった.また,ソフトア ガ ロー ス法 を用 い て足 場非 依存 性増 殖に っい て検 討したところ ,TAM67#8とTAM67 #34 で はTAM67を 誘導 する と増 殖が 抑制 され たが , コン トロールのGFP#1とGFP#3では抑制 されなか った.さらに,TAM67クロー ン細胞由来の腫瘍を形成させたヌードマウスにドキ シ サイ クリ ン含 有 水を 投与し,TAM67のmvrvoにおける造腫瘍能への影響にっいて検討し た,ドキ シサイクリンを投与されたマウスのTAM67#8由来の腫瘍は,ドキシサイクリンを 投与され なかったマウスと比べ,明らかに増殖が抑制された.しかし,コントロールのGFP

#1由来の腫瘍では,腫瘍増殖に差が みられなかった.

  以上 の結 果か ら ,少 なく とも 一部 の非 小細 胞肺 癌細胞ではTAM67によるAP‑1阻害によ っ て細 胞増 殖が 抑 制さ れ,AP‑1が非 小細胞肺癌の治療標的になる可能性が示唆された.

  審査に あたり,副査守内教授から,1)遺伝子のプロモーター領域には,どの程度AP‑1 の結合部 位が存在するのか,2)AP‑1阻害による正常細胞への影響にっいて質問があった.

次いで副 査近藤教授から,1)AP‑1阻 害により増殖が抑制される細胞株と抑制されない細 胞 株で は, その 相 違の 要因は何が考 えられるか,2)臨床応用に 向けて,TAM67をどのよ うに効率 よく腫瘍細胞に発現させるかにっいて質問があった.また,副査西村教授から,

1) 肺癌 ではcjunの活 性化 がどの程度みられるのか,2)肺癌でAP‑1阻害は,単独で臨床 に応用で きるかにっいて質問があった.最後に主査秋田教授から,1)肺癌細胞にてTAM67 によりAP‑1を阻害すると,アポトーシスは誘導されるのか,また,他の細胞では過去に報 告がある のか,2)より高い治療効果 を引き出すために,他の治療方法を併用するような アイディ アはあるかについて質問があった.いずれの質問に対しても,申請者は自験デー タや過去 の文献を引用し,概ね適切に解答した,

  この論 文は,肺癌におけるAP‑1の細胞増殖への影響を血VIVOでも示した点で高く評価さ れ,今後 肺癌の治療に応用されることが期待される.

  審査員 一同は,これらの成果を高く評価し,大学院課程における研鑽や取得単位なども 併 せ申 請者 が博 士 (医 学) の学 位を 受け るの に充 分な 資格 を有 する もの と 判定した,

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参照

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