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博士(農学)高木昌興 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(農学)高木昌興 学位論文題名

SEASONAL TREND AND AGE RELATED VARIATION IN THE BREEDING       PERFORMANCE OF BULLHEADED SHRIKES

(モズの繁殖成績の季節変動と年齢階級間変異)

学 位 論 文 内 容 の要 旨

  動物は自己の生涯繁殖成功を最大化するように繁殖時期や産仔数、および仔の世話 の程度を決めている。これらの生活史形質どうしはトレードオフの関係にあるので、

個体は一回の繁殖機会においてもどれだけの子どもをつくるべきかとぃう問題に直面 する。生活史形質の変異は生息環境の変動によって影響されるが、温帯域では環境要 因の季 節性が大き く、それと繁殖成績との関係が古くから興味を持たれてきた。

  本研究の目的は、季節的に変化する環境要因とモズ(Lanius bucephalus)の繁殖成 績の関係、および個体変異を引き起こす重要な要因である年齢と繁殖成績の関係を明 らかにすることである。調査は1992年から1996年の4月から7月まで、北海道石狩郡 の 農 耕 ・ 牧 草 地 で 行 な っ た 。 得 ら れ た 結 果 の 概 要 は 以下 の とお り であ る 。 1。鳥類の繁殖失敗の最も大きな原因は卵や雛の捕食であるため、多くの鳥類は捕食 による繁殖失敗を回避できるような営巣場所を選択する。温帯域における営巣環境は 季節の進行と共に樹木や草本の開葉、伸長に伴って大きく変化するので、営巣場所選 択の研究においては、営巣環境の季節変化と鳥が選択する営巣場所の季節変化をとも に明確にする必要がある。まず、モズが営巣した植物の種類およぴ巣の地上高の季節 変化と営巣植物の開葉の季節変化の対応関係を明らかにし、それらの季節変化の意義 を検討した。

  多くのっがいが繁殖期前期に営巣場所として選択した植物tまササであったが、開葉 が進むにつれ落葉広葉樹低木に移行した。巣の高さは季節の進行ととも.に高くなり、

この季節変化は高い場所での開葉の進行に対応していた。ササおよびツル植物上営巣 における巣立ち成功は季節的に変化しなかった。しかし、落葉広葉樹低木とその他で は後期が前期と中期に比較して巣立ち成功が高かった。捕食を受けなかった巣と捕食 を受けた巣の地上高を比較した結果、繁殖期前期では差がなかったが、中期では捕食 を受けた巣の方が高くなり、後期では捕食を受けなかった巣の地上高の方が高かっ た。地上性の哺乳類による捕食率は前期で高く、中・後期で低くなった。これは巣の 地上高が前期で低く、中・後期で高くなったためである。また、捕食の痕跡から、本 調査域では地上性捕食者の捕食圧が高いことが明らかになった。したがって、モズが 地上性捕食者による捕食を避けるためには、営巣場所を高くする必要がある一方で、

植物 の 開葉 の 季節 性 に巣 場 所の 利 用可 能 性が 制 約 されて いると考え られた。

(2)

  以上のことから、モズは植物の季節変化にしたがって、捕食を回避できるように営 巣場所を変化させていることが示唆された。

2。鳥類の繁殖成績の季節変動には、季節の進行とともに繁殖成績が低下するもの、

臺。、ニ震上再′こy茨いで低下する2つの類型がある。季節的な変化は至近的な雲因呈 究極的な要因の両面から説明できるが、その分離は困難である。ここでは、モスの繁 殖成績に関連する様々な変数のうち最も重要な要因である地上性餌昆虫の現存量の季 節変化と繁殖成績の対応関係を明らかにした。また、給餌実験を行ない、繁殖成績の 季節変動を引き起こす至近要因を合わせて検討した。

  一腹卵数と巣立ち雛数の季節変動の様相は、餌昆虫の生物量の季節変動が小さい年 には一致した。しかし、餌昆虫の生物量の季節変動カミ大きい年には、一腹卵数と巣立 ち雛数はともに餌量の季節変動と対応して変動するため、両者の様相は一致せず、そ の年には多くの卵を産んだつがいが多くの雛を餓死させた。一方、産卵前期から産卵 期までに人為的な給餌を受けたっがいは、対照っがいよりも多くの卵を産み、しかも 最も生産性の高い一腹卵数と最頻一腹卵数は一致していた。また、雛の質は季節の進 行とともに低下したが、一腹雛数(卵数)が少なかった巣の雛は大きかった巣の雛よ りも高い質を持っていた。したがって、たとえ雛数削減が起こったとしてもモズは雛 の質を高く保っていると考えられた。

  これらのことから、モズの一腹卵数は、育雛期における餌の利用可能性ではなく、

産卵前の時期から産卵期までの餌量によって直接的に決定(至近要因)されるもの で、モズの一腹卵数決定のメカニズムは、育雛期間の餌環境が相対的に安定している 場合を予 想した楽観 主義的な繁 殖戦略であ る可能性を 示唆した( 究極要因)。

3。鳥類の繁殖成績は一般的に年齢と共に向上する。この現象の説明では雌の年齢の 効果が重要視され、雄の効果を十分に検討した研究は少ない。年齢間の差異を引き起 こす原因として考えられるものが、採食効率の差異である。雌の採食効率の差異は直 接的に繁殖成績に影響するが、モズのように一夫一妻性で産卵前から育雛期まで、雌 や雛に対する給餌の役割を雄が担う種においては雄の採餌効率やなわばりの質などが 直接的、間接的に繁殖成績に影響をおよぼすことが予想される。そこで、ここでは年 齢階級間の繁殖成績の差異を明らかにし、その差異を引き起こす要因を両親の採食行 動と育雛行動から説明を試みた。

  成鳥の雄とつがいになった雌の一腹卵数、卵の大きさ、雛の体重は若い雄とっがい になったものよりも大きかったが、雌の年齢の効果は認められなかった。雄の年齢に 関連した一腹卵数と卵の大きさの差異は、雄の採食効率、求愛給餌頻度からは説明さ れなかった。育雛期6日目では、雄の成鳥と若鳥の給餌頻度の間に差は認められな かったが、成鳥は若鳥よりも大きな餌を給餌した。育雛期12日目では成鳥は若鳥より も2倍多く給餌していた。雌ではどちらの日齢においても成鳥と若鳥の間で給餌頻度 の差は認められなかった。12日齢の雛の体重は、両親の給餌頻度が高いほど重くなっ ていた。

  これらの結果より、雄の年齢の効果が一腹卵数、卵の大きさ、雛の質に影響をおよ ぽすことが示唆された。一方、雌の育雛行動はっがい問の繁殖成績の差に影響を与え ていないことが明らかになった。

(3)

学 位 論 文 審 査 の 要旨

学 位 論 文 題 名

SEASONAL TREND AND AGE‑RELATED VARIATION IN THE BREEDING       PERFORMANCE OF BULLHEADED SHRIKES

(モ ズの繁殖 成績の季 節変動と年齢階級間変異)

  本 論 文 は 総 頁 数 89頁 、 図 13、 表 13を 含 み 英 文 で 書 か れ て い る 。   温 帯域では 環境要因 の季節的 変動性が 大きく、 それと鳥類の繁殖成績との関係が古 く から調査 されてき た。本研 究の目的 は、季節 的に変化す る環境要 因とモズ(Lanius bucephalus)の 繁殖成績 の関係、 および個 体変異を 起こす重 要な要因で ある年齢と繁 殖 成 績 の関 係 を 明ら か にするこ とである 。調査は1992年から1996年 の4月から7月 ま で 、北海道 石狩郡の 農耕・牧 草地で行 なった。 得られた結果の概要は以下のとおりで あ る。

1。モ ズの営巣 場所は植 物の開葉 の進行と ともに高 くなった。 ササおよ びツル植物上 営巣 における 巣立ち成 功率は季 節的に変 化しなか ったが、落葉広葉樹低木等では後期 営巣 ほど巣立 ち成功率 が高かっ た。地上 性の哺乳 類による捕食率は前期で高く、中・

後期 で低くな った。そ の結果モ ズは地上 性捕食者 による捕食を避けるため、営巣場所 を高 くする必 要がある が、植物 の開葉の 季節性に よって営巣場所の利用可能性が制約 され ていると 考えられ た。以上 のことか ら、モズ は植物の季節変化にしたがって、捕 食 を 回 避 で き る よ う な 営 巣 場 所 を 選 ん で い る こ と が 示 唆 さ れ た 。

2。モ ズの繁殖 成績に関 連する様 々な変数のうち最も重要な要因である地上性餌昆虫 の 現 存量 の 季 節変 化 と繁 殖成 績の対応 関係を明 らかにし た。また、 給餌実験 を行な い 、 繁 殖 成 績 の 季 節 変 動 を 引 き 起 こ す 至 近 要 因 を 合 わ せ て 検 討 し た 。   一腹 卵数と巣 立ち雛数 の季節変 動の様相 は、餌と なる昆虫量の季節変動が小さい年 には 一致した 。しかし 、餌昆虫 量の季節 変動が大 きい年には、一腹卵数と巣立ち雛数 の変 動は一致 せず、そ の年には 多くの卵 を産んだ っがいが多くの雛を餓死させた。一 方、 産卵前期 から産卵 期までに 人為的な 給餌を受 けたつがいは、対照つがいよりも多 くの 卵を産み 、しかも 最も生産 性の高い 一腹卵数 と最頻一腹卵数は一致していた。ま た、 雛の質は 季節の進 行ととも に低下し たが、一 腹雛数(卵数)が少ない巣の雛は多 い巣 の雛より も高い質 を持って いた。

永 明

     

部 訪

阿 諏

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

  モズの一腹卵数は、育雛期における餌の利用可能性ではなく、産卵前から産卵期ま での餌量によって直接的に決定(至近要因)されることがわかったことから、一腹卵 数決定のメカニズムは、育雛期間の餌環境が相対的に安定している場合を予想した楽 観 主 義 的 な 繁 殖 法 を と っ て い る 可 能 性 を 示 唆 し た , ( 究 極 要 因 ) 。 3。鳥 類の 繁殖 成績 の評 価に おい ては 雌の年齢の効果が重要視され、雄の効果を十分 に検 討し た研究は少ない。モズのように一夫一妻性で、産卵前から育雛期まで、雌や 雛に 対す る給餌の役割を大きく雄が担う種においては、雄の採餌効率や雄によって選 定さ れる なわ ばり の質な どが 直接 的、 間接 的に 繁殖 成績 に影 響す ると考えられる。

  成鳥の雄とつがった雌の一腹卵数、卵の大きさ、、雛の体重は若い雄とつがったもの より も大 きか った が、雌 の年 齢の 効果 は認められなかった。育雛期6日目では、雄の 成鳥 と若 鳥の給餌頻度の間に差は認められなかったが、成鳥は若鳥よりも大きな餌を 給餌 した 。育 雛期12日目 では 成鳥 は若 鳥よりも2倍多く給餌した。雌ではどちらの日 齢 に お い て も 成 鳥 と 若 鳥 の 間 で 給 餌 頻 度 に 差 は 認 め ら れ な か っ た 。   こ れら の結果より、雄の年齢の効果が一腹卵数、卵の大きさ、雛の質に影響をおよ ぼすことが示唆され、一方、・雌の育雛行動はつがい間の繁殖成績の差に影響を与えて いないことが明らかになった。

  以 上の ように本研究は農耕地帯における有カな食虫性鳥類であるモズの繁殖生態を 詳細 に調 べあげ、鳥類の繁殖におよぼす環境条件の効果とそれに対応するモズの反応 を 明 ら か にす る こ と で 生 態 学 、 特 に 保 全 生 態 学に 顕著 な貢 献をし たも ので ある 。   よ って 審査員一同は、最終試験の結果と合わせて、本論文の提出者高木昌興は博士

( 農 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 十 分 な 資 格 が あ る も の と 認 定 し た 。

参照

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