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博士(農学)谷 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(農学)谷 学位論文題名

人工衛星データによる農林地の蒸発散量の      推定に関する研究

学位論文内容の要旨

  第1章 は 序論 で,本 研究の 目的 および 既往の 研究と の関 係を記 述して いる。 従来と られ てきた 蒸発 散量の 測定 ・推定 法は, 対象範 囲( 空間ス ケ―ル )が狭 く,い わば 点にお ける観測値・推定 値で しかな いた め,地 上観測 でその 全容 を知る ことは 極めて 困難で あっ た。本 論文は,一定面積 の平 均的な 観測 値が得 られ, また広 い範 囲の分 布が調 べられ る特徴 をも つ人工 衛星データを用い て , 最 終 的 に 地 域 蒸 発 散 量 を 推 定 す る 手 法 を 開 発 す る こ と を 目 的 と し て い る 。   第2章 で は人 工 衛 星 デ 一 夕( 極 軌 道 気 象衛 星NOAA) の 処 理 と補 正 に っ い て 記述 し て い る 。 人工 衛星デ ータ は,地 理的な 位置関 係が 不明確 で,し かも地 上の表 面温 度や反 射の絶対値が不明 な画 像情報 であ るため ,幾何 補正と 放射 量補正が必要である。幾何補正としてまず行ったタンジェ ント 変換は ,観 測機器 の機構 的ナょ もの や地球が球面であることによる歪を取り除くために行うも ので ある。 この 変換の みでは 幾何学 的な 歪がま だ残っ たため ,さら に地 上基準 点を用いた補正を 行っ た。こ の補 正には 地図座 標系か らタ ンジェ ント変 換を終 えた画 像座 標系へ の変換方程式とし て2次 多項 式 を 採 用 した 。2段 階 の幾 何 補 正 を 行っ た 結 果, 使用し た全て の画 像で位 置誤差 が1 ピク セル以 内と なった 。次に ,放射 量補 正とし て熱赤 外デー タから 衛星 内で測 定されている較正 デー タを用 いて 輝度温 度を算 出した 。ま た,可 視・近 赤外デ 一夕の 放射 量補正 として衛星打ち上 げ 前 の 試 験 に よ っ て 求 め ら れ た 輝 度 と 反 射 率 の 関 係 式 に よ っ て 反 射 率 を 算 定 し た 。   第3章 で は, 蒸発散 量推定 のた めの地 上の表 面温度 の推 定にっ いて記 述して いる。 地上 の表面 温度 は,蒸 発散 量の推 定モデ ルのナ ょか で重要な入カデータのーっであるため,衛星デ一夕で評価 し た 地 上の 表 面 温 度 の精 度 を 検 証し ておく 必要が ある。 衛星デ ータ との比 較に用 いた地 上観 測 デー タは, 耕地 (水田 ・小麦 畑)お よび 森林(北海道大学農学部附属苫小牧演習林)において,人 工衛 星の測 定と 原理が 同一で ある放 射温 度計を 用いて 測定し た。人 工衛 星デー タから大気中の水 蒸気 ・炭酸 ガス などの 長波放 射の吸 収・ 放射物 質の影 響を補 正(大 気補 正)す るために,熱赤外 の チ ャ ンネ ル の 輝 度 温度 に よ っ て 大気 補 正 を 行 うSplit Window法 を 利 用し た 。ま ず海洋 (放

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射率がO. 97〜0. 98)を対 象と して発 表された大気補正式を適用して地上実測値と比較した。測定 で得ら れた 森林の 放射率(0. 976土O.014)は海 洋の 値にほ ぼ等し いため ,放 射率による影響は少 ないと 考え られる 。海洋 の大気 補正式 を用 いたと きの平 均残差 は日中がO.6℃,夜間が‑O.2℃で 符号が 逆に なった 。また ,残差 標準偏 差はそれぞれ1.1℃,0.7℃となり,海洋での結果(0.6℃)

より大 きく なった 。この 違いは 海洋と 陸域 の熱的 な特性 (比熱 や熱 伝導率 等)や ピクセル内での 水平的 な温 度変動 の大小 によっ て生じ たも のと考 えられ る。こ のよ うな差 はある ものの,ある一 定 の バ イ アス を 与 え れ ば海 洋 で 用 い られ て い る 補 正式 を 用 い て ,NOAAデ ータ か ら 約1℃以 内 の 誤差 で 植 被 の 表面 温 度 の 推 定が 可 能 で あ る と結 論 づ け ら れる 。 次 に , 観測 結果 とNOAAの輝 度温度 を用 いて陸 上(こ こでは 植生上 )に おける 表面温 度を推 定す るため の算定 式を重回帰分析 により 求め た。一 部の係 数に海 洋で用 いら れてい るもの と違い が見 られた 。この 原因には対象表 面上の 大気 状態の 違い等 ,表面 や大気 の特 性によ るもの と,海 面水 温の変 化幅に 比較してニこで 用 い た 地 上 の 表 面 温 度 の 変 化 幅 が 小 さ い と い う デ 一 夕 の 特 性 に よ る も の が 考 え ら れ る 。   第4章 は , 蒸 発 散量 推 定 の た めの ア ル ベ ド の 推定 に っ い て 記述 し て い る 。NOAAデー タ で ア ルベド を推 定する ために ,可視 域と近 赤外 域を観 測して いるチ ャン ネルを 用いて ,構成法が異な る2種 類 の 推定モ デルを 使用 した。 また, 推定値 と比較 する ための 地上実 測値は ,耕 地,森 林,

牧草地 にお ける観 測から 得た。 可視・ 近赤 外の測 定にも 大気に よる 散乱・ 吸収の 影響が加わるた め大気 補正 を行う 必要が ある。 大気補 正に は太陽 高度, 日射の 透過 率・大 気中の 水蒸気量・オゾ ン量を パラ メータ にした 補正式 を用い た。 また, 衛星で 得られ る反 射率を 用いて 全波長帯の反射 率を算 定す る波長 補正に っいて は,他 の人 工衛星 ととも に求め られ た実験 式,お よび放射伝達モ デルを 用い た加重 平均法 を採用 した。 実測 値との 比較の 結果, 波長 補正を 先に行 うモデルで推定 値は過 大推 定され る傾向 が顕著 で,ま た残 差の標 準偏差 も大き い。 大気補 正を先 に行うモデルで はそれ らが 改良さ れ(残 差が0. 022,残差の標準偏差がO.033),後者のモデルの方が優れた。誤 差の主 な原 因は, ここで は地表 面を太 陽光 の反射 に対し て等方 性と 仮定し たため であると考えら れる。 現実 の植生 上では 等方的 ではな く, 測定す る方向 ,ある いは 太陽・ 対象地 表・衛星の位置 関係に よっ て反射 の特性 が変化 する。 この効果を補正するのはきわめて困難ナょ問題で,今後の研 究課題 であ る。

  第5章 倣人 工衛星 デー タによ る蒸発 散量の 推定 にっい て記述 してい る。本 研究 では, 衛星デ ー タ によ る 蒸 発 散 量推 定 に 平 衡 蒸発 モデル を適用 し,モ デル 内のパ ラメー 夕(a) は,地 上の表 面 温度か ら求 めた平 衡蒸発 量とボ ーエン 比法 によっ て測定 した蒸 発散 量とを 比較し て事前に決定し た。そ の観 測は1987‑‑ 1989年 の夏期 に実 施し, 主な測 定項目 は,植被上における純放射量,植被

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上2高度 の乾湿 球温度 ,放 射温度 計によ る植被 温度, 熱流 板によ る地中 熱伝導 量で あった 。30分 平均 の日中 の観 測全デ ータを 用いて 平衡 蒸発量 と実蒸 発散量 の関係 から ,短時間の潜熱フラック スの 推定に も平 衡蒸発 モデル が使用 可能 である ことを 確認し,aの値として森林の1. 06,水田と 小麦 畑の1. 03を得 た。 気温を 用いて求めたdは移流のない湿潤面に対して1.26になると言われて いる が,今 回は それよ り約20% も低 い値に なった 。この 原因 には気 温では なく地上の表面温度を 用 い たこと の違 いと, 完全な 湿潤面 でなか った ことが 考えら れる。 次に ,この パラメ ー夕dを用 い て , 平 衡 蒸 発モ デ ル を5シー ン のNOAAの デ ー タに 適 用 し , 蒸 発散 量 の 推 定 を行 っ た 。 こ の 推 定 に は衛 星 デ ー タ から 算 出し たアル ベド・ 地上の 表面 温度お よび日 射量の 実測 値,高 層気象 デー タを組 合せ た式で 純放射 量を求 め, 地中熱 伝導量 は無視 して適 用し た。この蒸発散量推定値 と苫 小牧演 習林 の地上 測定値 を比較 した 結果, 約10%以 内の 誤差で 推定で きた。しかし,蒸発散 量や 純放射 量の 推定値 と実測 値を詳 細に 調べれ ば,精 度に大 きく影 響す るのは純放射量の推定値 であ ること が判 明した 。また 今回の 解析 の結果 ,パラ メータ ばを決 定し た時と同様に土壌水分の 不足 がない と考 えられ る場合 には, 十分 利用が 可能で あるこ とが判 明し た。すなわち,平衡蒸発 モデ ルは風 速や 湿度な どを必 要とせ ず, 単純な 形式で あるた め,人 工衛 星データによる推定に応 用で きる。

  第6章は ,以上 の結 果を総 括し, 人工衛 星デ ータに よる蒸 発散量 推定に 関す る今後 の課題 と展 望に っいて 述べ ている 。

学位論文審査の要旨

  本論 文は6章で 構成さ れ,図34,表16,引用 文献111を 含む総 頁数136頁の 和論文 であ る。別 に 参 考論文 ,21編 が添え られて いる。

  従 来行わ れて きた蒸 発散量 の測定 ・推定 法は ,主と して地 上にお ける 測定で対象範囲が狭く,

い わば点 におけ る観測 値・ 推定値 でしか ない。 その ため, 地上観 測で広 い範囲の蒸発散の全容を 知 ること は極め て困難 であ った。 本論文 は,一 定面 積の平 均的な 観測値 が得られ,また広い範囲

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夫 隆

郁  

  安

口 田

堀 前

授 授

教 教

査 査

主 副

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の分布 が調 べられ る特徴 をもつ 人工 衛星デ ータを 用いて ,広い 範囲 の蒸発 散量を推定する手法を 開発す るこ とを目 的とし ている 。そ のため ,地上 測定値 と人工 衛星 デ一夕 による推定値を比較す る 手 法 に よ っ て , 人 工 衛 星 デ ー タ に よ る 蒸 発 散 量 推 定 法 を 確 立 し て い る 。   第1章は 本研究 の目的 および 既往の 研究 との関 係を記 述して いる 。

  第2章 で は 人 工 衛 星 デ ー夕 ( 極 軌 道 気象 衛 星NOAA)の 処 理と 補 正 に っ いて 記 述 し て い る。

人工衛 星デ ータは ,地理 的な位 置関 係が不 明確で ,しか も地上 の表 面温度 や反射の絶対値が不確 定な画 像情 報であ る。そ のため ,幾 何補正 と放射 量補正 を行っ て, 画面上 の位置の確定と表面温 度や反 射率 に比例 する物 理量を 求める必要がある。幾何補正としてまずタンジェント変換を行い,

さ らに地 上基準 点によ る補 正を行 って, 地図上 の位 置誤差 が1ピクセ ル以内 にする ことに 成功 し て いる 。 さ ら に ,放 射 量 補 正 と してNOAAの 熱 赤 外 デ 一夕 を 用 い て ,衛 星内 で測定 されて いる 較 正 デ ー タ に よ っ て , 輝 度 温 度 を 算 出 す る ア ル ゴ リ ズ ム を 完 成 し て い る 。   第3章 では, 蒸発散 量推 定のた めの地 上の表 面温度 の推 定にっ いて記 述して いる 。地上 の表面 温 度は, 蒸発散 量の推 定モ デルの なかで 重要な 入カ データ の1っであ り,輝 度温度 に大気 補正 を 施 して 求 め る こ とが 出 来 る 。 そ のた め ,NOAAデ ー タ によ る 輝 度 温 度に 海洋 の大気 補正式 を用 いて推 定し た表面 温度と ,地上 で測 定した 表面温 度を比 較検討 した 。地上 測定は比較的均一な地 上状態 が得 られる 森林( 苫小牧 演習 林)と 耕地( 恵庭) で行っ た。 その結 果,植生(森林)の放 射率をO. 976土O.014と確定し,海洋の放射率(0. 97−O.98)とほぼ等しいことから,海洋で用い られる 大気 補正式 を陸域 で用い ても 大きな 差がな いこと を示し た。 この海 洋の大気補正式を用い た表面 温度 の平均 残差は ,日中 が0.6℃,夜 間が‑O.2℃となった。さらに,地上で測定した表面 温度を 用い て,陸 域の大 気補正 式を 導きだ してい る。

  第4章fま, 蒸 発 散 量 推 定の た め の ア ルベ ド の 推 定 にっ い て 記 述 して いる 。NOAAデ ータで ア ル ベド を 推 定 す るた め に ,NOAAの 可 視 域と 近 赤 外 域 の輝 度 値 を 用 いて , 構 成 法 が 異な る2種 類の推 定モ デルを 使用し た。ま た, 推定値 と比較 するた めの地 上実 測値は ,森林,耕地,牧草地 に おけ る 観 測 か ら得 て い る 。NOAAデ 一 夕か ら の 推 定 値と 実 測 値 と の比 較の 結果, 大気補 正を 波長補 正の 前に行うモデルが推定精度が高く,残差がO. 022,残差の標準偏差がO.033であった。

  第5章 は人工 衛星デ 一夕 による 蒸発散 量の推 定にっ いて 記述し ている 。本研 究で は,人 工衛星 デ ータ に よ る 蒸 発散 量 推 定 に 平 衡蒸 発 モ デ ル を適 用し, モデル 内のパ ラメー 夕(a)は, 地上の 表面温 度か ら求め た平衡 蒸発量 とボ ーエン 比法に よって 測定し た蒸 発散量 とを比較して事前に決 定 し た 。 そ の 結 果 ,aの 値 と し て 森 林 が1. 06, 水 田 と 小 麦 畑 が1.03の 値 を 得 た 。   こ の パ ラ メ ー 夕dを 用 いて , 平 衡 蒸 発モ デ ル を5シー ン のNOAAデ ー タ に適 用 し , 蒸 発 散量

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の推定を行った。この推定にはNOAAデータから算出したアルベド,地上の表面温度および日 射量の実測値と高層気象データを組合せた式で純放射量を求めて適用した。この蒸発散畳推定値 と 苫 小 牧 演 習 林 の 地 上 測 定 値 を 比 較 し た 結 果 , 約10% 以 内 の 誤 差 で 推 定 で き た 。   第6章は,以上の結果を総括し,人工衛星デ一夕による蒸発散量推定に関する今後の課題と展 望にっいて述べている。

  以上の研究成果は,人工衛星データを用いて蒸発散量を推定するという先駆的研究であり,地 域の蒸発散や地球規模の水循環を知るために重要な貢献をするものである。また,その結果はり モートセンシングや農業気象学上高く評価される。

  よって審査員一同は,別に行った学力確認試験の結果と合わせて,本論文の提出者谷宏は博 士(農学)の学位を受けるのに十分な資格があるものと認定した。

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