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博 士 ( 農 学 ) 金 澤 俊 成 学 位 論 文 題 名

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博 士 ( 農 学 ) 金 澤 俊 成

学 位 論 文 題 名

ギ ョ ウ ジ ャ ニ ン ニ ク の 形 態 ・ 発 育 特 性 及 び      栽 培 化 に 関 す る 基 礎 的 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  本論 文 は , ギ ョウ ジ ャ ニ ン ニク(Allium victorial.is L. ssp.platyphyllum Hult.)の 形態 的特 性及び 発育特 性を 明らか にし, 栽培の 基礎 となる 諸要因 にっい て検討 を行 ったもので,内容 の概 要は次 のとお りで ある。

  1. 形 態的 特性: ギョ ウジャ ニンニ クの種 子は 球形で ,他の ネギ属 作物の よう に楯型 をして い な い 。こ れ は1室 に胚 珠 が1個 である ためで ,こ の例は 他のネ ギ属作 物には みら れない 特徴と い える 。また ,胚の 長さ は3 mm程 度で他 のネギ 属作物 に比べ て小 さく, 胚乳内 での巻き込みが少な いこ とが特 徴とし てあ げられ る。成 株の地 上部 は萌芽 葉と普 通葉か らなり ,普 通葉の葉身は披針 形で あるが ,この 形状 にはか なりの 変異が 認め られる 。抽台 期には 楕円形 の横 断面をもつ花茎が 伸長 し,頂 部に花 球を っける が小花 数は少 ない 方であ る。地 下部は りん茎 部と 根からなり,りん 茎内 にある 茎盤の 中央 部に生 長点が あって 葉や 花房を 分化す る。

  小花 の構 造上の 特徴は ,内花 破が外 花披 に比べ て長く ,内花 被は 披針形 または 楕円形で偏平で あり ,外花 被は細 長く 中央部 にくぼ みがみ られ る点で ある。 花糸は 先端か ら基 部にかけて広がっ てお り,基 部には きょ 歯はみ られな い。ま た, 内花糸 は外花 糸より も早く 伸長 し長さも大きい。

雌 ず い の 子 房 部 は 他 の ネ ギ 属 作 物 に 比 べ て 大 き く ,3室 が 明 瞭 に 突 出 し て い る 。   花粉 は中 央部に 膨らみ のある 楕円形 で,長径は46. 8r̲Lm,短径は31. 3umで他のネギ属作物に比 べて 大きい ことが 特徴 であっ た。

  2.種子 の発芽 :種 子の成 熟に伴 って発 芽率が 高ま り,完 熟期の種子が最高の発芽率を示した。

発芽 率は20℃で最 も高い が,発 芽には30〜 60日を 要し, 他のネギ属作物に比べて極めて遅く発芽 後の 生長も 遅かっ た。 また, 発芽に は暗発 芽性 が認め られた 。種子 の発芽 率を 高めるには,20℃ に保 つ前に30℃の 高温前 処理及 び15℃ と25℃の12時間 ごとの 変温前処理を20〜 30日間行うことが 極め て有効 であっ た。 薬剤処 理の影 響にっ いて は,ジ ベレリ ンによ り発芽 率が わずかに増加した ほかtま ,顕著 な効果 は認め られ なかっ た。

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  3. 発育と分げつ:種子の発芽後,植物体の生長は極めて遅く,成株になるには3〜4年を要 する。 毎年,4月上旬にl〜2枚の萌 芽葉が地上に出葉し,続いて1〜3枚の普通葉が展葉する が,8〜9月にかけて枯葉する。萌芽葉は出葉する前々年の秋,普通葉は前年の春に分化する。

花房の分化は8月上旬から9月下旬に行われ,まもなく花茎側芽が花茎の基部に形成される。分 げっは,花茎の基部に花茎側芽が2つ形成された場合と普通葉の腋芽(分げつ芽)が形成された 場合に起こるが,前者の例は稀にしかみられない。花茎側芽及び分げつ芽は秋に分化し,その翌 春に成株の葉鞘内で緩やかに生長して,秋までに4〜5 cmに生長し,分化後3年目の春にこれら の芽は萌出し,普通葉が展藁する。このほか,根に不定芽が形成され発育して植物体になる現象 が見出された。これは,ネギ属作物の中ではギョウジャニンニクにのみ認められる独特の栄養繁 殖法ということができる。

  4.生育と栄養物質の消長:成株における生体重及び乾物重は,葉の生長とともに著しく増加 し6月にピークを示したが,それ以後9月まで減少し,10月以降再度増加した。窒素,リンの株 当りの 含有量は4月から8月にかけて増加を続け,カリウ厶及びカルシウムは4月から6月にか けて増加していることから,この時期に養分の吸収が活発に行われていることが推察された。各 成分は萌芽期から抽台・開花期まで葉に多かったが,その後りん茎と根に移行し,休眠期以降は 根に多く含まれた。萌芽葉芽の各成分含有量は秋まで増加し続けた。リンの含有率は他のネギ属 作物に比べて高く,特徴のーっと考えられた。萌芽期から展葉期には葉では還元糖が多くなり,

りん茎では非還元糖及びデンプンの蓄積がみられた。また,休眠期には根において非還元糖及び デンプンの含有量が多かった。

  5. 休眠現象:8〜9月に地上部が枯れた後は翌春まで萌芽がみられず休眠に入るが,休眠の 深さは秋から冬にかけて徐々に浅くなる。休眠打破の方法としては低温に遭遇させることが有効 であり,O〜5℃で処理期間が長いほど休眠打破の効果が大きかった。また,休眠打破が不完全 な場合には植物体が矮化する現象がみられた。

  6.開花及び花粉の特性:開花の過程はネギやタマネギと同様,内花糸の伸長に続いて外花糸 が伸長し,葯も同様に内葯の裂開後に外葯が裂開した。また,花柱は葯の裂開後に急激に伸長し た。花粉の発芽にはショ糖15%を添加した寒天培地(寒天1%)を用い,20〜 25℃で培養を行う ことが適切であると考えられた。花粉は乾燥条件で―30℃及び‑196℃で貯蔵することにより,

長期間の貯蔵が可能である。特に液体窒素中(―196℃)で貯蔵した花粉は,1年後においても 発芽率は70%以上を維持し,低下しなかった。

  7. 組織培養における形態形成: 茎頂を含む茎盤部をBA高濃度の培地で培養することによ

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り 多 芽 体 が 誘 導 さ れ た 。 多 芽 体 の 形 成 に は オ ー キ シ ン と し てNAAに 比 べ て2,4一Dが 適 し て い る と 考 え ら れた 。 多 芽 体 の形 成 率 は , 培養 基 中 の シ ョ 糖10〜20% /1及 びMS無 機 塩 濃 度 が 規定 濃 度 のK〜1で 高 く , 環境 条 件 で は20〜25℃,8〜16時間 日長 で最高 であっ た。誘 導さ れ た多芽 体を 適当な 培地に 分割, 移植す るこ とによ り再び 多芽体 を誘 導でき ,これを分割して生長 調節物 質無 添加培 地に移 植する ことに より ,連続 的に幼 植物体 を再 生させ ることが可能である。

ま た,fn mtroに おいて 根を培 養する ことに より 不定芽 を誘導 するこ とが でき, 根から の植物 体 再生も 可能 であっ た。

  8. 栽 培化に 関する 基礎技 術: 種子を 圃場に 取り播 きした 場合 には,80〜90% 以上の 発芽が 認 められ ,種 子繁殖 による 栽培が 実用上 ,十 分にで きるこ とが示 唆さ れた。 また,高密度播種する と発芽 後の 幼苗の 発育も 良好で あった こと から, 株の発 育には 密植 が適す るものと考えられた。

日 照が 強 いほど 葉色は 濃緑色 とな った。 土壌水 分量は 多い ほど(pF.1.5以下) りん 茎及び 根の 発育が 良好 であり ,翌年 の地上 部の生 育に及ばす影響が大きいものと推察された。成株の収穫後,

3年目 で ほぼ 発育が 回復す るが, 回復の 早い 株も認 められ ,選抜 の効 果が示 唆され た。萌 芽前に 5〜10cm程 度の培 土を行 うこ とによ り,葉 鞘部の 長さ を大き くする ことが 可能で 展葉 完了後 の草 丈も大 きく なった 。また ,培土 により 葉鞘基部が白く(軟白)ナょり,萌芽葉の中央部から基部の 表皮細 胞が 長くな ること が認め られた 。林 床地に 播種し た場合 に40〜60%の発 芽がみられ,播種 場所( 斜面 の方角 や環境 )によ り実生 の発育程度にちがいは認められたが,いずれも旺盛ナょ発育 を 続け , 播 種 量 を多 く す る こ とで 林 床 地 に お いて も 十 分 に 栽培 で き る 可 能性が 示唆さ れた。

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

八 鍬 筒 井 喜 久 田 原 田

利 郎     澄 嘉 郎     隆

  本 論 文 は ,表43, 図126,引 用文献113を 含む 総ぺー ジ数335の和 文論文 であ り,9章に 分けて 論述 さ れ て お り, 別 に 参 考 論 文6編 が 添 え られ て い る 。

  本 研 究 は ,ギ ョ ウ ジ ャニン ニク(Allium victorialis L. ssp.platyphyllum Hult,) の形態

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的特性及び発育特性を明らかにし,栽培の基礎となる諸要因にっいて検討を行ったもので,内容 の概要は次のとおりである。

  1.形態的特 性:他のネギ属作物は1子房室に胚珠が2個あるが,ギョウジャニンニクでは1 個であるため種子は球形となる。小花の構造上の特徴は,内花被が外花被に比べて長く,内花被 と外花被の形が異なる。花粉は中央部に膨らみのある楕円形で,他のネギ属作物に比べて大きい ことが特徴であった。

  2,種子の発芽:種子の発芽率は20℃で最も高いが,発芽には30〜60日を要し,他のネギ属作 物に比べて極めて遅く発芽後の生長も遅かった。種子の発芽率を高めるには,20℃に保つ前に30

℃の高温前処理及び15℃と25℃の12時間ごとの変温前処理を20〜30日間行うことが極めて有効で あった。

  3.発育と分げつ:植物体の生長は極めて遅く,成株になるには3〜4年を要する。萌芽葉は 出葉する前々年の秋,普通葉は前年の春に分化する。花房の分化は8月上旬から9月下旬に行わ れ,まもなく花茎側芽が花茎の基部に形成される。分げっは,花茎の基部に花茎側芽が2つ形成 された場合と普通葉の腋芽(分げっ芽)が形成された場合に起こる。花茎側芽及び分げつ芽は秋 に分化し,その翌春に成株の葉鞘内で緩やかに生長して,秋までに4〜5 cmに生長し,分化後3 年目の春に萌出する。このほか,根に不定芽が形成され発育して植物体になる現象が見出された が,ネギ属作物 の中ではギョウジャニンニ クにのみ認められる独特の栄養繁殖法である。

  4.生育と栄養物質の消長:成株における生体重及び乾物重は,6月にピークを示したが,以 後9月まで滅少し,10月以降再度増加した。各無機成分は4月から8月にかけて吸収が活発に行 われ,萌芽期から抽台・開花期まで葉に多かったが,その後りん茎と根に移行し,休眠期以降は 根に多く含まれた。萌芽葉芽の各無機成分含有量は秋まで増加し続けた。リンの含有率は他のネ ギ属作物に比べて高く,特徴のーっと考えられた。萌芽期から展葉期には葉では還元糖が多くな り,りん茎では非還元糖及びデンプンの蓄積がみられた。休眠期には根において非還元糖及びデ ンプンの含有量が多かった。

  5.休眠現象:8〜9月に地上部が枯れた後は翌春まで萌芽がみられず休眠に入るが,休眠の 深さは秋から冬にかけて徐々に浅くなる。休眠打破の方法としては低温に遭遇させることが有効 で あ り , 0〜 5℃ で 処 理 期 間 が 長 い ほ ど 休 眠 打 破 の 効 果 が 大 き か っ た 。   6.開花及び花粉の特性:開花の過程はネギやタマネギと同様,内花糸の伸長に続いて外花糸 が伸長し,葯も同様に内葯の裂開後に外葯が裂開した。また,花柱は葯の裂開後に急激に伸長し た。花粉の発芽にはショ糖15%を添加した寒天培地(寒天1%)を用い,20‑‑ 25℃で培養を行う

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ことが適切であると考えられた。花粉は乾燥条件で―196℃で貯蔵することにより,長期間の貯 蔵が可能で,1年後においても発芽率は70%以上を維持した。

  7.組 織培養における形態形成:茎 頂を含む茎盤部をBA高濃度の培地で培養することによ り 多芽 体が 誘 導さ れた 。多 芽体の形成には オーキシンとしてNAAに比べ て2,4―Dが適し ていると考えられた。さらに,誘導された多芽体を適当な培地に分割,移植することにより,連 続的に幼植物体を再生させることが可能である。また,in vitroにおいて根を培養することによ り 不 定 芽 を 誘 導 す る こ と が で き , 根 か ら の 植 物 体 再 生 も 可 能 で あ っ た 。   8.栽培化に関する基礎技術:上述の試験を応用し,種子を圃場に取り播きした場合には,種 子繁殖による栽培が実用上,十分にできることが示唆された。また,株の発育は密植で,土壌水 分量は多いほど(pF.1.5以下)良好であった。成株の収穫後,3年目でほぼ発育が回復するが,

回復の早い株も認められ,選抜の効果が示唆された。萌芽前に5〜10cm程度の培土を行うことに より,葉鞘部の長さを大きくすることが可能で展葉完了後の草丈も大きくなった。林床地に播種 した場合には,40〜60%の発芽がみられ,林床地においても十分に栽培できる可能性が示唆され た。

  以上のように本研究は,学術上重要な知見を加えたばかりでなく,栽培化に貢献するところが 頗る大きく,応用面においても高く評価される。

  よって審査員一同は,最終試験の結果と合わせて,本論文の提出者金澤俊成は博士(農学)

の学位を受けるのに十分な資格があるものと認定した。

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