学 位 論 文 題 名
博 士 ( 医 学 ) 網 島 優
Dairy farmers havelnCreaSedmethaCholine bronChialreSponSlVeneSSindependentof SenSitiZationtomoldantlgenS
( 酪農 従 事 者には 真菌抗 原感作 に関係し ないメ サコリ ンに対 する気 道反応 性亢進 が認め られる)
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
I、 研 究 の 背景 と 目的
農 夫 肺 症 は 、 乾 燥 が 不 十 分 な 牧 草 で 増 殖 す る真 菌 の 吸 入で 起 き る 過敏 性 肺 臓 炎の 一 型 で あ り 、 発 熱 、 呼 吸 困 難 、 乾 性 咳 嗽 を 主症 状 と す る。 一 方 非 特異 的 な 気 道反 応 性 の 亢進 は 気 管 支 喘 息 の ー つ の 特 徴 と さ れ て い る が、 他 の 肺 疾患 で も 軽 度な が ら 認 めら れ 、 農 夫肺 症 や 鳩 飼 病 な ど の 過 敏 性 肺 臓 炎 で も 非 特 異的 な 気 道 反応 性 の 亢 進が 報 告 さ れて い る 。 また 農 夫 肺 症 の 既 往 者 を 含 め 真 菌 に 対 す る 血 清中 の 沈 降 抗体 陽 性 者 でも 気 道 反 応性 の 亢 進 が報 告 さ れ て お り 、 真 菌 抗 原 へ の 感 作 が 気 道 反 応 性 に 影 響 を 与 え る 可 能 性 が 示 唆 さ れ て い る 。 し か し 酪 農 従 事 者 ・ 養 豚 業 者 一 般 で も 気 道 反応 性 の 亢 進が 認 め ら れる と の 報 告も 散 見 さ れ 、 酪 農 従 事 者 に 見 ら れ る 気 道 反 応 性亢 進 が 農 夫肺 症 の 既 往や 真 菌 抗 原の 感 作 に よる も の か 、 酪 農 作 業 環 境 に 伴 う 一 般 的 な 所 見で あ る の かは 不 明 で ある 。 こ の 点を 明 ら か にす る 目 的で著者らが北海道北部の酪農地帯において行っている農夫肺症の発錨!.予i!りに1欠」づるフイー ル ド ワ ー ク の 対 象 者 を 、 農 夫 肺 症 の 発症 歴 、 真 菌抗 原 に 対 する 感 作 状 態に よ ル グ ルー プ 化 し て 抽 出 し 、 同 地 域 に お い て 酪 農 作 業に 従 事 し てい な ぃ 健 常者 を 対 照 にお い て 、 呼吸 機 能 と気道反応性についての検討を加えた。
II、 対象と 方法
北 海道 北 部 の 酪農 地 帯 に おい て、i) 農夫肺症 の既往 歴のあ る酪農 従事者(FLD群;n=12)、
ii)農夫肺症を発症する原因真菌(Micropo恤、・pora′aemand/or襾e間oac加om.yc飴yu培研S)に対 する沈降抗体陽性の健常酪農従事者(Ab(十)群;n=13)、iii)真菌に対する沈降抗体陰性の健常 酪農従事者(Ab(―)群;n〓12)、iv)同地域に居住する酪農に従事していなぃ健常者(Contml群;
n=11) を 対 象 とし た 。 質 問票 ( 喫 煙 習慣 、 酪 農 規模 、 牧 草 取り 扱 い 時 間、 自 覚 症 状、 ア レ ル ギ ー 症 状 を含 め た 既 往歴 等 ) に よる 問 診 後 、胸 部X線 検 査 を 行な っ た 。 質問 票 で ア 卜ピ ー 素 因 が あ る こ と が 疑 わ れ た 被 験 者 は 対 象か ら は 除 外し た 。 ス パイ 口 メ ー ター に よ り 呼吸 機 能 検 査 を 施 行 後 、 オ シ レ ー シ ョ ン 法 に よる 呼 吸 抵 抗連 続 測 定 器( ア ス ト グラ フ 法 ) によ る メ サ コ リ ン 気 道 反 応 性 試 験 を 行 っ た 。 結 果 は 呼 吸 抵 抗 の 逆 数 で あ る 呼 吸 コ ン ダ ク タ ン ス
(Grs=1爪rs)が前値の35%低下するまでに吸入したメサコリンの量(PDユョGrs)で表し、統計学
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的 検 討 の 際 に は対 数 変換(Log(PD35Grs)>して 比較 検討 した 。 また アト ピ一 素 因の 影響 を検 討 す る た め 、 血 清 総IgE量 と 、 吸 入 性 抗 原10種( ヤケ ヒョ ウ ヒダ ニ、 コナ ヒ ョウ ヒダ ニ、
ア ス ペ ル ギ ル ス、 ア ルテ ルナ リア 、ペ ニ シリ ウム 、ブ タク サ 花粉 、カ モガ ヤ 花粉 、ネ コ上 皮、 イヌ 上皮 、 ウシ 上皮 )に 対す る 特異 的IgE抗 体検 査を 螢光 免 疫酵 素抗 体法 で施行した 。 疾患 対照 群と し て当 科に 通院 中の 気管支喘息患者(n=20)に ついても、同様の方法で気道 反 応性 を検 討し た 。
III、結果
酪 農 従 事 者 各 群 間 で は 労 働 時 間 、 喫 煙 指 数 等 に 有 意 な 差 は な か っ た 。 呼 吸 器 症 状 で は Ab(・ ) 群 でAbく 十 ) 群 に 比 ベ 喀 痰 の 訴 え が 多 か っ た が 、 そ の 他 は 酪 農 従 事 者 各 群 間 で 有 意 差 を 認 め な か っ た 。 呼 吸 機 能 検 査 で は 、 正 常 対 照 群 に 比 べ てAb( 十 ) 群 で 一 秒 率 が 低 下 し て い た が 正 常 範 囲 内 で あ り 、 酪 農 従 事 者 各 群 で 明 ら か な 閉 塞 性 ゛ 拘 束 性 換 気 障 害 は 見 ら れ な か っ た 。 し か し 、 酪 農 従 事 者3群 す べ て で 末 梢 気 道 障 害 の 指 標 と さ れ るV25の 低 下 が 見 ら れ た 。 メ サ コ リ ン 吸 入 に よ る 気 道 反 応 性 試 験 (Log(PD35Grs)) で は 、 酪 農 従 事 者 の3群 間 で は 有 意 差 を 認 め な か っ た(FLD: 1.22+0.18,Ab( 十 ト1.00+0.17,Ab(‑)ニ1.20+0.20,mean+SEM)が 、 正 常 対 照 群(2.10+0.09)と 比 べ る と3群 と も 有 意 な 気 道 反 応 性 亢 進 を 認 め た (pく0.001)。 健 常 な 酪 農 従 事 者 の み (Ab( 十 ) 群 十Ab( ― ) 群 :1.10+0.13)で も 、 気 道 反 応 性 は 正 常 対 照 群 よ り は 有 意 に 亢 進 し て い た が (pくO.OOl) 、 気 管 支 喘 息 群(0.38+0.14)と 比 べ る と そ の 程 度 は 軽 度 だ っ た
(pく0.01)。 血 清総IgE量 (FLD群 ;237.4土108.31U/l,Abり群;93.0土31.1,Ab(‐)群;151.8土51.6, Control群 ;146.8土28.3,mean土SEM) 、特 異 的IgE抗 体の 陽 性率 (FLD群; リ12(8.3% ),Ab(十 ) 群;
3/13(23.1%) ,Ab( − )群 ;1/12(8.3% ),Conロol群 ;ツ11(36.4%)) は酪農従事者、 正常対照群の 4群 間 で 有 意 差 を 認 め な か っ た 。 ま た ウ シ 上 皮 に 対 す る 特 異 的IgE抗 体 陽 性 者 は 認 め ら れ なか っ た。
IV、 考 案
酪 農 従 事 者 で は 同 地 域 の 健 常 者 群に 比ベ 気道 反 応性 の亢 進を 認め た が、 酪農 従事 者 の問 で は 農 夫 肺 症 の 既 往 歴 、 真 菌 抗 原 への 感作 状態 に 関わ らず ほば 同程 度 の反 応性 であ っ た。
問 診 、 お よ び 血 清 総IgE、 特 異 的Iが抗 体陽 性者 数 の検 討よ り、 この 気 道反 応性 がア 卜 ピー 素 因 に 由 来 す る 可 能 性 は 低 い と 考 え ら れ 、 酪 農 の 作 業 環 境 と の 関 連 が 強 く 示 唆 さ れ た。
近 年 農 夫 肺症 以外 で 、酪 農従 事者 に見 ら れる 職場 環境 に 由来 する 疾患 とし てOrganicdust to虹csyndrome(ODrrs)が 注目 され てい る 。ODrrsは有 機粉 塵の 大量 暴 露に よっ て酪 農 従事 者 に 見 ら れ る 発 熱 、 咳 嗽 、 全 身 倦 怠感 を症 状と す る症 候群 で、 暴露 直 後に 症状 が出 現 する こ と や 、 血 中 に 真 菌 抗 原 に 対 す る 沈 降 抗 体 が 認 め ら れ な ぃ こ と、 胸部X線 写真 上明 ら かな 陰 影 を 認 め な い こ と な ど よ り 農 夫 肺症 (過 敏性 肺 臓炎 )と は区 別さ れ る疾 患概 念と さ れ、
粉 塵中 のendoto姐nやfungalto妬nに よ るも のと 考え られ て いる 。急 性期 に 施行された開胸肺 生 検 の 所 見 で は 末 梢 気 道 や 肺 胞 に 好 中 球 主 体 の 気 道 炎 症 の 存 在 が 報 告 さ れ て い る 。 今 回 の 対 象 者 で は 明 ら か なODlSと 考 え ら れ る 症 状 は 間 診 上 は 認 め ら れ な か っ た が 、健 康 な酪 農従 事者 で も気 管支 肺胞 洗浄 検 査に おい て好 中球 や りン ノく 球の 増 加が報告されてお り 、 臨 床 的 に 症 状 を 呈 し な い 程 度 の少 量の 粉塵 暴 露は 日常 的に 起こ っ てい るも のと 推 測さ れ る 。 ま たendoto虹nの 吸入 は 健常 者に おい ても 気 道反 応性 を亢 進さ せ る事 が報 告さ れ てお り 、 今 回 の 検 討 で 認 め ら れ た 酪 農 従事 者の 気道 反 応性 の亢 進は 有機 粉 塵の 吸入 によ る 慢性
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的な気道炎症の存在を反映しているものと考えられた。
V、 結 語
酪農従事者 では農夫肺症の既往や真菌抗原への感作の有無に関わら ず呼吸機能検査上 V25の低下と非特異的な気道反応性の亢進 が認められた。この変化はアトピ一素因に由来 する可能性は低いと考えられ、職場環境においてendotoxinなどを含む粉塵の慢性吸入が、
末 梢気 道病 変や 非特 異的 気 道反 応性 の亢 進を 引き起こしている可能性が示唆された。
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学位論文審査の要旨 主 査 教 授 川上義和 副 査 教 授 齋藤和雄 副 査 教 授 皆川知紀 学 位 論 文 題 名
Dairy farmers havelnCreaSedmethaCh01ine ソ
bronChialreSponSlVeneSSindependentof SenSitiZationtom01dantigenS
( 酪 農 従事 者には 真菌抗 原感作に 関係し ないメ サコリ ンに対 する気 道反応 性亢進 が認めら れる)
目 的 : 農夫 肺 症 は 、乾 燥 が 不 十分 な 牧 草 で増 殖 す る 真菌 の 吸 人 で起 き る 過 敏性 肺 臓 炎 の 一 型 で あ り 、 非特 異 的 な 気道 反 応 性 の亢 進 が 報 告さ れ て い る。 ま た 農 夫肺 症 の 既 往者 を 含 め 真 菌 に 対 す る血 清 中 の 沈降 抗 体 陽 性者 で も 気 道反 応 性 の 亢進 が 報 告 され て お り 、真 菌 抗 原 へ の 感 作 が 気道 反 応 性 に影 響 を 与 える 可 能 性 が示 唆 さ れ てい る 。 し かし 酪 農 従 事者 ・ 養 豚 業 者 一 般 で も気 道 反 応 性の 亢 進 が 認め ら れ る との 報 告 も 散見 さ れ 、 酪農 従 事 者 に見 ら れ る 気 道 反 応 性 亢進 が 農 夫 肺症 の 既 往 や真 菌 抗 原 の感 作 に よ るも の か 、 酪農 作 業 環 境に 伴 う 一般的な所見であるのかは不明である。
本 論 文 は、 こ の 点 を明 ら か に する 目 的 で 、著 者 ら が 北海 道 北 部 の酪 農 地 帯 にお い て 行 っ てい る 農 夫 肺症 の 発 症 ・予 防 に 関 する フ イ ー ´レド ワーク の対象 者を、 農夫肺 症の発 症歴、
真菌 抗 原 に 対す る 感 作 状態 に よ ル グル ー プ 化 して 抽 出 し 、I司地 域 に お ぃて酪 農作業 に従事 し て い な ぃ 健 常者 を 対 照 にお い て 、 呼吸 機 能 と 気道 反 応 性 につ い て 検 討し た も の であ る 。 方 法 :北 海 道 北 部の 酪 農 地 帯に お い て 、i) 農夫 肺 症 の 既往 歴 の あ る酪 農従事 者(FLD群;
n=12)、ii) 農 夫 肺症 を 発症す る原因 真菌(Micropo恤pora′ae面and/or珊e鬩oac加o〃 り′c齬 y 髫aガみに対する沈降抗体陽性の健常酪農従事者(Ab(十)群;n〓13)、iii)真菌に対する沈降抗 体陰性の健常酪農従事者(Ab(・)群;n=12)、iv)同地域に居住する酪農に従事していなぃ健常 者(Control群 :n=11)を対象 とした 。質問 票(喫煙習慣、酪農作業状況、自覚症状、アレ´レ ギ ー 症 状 を 含 め た 既 往 歴 等 ) に よ る 問 診 後、 胸 部X線 検 査 を行 な っ た 。質 問 票 で ア卜 ピ ー 素 因 が あ る こ とが 疑 わ れ た被 験 者 は 対象 か ら は 除外 し た 。 スパ イ 口 メ ー夕 一 に よ り呼 吸 機 能検 査 を 施 行後 、 オ シ レー シ ョ ン 法に よ る 呼 吸抵 抗 (Rrs)連 続 測 定 器( アスト グラフ 法)
によるメサコリン気道反応性試験を行った。結果は呼吸コンダクタンス(Grs二二ニ1/Rrs)が前値 の35% 低下 す る ま でに 吸 入した メサコ リンの量 (PD35Grs) で表し 、統計 学的検 討の際 には対 数変換(I儷(PDユョGrs) )して 比較検 討した。またア卜ピー素因の影響を検討するため、血清 総IgE量 と 、 吸 入 性 抗 原10種 ( ヤ ケ ヒ ョ ウヒ ダ 二 、 コナ ヒ ョ ウ ヒダ ニ 、 ア スペ ル ギ ル ス、
アル テ ル ナ リア 、 ペ ニ シリ ウ ム 、 ブタ ク サ 花 粉、 カ モ ガ ヤ花 粉 、 ネ コ上 皮、 イヌIこ 皮、ウ シ 上 皮 ) に 対 す る 特 異 的IgE抗 体 検 査 を 螢 光免 疫 酵 素 抗体 法 で 施 行し た 。 疾 患対 照 群 と し て当科に 通院中 の気管 支喘息 患者(n=20)に ついて も、同 様の方 法で気道反応性を検討した。
結 果 : 酪農 従 事 者 各群 間 で は 労働 時 間 、 喫煙 指 数 等 に有 意 な 差 はな か っ た 。呼 吸 機 能 検
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査では、正常対照群に比べてAb(十)群で一秒率が低下していたが正常範囲内であり、酪農 従事者 各群で明 らかな 閉塞性・ 拘束性換気障害は見られなかった。しかし、酪農従事者3 群すべ てで末梢 気道障 害の指標 とされるV25の低下が見られた。メサコリン吸入による気 道反応 性試験で は、酪 農従事者 の3群間では有意差を認めなかったが、正常対照群と比べ ると3群とも有意な気道反応性亢進を認めた(pく0.001)。健常な酪農従事者のみ(Ab(十)群 十Ab(―)群)でも、気道反応性は正常対照群よりは有意に亢進していたが(pく0.001)、気管 支喘息群と比べるとその程度は軽度だった(pく0.01)。血清総IgE量、特異的IgE抗体の陽性 率は酪農従事者群、正常対照群の4群間で有意差を認めなかった。
結論:酪農従事者では農夫肺症の既往や真菌抗原への感作の有無に関わらず呼吸機能検 査上也 の低下と 非特異 的な気道 反応性 の亢進が 認められ た。この変化はアトピー素因に 由来する可能性は低いと考えられ、職場環境においてendoto虹nなどを含む有機粉塵の慢性 吸入が 、末梢気道病変や非特異的気道反応性の亢進を引き起こしている町能性を示した。
口頭発表にあたり、斎藤和雄教授より酪農従事者の気道反応性に影響する他の因子や季 節変動 について、皆川教授より喫煙の影響や有機粉塵の発生母地について、また細川教授 より健 常者における気道反応性亢進の意義についてそれぞれ質問があった。申請者は概ね 妥当に答えたと思う。
また、齋藤和雄教授、皆川教授より個別に審査を受け、合格との御返事をぃただぃてい る。
これまで、農夫肺症の原因抗原の感作状態や、同地域の正常対照群、疾患対照(気管支 喘息) 群を全て考慮して気道反応性を検討した報告はなく、酪農従事者全般に気道反応性 の亢進 が認められ、酪農作業環境に由来する可能性を明らかにしたことは意義あるものと 考えられ、よって本論文は博士(医学)に相当するものと認めた。
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