博士(農学)金 基星 学位論文題名
日韓における土地利用形態の生態的比較研究
学位論文内容の要旨
本 論文 は , 本 論4章14節およ び総括 から 構成さ れ,図59,表21,引用 文献42を含む122頁 から な る。
近 年,日 本での 土地 利用は 都市化 傾向を 極度に 示し ,農地 の転用 ,栽培 作目の変化など農用地 を 著しく 圧迫し ている 。韓国 では ,急速 な経済 成長に 伴い ,農業 以外の 土地の需要が激増し,そ れ に従い 土地利 用形態 の変化 が余 儀なく されつ っある 。一 方,農 業もそ の高生産性を強く指向す る ため, 農地の 利用形 態が著 しく 変化し つっあ る。ま た, 土地利 用型農 業も自然環境を考慮した 作 物の生 育条件 及び営 農条件 の整 備が必 要条件 とされ てい る。
い ま,日 本と韓 国に おける 農業の基本型である土地利用型農業も単なる土地の利用のみでなく,
国 土や環 境の安 定・保 全への 寄与 が評価 される べきで ある 。本研 究では 農業目的の土地利用形態 を 生態的 観点か ら,日 本の北 海道 と,農 地の発 展過程 の差 がある 韓国と の比較研究を通じて,土 地 利用の 生態的 問題点 とその 展開 の方向 を見い 出した もの である 。
第1章 では ,日本 (北海 道)と 韓国の 国土 利用の 現状と 問題点 を提 示し, 本研究 の目的 を示し た 。また ,生態 的土地 利用の 歴史 や適用 過程を まとめ ,本 研究の 位置づ けや展開方向を示した。
第2章 では ,韓国 の農地 状況, 農地利 用変 化の要 因及び 農地利 用状 況にっ いて検 討し, 次のよ う な結果 を得た 。
1)土 地利 用 は , 大 部分 が 農 地(22% ) と 林 地(66% ) とな っ て い る が, 農業以 外の土 地利用 が 増 加し, 農地と 林地は 減少し てい る。農 地では 水田は 増加 傾向を 示して いるが,畑地は大きく減 少 してい る。
2)農 地利 用 は 主 に 地形 ・ 気候的 要素を 考慮 した土 地利用 形態を 示し ている 。東部 は水稲 作・畑 作 の混合 型の土 地利用 がなさ れて いる。 西部で は水田 農業 に恵ま れた条 件を備え,水稲生産の占 め る割合 が増加 する土 地利用 形態 を示し ている 。また ,冬 期間の 施設作 物の栽培は,生活水準の 向 上や高 い所得 が得ら れるこ とな どから ,生鮮 野菜や 花卉 類など の土地 利用が大きく増加してい る 。
3)今後,韓国の農地利用状況では,生産活動を持続するための土地利用形態の再編が必要であ る。また,土地利用型農業も単なる土地面積依存形態から脱却するため,圃場整備的対処が必要 で あ る 。 一 方 , 農 村 景 観 を 配 慮 し た 国 土 や 環 境 の 保 全 へ の 寄 与 も 期 待 さ れ る 。 第3章では,日本(北海道)の農地状況や,農地利用の状況にっいて検討を行い,次のような 結果を得た。
1)土地利用は,大部分が農地(15%)と林地(約71%)となっている。水田の土地利用は,水 稲生産調整により滅少している反面,牧草地は大規模の草地開発に伴い,耕地に占める割合が高 くなっている。
2)農地利用は地形・気候条件を十分に考慮し,稲作,畑作,酪農などの多様な土地利用形態を 示している。特に,道央は水田割合が高く,道東・北は高い農地率を示すなど,経営の専業化・
大型化傾向を示している。
3)北海道では,農業生産を通じて,農村固有の豊かな景観を提供するナょど国土や環境の安定・
維持に大きく寄与している。今後も,それら役割をはたすためには,農地で生産活動を持続しな が ら , 周 辺 環 境 と 調 和 を 維 持 す る 多 様 な 土地 利用 を いか に進 める かが 重 要で ある 。 第4章では,農地利用の変遷過程を把握するために,作付面積と栽培作目の変化に対する比較 分析を行い,次のような結果を得た。
(1)北海道の土地利用形態の変化
1)道央水田地帯を中心に稲作制限,水田の畑転換が進められている。また,畑作への大型機 械化の動きtま,農家経営面積の大規模化を可能にし,道東・北畑作地帯では経営の専業化(畑作
・ 酪 農 ) , 作 目 の 単 純 化 な ど 畑 作 経 営 に 大 き な 変 化 を も た ら し て い る 。 2)道東・北酪農地帯は,生産性向上のために大面積の草地開発がなされた地域として,大規 模の草地のみによる単一の土地利用形態を示している。また,寒冷な気候条件下にあるため,酪 農の拡大とともに効率化のために栽培作目の種類も減少している。
(2)韓国の土地利用形態の変化
1)全国的に農地利用は減少する反面,水稲の生産性向上を中心とした土地利用形態を示すこ とから,水田率は大きく増加しつっある。特に,西部では水稲作の単一化傾向を示しながら,高 生産性・効率化を指向している。
2)麦類,豆類などの土地利用型畑作物の土地利用は,畑作物の需要変動や低い所得性などに 伴い,西部を中心に大きく低落している。しかし,都市部とその周辺部では花卉類・新鮮野菜な どの所得性の高い作物の増加傾向を示している。
こ れらの 検討に 基づき ,今後 の日 本(北 海道) と韓国 にお ける土 地利用 形態を展望するとき,
次の ような 結果 を得た 。
1)北 海 道 の 農家 経 営 規 模の 拡大は 続く と予想 され, 著しい 効率 化指向 のため の大規 模化・ 単 一化 傾向は さら に進行 すると 考える 。韓 国でも ,作付 作目数 の減少 及び 単一化傾向が見られる。
また ,高生 産性 ・効率 化への 指向に 伴い ,大規 模化・ 単一化 傾向を 示し てくることから,特に,
山地 が多く 圃場 規模が 小さい 韓国で は, 自然立 地の特 性・景 観面を 配慮 した圃場の適正規模化及 び多 様な土 地利 用への 進行が 望まし いの である 。
2)日 本 ( 北 海道 ) と 韓 国に おいて ,農 地の外 延的拡 大,営 農の 効率的 土地利 用がな された 地 域で は農地 の面 積率の 拡大と 単一化 から ,いわ ゆる環 境的状 況の変 化が 予測され,それらの検討 が必 要とさ れっ っある 。また ,それ は農 地が国 土の保 全に寄 与する とと もに農地の生産性の安定 と持 続の条 件を 明確に するた めにも 欠く べから ざるも のであ る。
3) 近年 ,各種 開発 ,土地 利用形 態の大 型化 などが 景観の 変化を もたら して いる。 景観は 国土 の保 全など と密 接に関 係する もので あり ,早期 の対応 や周辺 環境と 調和 を保つ農村整備の進行と とも に,自 然立 地・気 候条件 を考慮 した 土地利 用を進 めるな どの対 応が 必要であろう。特に,地 域計 画にお いて は,景 観への 対応を 考慮 して, 景観へ の関心 ととも に, 景観の構造分析・評価手 法の 確立ナ ょど が必要 である 。
4)現 在 , 景 観を 生 態 的 にと らえよ うと する景 観生態 学の概 念は ,日本 や韓国 の持続 的な土 地 利用 と開発 ,土 地利用 の激化 の抑制 など の環境 的目標 が必要 とされ る地 域では,導入される価値 があ ると考 える 。景観 生態学 的考え 方をするならば,少なくとも地表面の 10 ‑‑15%は,他の土地 利用 あるい は生 態系の ため保 持され ,環 境的影 響の発 生に対 する配 慮が 要求されている。また,
主要 な土地 利用 は,均 質で大 規模の 土地 面積は 勿論, 圃場も あまり 過大 となることは避ける必要 があ るとさ れて いる。
以 上のよ うに, 本論文 は日本 (北 海道) と韓国 におい て国 土や環 境の安 定・保全を考慮した生 態的 土地利 用を 進める ための ,問題 点や その展 開方向 を究明 した研 究で あり,特に韓国における 農 村 の 景 観 保 全 , 環 境 評 価 な ど を 考 慮 し た 農 地 利 用 の 展 開 に 資 す る も の で あ る 。
学位論文審査の要旨
本 論 文は , 本 論4章14節 およ び総括 から構 成され ,図59,表21, 引用 文献42を 含む122頁 から な る。
近 年,日 本で の土地 利用は 都市化傾向を極度に示し,農用地を著しく圧迫している。韓国では,
農 業以外 の土地 の需要 が激 増し,それに従い土地利用形態の変化が余儀なくされつっある。一方,
農 業 も そ の 高 生 産 性 を 強 く 指 向 す る た め , 農 地 の 利 用 形 態 が 著 し く 変 化 し つ っ あ る 。 日 本と韓 国に おける 農業の 基本型 である 土地 利用型 農業も 単なる 土地 の利用にとどまるもので な く,国 土や環 境の安 定・ 保全へ の寄与 が評価 され るべき である 。本研 究では農地利用形態を生 態 的観点 から, 日本の 北海 道と韓 国との 比較研 究を 通じて ,土地 利用の 生態的問題点とその展開 方 向を見 い出し ている 。
第1章 でtま,日 本(北 海道) と韓 国の国 土利用 の現状 と問題 点を 提示し,本研究の目的を示し た 。また ,生態 的土地 利用 の歴史 や適用 過程を まと め,本 研究の 位置づ けや展開方向を示してい る 。
第2章 では, 韓国の 農地 状況, 農地利 用変化 の要因 及び 農地利 用状況 にっい て検 討し, 次のよ う な結果 を得た 。
1)土 地利用 は大部 分が 農地と 林地と なって いるが ,農 業以外 の土地 利用は 増加 してい る。農 地 では水 田は増 加する 反面 ,畑地 は大き く滅少 して いる。
2)農 地利用 は地形 ・気 候的要 素に伴 い,東 部は水 稲作 ・畑作 の混合 型の土 地利 用形態 を示し て いる。 西部で は水稲 生産 の占め る割合 が増加 して いる。
3)今 後,生 産活動 を持 続する ための 土地利 用形態 の再 編が必 要であ る。ま た, 単なる 土地面 積 依存形 態から 脱却す るた め,圃 場整備 的対処 が必 要であ る。一 方,農 村景観を配慮した国土や 環 境の保 全への 寄与も 期待 される 。
第3章 では, 日本( 北海 道)の 農地状 況や, 農地利 用の 状況に っいて 検討を 行い ,次の ような 結 果を得 た。
1)土 地 利 用 は ,大 部 分が 農地と 林地と なっ ている 。水田 の土地 利用は 減少 してい るが, 牧草
治 隆
夫
安
郁
田
田
口
梅
前
堀
授 授
授
教 教
教
査 査
査
主 副
副
地の耕 地に 占める 割合が 高くな ってい る。
2)農 地 利用 は 地 形 ・ 気候条 件を十 分に 考慮し ,稲作 ,畑作 ,酪農 など の多様 な土地 利用形 態 を示し てい る。特 に,道 央は水 田割合 が高 く,道 東・北 は高い 農地 率を示 すなど,経営の専業化
・大型 化傾 向を示 してい る。
3)農業 生産を 通じ て,国 土や環 境の安 定・維 持に 寄与し ている 。今後 は, 周辺環 境と調 和を 維持す る多 様な土 地利用 を進め ること が重 要であ る。
第4章で は,農 地利 用の変 遷過程 を把握 するた めに ,作付 面積と 栽培作 目の 変化に 対する 比較 分析を 行い ,次の ような 結果を 得た。
1)北 海 道で は , 道 央 水田地 帯を中 心に 水田の 畑転換 が進ん でいる 。道 東・北 畑作地 帯では 経 営面積 の大 規模に 伴い経 営の専 業化, 作目 の単純 化など の変化 を示 してい る。道東・北酪農地帯 では, 大面 積の草 地開発 がなさ れ,ま た効 率化の ために 栽培作 目数 も減少 し草地のみによる単一 化傾向 を示 すなど 土地利 用形態 は著し い変 化を示 してい る。
2)韓 国 では , 農 地 利 用は減 少して いる が,水 稲の生 産性向 上のた めの 土地利 用形態 を示し , 水田率 が大 きく増 加して いる。 特に,西部では水稲作の単一化傾向を示しナょがら,高生産性・効 率化を 指向 してい る。麦 類など の土地 利用 型畑作 物は, 西部を 中心 に大き く低落している。都市 部 と そ の 周 辺 部 で は 花 卉 類 な ど の 所 得 性 の 高 い 作 物 の 増 加 を 示 し て い る 。 こ れ ら の 検 討 か ら , 今 後 の 土 地 利 用 形 態 を 展 望 し 次 の よ う な 結 果 を 得 た 。 1)北 海 道で は 経 営 規 模の拡 大や効 率化 のため の大規 模化・ 単一化 傾向 はさら に進行 する。 韓 国でも ,作 付作目 数の減 少によ る単一 化傾 向と経 営面積 の大規 模化 が見ら れる。特に韓国では,
自然立 地の 特性・ 景観面 を配慮 した圃 場の 適正規 模化, 多様な 土地 利用及 び自然景観を活用した 土地利 用計 画施策 の樹立 が望ま れる。
2)農 地 の外 延 的 拡 大 ,効率 的土地 利用 がなさ れた地 域では 面積率 の拡 大と単 一化か ら,環 境 的状況 の変 化が予 損IJされ ,ま た国土の保全に寄与し生産性の安定・持続のためにも,それらの検 討が必 要と されて いる。
3)各 種 開発 , 土 地 利 用形態 の大型 化な どが景 観の変 化をも たらし てい る。景 観は国 土の保 全 などと 密接 に関係 し表現 するも のであ り, 早期の 対応や 周辺環 境と 調和を 保つ農村整備及び自然 立地を 考慮 した土 地利用 が必要 である 。
4)景 観 生態 的 概 念 は ,持続 的な土 地利 用と開 発,土 地利用 の激化 の抑 制など が必要 である 地 域では ,導 入され る価値 がある 。地表 面の10〜15% 以上は ,他の 土地利 用あるいは生態系のため 保 持し , 均 質 で 大規 模 の土 地面 積は勿 論,圃 場もあ まり 過大と なるこ とは避 ける必 要が ある。
以上のように,本論文は日本(北海道)と韓国において国土や環境の安定・保全を考慮した生 態的土地利用を進めるための,問題点やその展開方向を究明した研究であり,特に韓国における 農 村 の 景 観 保 全 , 環 境 評 価 な ど を 考 慮 し た 農 地 利 用 の 展 開 に 資 す る も の で あ る 。 よって審査員一同は,最終試験の結果と合わせて本論文の提出者金基星5ま,博士(農学)の 学位を受けるのに十分な資格があるものと認定した。