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博 士 ( 医 学 ) 宮 武

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 医 学 ) 宮 武    慎      学位論文題名

Local administration of interleukin ―1receptor antagonist     inhibits deterioration of mechanical properties of     the stress ―shielded patellar tendon

(IL―1受容体拮抗剤の局所投与は除負荷による 膝 蓋 腱 の カ 学 的 特 性 の 劣 化 を 抑 制 す る )

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

【背景と目的】

力学的負荷の減少は種々の臨床的病態で発生し、関節構成体に種々の有害な効 果を与えることが知られている。しかしこの害を医学的治療によって回避する ための研究はない。我々はこれまでの研究で、除負荷が膝蓋腱のカ学的特性を 減少させること、および膝蓋腱線維芽細胞にIL‑1口を過剰発現させることを明 らかにした。一方、IL‑1ロは腱の線維芽細胞にMMP1,.3,‑13の産生を誘導し,

それらがマトリックスを分解することが知られている。したがって、除負荷に よって線維芽細胞に過剰発現したIL‑1ロは膝蓋腱のカ学的特性を劣化させる原 因分子であ る可能性が 考えられた 。そこで今 回、我々は 「IL‑1 receptor antagonistの投与によるIL‑1pの抑制は、除負荷による膝蓋腱のカ学的特性の 劣化を抑制する」という仮説をたてた。本研究の目的はこの仮説を検証するこ とである。

【対象と方法】

実験には日 本白色家兎34羽を用いた。8羽は対照群とした。残りの26羽の右 膝蓋腱に対し、我々が既に報告している方法に準じて、軟鋼線、鋼線、螺子を 用い、膝蓋腱全長の30%短縮するように除負荷処置を行った。その後、各群13 羽ずっ以下の2群に分けた。I群ではPBS希釈0.2mlIL‑1 receptor antagonist 5ルgを膝蓋腱周囲に投与した。II群ではPBS0.2mlのみを投与した。全動物と も手 術後3週で屠 殺し、それ ぞれ8羽を腱全体 の生体力学 的評価に、5羽を fasciclesの生体力学的評価に供した。生体力学的評価方法は以下の通りである。

腱全体および膝蓋腱中央部4 mm幅の膝蓋骨.腱.脛骨複合体の腱の断面積はェ リアマイク□ヌーターで測定し、この複合体を引張速度毎分20mmにて引張試 験を行なった。腱実質部のひずみはVideo dimension analyzerを用いて計測し た。さらに、膝蓋腱から直径約300ロm、全長約15mmのfasciclesを切り出し、

山本らに準じてmicro tensile testerを用いた引張試験を行った。fasciclesの断 面積はVideo dimension analyzerで計測した。引張試験は毎分10mmの速度で 行ない,腱実質部ひずみはVideo dimension analyzerで計測した。統計学的解     一423―

(2)

析に はUnpaired t‑testを用いた。なお有意水準は5%とした。

【 結果 】

膝 蓋腱 全体 に関 する 結果 では 、断 面積 およ び長 さに 関して は2群間に有意差は 認 めな かった。IL‑1 receptor antagonistを投与したI群およびII群の弾性率は 169土70 MPa( 平均 土標 準偏 差) 、97土28 MPaで あり 、I群はII群 に比ベ 、有 意 に高 値であった。I群およびII群の引張強度は、6.7土2.0 MPa、3.9土1.4 MPa で 、I群 はII群 に比 ベ、 有意 に高 値で あった 。破 断ひ ずみ はI群とII群の 間に 有 意 差 は な か っ た。 一方 、膝 蓋腱fasciclesのI群お よびII群 の弾 性率は93土 40 MPa( 平 均 土 標 準 偏 差 ) 、53土8MPaで あ り、I群 とII群に 有意 差はな かっ た 。I群 お よ びII群 の引 張強 度は 、4.8土2.5 MPa、4.4土0.9 MPaで 、I群 とII 群 に 有 意 差 は な か っ た 。 破 断 ひ ず み はI群 とII群の 間に 有意 差は なかっ た。

【考察】

本研究は、IL‑1 receptor antagonistの局所投与が除負荷による膝蓋腱のカ学的 劣化を有意に抑制することを明らかにした。IL‑1 receptor antagonistは高親和 性 を も っ たIL‑1Qお よ びIL‑1ロ の 特 異 的 拮 抗 剤で ある 。し たが ってIL‑1の不 活化 が除 負荷 膝蓋 腱の カ学 的劣 化を抑制したと考えられる。本研究は我々が示 して きた 除負 荷膝 蓋腱 の線 維芽 細胞 にお けるIL‑1Bの過 剰発 現は、除負荷によ る膝 蓋腱 のカ 学的 劣化 の重 要な 原因のーつであることを強く示唆した。一方、

本研 究で はYamamoto,Hyashiら に準 じて 、ウ サギ 膝蓋腱 を構 成するfascicles のカ 学的 評価 も行 った 。そ の結 果、本研究で計測した正常および除負荷膝蓋腱 fasciclesの カ学 的特 性はYamamotoら が報 告し た結 果に 近似 していた。この事 実 は 我 々 の 研 究 の 測 定 精 度を 確 認 す る も の で あ る。 本研 究はIL‑1 receptor antagomstの 局所 投与 が、除 負荷 膝蓋腱を構成するfasciclesのカ学的特性には 有意 の効果を与えなかったことを示した。この現象と、前述したIL‑1 receptor antagonistの 局所 投与 が除 負荷 による膝蓋腱のカ学的劣化を有意に抑制した現 象と の関 係を 次の ごと く考 察す る。 一般 的に 、腱fasciclesのカ学的特性は、

fascicle自体のカ学的特性、fascicleの相互間のカ学的特性、およびnnnor matrix とfascicleと のカ 学的 特性 に依 存し てい る。 本研 究の2つの 結果を説明するメ カ ニ ズ ム と し て 、IL‑1に 誘 導 さ れ るMMPがfascicles間 の カ 学 的 特 性 ま た は mmor matrixとfascicleと の カ 学 的 特 性 に 大 きな 効果 を与 え、 それ に対 して fascicle自体に与えた効果は少ないという可能性が考えられる。しかしこの検証 は今 後の 課題 であ る。 本研 究の 臨床との関連として,除負荷の有害作用を回避 する ため の治 療を 開発 する 研究 戦略において、IL‑1は重要な標的分子のーつで あることが示唆された。

【結語】

家 兎 に お け るIL‑1 receptor antagonist5Mgの局 所投 与は 、除 負荷に よる 膝 蓋腱のカ学的劣化を有意に抑制した。しかし除負荷膝蓋腱を構成するfascicles のカ学的特性には有意の効果を与えなかった。

(3)

学 位 論 文 審 査 の要 旨

主 査   教 授   三 浪 明 男 副 査   教 授   福 田    副 査   教 授   安 田 和 則

     学位論文題名

Local administration of interleukin −1receptor antagonist     inhibits deterioration ofmeChaniCalpropertieSOf     theStreSS ― Shieldedpate11artendon

(IL1受 容 体 拮 抗 剤 の 局 所 投 与 は 除 負 荷 に よ る 膝 蓋 腱 の カ 学 的 特 性 の 劣 化 を 抑 制 す る )

  力学的負荷の減少は種々の臨床的病態で発生し、関節構成体に種々の有害な効果を関節周 囲に与えることが知られている。しかしこの有害を医学的治療によって回避するための研究 はない。そこで申請者はこれまでの研究で、関節を固定せず、膝蓋腱を除負荷する方法を開 発し、除負荷が膝蓋腱のカ学的特性を減少させることを明らかにした。しかし除負荷による 腱のカ学的特性の劣化のメカニズムはいまだ明らかではない。近年、ラットの除負荷モデル で、IL一1ロが除負荷した膝蓋腱の線維芽細胞で過剰発現されることを明らかにされた。従つ て、除負荷によって線維芽細胞に過剰発現したILiBは、膝蓋腱のカ学的特性を劣化させ る原因分子である可能性が考えられた。IL一lreceptor antagonist (IL―lra)は、ILla IL−1ロに対する特異性および親和性の高い拮抗剤であることが知られている。そこで、申請 者は「IL1receptor antagonistの投与によるIL−iBの抑制は、除負荷による膝蓋腱のカ 学 的 特 性 の 劣 化 を 抑 制 す る 」 と い う 仮 説 を た て 、 こ の 仮 説 を 検 証 し た 。   実験に は日本 白色家兎34羽を用いた。右膝蓋腱に対し、除負荷処置を行った。その後8 羽をコ ントロー ルとし、残りの26羽を各群13羽ずつ以下の2群に分けた。除負荷処置を行 い、その際にILlra群ではO2mlPBS希釈したIL−lra5ルgを膝蓋腱の周囲に投与した。PBS 群ではPBSO. 2mlの みを投与した。全動物とも手術後3週で屠殺し、それぞれ8羽を腱全体 の生体力学的評価に、5羽をfasciclesの生体力学的評価に供した。生体力学的評価方法と して、腱全体および膝蓋腱4 mm幅の膝蓋骨一腱―脛骨複合体の腱の断面積はエリアマイクロ メーターで測定した。Tensile testerを使用し、引張速度毎分20mmにて引張試験を行なっ た。腱 実質部の ひずみはVideo dimension analyzerを用いて計測した。また、fascicles の生体 力学的評 価方法 として、 膝蓋腱 から直径約300Hm、全長約15mmfasciclesを切り 出し、micro tensile testerを用いて毎分10mmの速度で引張試験を行った。fascicles 断面積と実質部ひずみはVideo dimension analyzerで計測した。統計学的解析にはUnpaired t‑testを用い、有意水準は5%とした。その結果、膝蓋腱全体の生体力学評価では、ILlra 群の弾性率および引張強度は、PBS群のそれらに比べて有意に高値だったが、破断ひずみは ILlra群とPBS群の問 に有意差 はなか った。膝 蓋腱fasciclesの生 体力学的評価では、

fasciclesの 弾性率 、引張強度、および破断ひずみは、いずれもILlra群とPBS群の問に 有意差はなかった。

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(4)

  本研究は、IL―lraの局所投与によるIL―1ロの抑制が3週間の除負荷による膝蓋腱全体のカ 学的劣化を有意に抑制すること、およびIL−iBの発現がfibril自体ではなく、fibril間のカ 学的特性の劣 化を介して腱全体のカ学的特性の劣化をもたらしており、IL−lra投与による IL‑1の抑制はこのfibril間のカ学的特性の劣化を抑制したことを強く示唆した。本研究の臨 床応用として、関節リウマチのような炎症性疾患の臨床治療に抗IL―1の戦略が最近注目され ているが、このように除負荷の有害作用を回避するための治療を開発する研究戦略において もIL1は重要な標的分子のーっであることが示唆された。

  口頭発表の後、副査の福田教授より、人間で想定される除負荷の発生状況について、将来 の臨床応用の 方向性について、ILーlra投与量を決定した理由について、評価時期決定の理 由について、および各治療群の病理組織学的変化について質問があった。次いで主査の三浪 より、除負荷の効果がファシクルと腱全体で異なった理由について、ILー1ロの効果の機序に ついて、およ び除負荷によって発現する数種類サイトカインの中でILー1ロに着目した理由 について質問があった。最後に副査の安田教授より、最小単位フィブリルに対する効果につ いて、フィブリル、ファシクル、および腱全体のカ学特性相互の関係について、および他の サイトカインが除負荷腱のカ学特性に与える効果の例について質問があった。いずれに対し て も 申 請 者 は 、 自 己 の 研 究結 果と 文献 的考 察に 基 づぃ て概 ね妥 当な 回答 を行 った 。   本研究は、IL―lraの投与によるIL−1ロの抑制が除負荷による膝蓋腱のカ学的特性の劣化 を抑制するこ とを初めて明らかにし、またILー1ロによるカ学的特性劣化機序の解明に重要 な情報を与えた。審査員一同は、これらの成果を高く評価し、申請者が博士(医学)の学位を 受けるのに十分な資格を有するものと判定した。

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参照

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