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博 士 ( 農 学 ) 金 山 紀 久 学 位 論 文 題 名

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博 士 ( 農 学 ) 金 山 紀 久

学 位 論 文 題 名

不 完 全 競 争 市 場 と し て の 野 菜 の 価 格 形 成 と 価 格 変 動 に 関 す る      計 量 分 析

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  本論 文で は ,野 菜産 地 の大 型化や野菜 消費の多様化など によって需要・供 給構造が変化し,こ れ まで 想定 し てき た純 粋 競争 市場の条件 を満足させない野 菜市場が形成され っっあるとの認識を 背 景に ,こ れ まで の計 量 的な 研究では分 析されてこなかっ た不完全競争市場 と想定される野菜市 場 に お け る 野 菜 の 価 格 形 成と 価 格変 動の 特 徴を 計量 分 析に よっ て 明ら かに し たも ので あ る。

  本論 文は8章か ら なり ,第1章で は ,本 論文 の 課題 と分 析 方法 を述 べ ,さ らに,これまでの野 菜 の価 格形 成 と価 格変 動 に関 する 既 往の 研究 成 果を 概観 し てい る。 そ して ,第2章か ら第7章ま で 本論 文で 設 定さ れた 課 題の 分析 が なさ れ, 第8章 におい てその分折の要約 と結論が述べられて いる。

  第2章 では ,ま ず 野菜 市場 の 構造 的変 化 を整 理し ,野菜 市場の理論的把握 を試みている。需要 構 造の 変化 で は, 量販 店 の進 出がめざま しく,その取り扱 い量が大きく拡大 したことや,同一品 目 にお いて も 差別 的な 消 費が 進み,品質 のファクターがよ り重要性を増して きていることを,ま た ,供 給構 造 の変 化で は ,高 速輸送シス テムの整備などに より,野菜産地の 遠隔化や大型化が進 行したこと ,さらに,産地間 競争が厳しさを増し,品質向上などにより製品の差弓lJ化(銘キ丙化)

を企図した 産地対応が展開さ れてきていることを 明らかにしている 。

  この よう な 需要 と供 給 の構 造的変化の 進展は,野菜市場 をそれまでの純粋 競争的市場から不完 全 競争 的市 場 へと 変化 さ せた が,この野 菜の不完全競争市 場は,野菜産地が 中間組織であるとい う 点で 通常 の 不完 全競 争 市場 と異なって いることを指摘し ている。そして, 野菜の産地形成にお い て共 販組 織 を形 成す る こと が一般的で あるが,この共販 組織の最適な目標 と個別農家の目標は 無 条件 には 一 致せ ず, 共 販組 織が あ たか も1っ の企 業とし て数量調整をする ことの困難なことを 理論的に明 らかにしている。

  第3章 でtま ,産 地間 の 代替 の弾力性が 明示的に考慮でき るアーミントン・ モデルを用いて,製 品 の差 別化 が 進ん でい る と考 えられる夏 場のキャペツ,だ いこん,ほうれん そうの産地レベルの

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需 要構造 の分析 を試 みてい る。実 際の計 測に あたっ ては, 産地間 の代替 の弾 力性が 一定であると い うアー ミント ン・ モデル の強い 仮定を 多少 弱める ため, 類似し た価格 形成 をして いる産地をク ラ ス 夕 一 分 析 に よ っ て 分 類 し , そ れ を1っ の 産 地 グ ル ー プ と し て 扱 っ て い る 。   モ デル の言十 ・測結 果から 産地間 の代 替の弾力性の値が3品目とも1に近い値をとっており,市場 に おける 産地間 の製 品の差 別化を 認める こと ができ ること ,また ,産地 の数 量変動 が自己価格変 動 へ与え る影響 は, 産地間 の代替 の弾力 性が 小さい ほど大 きくな り,そ の変 動の程 度は,シェア の 小さい 産地ほ ど大 きく現 れるこ とを明 らか にして いる。

  第4章で は ,「 ホク レン馬 鈴しょ ・玉ね ぎ消費 拡大 事業」 におけ るたま ねぎ とばれ いしょ の広 告 ・宣伝 による 需要 創出効 果を計 測し, その 効果を 評価し ている 。計測 モデ ルの構 築にあたって は ,広告 ・宣伝 効果 の現れ る特性 を考慮 し, 広告・ 宣伝の 品目全 体に対 する 需要の 拡大効果を計 測 する「 売上ア プロ ーチ」 モデル と,広 告・ 宣伝の 北海道 産に対 する選 択的 需要の 拡大効果を計 測 す る 「 売 上 シ ェ ア ・ ア プ 口 ― チ 」 モ デ ル の2っ を 特 定 化 し , 計 測 し て い る 。     r売上 アプ 口ーチ 」によ るモデ ルの 計測結 果では ,広告 ・宣伝 の効果がたまねぎ,ばれいしょ と もに認 められ るこ と,「 売上シ ェア・ アプ 口ーチ 」によ るモデ ルの計 測結 果では ,またねぎで は 広告・ 宣伝の 効果 が確認 された が,ば れい しょで はその 効果が 明確で はな いこと が明らかにさ れ た。こ の要因 とし て,北 海道産 のばれ いし ょの品 質上の 問題を 指摘し ,品 質水準 が広告・宣伝 に よ る 需 要 の 選 択 的 拡 大 の 効 果 に 大 き く 作 用 す る こ と を 明 ら か に し て い る 。   ま た, 「売上 アプ口 一チ」 モデル の計clJ結 果を用 いて, この事 業の広告・宣伝による経済的効 果 をシミ ュレー ショ ン分析 によっ て評価 し, たまね ぎとば れいし ょとも かな りの経 済的効果を確 認 できる こと, さら に,供 給の価 格弾力 性が 小さい ほど広 告・宣 伝の効 果が 大きく なることを明 ら かにし ている 。

  第5章で は ,産 地レ ベルで みると 寡占な しい独 占的 な市場 構造に ある仙 台市 場の宮 城県の いち ご の共販 を対象 に, 共販組 織の数 量調整 の問 題にっ いて実 証的に 分析し てい る。宮 城県のいちご の 共販組 織の数 量調 整は, 結果的 に,共 販組 織の粗 収益を 極大化 するこ とが 目標と なっており,

共 販組織 の最適 な目 標と考 えられ る利潤 極大 化には なって いなか ったこ と, また, 株冷栽培の増 産 と露地 栽培の 減産 が適正 水準以 上に過 剰に 進行し たこと などの 問題点 を明 らかに し,産地レペ ル の数量 調整の 困難 な問題 を実証 的に明 らか にして いる。

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このモデルは,通常のアーミントン・モデルに課せられた産地間の代替の弾力性がどの産地間で も同一であるという仮定を弱めたモデルで,このモデルの計測結果から,通常のアーミントン・

モ デル より も 詳し い産 地間 の代 替関係を反映したモデ ルであることを明らかして いる。

  さらに,産地レベルの需要モデルと供給モデルの計測結果を用いて,産地レベルの価格変動の シミュレーション分析を試みており,同一の供給量の変化でも供給量の変化する産地が異なるこ とによって各産地に与える価格変動の大きさは異なること,また,供給がより価格に弾力的な構 造にある産地ほど価格変動が大きくなる傾向があること,さらに,近年の野菜産地における製品 の差別化の動きは,産地レベルの価格変動をより大きくする可能性があることを明らかにしてい る。

  第7章では,野菜の価格変動の経済厚生上の影響をはくさいとキャベ`ソを対象に計量的に分析 している。

  価格変動の経済厚生に対する影響のしかたとして,正負の効果が数年続くタイプ(はくさい)

と,正負の効果が比較的交互に現れるタイプ(キャベツ)とがあり,これらの2っのタイプに対 し て は , そ れ ぞ れ 異 な っ た 対 応 策 が 要 請 さ れ て い る こ と を 明 ら か に し て い る 。   そして,従来,野菜の価格変動は社会厚生上望ましくないものと考えられてきたが,ここでの 分析から,その影響は生産者と消費者に対して一様ではないことが確認され,現実の野菜の価格 変動を考える場合,価格変動を抑える方策の検討とともに,価格変動による一定期間の影響につ い て の 検 討 も 野 菜 の 価 格 変 動 を 考 え る 上 で 重 要 で あ る こ と を 明 ら か に し い て る 。   以上要約したように,本論文は,これまで計量的に分析されてこなかった不完全競争市場と想 定される野菜市場における野菜の価格形成と価格変動の特徴を計量的に分析することによって,

今 後 の 野 菜 産 地 に お け る 市 場 対 応 の 問 題 に 対し て 意義 ある 解答 を 示し たと いえ る。

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学位論文審査の要旨

  本 論文 は ,8章 から な り , 表51, 図20を含 む総頁 数278頁の 邦文論 文であ る。剛 に参 考論文10 編が 添え られて いる。

  本 論文でtま ,これ までの 計量的 な研 究では 分析さ れてこ なかった不完全競争市場と想定される 野 菜 市 場に お け る 野 菜の 価 格 形成と 価格 変動の 特徴を 計量分 析に よって 明らか にした もので あ る。

  第1章 では ,本論 文の課 題と 分析方 法を述 ベ,さ らに, これ までの 野菜の 価格形 成と 各変動 に 関 す る 既 往 の 研 究 成 果 を 概 観 す る と と も に 本 論 文 の 意 義 を 述 べ て い る 。   第2章でfま ,まず 野菜 市場の 構造的 変化を 整理 し,野 菜市場 の理論 的把握 を試みている。野菜 市場 にお ける需 要と供 給の構 造的変 化は ,野菜 市場を それま での 純粋競 争的市 場から不完全競争 的市 場へ と変化 させて いる要 因とな って いるこ とを理 論的に 示す ととも に,野 菜産地が中間組織 であ ると いう考 え方を 導入す ること によ り,不 完全競 争市場 とし ての野 菜市場 が通常の不完全競 争 市 場 と異な ってい ること を指 摘し, 野菜産 地にお ける 共販組 織があ たかも1っ の企業 として 数 量調 整を するこ とが困 難なこ とを理 論的 に明ら かにし ている 。

  第3章 では ,産地 間の代 替の 弾力性 が明示 的に考 慮でき るア ーミン トン・ モデル を用 いて, 製 品の 差別 化が進 んでい ると考 えられ る夏場のキャベ・ソ,だいこん,ほうれんそうの産地レベルの 需 要 構 造の分 析を試 みてい る。 モデル の計測 結果か らは 産地間 の代替 の弾力 性の値 が3品目と も 1に近い 値をと って おり, 市場に おける 産地間 の製 品の差 別化を認めることができること,また,

産地 の数 量変動 が自己 価格変 動へ与 える 影響は ,産地 間の代 替の 弾力性 が小さ いほど大きく現れ るこ とを 明らか にして いる。

  第4章 では ,「ホ クレン 馬鈴 しょ・ 玉ねぎ 消費拡 大事業 」を 例に, たまね ぎとば れい しょの 広

征 晋

俊  

  克

柳 間

井 村

天 臼

授 授

授 授

   

   

教 教

教 助

査 査

査 査

主 副

副 副

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シェア ・アプ 口ー チ」モ デルの 計測結 果でfま, たまね ぎでは効果が確認されたが,ばれいしょで は効果 が明確 では なく, 品質水 準が広 告・宣 伝に よる需 要の選 択的拡 大の 効果に大きく作用する ことを 明らか にし ている 。さら に,こ の事業 の広 告・宣 伝によ る経済 的効 果をシミュレーション 分析に よって 確認 すると ともに ,供給 の価格 弾力 性が小 さいほ ど広告 ・宣 伝の効果が大きくなる という ことを 明ら かにし いる。

  第5章で は,産 地レベ ルで みた場 合,寡 占ない し独占 的な 市場構 造にあ る仙台 市場 におけ る宮 城県の いちご の共 販を例 として ,共販組織のもつ数量調整の経済効果にっいて評価を試みている。

すなわ ち宮城 県の いちご の共販 組織の 数量調 整か らみた 効果は ,結果 的に ,共販組織がもつ理念 的に最 適な目 標と 考えら れる利 潤極大 化には なっ ていな いこと から, 産地 レベルの敬量調整には 限界の あるこ とを 実証的 に明ら かにし ている 。

  第6章で は,産 地レペ ルで の野菜 の価格 変動に っいて 夏場 のだい こんを 対象に 計量 的な分 析を 試みて いる。 ここ では, 通常の アーミ ントン ・モ デルよ りも詳 細な産 地間 の代替関係を反映でき る, 通 常 の ア ー ミン ト ン ・ モ デル を 改 良 し た2段 階CES型 ア ー ミ ン トン・ モデ ルを新 たに筆 者 が導出 してい る。 さらに ,産地 レペル の需要 モデ ルと供 給モデ ルの計 測結 果を用いて,産地レベ ルの価 格変動 のシ ミュレ ーショ ン分析 を試み ,供 給がよ り価格 に弾力 的な 構造にある産地ほど価 格変動 が大き くな る傾向 がある こと, また, 近年 の野菜 産地に おける 製品 の差別化の動きが,産 地 レ ベ ル の 価 格 変 動 を よ り 大 き く す る 可 能 性 が あ る こ と を 明 ら か に し て い る 。   第7章で は,従 来,野 菜の 価格変 動は社 会厚生 上,生 産者 ,消費 者一様 に望ま しく ないも のと 考えら れてき たこ とに対 して, その影 響は生 産者 と消費 者に対 して必 ずし も一様ではないことが 確認さ れ,現 実の 野菜の 価格変 動を考 える場 合, 価格変 動を抑 える方 策の 検討とともに,価格変 動に よ る 一 定 期 間の よ り詳 細な景 彡響 にっい ての検 討も重 要で あるこ とを明 らかに してい る。

  以上要 約し たよう に,本 論文は ,これまで計量的な分キ斤がなされてこなかった不完全競争市場 と想定 される 野菜 市場に おける 野菜の 価格形 成と 価格変 動の特 徴と計 量的 に分析することによっ て,多 くの新 知見 を加え たもの で,今 後の野 菜産 地にお ける現 実の市 場対 応に対しても極めて有 用なも のと認 めら れる。

  よって ,審 査貝一 同は別 に実施 した学力確認試験の結果と合わせ,本論文の提出者金山紀久は,

そ の 請 求 す る 博 士 ( 農 学 ) の 学 位 を 受 け る 資 格 の あ る も の と 認 定 し た 。

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