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博 士 ( 農 学 ) 金 丸 京 平 学 位 論 文 題 名

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博 士 ( 農 学 ) 金 丸 京 平

学 位 論 文 題 名

ダ イ ズ の 高 ル テ イ ン 含 量 形 質 の 遺 伝 解 析 お よ び そ の 育 種 利 用 に 関 す る 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  ダイ ズ(Glycine max(L.)Merr.) 種子成 分は、 ダイズ 食品の 栄養性や風味、加工適性に密接 に関与することから、タンパク質、脂質等をはじめイソフラボンやトコフウロール、サポニン等の機 能性 成分の 質的・ 量的改 良が重要 視され てきた 。ルテ インは 脂溶性 の抗酸 化物質 で、自内 障や 加齢 黄斑変 性症な どの眼 病に対し て予防 ・改善効果を示す機能性成分として注目されている。ダ イズ 種子は カロテ ノイド として低 濃度の ルテイ ンを含 有する ことが 知られていた(Monma et al.

1994)が 、ダイズ のルテ イン含量に関わる育種研究は全く行われてこなかった。本研究の目的は、

ダイ ズ種子 の新規 栄養機 能性成分 として 注目さ れるル テイン 含量の 育種に 向けて 基礎的知 見を 得ることであり、ダイズの高ルテイン含量形質について遺伝解析を行うとともにその作用機序につ いて考察を行った。

  第1章 では、ダ イズの これま での成 分育種 の研究 経緯や最近の進展を概説し、ダイズにおける ルテイン含量の育種の展開について論じた。

  第2章 では、ダイズおよびツルマメ(Glycine so趣Sieb.etZucc.)遺伝資源の品種 ̄系統を対 象とし て、網羅的にルテイン含量を調査して高ルテイン含量変具体の検索を試みた。ツルマメ610 系統の ルテイ ン含量 は、ダ イズに 比べ有 意に高い 分布を示し、普通ダイズ品種に比べて5〜10倍 程度ルテインを高く含有するツルマメ系統(以下、高ルテインツルマメ系統)を見出した。高ルテイ ンツルマメ系統では主要なルテインに加えて、B.カロテンとク口口フィルaおよびク口口フイルbが 検出され、ルテインはその殆どが子葉に由来するのに対して、B‐カロテンとク口口フアル類は種皮 に蓄積していることを明らかにした。この結果は高ルテインツルマメ系統の子葉がルテインの色相 の濃い 黄色を 呈して いるこ とと符合した。栽培年次の異なる種子の分析から、高ルテイン含量形 質 は 環 境 に よ る 変 動 を 受 川 こ く い 遺 伝 的 に 安 定 し た 形 質 で あ る こ と を 明 ら か に し た 。   第3章 では、高 ルテイ ン含量 形質の 遺伝様 式を明 らかにするために、ダイズ品種と高ルテイン ツルマ メ系統 の交雑 による3つの分離集団を用いて遺伝解析を行った。ダイズ品種トヨムスメx高 ル テ イ ン ツ ル マ メ 系 統GD50344お よ び ダ イズ 系 統 十 育241x高 ル テ イ ンツ ル マ メ 系統B09092 のF2種子 とF2個 体(F3種 子)のルテイン含量は両親間に連続分布し、高ルテインツルマメ親に匹     ―1225−

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敵 す る ル テ イ ン 含 量 の 高 い 後 代 系 統 が 少 数 出 現 し た 。 ト ヨ ム ス メxGD50344お よ び 十 育 241xB09092のF2種 子におけるルテイン含量の 広義の遺伝率(ある)が高い こと、ならびに、ダイ ズ 系 統TK780x高 ル テ イ ン ツ ル マ メ 系 統B01167のF9種 子 とFio種 子 の ル テ イ ン 含量 は有 意な 正の相関を示した ことから、ルテイン含量は 遺伝形質であることが明らかとなった。一方、本形質 がッルマメのもつ 野生形質とりンクしている 可能性が考えられた。小粒種 子はツルマメ特有の形 質で あ るが 、ト ヨム ス メxGD50344のF2個 体(F3種 子 )に おい てル テイ ン含量と種子重との問 に 相 関 は 認 め ら れ な か っ た 。 ―方 、TK780xB01167のRIL集 団で は ルテ イン 含量 と 種子 重の 間に 負の 相 関関 係を 認め た。また、3つの 交雑集団においてルテイン 含量と開花日との間に有意な 正 の相関が認められ た。

  第4章 で は 、 高 ル テ イ ン 含 量 形 質 に 関 与 す る 量 的 形 質 遺 伝 子 座 を 明 ら か に する ため に、

TK780xB01167のRIL集 団 お よ び ト ヨ ム ス メxGD50344のF2集 団 を 用 い てQTL解 析 を 行 つ た 。 そ の 結 果 、TK780xB01167のRILお よ び ト ヨ ム ス メxGD50344のF2集 団 に お い て 連 鎖 群 DlaとD2の そ れ ぞ れAFLPマ ー カ ーATG/CAT310とSSRマ ー カ ーSct̲192の 近 傍 に ル テ イ ン 含 量 のQTLsを 検 出 し た 。こ の こと から 、B01167とGD50344の高 ルテ イン 含 量形 質を 支配 する 共 通す る遺 伝子 座 がDlaとD2に 存在 する こと が 示唆 され た。 両集 団において、ルテイン 含 量 のQTLが 連 鎖 群C2の 開 花 日 に 関 わ るQTLの 近 傍 に 検 出 さ れ た こ と か ら 、 ル テ イ ン 含 量 は 開花 日 の違 いに よる 生 育環 境の 影響 も受 け る可能性が高いと考 えられる。また、連鎖群D2の ル テ イ ン 含 量 に 関 与 す るQTLの 近 傍 に は 種 子 重 に 関 与 す るQTLが 存 在 す る が 、 互 い のQTLsは 密には連鎖してい ないので、マーカ―選抜等 により両形質を切り離して育 種利用できると考えら れる。

  第5章 では 、 高ル テイン含量形質の 作用機序に関する知見を蓄 積するために、高ルテインツ ル マメ系統における カ口テノイド諸成分とルテ インとの関連性について精査した。その結果、高ルテ インツルマメ系統では主要なルテインに加え、ネオキサンチン、ビオラキサンチン、アンセラキサン チン等のキサント フィル類が増大していることを明らかにした。これらのキサントフイル類は、第3 章で用いた交雑集 団の高ルテインを有する後 代種子においても検出された 。このことから、高ル テイ ン 含量 形質 はル テ イン を含 めた 種子 登 熟中のキサントフィ ル類全体の生合成あるいは代 謝 分解 の 変異 が関 与す る 可能 性が 考え られ た 。そ こで 、TK780xB01167の高 ルテ イ ンお よび 低ル テイ ン のRILを 用い てダイズの推定ル テイン生合成関連遺伝子の 発現解析を行うことにより、 そ の発 現 程度 と高 ルテ イン含量形質と の関連性を検討した。その結 果、高ルテインRILと低ルテ イ ンRILの 間で ル テイ ン生 合成 関連 遺 伝子 の発 現程 度 に顕 著な 差異 は認 められなかった。種子 登 熟中 の 未熟 種子 のル テイン含量を分 析したところ、高ルテインお よび低ルテイン含量のRIL系 統 とも登熟の初期段 階ではルテイン含量は高く 、種子の登熟が進むにっれて ルテイン含量が減少し たが 、 高ル テイ ンと 低ルテインRIL系 統との間で登熟後期におけ るルテインの減少程度に有意 な 差異が認められた 。これらの結果から、種子 登熟中に合成・蓄積されたル テインの分解に関わる 遺 伝 子 の 変 異 が 高 ル テ イ ン 含 量 形 質 に 関 与 す る 可 能 性 が 高 い と 推 察 さ れ た 。   第6章 では 、 本研 究の 結果 から 示 され たダ イズ の 高ル テイ ン化 育種 の可能性と課題を総合 的 に考察した。  −1226―

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学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教 授 教 授 准 教 授 助 教

喜 多村 三 上 阿 部 山 田

学 位 論 文 題 名

啓 介 哲 夫     純 哲 也

ダイズ の高ル テイン含量形質の遺伝解析および その育 種利用に関する研究

  本論文は6章120頁からなる和文論文であり、図24、表9を含む。

  ダイ ズ(Glycine max(L.) Merr.)の種子成分は、ダイズ食品の栄養性や風味、加工適性に密接 に関与することから、タンパク質、脂質をはじめイソフラボンやサポニン等の成分の質的・量的改良 が重 要視さ れてき た。ル テイン は脂溶 性の抗酸 化物質 で、自 内障や 加齢黄 斑変性症などの眼病 に対して予防・改善効果を示す機能性成分として注目されている。ダイズ種子はカ口テノイドとして 低濃 度のル テイン を含有 することが知られていた(Monma et aL 1994)が、ダイズのルテイン含量 を向 上する 育種研 究は全 く行われてこなかった。本研究の目的は、ダイズ種子の新規栄養機能性 成分として注目されるルテイン含量の育種改良に向けて基礎的知見を得ることであり、ダイズの高 ル テ イン 含 量 形 質に つ い て 遺伝 解 析 を 行う と と も にそ の 作 用 機序 に つ い て考 察 を行 った。

1.高ルテインツルマメ系統の同定およびその特徴

  ダイズおよびツルマメ(Glycine so血Sieb.etZucc.)遺伝資源の多数の系統を対象として、網羅 的にル テイン 含量を 調査し て高含 量変異 体の検 索を試 みた。ツルマメ610系統のルテイン含量の 分布は 、ダイ ズの分 布に比 べ有意 に高い 値を示 し、普 通ダイズ品種に比べて5〜lO倍程度ルテイ ンを高含有するツルマメ系統(以下、高ルテインツルマメ系統)を見出した。高ルテインツルマメ系 統では主要なルテインに加えて、6.カロテンとク口口フアルaおよびbが検出され、ルテインの殆ど が子葉に由来し、B―カロテンとク口口フアル類は種皮に蓄積していることを示した。この結果は高ル テインツルマメ系統の子葉がルテインの色相の濃い黄色を呈していることと符合した。また、高ル テイン含量形質は環境による変動を受けにくい遺伝的に安定した形質であることを明らかにした。

2.ツルマメに由来する高ルテイン含量形質の遺伝解析

  ダイズ種子のルテイン含量の遺伝様式を明らかにするために、ダイズ品種と高ルテインツルマメ 系統の 交雑に 由来す る3つの 分離集 団を用いて遺伝解析を行った。ダイズ品種トヨムスメx高ルテ     ―1227―

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イ ン ツ ル マ メ 系 統GD50344お よ び ダ イ ズ 系 統 十 育241x高 ル テ イ ンツ ル マ メ 系統B09092のF2 種 子とF2個 体(F3種子 )のル テイン 含量は 両親間 に連続 分布し 、高ルテ インツ ルマメ 親に匹敵す る ルテイ ン含量 を有す る後代系 統が少 数出現 した。 これら の2つの 集団のF2種子の ルテイン含量 の 広 義 の 遺伝 率 (五 を)は 高く、ま た、ダ イズ系 統TK780x高 ルテイ ンツル マメ系統B01167のF9 種 子とFio種 子のル テイン 含量に 有意な 正の相 関が認め られた ことか ら、高 ルテイ ン含量形質は 遺 伝形質 である ことが 示された 。小粒 種子は ツルマ メ特有 の形質であるが、トヨムスメxGD50344 のF2個 体(F3種 子 ) に お い て ル テ イ ン 含 量 と 種 子 重 と の 間 に 相 関 は 認 め ら れ な か っ た 。 3.高ルテイン含量形質のQTL解析

  ダ イズ の 高 ル テイ ン 化 育 種に 応 用 で きる ように 、TK780xB01167のRIL集団 および トヨム スメ xGD50344のF2集 団 を 用 い てQTL解 析 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、TK780xB01167のRILお よ び ト ヨ ム ス メxGD50344のF2集 団 に お い て 連 鎖 群DlaとD2の 同 じ 領 域 に ル テ イ ン 含 量 のQTLsが 検 出 さ れ た。 こ の こ とか ら 、B01167とGD50344の ル テ イン 含 量 を 支配 す る 共 通の 遺 伝 子 座が DlaとD2に 存 在 す る こ と が 示 唆 され た 。 両 集団 に お い て、 ル テ イ ン含 量 のQTLが連 鎖 群C2の 開 花 日 に 関わ るQTLの 近傍 に 検 出 され た こ とから、 ルテイ ン含量 には開 花日の 違いに よる生 育 環 境 も 影 響す る 可 能 性が 大 き い と考 え ら れた。 また、 連鎖群D2のルテ イン含 量のQTLの 近傍に は 種 子 重 に関 与 す るQTLが 存 在 し たが 、 互 い のQTLsは 密 に は 連鎖 し て い ない の で マ ーカ ― 選 抜等により両形質を切り離して育種利用できると考えた。

4.高ルテインツルマメ系統の成分的特性および作用機序の解析

  高 ルテイ ン含量 形質の 作用機 序の知 見を蓄積 するた めに、 高ルテインツルマメ系統におけるカ ロ テノイ ド諸成 分とルテインとの関連性について精査した。高ルテインツルマメ系統では主要なル テインに加え、ネオキサンチン、ビオラキサンチン、アンセラキサンチン等のキサントフィルが検出 され、これらのキサントフィルとルテイン含量との間に有意な正の相関が認められた。このことから、

高 ルテイ ン含量 形質は ルテイン を含め たキサ ントフ イル類 全体の生合成あるいは代謝分解の変異 が 関与す る可能 性が高 いと考え られた 。そこ で、ル テイン 生合成関連遺伝子の発現解析を行い、

そ の発現 程度と 高ルテ イン含量 形質と の関連 性を検 討した 。その 結果、 高ルテ インRILと低ルテ イ ンRILの問 でルテ イン生 合成関 連遺伝 子の発 現程度に 顕著な 差異は 認めら れなか った。次に、

未 熟種子 のルテ イン含 量を分析 した結 果、高 ルテイ ンおよ び低ル テイン のRIL系統 とも登熟の初 期 段階で はルテ インは 高含量を い示し たが、 登熟に 伴いル テイン含量は減少し、登熟後期におけ る ルテイ ンの減 少程度 に両系統 間で有 意な差 異が認 められ た。これらの結果から、種子登熟中に 合 成・蓄 積され たルテ インの分 解に関 わる遺 伝子の 変異が 高ルテイン含量形質に関与していると 考えた。

本研 究は、 ダイズ 種子の 新規栄 養機能性 成分と して注 目され るルテ イン含 量の育 種改良 に向け 基礎 的知見 を得る ととも に、新 しい成分 育種の 道を開くものであり、学術的に高く評価できる。

  よって、審査員一同は、金丸京平が博士(農学)の学位を受けるに十分な資格を有するものと認 めた 。

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