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博士(農学)金 芝伊 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(農学)金   芝伊 学位論文題名

担子菌エノキタケの子実体形成に関わる遺伝子の単離と解析

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  

担子菌の子実体形成のメカニズムは複雑であり、そのメカニズムに関 する分子生物学的研究はまだ少ない。担子菌の子実体形成に関わる遣伝 子の単離と解析は、子実体形成のメカニズムの解明とともに、まだ食用 キノコのうちで栽培が困難であるキノコや栽培キノコの生産における質 的、量的な改良への基礎知見として期待される。

  

本研究は、エノキタケの子実体形成に関わる遣伝子を単離し、その遣 伝 子の 解析と染 色体上の位置を 調べることを 目的として行 われた。

  

研究内容は、以下の項目に大別される。

1.子実体形成過程に関わる遺伝子の単離

  子 実 体 形 成 に 関 わ る 遣 伝 子 の 単 離 の た めcDNAを 合 成 し 、 発 茸 処 理 後 7日 目 と14日 目 の 菌 体 と の 間 で デ ィ フ ァ レ ン シ ャ ル ス ク リ ー ニ ン グ を 行 な っ た 。 そ の 結 果 、7日 目 の 菌 体 で 強 く 発 現 す る7っ の ク ロ ー ン を 選 抜 し た 。 栄 養 菌 糸 体0日 目 か ら 発 茸 処 理 後 の 147101421日 目 の 菌 体 の 全RNAを 単 離 し 、 ノ ー ザ ン 分 析 を 行 な っ た 結 果 、 発 茸 処 理 後1 日 目 か ら4日 目 ま で 強 く 発 現 し て14日 目 ま で 徐 々 に 下 が る パ 一 夕 ン を 示 したクローンをFVFD16(Flammulina velutipes Fruit Body Differentiation)、また 1日 目 か ら7日 目 ま で 徐 々 に 強 く な っ て10日 目 ま で 下 が る パ ー タ ン を 示 したクローンをFVFD30(Flammulina velutipes Fruit Body Differentiation)と名付 けた。

(2)

  

走査型電 子頭微鏡を用いて発 茸処理後の菌体の 形態の観察結 果、

7

日目菌体から 初めて菌叢形態の変化が認められた。また、

二次元 電気泳動によるタン パク質の変動の解 析から、発茸処理 から5〜7日目の菌体は他の時期よりタンパク質の総スポット数も、

特異的 に存在するスポット 数も多い等の結果 が得られた。発茸 処理か ら子実体形成初期に おける特異的遺伝 子の関与が予想さ れた。

  

今回単離 したFVFD16と

FVFD30

遺伝子 も、発茸処理後

4

7

日目 に特異 的発現が認められた ことから、子実体 形成に関わってい ることが,予想された。

2

. FVFD16と

FVFD30

遣伝子の構造解析

  FVFD16

FVFD30

遺 伝 子 の 機 能 推 定 を 行 うた め 塩基 配列 を 決 定した。

FVFD16

遺伝子は、

128

アミノ酸残基 からなり、

13.5 kDa

のタ ン パク 質を コ ード して いることが予 測された。また

FVFD30

遣伝子は319アミノ酸残基からなり、

34.5 kDa

のタンパク質をコー ド し て い る こ と が 予 測 さ れ た 。

FVFD16

FVFD30

遺 伝子 のデ ー タベースを用 いたホモロジー解析とモチーフ検索を行なったが、

夕 ンパ ク質 の 機能 推定 に は至 らな か った 。

PSORT

デ一 夕 ベー ス の検 索 の結 果、

FVFD16

遺 伝子がコー ドしているタンパ ク質は、

N

一夕 ー ミナ ルを 有 する 疎水 性 の高 い、 分 泌性 クン パ ク質 、あ るい は 膜内 に存 在 する タン パク質と推定 された。また、

FVFD30

遺伝 子 がコ ード し てい るタ ンパク質は細 胞質内に存在するタ ン パク 質 か、 ある い はペ ルオ キシソームに 存在するタンパク質 と 予想された。

3

 FVFD16

とFVFD30遣伝子のゲノム遣伝子の構造解析とゲノ.ミ

  

ックサザン分析

  FVFD16

FVFD30

遣伝 子の ゲ ノム 遺伝 子 の構 造解 析 のた め、

ゲ ノ ム ラ イ ブ ラ リー を作 製 した 。FVFD16と

FVFD30

遺 伝子 の そ れぞれ4っのポジディブクローンを選抜レて、サブクローニングに より塩基配列の解析を行なった。FVFD16遣伝子は、5 上流部位の

99

にTATAボックスが、そして

108

部位にはCAATの存在が認められた。

また、ORF領域内に真核生物で通常スプライシングが起こる部位と

(3)

して

GT/AG

ルー ルと一 致する

2

つ のイン トロ ンが存在していた。

しかし 、FVFD16は 、ジー ンファ ミリー と思 われるゲノムクロー ンが単 離さ れた。

FVFD30

遣伝子 は、

5

. 上流部位の

229

にTATAボ ッ ク ス が 存 在 し ,

310

領 域 に

CAAT

と 推 測 さ れ る配 列 が 存 在 し た 。翻 訳 開 始 時 に重 要 な 配 列 と言 わ れ る

CCACC

配 列 も 、

5

. 上 流部位の22の部位に存在していた。

50bp

くらいの短い配列を持つ イ ント ロ ン が

ORF

領域 内 に

4

っ 存在 し 、 イ ン ト 口ン 末 端 配列 は

GT/AG

ルールと一致する配列が存在していた。

FVFD16

FVFD30

遣伝 子 の コ ピ ー数 の 解 析 の た め、 ゲ ノ ミッ ク サザン を行なった結果、

FVFD16

とFVFD30遣伝子は2っ以上のジー ンファミリーメンバーの存在が推測された。

4

.電 気 泳 動 に よる 染 色 体

DNA

の分 離 と 各 遺 伝子の 染色体 上に おける

  

存在の解析

    

エ ノキク ケの 一核菌 糸と二 核菌糸の染色体数とディファレ ンシャ ルスク リー ニング により 単離した10個の遣伝子の染色体 上の位 置を調 べる ため、 パルス フィールド泳動法とサザンハイ ブリダ イゼー ショ ンを行 なった 。一核菌糸と二核菌糸は泳動ゲ ル のエ チ ジ ウ ム ブロ マ イ ド 染 色に よ り 、 そ れぞれ

6

本 と

8

本の 染色体 が認め られ た。し かし、 サザンハイブリダイゼーション を行な った結 果、 エチジ ウムブ ロマイド染色では明瞭なバンド が 得ら れ なかっ た二核 菌糸の

II

VII

染色体 で明瞭 なバン ドが 得 られ た 。 ま た

IV

V

VI

3

っの 染 色 体 が 重なっ ている こと を明ら かにし た。 また、 サザン ハイブリダイゼーションに用い たブロ ーブに 対し て二核 菌糸の 各染色体の相同染色体が認めら れた。

  

こう したパ ルス フィー ルド泳 動法とサザンハイブリダイゼー ションにより、エノキクケの一核菌糸と二核菌糸の染色体数は、

そ れぞ れ は

6

本と

12

本であ ること を明 らかに した。 また、 子実 体形成 過程に 特異 的に発 現する

10

個の遣伝子はエノキタケ染色 体 上 に 散 在 し て 位 置 し て い る こ と が わ か っ た 。

以上 の結果 より 、今回単離した

FVFD16

FVFD30

遣伝子は、

(4)

子実体形成過程の初期になんらかの働きをしている遣伝子と推 定される。しかし、まだこれらの遣伝子が子実体形成時にどの ような 働きを するのか につい ては明 確にわ かって いない。

FVFD16

とFVFD30遺伝子には、ゲノミックサザン分析の結果、2 つ以上のコピ一数、あるいはジーンファミリーの存在が予測さ れた。今後、

FVFD16

FVFD30

遺伝子の機能の解明と、

FVFD16

とFVFD30遺伝子にそれぞれの2っ以上存在すると思われるジー ンファミリーメンバーを明らかにすることは、エノキクケ子実 体形成のメカニズム解析に重要な意義を持っものと考えられる。

しかし、.担子菌ではまだぺク夕一系、プ口モ一夕ーが開発され ていないため、他の方法としてin sぬハイブリダイゼーション による遺伝子の組織的局在の解析、あるいは担子菌ではまだ報 告例がない遣伝子破壊による変異体を用いた解析やアンチセン スRNA法による遺伝子発現の特異的抑制による機能の解析など が考えられる。また、もっと多くのプローブを用いてあるいは、

染色体そのものを制限酵素処理することなどによルエノキクケ の染色体地図を作製することは、エノキタケ子実体形成のメカ ニズム解析とともに、4っの異なる交配型因子を持つエノキタ ケの遣伝関係を明らかにするための墓礎知見として重要である と思われる。

(5)

学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主 査    教 授    寺 澤    実 副 査    教 授    三 上 哲 夫 副 査    助 教 授    三 浦    清

学 位 論 文 題 名

担子菌エノキタケの子実体形成に関わる遺伝子の単離と解析

    

    本 論 文 は 、 第5章 か ら な り 、図34、 表2、 引用 文献84を 含む 総頁 数125の和 文論 文で ある 。別 に 参考 論文4編 が添 えら れて い る。

  本 研究 は、 エ ノキ タケ の子 実体形成 に関わる遺伝子を単離し、その遺伝子の解析と 染色 体上 の位 置 を調 べる こと を目 的と して 行わ れた 。

  研 究内 容は 、 以下 の項 目に 大別 され る。

1. 子実 体形 成 過程 に関 わる 遣伝 子の 単離

  エ ノ キ タ ケ の 子実 体形 成に 関わ る遣 伝子 の単 離の ため 、cDNAライ プラ リー を作 製 し 、 発 茸 処 理 後7日 目 と14日 目 のmRNAを 単 離し てデ ィフ ァ レン シャ ルス クリ ーニ ン グ を 行 な っ た 。 その 結果 、7日 目の 菌体 で強 く発 現す る7つ のク ロー ンを 選抜 した 。 ノー ザン 分析 を行 なっ た結 果、 発茸 処理 後1日 目から4日目 まで強く発現して14日目ま で 徐 々 に 下 が る パ ー タ ン を 示 し た ク ロ ー ン をFVFD 16、 ま た1日目 から7日目 まで 徐 々 に 強 く 発 現 し て10日 目 ま で 下 が る パ ー タ ンを 示し たク ロー ンをFVFD 30と 名付 け た。

  走 査型 電子 顕微 鏡を用いた発 茸処理後の菌体の形態の観察結果、7日目菌体から初め て菌 叢形 態の 変化 が認 めら れた 。ま た、 二 次元電気泳動に よるタンパク質の変動の解 析 か ら 、 発 茸 処 理か ら5〜7日 目の 菌体 は、 他の 時期 より タ ンパ ク質 の総 スポ ジト 数 も、 特異 的に 存在 するスポット 数Iも多い等の結果が得られ た。発茸処理から子実体形 成初 期に おけ る特 異的 遺伝 子の 関与 が予 想 され た。

  今 回 単 離 し たFVFD 16とFVFD 30遣伝 子も 発茸 処理 後47日目 に特 異的 発現 が認 め ら れ た こ と か ら 、 子 実 体 形 成 に 関 わ 遺 伝 子 で あ る こ と が 予 想 さ れ た 。

2 FVFD 16FVFD 30遺伝 子の 構造 解析

  FVFD 16FVFD 30遺 伝子 の機 能推 定を 行 うた め塩 基配 列を 決定 した 。FVFD 16遺伝 子は 、128ア ミ ノ酸 残基 から なり 、13.5kDaのタ ンパ ク質をコー ドレていることが予測 され た。

823

(6)

また、FVFD 30遣伝子は、319アミノ酸残基からなり、34.5 kDaのタンパク質をコー ドしていることが予測された。FVFD 16とFVFD 30遺伝子のデータベースを用いたホ モロジー解析とモチーフ検索を行なったが、夕ンパク質の機能推定には至らなかっ た。PSORTデータベースの検索の結果、FVFD 16遺伝子は、N一夕ーミナルを持つ疎 水性が高いタンパク質として、分泌性夕ンパク質あるいは膜内に存在するクンパク質 をコードしているものと推定された。また、FVFD 30遺伝子は、細胞質内に存在する タ ンパ ク質 ある いは ペル オキ シソ ーム に存 在す るタン パク 質と 予想 された。

3. FVFD 16とFVFD 30遣伝子のゲノム遣伝子の構造解析とゲノミックサザン分析   FVFD 16とFVFD 30遺伝子のゲノム遺伝子の構造解析のためゲノムライブラリーを 作製した。FVFD 16遺伝子は、5 上流部位の99にTA1・Aボックス、108部位にCん灯 の存在が認められた。また、ORF領域内にGT/AGルールと一致する2っのイント口ン が 存在 した 。FVFD30遣伝 子は 、5 上流 部位の229にnu丶Aボックス、310領域に Q岨Tの 配列 が存 在し た。 また 、22領域 にCCACCの配列が存在した。0RF領域内に GT/AGルールと一致する4つのイントロンが存在した。

  FVFD16とFVFD30遣伝子のゲノム中におけるコピ一数を調べるため、ゲノミック サ ザン を行 なっ た。 その 結果 、FVFD16とFVFD30遺 伝子 には それ ぞれ2つ以上の ジーンファミリーメンバーの存在が推測された。

4.電気泳動法による染色体DNAの分離と各遺伝子の染色体上における位置の解析   エノキタケの一核菌糸と二核菌糸の染色体数、およびディファレンシャルスクリー ニングにより単離した10個の遺伝子の染色体上の位置を調べるため、パルスフィー ルド泳動とサザンハイプリダイゼーションを行なった。一核菌糸と二核菌糸には、泳 動ゲルのエチジウムプ口マイド染色により6本と9本の染色体が認められたが、サザ ンハイブリダイゼーションを行なった結果、それぞれ6本と12本であることを明らか にした。また、10個のプロープに対レて二核菌糸の各染色体の相同染色体が確認さ れ、10個の遺伝子は、エタキタケ染色体上に散在して位置していることがわかった。

  以上、本研究は、エノキタケの子実体形成過程に関わる2個の遺伝子の単離と解析 を行なった。また、一核菌糸と二核菌糸の染色体数を明らかにし、10個の遺伝子の染 色体上での位置を明らかにした。こうした特異的遣伝子の単離と解析とともに染色体 上での位置解析は、将来エノキタケの子実体形成のメカニズム解析のための基礎知見 として重要である。

よって、審査員一同は、最終試験の結果とあわせ、本論文の提出者金芝伊は、博土

( 農 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 十 分 な 資 格 が あ る も の と 認 定 し た 。

‑ 824―

参照

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