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博士(農学)原 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(農学)原 学位論文題名

食餌夕ンパク質によるラット消化管機能調節作用 学位論文内容の要旨

  食物には,消化管機能を調節し自らの消化吸収を促すための情報が内包されている。本研究は 食餌成分のなかのタンパク質をとりあげ,その種類による消化管への影響の違い,及びタンパク 質 に よ る 膵 外 分 泌 を 中 心 と し た 消 化 管 機 能 の 調 節 機 構 を 研 究 し た も の で あ る 。   本論文では,代表的な食餌タンパク質であるカゼインと分離大豆タンパク質(SPI)を同時に 摂取したラットにおいて,難消化性ペプチドであるオリゴメチオニン(OM)の消化吸収が異な るという現象を,より詳細に解析することを出発点として,両夕ンパク質の持つ消化吸収機構へ の影響を無麻酔無拘束下で調べた。これらの実験はラットの生理的条件を重視し,独自に考察し た手技を用いて行なっている。また,OMをプ口ーブとして,消化吸収能を比較する実験では,

難消化性の食餌タンパク質の消化吸収に影響を与える要因の検索にも重要な意義をもっものであ る。

  食餌タンパク質の消化吸収機能への影響として最も大きく,かっ重要なものは膵外分泌亢進能 である。本論文では,この点に関しても独自の仮説のもと,新しい生理実験手技を用いて追究し ている。これらの概要を示すと以下のようになる。

1)生理的条件下での低カゼイン食と低SPI食餌取時のOM吸収動態

  門脈と上大静脈に採血用カテ―テルを長期的に留置したラットを用いて,OMを添加した低カ ゼ イン食と低SPI食を1日絶食 後再給餌し,その吸収動態をOM由来のメチオニンの門脈一静 脈濃度差を指標として追跡した。その結果,投与初期において明らかにカゼイン食に添加した OM吸 収はSPI食に 添加 したものより 速く,35SラベルしたOMの消 化管よりの消失から求め た ,吸収絶対量や吸収効率もカゼイン群でより高かった。またOMの消化吸収速度はタンパク 質に比べて非常に遅く,OMが難消化性であることが証明された。これらの結果は,カゼインが SPIに比べて,再給餌初期に消 化吸収機能をより強く亢進させていることを示唆している。

2)カゼインおよびSPIの各種消化管機能への影響

  OMをプ口―ブとした実験で ,カゼインとSPIが消化管機能に対し異なった影響を与えるこ

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とが示唆されたため,1)と同じ,無麻酔無拘束下での絶食ー再給餌という条件を用いて,各種 消化吸収機能へのこれら食餌タンパク質の作用を検索した。

  食餌中のタンパク質レ ベルが8%のとき,カゼインはSPIに比べ膵外分泌刺激作用が若干強 い傾向が見られたが,16%レベルでは両タンパク質の刺激能に差は見られなくなった。膵外分泌 亢進はタンパクレベルに応じて強くなった。

  次に,消化管内で実際に発現している膵プ口テアーゼ活性のin vivoでの測定を試みた。すな わち ,キモトリプシ ンに特異的な人工基質であ るbenzoyl一L−tyrosyl‑p―aminobenzoic acid(BT―PABA)を食 餌 に添 加し ,分 解産 物 であ るPABAの門脈内への吸収 を指標として 測定したものである。こ こでは,8%SPI食ラットの活 性が,摂取1時間後に8%カゼイン食 ラットより有意に高いという結果となり,管腔内プロテアーゼ活性は,単純にその分泌量のみに 規定されないことが明らかにナょった。

  タンパク質マーカーであるグァニジルカゼインを用いて測定した胃排出速度や,インジゴカー ミンやポリエチレングリコールなどの非吸収性マ一力―を用いて測定した小腸通過速度への両夕 ンパク質の影響を摂食後経時的に検討した。その結果,SPIが消化管内容物の小腸通過速度を 亢進 させ ると い う, 従来 知ら れていなかった食 餌夕ンパク質の作用が明ら かになった。

3)食餌タンパク質による膵外分泌亢進機構は1っか?

  2) のBTーPABAを 用いた研究より,摂取初期の 管腔内の膵プロテア―ゼ活 性は非常に高 いことが示された。このことは,食餌タンパク摂取による膵外分泌亢進機構として従来提唱され てきたネガティブフィ―ドバックによる調節機構以外にも,タンパク質は別の機構で膵外分泌を 亢進させていることを示唆している。

  ネガティブフィードバック調節機構は管腔内プロテア―ゼ活性を介した調節機構で,膵外分泌 亢進には食餌夕ンパク質のプ口テアーゼ占有能が重要であるとされている。そこで,食餌夕ンパ ク質として,比較的プ口テア―ゼ占有度が高いと思われる卵白を用い,これを低分子ペプチド化 することによルプロテアーゼ占有能を消失させたものとで膵外分泌能を比較した。さらに,ラッ トの胆膵液をネガティブフィ―ドバック調節機構の作動部位である小腸上部から手術により回腸 に放出させるようにしたラット(バイパスラット)を用いて,食餌夕ンパク質に対する膵外分泌 反応を検討した。その結果,ネガティブフィードバック調節機構は確かに生理的条件でも作動し ていることが示されるとともに,これとは別の,食餌夕ンパク質ないし,その部分水解物が直接 小腸に作用して膵外分泌を亢進させる機構の存在が示唆された。すなわち,先のバイパスラット を用いて,カゼインのぺプシン分解物を直接小腸上部に注入した結果,有意な膵外分泌亢進が見

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られたことより,食餌夕ンパク質は,胆膵液を介さない,ネガティブフィードバック調節機構以 外の機構でも膵外分泌を亢進していることを証明した。なお胆膵液除去によっても膵外分泌は著 明に亢進し,他の刺激には反応しなくなることが報告されている。本実験は,この無反応状態よ り脱した条件を用いたことがポイントとなっている。

4) カ ゼ イ ン 食 に 添 加 し たOMの 吸 収 速 度 が SPI食 餌 よ り 速 い の は な ぜ か ?   2)で行なった実験では,カ ゼイン食ではSPIより明らか にOM消化速度が速かった。しか し,カゼイン食摂取時により強く亢進される消イE管機能は見いだせなかった。そこで,これまで 用いてきた絶食―再給餌系でなく通常の摂食条件下で,合成トリプシンインヒビターにより膵外 分泌能を特異的に亢進させたラットにおいて,OM吸収に対する膵外分泌能の関与を成長を指標 にして検討した。その結果,若干の成長改善が見られたことより,膵外分泌が一部関与している こ とが示唆された。さら に,OMの胃内消化や,カゼ インとSPIによる管腔内OM消 化への拮 抗 作用をin vitroで検討した結果,これらの要因も食餌夕ンパク質によるOM消化の差の一因 となっていることを明らかにした。

  以上まとめると,各種消化管機能への食餌夕ンパク質の影響をラットを手術することで,無麻 酔無拘束という生理的条件下での実験を可能にする実験系を確立し,検討した。OMをプローブ とした実験からは,難消化性のペプチドは共存する食餌夕ンパク質により,胃内,小腸内消化が 影響を受けることが明らかになった。また,食餌夕ンパク質による膵外分泌機構として従来知ら れていない,夕ンパク質の小腸上部への直接作用が存在することを明らかにした。また,SPI に は , 小 腸 内 容 物 通 過 速 度 を 亢 進 さ せ る 作 用 が あ る こ と を 見 い だ し た 。

学位論文審査の要旨

  主論文は和文151頁で,表15,図57,参考文献116を含み,その構成は序章を含めて全6章から なり,食餌夕ンパク質のもつ各種消化管機能の調節作用に関する研究をまとめたものである。別

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八 也

哉 哉

修 純

誠 良

山 谷

葉 木

桐 水

千 仁

授 授

授 授

教 教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

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に参考論文25編が添えられている。主論文の内容は,難消化性ペプチドであるオリゴメチオニン

(OM)の消化吸収速度が,同時に摂取するタンパク質によって異なる原因を種々の角度から検 討すると同時に,食餌タンパク質による膵外分泌亢進の機構にっいて追究したものである。方法 に は , 独 自 に 開 発 し た , 施 術 ラ ッ ト に よ る生 理的 条 件下 での 実験 系を 用 いて いる 。 1)生理的条件下 での低カゼイン食と低分離 大豆タンパク質(SPI)食摂取 時のOM吸収動態   門脈と上大静脈に採血用カテーテルを長期的に留置したラットを用いて,OMを添加した低カ ゼ イ ン食 と低SPI食を1日 絶食後再給餌し, 無麻酔無拘束下でOMの吸収動 態をOM由来のメ チオニンの門脈一静脈濃度差を指標として追跡した。その結果,投与初期において明らかにカゼ イ ン 食に 添加 したOMの吸 収はSPI食に添加し たものより速く,35Sラベル したOMの消化管 よ りの消失から求めた,吸収絶対量や吸収効率もカゼイン群でより高かった。またOMの消化 吸収速度はタンパク質に比べて非常に遅く,OMが難消化性であることを明らかにしている。こ れらの結果は,カゼインがSPIに比べて,再給餌初期に消化吸収機能をより強く亢進させてい ることを示唆している。

2)カゼインおよびSPIの各種消化管機能への影響

  OMをプ口ーブとした実験で,カゼイン・とSPIが消化管機能に対し異なった影響を与えるこ とが示唆されたため,1)と同じ,無麻酔無拘束下での絶食一再給餌という条件を用いて,各種 消 化 吸収 機能 への こ れら 食餌 夕ン パク 質 の作 用を 検索 し, 以 下の よう な結 論を得た。

  食餌中のタンパク質レベルが8%のとき,カゼインはSPIに比ベ膵外分泌刺激作用が若干強 い傾向が見られたが,16%レベルでは両夕ンパク質の刺激能に差は見られなくなった。膵外分泌 亢進はタンパクレベルに応じて強くなった。さらに絶食―再給餌系でなく通常の摂食条件下で,

合成トリプシンインヒビターにより膵外分泌能を特異的に亢進させたラットにおいて,OM吸収 に対する膵外分泌能の関与を成長を指標にして検討した。その結果,若干の成長改善が見られた ことより,膵外分泌が一部関与していることが示唆された。

  Benzoyl−L―tyrosyl‑p―aminobenzoic acid(BT―PABA)を両飼料に 添加して,遊離 し たPABAの動態からinvivo管 腔内キモトリプシン活性を測 定したところ両飼料群ともこの 活性は非常に高かった。

  また,インジゴカーミンやポリエチレングリコールなどの非吸収性マ一カーを用いて,胃排出 速度や小腸通過速度への両夕ンパク質の影響を摂食後経時的に検討した結果,SPIが消化管内 容物の小腸通過速度を亢進するという,従来知られていなかった食餌タンパク質の作用を明らか に し た。 さら に,OM胃内 消化 や, カゼ イ ンとSPIによる管腔内OM消化へ の拮抗作用をin

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vitroで 検 討 し た結 果 , こ れ らの 諸 要 因 は 食餌 夕ン パク 質によ るOM消化 速度 の差と 関連す ると 推 定した 。

3)食 餌タン パク質 によ る膵外 分泌亢 進機構 の存 在

  2)のBT―PABAを 用 い た 研 究 よ り , 管 腔 内 の 膵 プ ロ テ ア ー ゼ 活 性 は 非常 に 高 か っ た。 こ の こ と は ,食 餌 タ ン パ ク摂 取 に よ る 膵外 分 泌 亢 進 機 構と し て 従 来 提唱 されて きたネ ガティ ブ フ ィ―ド バック による 調節 機構以 外にも ,食餌 タンパ ク質 は別の 機構で 膵外分泌を亢進させてい る ことを 示唆している。そこで,、ネガティブフィl一ドバック調節機構に必須である胆膵液をその 作 動部位 である 小腸上 部か らバイパスさせ回腸に放出するよう手術したラット(バイパスラット)

を 用いて ,食餌 夕ンパ ク質 に対する膵外分泌反応を検討した。その結果,ネガティブフィードバッ ク 調節機 構は確 かに生 理的 条件で も作動 してい ること が示 される ととも に,これとは別の,食餌 タ シパク 質ない し,そ の部 分水解 物が直 接小腸 に作用 して 膵外分 泌を亢 進させる機構の存在が示 唆 された 。すな わち, 先の バイパ スラッ トを用 いて, カゼ インの ペプシ ン分解物を直接小腸上部 に 注入し た結果 ,有意 な膵 外分泌 亢進が 見られ たこと より ,食餌 夕ンパ ク質は,胆膵液を介さな い ネガテ ィブフ ィード バッ ク調節 以外の 機構で も膵外 分泌 を亢進 してい ることを明らかにした。

  以 上のよ うに, 本研 究は新 しい実 験系を 確立 ,導入 するこ とによ り,食 餌タンパク質のもつ従 来 知られ ていな かった 消化 管の生 理的機 能や, 作用機 序を 提示し たもの である。よって,審査員 一 同 は , 別に 行 な っ た 学力 確 認 試 験 の結 果 と 合 わ せ て、 本 論 文 の 提出 者原博 は博士 (農学 ) の 学位を 受ける のに十 分な 資格が あるも のと認 定した 。

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参照

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