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博士(農学)チトラコンソンクラン 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(農学)チトラコンソンクラン 学位論文題名

Characterization, evaluation and utilization of     wild rice germplasmin Thailand

    (タイ における野生イネ遺伝資源の特性、評価および利用)

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  近年の地球環境の変化による野生植物の生育地の滅少は栽培植物の近縁野生種 の探査および保護を切迫した課題としている。栽培イネの属であるイネ属の野生 種の分類、分布、生態は不明の点が多い。アジア起源の栽培イネ(Oryza sativa) の祖先型野生種は、熱帯地方に広く分布レ、栽培イネと容易に交雑することから 遺伝資源として重要であるが、その生育地は急速に減少しつっあり、時には水田 雑草としてその駆除の対象になっている。

  本研究は、夕イに分布するイネ属野生種(野生イネ)の分類、分布、生態、遺 伝的多様性を総合的に言及し、栽培イネの遺伝資源としての野生イネの保存と利 用について考察することを目的とレた。

  主な結果は以下の通りである。

  1)現在、イネ属には分類学的に21種が記載されているが、研究者によっては認 めない種がある。1982年から1991年の間に、夕イの全域から集めた578系統の野 生イネの自生地での観察データをもとに、夕イでは0. rufipogon、0.nivara、 0. officinalis. O. granulataおよび0.ridleyiの5種の野生イネが分布する ことを明らかにした。栽培イネ(0. sativa)と同じゲノムを持つ前2者の野生イ ネは、夕イ全域に亙って広く分布し、地域ごとに別々の名前で呼ばれ、一年生か ら多年生、自殖から多殖、野生型から雑草型と広範な多様性を示した。さらに、

栽培イネとの雑種と思われる型を多く見つけられ、それらをspontanea型とし、

O. rufipogon、0.nivara、spontanea型のいずれにも分類の困難なものが多く あり、非分類型とした。栽培イネと同じゲノムをもつ野生イネは、被陰されない 湿潤条件から深水条件に及ぷ異なる水条件下で生育する。O. ni塑望は、比較的 乾燥レているタイの北部、北東部でより多く見っけられ、spontanea型は水田ま たはそれに隣接した場所でみっけられた。これに反して、栽培イネと異なるゲノ

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ムをもつO. officinalis,O.ridleyiとO.granulataは 比 較的 乾 燥し た 日 陰 で みっ けられた 。これらの3種は分布 地域が限 られてお り、個々 の集団が 小さく、

絶 減の 危 険に 晒 さ れて い る 。

  2) 286系統 の野生イ ネの特性を 評価する ために、 夕イのイ ネ研究所 の実験条 件 下 で栽 培 され 、1991年 から1994年の 間に48種類 の形態形 質が調査 された。 栽培イ ネ と同 じ ゲノ ム を 持つ3つ の 分類 群の 野生イネ は、13種類 の量的形 質と6種類 の質 的 形質においてO.

と 短い葉舌長がO・

of ficinalisと異な ることを 明らかに レ、特に 、小さい 種子 officinalisを特 徴づける 標識形質 であった 。これに 反レて、

O. rufipogon、O.nivara、spontanea型は、 どの形質 において も互いに 同様の 変異 領 域 を示 し た。 い く っか の 形質 で はこ の3つの分 類群の間 で小さな差 異が観 察さ れ た が、 こ れら の 形 質に よ りこ の3っの 分類群の 範疇を特 定すことは 困難で あった。

  3)栽培イ ネと同じ ゲノムを 持つ野生イ ネの多様 性と分化 を明らかにする目的で 232点 の 収 集系統の30形 質の相関 行列を基 に主成分 分析が行 われた。 第1主成分は 栄養 器 官 の大 き さの 変 異 を説 明 し、 第2主成 分は草型 に関係す る形質変異 を説明 し、 第3主 成分は野 生型と栽 培型を区 別する形 質の変異 を説明し ている。232点 の 収集 系 統 の3つの主 成分のス コアを基 に2次元の 散布図上 に表され た結果から 、栽 培イ ネ と 同じゲノ ムを持つ 収集系統 は連続し て散布し ており、 明瞭な境界 を見い だす こ と はで き なか っ た 。一 年 生で あ るO. nivaraは 、 特徴 的 な ーつ の群を形 成するが 、0. rufipogonは全 体に大き く散布レて いて、そ の中に含まれていた。

  4)農業上 重要な3つ の形質、 日長感受性、寿命(多年生/一年生)、種子タンパ ク含 量 に 関し 、236点 の 収 集系 統 を評 価 した。 栽培イネ と同じゲ ノムを持つ 野生 イネにおいて、 6596が多年生、7096が日長感受性を示した。O. officinalis Cは. 全 てが 多 年生 、2596が 日長 感 受性であっ た。野生 イネの種 子夕ンパ ク含量で は、

系 統 に よ る 変 異 が大 き かっ た が 、0. rufipogonとspontanea型に 種 子夕 ン パ ク 含 量の 高 い値 を 示 す系 統 が 多かった 。将来の 栽培イネ の理想型 である多 年生、日 長非感 受性、高 い種子タ ンパク含量 の遺伝資 源とレて野生イネが有用と思われる。

  5) 1983年と1991年 また は1992年に20箇所 の野生イネ の生育地 の植生が 観察さ れ た。 こ の期 間 中 に10集 団が 絶 減し た 。 絶減 し た10集 団の うち5集 団はバン コク の 郊外 に 位置 し て いた 。 こ の絶減の 原因は、 生育地の 自然環境 の変化に よるもの も あっ た が、 道 路 の拡 張 お よび宅地 化による 直接的な 生育地の 破壊であ った。そ の 他の 生 育地 に お いて も 野 生イネは 徐々に減 少し,競 争相手の 多年生の 種に置き 換 わっ て 来て い る 。野 生 イ ネの生育 地で観察 される乾 燥と家畜 の放牧に よる採食 が 野生 イ ネが 繁 殖 段階 へ の 到達を阻 害してい ると思わ れる。こ の期間中 変化なく 植 生が 維 持し て い た生 育 地 はほとん どが深水 条件であ った。深 水は、野 生イネの

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集 団を 人と 動物 によ る生 育地 の撹 乱か ら守り、他種との競争を緩衝すると思われ る 。ク イに おけ る野 生イ ネの 遺伝 的侵 食は急速に進行し、イネ遺伝資源の枯渇が 心 配さ れる 。イ ネ遺 伝資 源と して の野 生イネの生殖質をこれ以上消失させないた め には ,広 範囲 にわ たる 種子 また は栄 養体の採集を行い、施設保存をするのみな ら ず、 十分 な遺 伝的 多様 性を 保持 され るような自生地保存が考慮されるべきであ る 。、

,6) 害虫 抵抗 性の遺 伝資 源と して の野 生イネの利用を検討した。7種の野生イネ を 供試 し、369系 統に つい てト ビイ 口ウ ンカ(Nilaparvata lugens)抵抗性、100 系 統に つい てツマグロヨコバェ( Nephotettix vlresCenS)抵抗性を検定した。

0.minutaの1系 統の みが トビ イ口 ウン カと ツマグ 口ヨ コバ 工両 方に 対レ抵抗性 を 示し た。 トビイ口ウンカ抵抗性を示した野生イネはO. officinalisの 供 試 全 系統(6)、O. minutaの供試全系統(2)、0.ridleyiの供試系統(1)の9系統であっ た。 これ らの 系統と 栽培 イネ13品 種と 交雑 され た。 得ら れた5つの 雑種 を胚救済 法に より 育て た後代 は全 てト ビイ 口ウ ンカ 抵抗性を示した。レたがって、野生イ ネが 持っ トビ イ口ウ ンカ 抵抗 性遺 伝子 は優 性であることが示唆された。しかし、

種間 雑種 は高 い不稔 性を 示し ,芒 や脱 粒性 等の野生イネから導入された多くの栽 培に は適 さな い特性 を保 有す るた め、 抵抗 性遺伝子を直接利用することはできな い。 栽培 イネ のトビ イ口 ウン カ抵 抗性 改良 に野生イネの抵抗性遺伝子を利用する には 、繰 り返 し戻し 交配 を行 い、 トビ イ口 ウンカ抵抗性遺伝子以外の野生遺伝子 を淘汰する必要がある。

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発 現 に 関 す る 研究 学位論文審査の要旨

主 査  教 授  島 本 義 也

副 査  教 授  森 島 啓 子 ( 総 合 研 究 大 学 院 大 学 ) 副 査  教 授  佐 野 芳 雄

学 位 論 文 題 名

Characterization, evaluation and utilization of     wild rice germplasm in Thailand

    ( タ イ に お け る 野 生 イ ネ 遺 伝 資 源 の特 性 、 評価 およ び利 用)

  本 論 文 は 、 図6、 表38、 写 真12、 付 表5、 引 用 文 献55を 含 み 、7章 か ら な る 総 頁 数143の 英 文 論 文 で あ る 。 別 に 、 参 考 論 文17編 が 添え ら れ て い る 。   近年 の地 球環 境の 変化 によ る野 生植 物の 生育地 の減少は栽培植物の近縁野生種 の 探査 およ び保 全を 切迫 した 課題 とレ てい る。イ ネ属野生種の分類、分布、生態 は 不 明 の 点 が 多 い 。 ア ジ ア 起 源 の 栽 培 イ ネ(Oryzasativa)の祖 先型 野生 種は、

熱 帯地 方に 広く 分布 レ、 栽培 イネ と容 易に 交雑す ることから遺伝資源として重要 で ある が、 その 生育 地は 急速 に減 少し つっ あり、 時には水田雑草としてその駆除 の対象となっている。

  本研 究は 、ク イに 分布 する イネ 属野 生種 (野生 イネ)の分類、分布、生態、遺 伝 的多 様性 を総 合的 に言 及し 、栽 培イ ネの 遺伝資 源としての野生イネの保存と利 用について考察することを目的とした。

  イネ属には21種が記載されているが、タイには5種の野生イネ、0. rufipogonヽ 0. nivara. O. officinalis. 0. granulataおckび 0. ridleyi.が分布するこ とを 明ら かに した 。栽 培イ ネと 同じ ゲノ ムを 持つ 前2者 の野 生イ ネは 、夕 イ全土 に亙 って 広く 分布 し、 広範 な多 様性 を示 した 。さらに、栽培イネとの雑種と思わ れる もの をspontanea型とレ 、ま た、0.rufipogon、O.nivara、spontanea型の いず れに も分 類の 困難 なも のを 非分 類型 とし た。O. rufipogonは被 陰が ない湿 潤か ら深 水の 水条 件下 で生 育レ 、O. nivaraは比較的乾燥しているタイの北部や 北束 部で より 多く 見つ けら れ、spontanea型は 水田 また はそ れに 隣接 した 場所で 観察 され た。 これ に反 して 、栽 培イ ネと 異な るゲ ノムを もつ0. officinalis、 0. ridleyiと0.granulataは 比 較 的 乾 燥 し た 日 陰で みっ けら れた 。こ れら の 3種は 分布 地域 が限 られ 、個々 の集 団サ イズ が小 さく 、絶 減の 危険 に晒されてい る 。

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  栽 培イ ネ と 同じ ゲ ノム を 持 つ野生イ ネは、他 の野生イネ と多くの 特性で異 なっ て いたが、 種子サイ ズと葉舌 長が標識 形質であ った。O. rufipogon、O.ni塑塑、

spontanea型は、ど の形質に おいても 互いに同 じような の変異領域 を示し、 また、

形 質 の 相関 行 列 を基 に した 主 成分分 析から、 これらの収 集系統は 連続レて 散布し て お り 、明 瞭 な 境界 を 見い だ す こと は でき ず 、 これ ら の3つの分 類群の範 疇を特 定 す る こと が 困 難で あ った 。 一年生 である0. nivaraは、特徴的 なーつの 群を形 成 す る が 、O. rufipogonが 全 体 に 大 き く 散 布し て いて 、 そ の中 に 含 まれ た 。   農 業上重要 な日長感 受性と寿 命(多年 生/一年 生)は、栽培イネと同じゲノムを 持つ野生イネにおいて、 6591が多年生、7096が日長感受性.0. officinalis ‑Cは. 全 てが多 年生、25% が日長感 受性であ った。野 生イネの種 子夕ンパ ク含量は 、系 統 に よる 変 異 が大 き かっ た が 、O.ruf ipogonとspontanea型に高 い含量の系 統 が 多かっ た。将来 のイネの 理想型で ある多年 生、日長非 感受性、 高い種子 夕ンパ ク 含量の 遺伝資源 とレて野 生イネは 有用と思 われる。ま た、野生 イネは、 害虫抵 抗 性の 重 要 な遺 伝資 源であり.0.officinalis.O.

イ 口 ウン カ とツマグ 口ヨコバ ェに対す る抵抗性 因子を持ち 、その抵 抗性が優 性遺 伝 すること を示した。

  20箇 所 の野生 イネ集団 の生育地 の植生を1983年と1991年ま たは1992年に観 察し た 結 果、 こ の 期間 中 に 絶減 し た10集 団の うち5集 団はバンコ クの郊外 に位置し て い た 。こ の 絶減の原 因は、道 路の拡張 および宅 地化による 直接的な 生育地の 破壊 で あ った 。 その他の 生育地に おいても 野生イネ は徐々に減 少してお り,競争 相手 の 多年生の 種に置き換 わ、って 来ている。野生イネ遺伝資源をこれ以上消失させな い た めに は 、広範囲 に採集し て施設保 存をする のみならず 、徹底的 な自生地 保存 が 考慮され るべきであ る。

  本 研究 は、 イネ遺伝 資源とし て重要な 野生イネ について、 夕イにお ける生態 と 遺 伝 的多 様 性を明ら かにした 点で学術 上の貢献 が大きく、 イネ遺伝 資源の利 用と 保 存につい て言及され ており、 応用上も 高く評価 される。

  よ って 、審 査員一同 は、別に 行った学 力認定試 験の結果と 合わせて 、本論文 の 提 出 者チ ト ラ コン ソ ン クラ ン は博 士 ( 農学 ) の学 位 を 受け る に十 分 な資格 があ る ものと認 定した。

参照

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