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博 士 ( 医 学 ) 中 村 俊 孝

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 中 村 俊 孝

     学 位 論 文 題 名

Functional Networks in IVIotor Sequence Learning :   Abnormal Topographies in Parkinson SDisease      ( 運 動 順 序 学 習 に お け る 機 能的 神経 ネ ット ワー ク :      パ ー キ ン ソ ン 病 に お け る 異 常 機 構 )

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  我 々 人 間 の 日 常 の 行 動 或 い は 様 々 な 技 能 は 順 序 付 け ら れ た 一 連 の 運 動 か ら 成 り 立 っ て お り , こ れ を 獲 得 す る た め に は 、 通 常 何 度 も の 繰 り返 し、 すな わち 学 習過 程が 必要 であ る 。近 年PETやfMRIを 用 い た 賦 活 研 究 が 盛 ん に 行 わ れ 、 こ の よ う な 学 習 機 能 に 関し ても 様々 な 知見 が 得 ら れ て い る 。 し か し な が ら 、 こ れ ら の 報 告 の間 には 主に その 方 法論 の問 題か らい く っか の 矛 盾 点 が 生 じ て い る の が 現 状 で あ る 。 例 え ぱ 、学 習に は明 示的 学 習と 暗黙 的学 習が あ りそ れ そ れ に 関 連 し た 脳 機 能 活 性 は 異 な る と 思 わ れ るが 、過 去の 研究 に おけ る学 習課 題で は 両者 が混 在 して おり 、そ の 結果 の解 釈は 困難 で ある 。ま ,た 、本 研 究で は明 示的 学 習に 主眼 を置い た が 、 こ の 学 習 過 程 に お い て は 符 号 化 及 び 検 索 とい うニ つの 異な る 要素 が指 摘さ れて お り、

こ れ ら に つ い て も 異 な る メ カ ニ ズ ム が 推 測 さ れ てい る。 更に 、脳 機 能は 決し て脳 の単 一 部位 に よ っ て 発 現 さ れ る わ け で は な く 、 複 数 の 部 位 が相 互に 関係 しあ っ て作 用す るに もか か わら ず 、 従 来 の 単 変 量 解 析 で は こ の 相 互 作 用 に つ い て言 及す るこ とは 不 可能 であ った 。最 後 に、

バ ー キ ン ソ ン 病 (PD) に お け る 認 知 機 能 障 害 は 一 般 的 に 知 ら れ て い る が 、 そ の 発 生 メ カ ニ ズ ム は 不 明 な 点 が 多 い 。 以 上 を 踏 ま え 、 我 々 は 、明 示的 学習 を主 と する 運動 順序 学習 に 関し 正 常 人 とPD患 者 にPET賦 活 試 験 を 施 行 し 、 以 下 の3点 に つ い て 新 た な 解 析 を 行 っ た 。1) 学 習 要 素 で あ る 符 号 化 と 検 索 を 個 別 に 解 析2) 課 題 実 行 能 カ の 個 体 差 及 び 群 間 差 を 考 慮 し、バラメトリッ ク解析を施行  3)単変量解 析及び多変量解析を使用

    対 象 は 正 常 人8例 ( 男 性5例 女 性3例 、 年 齢5613土11.0歳 ) 、 及 ぴPD患 者 【H&YStage Il16例 ( 男 性12例 女 性4例 、 年 齢59.6士10.1歳 ) であ る。 課 題は モニ ター 上 で点 滅す る8個の 円 に 向 か っ て 中 心 か ら 右 手 で カ ー ソ ル を 動 か す も の で 以 下 の2種 類 が あ る 。Mpred: 目 標 の 円 が 予 め 指 示 さ れ た よ う に 時 計 回 り の 順 序 に 点 滅 し 、 こ れ に 同 期 し て カ ー ソ ル を 動 か す 。 RTlearn: 目 標 は8個 か ら な る 配 列 に 従 っ て 点 滅 す る 。 被 験 者 は 目 標 に 向 か っ て カ ー ソ ル を 繰 り 返 し 動 か す こ と に よ り こ の 運 動 順 序 を 学 習 し 、 最 終 的 に はMpredの よう に目 標の 点 滅に 同 期 し て カ ー ソ ル を 動 か すこ とを 目的 と する もの であ る。PETはGE advance tomographを 三次 元モ ー ドで 使用 、H2150 10mCiをSilberswigらの 方 法に て静 注し 、80秒間の撮像にて脳血流像を 得た。

  イ メ ー ジ 解 析 はRnearn―Mpredに よ る 局 所 脳 血 流 増 加 に つ い て 、 各 被 検者 の課 題実 行 結果 から計算された符 号化指数(acquisitionindex)と検索指数(retrievalindex)を用いて行なった。

単 変 量 解 析 に はSPM96を 使 用 し 、 各 指 数 と 血 流 増 加 間 の 一 次 相 関 を 解 析 した 。多 変量 解 析に はROIbasedSSM田CA(scaledSubprofileModeVprincipaIcomponentanalysis主成分分析)を用いた。これ は 主 成 分 分 析 を 主 と す る 解 析 に よ り 各 群 に お け る各 指数 (共 変量 ) に関 連し た局 所共 分 散パ

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ターン(ネットワーク)を同定、同時に得られる個体値(subjectscore)は各指数を単一ある いは一次的組み合わせによって予測するものである。また、更にTPR卩0Pographicprofilerating) によって正常群の各局所共分散バターンが個々のバーキンソン病患者にどのように関与して いるかを計算した。

  SPMに よると、 正常群 で符号化指数と有意な相関を有する賦活部位は、両側前頭前野背外 側部・左前頭前野腹側部・右運動前野吻側背側部・右楔前部・右前補足運動野・右感覚運動 野であ り、PD群で は両側 前頭前野 背外側部 ・左前 頭前野腹側部・左運動前野吻側背側部で あった。群と符号化指数との交互作用は右前補足運動野・左運動前野吻側背側部・左前頭前 野腹側部で認められ、一次相関回帰直線の傾きは前者で正常群でより急峻であり、後二者で はPD群で より急峻 であっ た。検索 指数と相 関を有 する賦活部位は正常群では左固有補足運 動野・右運動前野吻側背側部・右頭頂葉後部・右前補足運動野・右前頭前野背外側部であり PD群では 両側運動 前野吻 側背側部 ・両側楔 前部・ 左前補足運動野・右前頭前野背外側部・

右前頭前野腹側部・右頭頂葉後部であった。群と検索指数との交互作用解析により一次相関 回帰直 線の傾き が正常群 でより 急峻であ る部位 は左固有補足運動野であり、PD群でより急 峻なのは両側頭頂葉後部・左運動前野吻側背側部・左前補足運動野・左楔前部・右前頭前野 背外側部・右前頭前野腹側部であった。

  SSM膚CAによると 、正常 群で符号化指数と相関を示す共分散バターンは、左前頭前野背外 側部・左帯状皮質運動野吻側部・左前補足運動野・左尾状核頭・左被殻の血流増加から成り 検索指数と相関を示す共分散パターンは、両側運動前野吻側背側部・右楔前部・右頭頂葉後 部から成っていた。これらの結果は、運動順序学習における符号化と検索というニつの要素 はそれ それ異な る神経ネ ットワークの機能によるものであることを示している。TPRによっ て上記 正常ネッ トワーク がPD患者 にどのよ うに関 連しているか調ぺたところ、符号化関連 ネット ワークに ついての 個体値 は符号化 指数と 相関はなく、これはPD患者では同ネットワ ークは機能していない事を示す。また、検索については正常群よりは低いものの有意な相関 が認め られ、こ れはPD患 者におけ る正常検 索関連 ネットワークの潜在的機能を表している と考え られる。 以上より 、PD患者 では正常 と異な るネットワークが機能していると予測さ れ、PD群でSSM暦CA解 析を す る と、PD符号 化 関 連ネッ トワーク は左前頭 前野背 外側部・

左前頭 前野腹側 部・左運 動前野 吻側背側 部から 成り、PD検索関連ネットワークは両側運動 前野吻 側背側部 ・両側楔 前部・ 両側頭頂 葉後部 ・左前補足運動野・左帯状皮質運動野吻側 部・右前頭前野背外側部から成っていた。

  SPMバ ラメトリ ック相 関解析に よると多 くの領 域でPD群で より急 峻な賦活 化の傾きが得 られたが、これは正常群と同等の学習結果を発揮するためにより多くの脳血流増加が必要で あることを示している。逆に、前補足運動野や固有補足運動野では正常群で賦活化の傾きが 急峻で あり、PDに おいて これらの 領域の機 能が障 害されていることを示しているが、単変 量解析ではこの障害が一次的なものなのか、或いは、線条体異常に関連した二次的なものな のかは 不明であ る。SSMゆCAにより、線条体―左前頭葉からなる正常符号化ネットワークは PD患者で は機能せ ず、よ り広範な 左前頭葉 内ネッ トワークが代償的に機能していることが 明らか にされた 。また、 正常及 びPD両ネッ トワー クに左側運動前野吻側背側部が関与して おり 、 明 示的 運 動 順序 学習にお いて同 領域が中 心的役割 を果た している と考え られる。

  次に、検索機能については右前頭葉運動前野一後頭葉を中心とする、符号化と比ぺて大脳 半球の 左側から 右側ヘ、 更に前 方から後 方に転 移した正常ネヅトワークはPDにおいても潜 在的には機能可能であるが、正常者の同等の学習結果を発揮するためには大脳半球両側に跨 るより広範なネットワークが必要であることがわかった。これは我々の他の研究において、

正常者で学習課題の難易度を高めるのに伴って、より広範な領域が賦活化されたことと類似 している。

(3)

  以上のように、今回の研究での対象である初期の 軽症PD患者は正常と異なる神経ネット ワークを発動させて正常人に匹敵する学習効果を発揮したが、病気の進行とともにこれらの 代 償 機 能 に 限 界 が 生 じ 、 実 際 の 認 知 機 能 障 害 が 出 現 す る も の と 考 え ら れ る 。

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学 位論文審 査の要旨

     学位論文題名

Functional Networks in rvIotor Sequence Learning :   Abnormal Topographies in Parkinson SDisease      (運動順序学習における機能的神経ネットワーク:

     パ ー キ ン ソ ン 病 に お け る 異 常 機 構 )

  我々人間の日常の行動或いは様々 な技能は順序付けられた一連の運動から成り立ってお りこれを獲得するためには、何度も の繰り返し、すなわち運動順序学習が必要である。一 般的に学習には明示的学習と暗黙的学習があり、更に学習過程は符号化と検索に分けられ、

それぞれ異なる脳領域が関連してい ると思われるがその詳細は不明である。更に、パーキ ン ソ ン 病(PD)にお いて 運動 順序 学習 障害 が指 摘さ れ てい るが この 機序 も不 明で ある 。 本研 究で は明 示的学習を主と する運動順序学習に関し、正常人とPD患者にPET賦活試験を 施行し、符号化と検索について課題 実行能カの個体差・群間差を考慮し、更に、ネットワ ークとして多変量解析を行った。

  対象は正常人8例、及びPD患者16例で、PETはGE advance tomographを使用、H2150 lOmCi を静注し、80秒間の撮像にて脳血流 像を得た。学習課題は、モ二夕ー上である配列で点滅 する8個の 目標 に向かってくり返しカーソルを動かすもの で、徐々にこの運動順序を学習 し、最終的には目標に同期した運動 を要求される。画像解析の際は、運動実行に関する領 域を除くために、反時計周りの機械 的な運動実行課題での画像をサプトラクションし、更 に、各被検者の課題実行結果から計 算された符号化指数と検索指数を用いて行なった。多 変量解析にはSSM (Scaled Subprofile Model)を用いた。これは主成分分析を主とする解析に より各群における各指数に関連した 共分散パターン(ネットワーク)を同定、同時に各被 検者のネットワークの発現程度(個 体値)を求めるものである。

  SSMによ ると 、正常群で符号化指数と相関を示す共分散 パ夕一ンは、左前頭前野背外側 部・左前補足運動野・左尾状核頭・ 左被殻などの血流増加から成り、検索指数と相関を示 す共分散パ夕一ンは、右前頭前野背 外側部・両側運動前野吻側背側部・右楔前部・右頭頂 葉後部から成っていた。これらの結 果は、運動順序学習における符号化と検索というニつ の要素はそれぞれ異なる神経ネット ワークの機能によるものであることを示している。更 にこ の正 常ネ ッ トワ ーク とPD患者 との 関係では、符号化 ネットワークの個体値は符号化 指数 と相 関は な く、PD患 者で は同 ネッ トワークは機能し ていない事を示す。また、検索 につ いて は正 常 群よ りは 低い もの の有 意な相関が認めら れ、これはPD患者における正常 検索 ネッ トワ ー クの 潜在 的機 能を 表し てい ると 考え られ る。PD群 でのSSMによると、PD

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信 雄

喜 邦

崎 代

岩 田

授 授

教 教

査 査

主 副

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符号化ネットワークは左前頭前野背外側部・左前頭前野腹側部・左運動前野吻側背側部か ら成り、PD 検索ネットワークは右前頭前野背外側部・両側運動前野吻側背側部・両側楔 前 部 ・ 両 側 頭 頂 葉 後 部 ・ 左 前 補 足 運 動 野 な ど か ら 構 成 さ れ て い た 。

  

運動順序学習に関して、符号化では脳の左側前方領域、検索では右側後方領域から成る 異なるネットワークが明らかとなった。PD では、線条体一左前頭葉からなる正常符号化 ネットワークは機能し得ず、より広範な左前頭葉内ネットワークが代償的に機能していた。

検索機能については右前頭葉―後頭葉を中心とする正常ネットワークはPD におしゝても潜 在的には機能可能であるが、正常者の同等の学習結果を発揮するために大脳半球両側に跨 るより広範なネットワークによるプースト機能が発現されていた。また、ネットワークに 左右の前頭前野背外側部はそれぞれ符号化・検索に必須であり、同領域が中心的役割を果 たしていると考えられる。

  

以上のように、今回の研究での対象である初期の軽症PD 患者は正常と異なる神経ネット ワークを発動させて正常人に匹敵する学習効果を発揮したが、病気の進行とともにこれら の 代 償 機能 に 限界 が 生 じ、 実 際の 認 知 機能 障 害 が出 現 する も の と考 え られ る 。

  

公開発表において玉木長良教授から、課題のくり返しによって生じる 慣れ の影響・

ブースト機能における賦活化の増強パ夕一ンの詳細・症状の重症度とネットワーク異常と の関連・本法の未発症患者のスクリ一二ングヘの有用性.fMRI での同様の研究の可能性 に関する質問があった。次いで田代邦雄教授から、症状の左右の優位度と学習結果との関 係・薬物治療の影響・パーキンソン病において障害が指摘されている書宇機能の学習要素 における位置付けに関する質問があった。更に岩崎喜信教授から正常学習研究における新 知見・最近注目されている小脳のネッ卜ワークにおける欠如に関する質問があった。いず れの質問に対しても、申請者は自らの研究に基づく経験や過去の論文の結果を引用し、明 確に回答した。

  

この論文は、新しい解析方法により運動順序学習における正常な機能的神経ネットワー ク、更には、パーキンソン病における異常性を明らかとした点で高く評価され、今後これ らの手法が広く研究に応用され、更には、研究結果が同疾患の診療において臨床応用され ることが期待される。

  

審査員一同は、これらの成果を高く評価し、また研究者として誠実かつ熱心であり、申 請 者 が 博士 ( 医学 ) の 学位 を 受け る の に充 分 な 資格 を 有す る も のと 判 定し た 。

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参照

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