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博 士 ( 医 学 ) 本 原 敏 司

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 本 原 敏 司

学 位 論 文 題 名

胃 静 脈 瘤 (広 義 ) の 門脈 血 行 動 態の 解 析 と シ ャ ン ト 手 術 の妥 当 性 に 関す る 臨 床 的検 討

学 位 論 文 内容 の 要 旨

【目的】

  肝硬 変症 、肝 線維症 など を原 因と する門脈圧亢進症は多種多様な門脈血行動態 を 呈す るか 、こ れまで 食道 静脈 瘤の 特異型あるいは食道静脈瘤形成に随伴する病 態 と考 えら れ、 いわば 陰の 存在 であ った「胃静脈瘤」の門脈血行動態の解明と治 療 法の あり 方を 解決す るこ とを 目的 とするが、特に食道静脈瘤に対する治療法と し て工 夫・ 施行 されて きた シャ ン卜 手術が胃静脈瘤形成例についても満足すべき 長期予後か達成されているか否かを中心に検討を加えた。

【対象症例と検索方法】

  1983年1月 から1993年12月ま での11年 間に 北海道 大学 医学 部附 属病院第二外科 で 治療 を受 けた 門脈圧 亢進 症例 の中 でシャント手術が施行された65例を対象とし た 。そ のう ち、 胃・食 道静 脈瘤 形成 例および胃静脈瘤単独形成例を合わせた32症 例 を広 義の 胃静 脈瘤群 (I群) とし 、食 道静 脈瘤単 独形 成例 の33症例を狭義の食 道静脈瘤群(II群)とした。

検 索 方 法 と し て は 、内 視鏡 検査お よび 血管 造影 を中 心に 行な った が、 特に 門脈   (Portal vein,PV)と上腸間膜静脈(Superior Prlesenteric Vein SI.V)の 直 径 比 (PV/SMV比 )を 求め 術前術 後の 変化 車に 注目 した 。ま た、 経内 視鏡 的マ イクロバスキュラ−・ドプラ一血流計による血行動態の評価を行なった。さらに、

開 腹 直 後 と 閉 腹 時 に門 脈圧 を測定 し、 肝予 備機 能の 評価 は、Indocianin Green

(ICG)O.5mgノ ぬを 静注 後、5、10、15分後に反対側肘静脈より採血し、血中消 失率K値を算出した。

  手術 方法 とし ては、 遠位 牌腎 静脈 吻合術(Distal Splenorenal Shunt,DSRS) を 施行 した 症例 のみを 検索 の対 象と し、追跡期間は12〜108カ月、平均65.4カ月 で あ っ た 。 生 存 率 はKaplan−Meire法 に よ る 累 積 生 存 率 で 示 しQualityof Life(QOL)をPerformance Status(PS)で表示した。

【結果】

1.背景因子の検討

  1群( 広義 の胃 静脈 瘤群 )と 食道 にの み静 脈瘤が 認め られ たII群(食道静脈癌

137

(2)

群) の背 景因子の比較では、男女比、基礎疾患、肝障害の程度を示すChild分類、

ICGK値に つい ても 両群の 間に 差は なく 、術中潤定した門脈圧も同様に差は認めら れなかった。

2.術前門脈血行動態の比較

  供 給 蕗 につ い て は 、I、H群 とも 左胃 静脈 が大 多数 を占 め、後 胃静 脈・ 短胃 静 脈は15% 程度 であ った。 排血 路に つい てみると、奇静脈・半奇静脈であった割合 がII群で有意に高かった。一,方、傍庸静脈を排血路とした例は、I群にやや多く、

この 中に は内 視鏡 的硬化 療法 を受 けた 症例が多くを占め、治療による修飾を受け たことを物語っていた。

3.衛後門脈血行動態の比較

  I、H群 間に は 開 腹 時、 閉腹 時門 脈圧 とも に有 意な 差は なく、 本衛 式施 行早 期 の門 脈血 行動態はほば同一のものと考えられた。  次に術後遠隔期(平均49.6士 3.6カ月 )に 血管 造影を 施行 する 機会 を得た49例にっき、遠隔期の門脈血行動態 を検 討し た。 その 結果、I群 の門 脈直 径変 化宰 がO.95士O.09であ ったのに対し II群 で もO.97土O.06で あ り 、 両 者 間 に 有 意 の 差 は 認 め ら れ な か っ た 。 4.静脈瘤の血漉方向の変化の比較

  内 視鏡 的ド プラ 一血流 計を 用い て静 脈瘤の血流方向の変化を比較した。その結 果、 術前 の静 脈瘤 の血流 方向 は1例を 除き、プローべに向かってくる血流、For‐ Nardであ った 。一 方、術 後の 血流 方向 をみ ると1群19例の うち14傍 はANayへと血 流方 向が 転換 され ていた が、3例 はForNardの血 漉を 示し てい た。 また、ForNard and ANayと表 現す べき血 流、 すな わち 掘り 子現 象を 示し た例 が2翻 認められた。

こ れ に 対 し、II群 で はForNardの 血 流 方向 を 示 し た 例は なく、 ほと んど はANay を 示 し 良 好 な 血 流 ド レ ナ ー ジ が 為 さ れ て い る も の と 思 わ れ た 。 5.静脈瘤消失宰の比較と時間的経過

  1群 で は3カ 月 以 内 には 、50.O% の消 失宰 であ った もの が徐 々に 消褪 し、3年 以上 経過 する と71.9% が白 包化 した 線状 癈痕 となっ た。 一方 、H群では3カ月以 内で66.7%が 消失 し、3年以 上経 過例 では81.8%となり、I群との間に有意差を 認めなかった。

6.累積生存宰の比較

  I、I群 の平 均生 存期間 は、 それ ぞれ6.7カ月、7.9カ月であり、有意差は認め なか った 。ま たI群 の3年 、5年、9年生 存率 は各 々75.9% 、70.1%、60.1%、

であり、H群のそれは87.2%、87.2%、79.9%であり、どの時点でも統計学的有 意差を認めなかった。

【考察】

  胃 静脈 瘤が 特殊 な瑕境 下に 形成 され る病態であるのか、門脈圧亢進症の一環と して その 排血 路形 成様式 の違 いに よる のかについての定見はなぃ。今回、筆者が 検 討 の 対 譲と し た の は全 てシ ャン 卜手 術施 行例 であ るが 、1、I群の 間に 背景 因 子の 差を 見出 すこ とはで きな かっ た。 したがって、広義の胃静脈瘤形成例で静脈 瘤破 裂あ るぃ はそ の危険 を有 する 症例 に限れぱ、特別な原因疾患や術前病態を呈

―‑ 138―.

(3)

するものではなぃものと考えられる。食道・胃静脈瘤の治療法については各々の 施設の考え方があり、画一的なものはなぃ。特に、胃静脈癌については、現在最 も普及している内視鏡的硬化療法が必ずしも有効でなぃところから、様々の議論 がありいくっかの工夫も加えられてきた。シャン卜手術、中でもDSRS Nith SPGD と称される胃壁血行遮断を伴う術式の長期成績を精査したところ、門脈直径比変 化率は、良好に保たれ、静脈瘤の消失も71.9%と満足すべき結果を得た。最大の 課題である静脈瘤出血は、6.2%に過ぎなかった。今回の検討結果は、胃静脈瘤 の病態の解析とシヤン卜手術の妥当性にっき、明確な結果と方向性を示し得たも のと考える。

【結諭】

  広義の胃静脈瘤の病態を解明すべく、血管造影、内視銭的ドプラ一血流計など を用いて、その門脈血行動態を中心に検討した。また、シヤン卜術後の遠隔期門 脈血行動態を解析し、加えてQOL、生存率などをも追跡調査した。その結果、排 血路の発達状況、肝障害度、治療による修飾など様々の要因で胃静脈瘤が形成さ れるが、特殊な病態とは考えにくく門脈圧亢進症の中の一症候群としてとらえる のが妥当であり、これに対する治療法としてDSRS .ith SPGDが良好な長期予後を もたらす事が明らかとなった。

‑ 139 ‑

(4)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

胃静脈 瘤(広義)の門脈血行動態の解析と シャント手術の妥当性に関する臨床的検討

  肝 硬変症、 肝線維症な どを原因 とする門 脈圧亢進 症は多種 多様な門脈血行動態 を 呈するが 、これまで 食道静脈 瘤の特異 型あるい は食道静 脈瘤形成 に随伴する病 態 と考えら れ、いわば 陰の存在 であった 「胃静脈 瘤」の門 脈血行動 態の解明と治 療 法のあり 方を解決す ることを 目的とす るが、特 に食道静 脈瘤に対 する治療法と し て工夫・ 施行されて きたシャ ン卜手術 が胃静脈 瘤形成例 について も満足すべき 長 期予後が 達成されて いるか否 かを中心 に検討を 加えた。

  1983年1月か ら1993年12月ま での11年間 に北海道 大学医学部 附属病院 第二外科 で 治療を受 けた門脈圧 亢進症例 の中でシ ャン卜手 術が施行 された65例を対象とし た 。そのう ち、胃・食 道静脈瘤 形成例お よび胃静 脈瘤単独 形成例を 合わせた32症 例 を 広義 の 胃 静脈 瘤群(I群)とし 、食道静脈 瘤単独形 成例の33症 例を狭義 の食 道 静脈瘤群 (H群)とし た。

検 索方法と しては、内 視鏡検査 およぴ血 管造影、 経内視鏡 的マイク ロバスキュラ 宀 ・ドプラ 一血流計を 中心に行 なった。

  手 術方法と しては、遠 位牌腎静 脈吻合術 (Distal Splenorenal Shunt.DSRS) を 施 行し た 症 例の みを検 索の対象 とし、追跡 期間は12〜108カ月、平 均65.4カ月 で あった。

1. 背景因子 の検討

  I群 (広 義 の 胃静 脈 瘤 群) と 食道 に の み静 脈瘤 が認めら れたH群( 食道静脈 瘤 群 )の背景 因子の比較 では、男 女比、基 礎疾患、肝障害の程度を示すChild分類、

ICGK値 について も両群の間 に差はな く、術中 測定した 門脈圧も 同様に差は認めら れ なかった 。

2. 術前門脈 血行動態の 比較

  供 給路 に つい て は 、I、u群 と も 左胃 静 脈 が大多 数を占め 、後胃静 脈・短胃 静 脈 は15%程度 であった。 排血路に ついてみ ると、奇 静脈・半 奇静脈であった割合 がII群で有意 に高かった 。

    −1401

之男 彦 紘和 知 藤坂 柳 加宮 小 授授 授 教教 教

   

査 ´ 査査 主副 副

(5)

3.術後門脈血行動態の比較

  I、n群聞には開腹時、閉腹時門脈圧ともに有意な差はなく、本術式施行早期 の門脈血行動態はほば同一のものと考えられた。  次に術後遠隔期(平均49.6土 3.6カ月)に血管造影を施行する機会を得た49例にっき、遠隔期の門脈血行動態 を検討した。その結果、I群の門脈直径変化率がO. 95土O.09であったのに対し II群 で も0.97土O.06であ り 、両 者 聞に 有 意の 差 は 認め ら れな か った 。 4‑静脈瘤の血流方向の変化の比較

  内視鏡的ドプラ・―血流計を用いて静脈瘤の血流方向の変化を比較した。その結 果、術前の静脈瘤の血流方向は1例を除き、プ口一べに向かってくる血流、For→ wardであった。ー方、術後の血流方向をみるとI群19例のうち14例はAwayへと血 流方向が転換されていたが、3例はForwardの血流を示していた。また、Forward and Awayと表現すべき血流、すなわち振り子現象を示した例が2例認められた。

こ れに対し、U群ではForwardの血流方向を示した例はなく、ほとんどはAway を 示 し 良 好 な 血 流 ド レ ナ ー ジ が 為 さ れ て い る も の と 恩 わ れ た 。 5.静脈瘤消失率の比較と時間的経過

  I群では3カ月以内には、50.O%の消失率であったものが徐々に消褪し、3年 以上経過すると71.9%が白色化した線状瘢痕となった。一方、H群では3カ月以 内で66.7%が消失し、3年以上経過例では81.8%となり、I群との間に有意差を 認めなかった。

6.累積生存率の比較

  I、H群の平均生存期間は、それぞれ6.7カ年、7.9カ年であり、有意差は認め なかった。またI群の3年、5年、9年生存率は各々75.9%、70.1%、60.】%、

であり、H群のそれは87.2%、87.2%、79.9%であり、どの時点でも統計学的有 意差を認めなかった。

  排血路の発達状況、肝障害度、治療による修飾など様々の要因で胃静脈瘤が形 成されるが、特殊な病態とは考えにくく門脈圧亢進症の中の一症候群としてとら えるのが妥当であり、これに対する治療法としてDSRS with SPGDが良好な長期予 後をもたらす事が明らかとなった。

  口頭発表にあたり宮坂和男教授から孤立性胃静脈瘤の頻度および排血路に差は あったか、胃静脈瘤治療のstrategy、今後の方向について小柳知彦からは胃静脈 瘤は特殊な病態かあるいは病期の差をみているのか、DSRSの長期成績と再発例の 治療法、安田慶秀教授からは胃静脈瘤を形成する静脈叢について質問があったが、

申請者はおおむね適切な回答をした。また副査の宮坂和男教授、小柳知彦教授か ら個別に審査を受け、合格と判定された。

  以上、本論文はこれまで明らかでなかった胃静脈瘤の門脈血行動態を解明し、

その治療法としてシャン卜手術が極めて有効であることを示したものである。よ っ て 本 論 文 は 博 士 ( 医 学 ) の 学 位 授 与 に 値 す る も の と 思 わ れ る 。

‑ 141

参照

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