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博士(工学)高崎 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)高崎 学位論文題名

カ オス的混 合の定量化と時空間相関確率モデルの      開発に 関する 研究

学位論文内容の要旨

  異なる物質同士を混ぜ合わせる混合過程は,燃 焼器内の空気と燃料の混合,製鉄プロセス や化学プラントにおける攪拌糟内の溶媒と溶質の 均一化,河川や大気中に浮遊する汚染物質 の環境中への希釈など,工学のあらゆる分野で見 られる,これらは物質の流動現象を利用す る場合がほとんどであるので,物質混合は流体工 学が扱う多くの問題の中でも最も重要なも ののーっとみなされている.これまでの流体工学 における混合に関する研究は乱流場を対象 として行われてきた.しかし近年,Reynolds数が低く流速が極めて遅い流れ場においても,速 度場が時間的に変化する場合に,流れ場内を移動 する流体粒子の動きがカオス的な振舞いを することがある,という事実が報告されている.ここで カオス的 とは,初期条件としてご く近傍に位置した流体粒子同士の距離が,粒子が 流れ場内を移動する過程で指数関数的に増 大することを意味する.っまり,Euler的な観点から流れ場は層流状態であっても,Lagrange 的に追跡した流体粒子の軌跡に予測できない乱れ があることを指している.この現象は「カ オス的混合」と呼ぱれ,流体工学において近年注 目を集めているカオス理論を,混合という 工学的に重要な分野に応用した例でもある.

  本研究の目的は,カオス的混合と乱流拡散の数 値解析に際して,一つの共通した混合速度 を定量化する方法を提案し,それにより混合を促 進する諸原因の解明と混合過程のモデル化 を行うことにある.定量化する対象は物質線を模 擬したマ一力粒子からなる粒子列の伸張率 である.しかし,乱流拡散の数値シミュレーショ ンに用いている確率過程に従う粒子モデル は多点間の空間相関を考慮していないので,物質 線の伸張を表現することができない.そこ で本研究ではこの問題点を克服するために,「時 空間相関確率モデル」という新たな確率モ デルの開発を行い,本モデルを用いたシミュレー ションにより,乱流中における物質線の伸 張,変形に乱れ速度の空間相関と他方向速度成分 同士の相関を表すReynolds応カが及ぼす影 響を定量的に検討した.

  本論文は第1章から 第7章までの全7章で構成されている,各章の内容につい ては以下の通 りである.

  第1章は序論であり ,カオス的混合と乱流拡散に関する従来の研究を紹介するとともに,本 論文の目的について述べている.

  第2章,第3章では二次元キャビティ内における カオス的混合に関する研究を行っている,

  第2章では本計算で 用いる計算条件ならびに数値解析法について示すととも に,混合速度 を定量的に評価するために本研究で新たに定義し た,擬似リアプノフ指数の求め方について

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述べる.さらにこの擬似リアプノフ指数によって, 移動壁速度が周期的に加減速する二次元 正方 形キ ャビ ティ フローにおいて 混合速度が最大となる変動周期が存在することを上記の 擬似リアプノフ指数によって示した.

  第3章では,第2章で得られた二次元キャビティ内 の混合過程の周期依存性について検討を 行った.その結果,Reynolds数と移動壁速度の変動 振幅を変化させた場合でも最大の混合速 度を与える移動壁速度の変動周期は変化しないこと ,マーカ粒子列の伸張率の増加に大きな 影響を与える突起状のゆがみの形成は,移動壁速度 が増速時にキャビティ右隅における速度 ベクトルの方向の周期的な揺らぎによることが明ら かになった.さらにこれらの結果をふま えて,粒子列の移動する軌道とカ学系のホモクリニ ック軌道との間に共通点があることに注 目してキャビティ内の混合過程のモデル化を行い, キャビティ内の混合過程が移動壁速度の 変動 周期 と粒 子列 に形成される突 起がキャビティ内を循環する時間というニつの時間スケ ールに依存することを示した.

  第4章 か ら 第6章 で は 確 率 モ デ ル を 用 い た 乱 流 拡 散 に 関 す る 研 究 を 行 っ て い る .   第4章では確率過程に 従うLagrange的な粒子モデルの概念を用いて,固定した 計算格子上 で乱れ速度を発生させ,かっ乱れエネルギkとその散逸率£から求められる時間 スケールと 空間スケールをもとに,時間と空間の双方に対して 相関を持った乱れ速度を発生させる確率 モデル「時空間相関確率モデル」の開発を行った. そして本モデルを用いて二次元一様乱流 中の物質線の変形,伸張のシミュレーションを行い ,乱れのスケールが物質線の変形に与え る影響について調べた.その結果,粒子列の伸張率 の増加は乱れ度の大きさだけには依存せ ず, 乱れ の空 間的 なスケール(空 間相関の大きさ)の影響も受けることを明らかにした.

  第5章では時空間相関 確率モデルを用いて二次元正方形キャピティフローにお ける乱流拡 散シミュレーションを行った,そのため,第4章で一様な乱流場を仮定して開発した本モデル を,非一様な乱れを持つ流れ場にも適用でき,かっReynolds応カを考慮できるような形ヘ拡 張した.その結果,k−E乱流モデルによって求めた 二次元キャビティフ口ー内の乱れ度分布 を拡張した本確率モデルに与えた場合,モデルが発 生する乱れ速度の分布がk−Eモデルから 得られた分布と良い一致を示し,本モデルが設定し た非一様な乱れ度分布を再現可能である ことを示した.二次元キャビティ内の乱流拡散シミ ュレーションにおいては,本モデルと空 間相関を考慮しないモデルとの比較を行い,同時にReynolds応カによる粒子列の伸張率の変 化についての検討を行った.その結果,空間相関を考慮しナょい場合には計算初期において拡 散が過剰となることと,Reynolds応カが現れる場合 の方が伸張率が高くなるという結果を得 た.

  第6章 ではopen flowである二次 元せん断層における乱流拡散シミュレーションをマーカ 粒子列とマーカ粒子群の追跡によって行った,その 結果,低速側での拡散速度が高速側より も大きいという結果が得られた. Reynolds応カの符号と拡散速度との関係については,平均 速度 勾配 との 関係 から乱れエネル ギの生成項を負にするような場合の方が拡散速度は高い ことが示された. Reynolds応カの符号と平均速度勾配との関係によってマーカ粒子間の距離 の増加に違いが現れることを,簡単なモデルを用い て示した,

  第7章 は 結 論 で あ り , 本 研 究 で 得 ら れ た 主 要 な 結 果 に つ い て ま と め て い る .

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学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

飯 田 福 迫 木 谷 小 河原

学 位 論 文 題 名

誠 一 尚 一郎     勝 加 久治

カオス的混合の定量化と時空間相関確率モデルの      開発に関 する研究

  混合 過程は 工学のあ らゆる 分野で見 られる 現象であ り,流体 工学が 扱う多くの問題の中 でも 最も重 要なもの のーつ である. 流体工学 におけ る混合に 関する 研究はこれまでは主に 乱流 場を対 象として 行われ てきた. しかし近 年,Reynolds数 が低く 流速が極めて遅い流れ 場に おいて ,流体粒 子の動きをカオス的にすることによって効率的な混合状態を作り出す,

いわ ゆる「 カオス的 混合」 が注目さ れている .

  本論 文は, カオス的 混合と 乱流拡散 に際し て,物質 線を模擬 したマ 一力粒子からなる粒 子列 の伸張 率によっ て混合 速度を定 量化する 方法を 提案し, それに より混合を促進する諸 原因 の解明 と混合過 程のモ デル化を 行ってい る.し かし,乱 流拡散 の数値シミュレーショ ンに 用いて いる確率 過程に 従う粒子 モデルは 多点間 の空間相 関を考 慮していないので,物 質線 の伸張 を表現す ること ができな い.この 難点を 克服する ために ,著者は「時空間相関 確率 モデル 」という 新たな乱流拡散確率モデルを開発し,混合現象の解明に適用している.

  本論 文では 以下のよ うな結 論を得て いる.

  (1) 移 動壁 速度が 周期的に 加減速 する二次 元正方 形キャビ ティフロ ーにお いて混合 速 度が 最大と なる変動 周期が 存在する ことを定 量的に 示した.

  (2)Reynolds数と 移動壁速 度の変 動振幅を 変化さ せた場合 でも最 大の混合 速度を与 え る移 動壁速 度の変動 周期は 変化しな い.

  (3) マ ーカ 粒子列 の移動す る軌道 とカ学姦 のホモ クリニッ ク軌道と の間に 共通点が あ るこ とに注 目してキ ャビテ ィ内の混 合過程の モデル 化を行い ,キャ ビティ内の混合過程が 移動 壁速度 の変動周 期,と 粒子列に 形成され る突起 がキャビ ティ内 を循環するに要する時 間, という ニつの時 間スケ ールに依 存するこ とを示 した.

  (4)乱 流混 合 に 対 して , 時 空間 相 関 確率モデ ルを開 発し,適 用する ことによ って,粒 子列 の伸張 率の増加 は乱れ度の大きさだけには依存せず,乱れの空間的なスケール(空間相 関の 大きさ )の影響 も受け ることを 明らかに した.

  (5)Reynolds応 カ が拡 散 速 度に 与 え る影響に ついて ,平均速 度勾配 との関係 から乱 れ エネ ルギの 生成項を 負にするような場合に拡散速度が高くなることを示した.これにより,

乱流 場にお ける物質 線伸張 のReynolds応カ に対する 依存性を 明らか にすることができた.

‑ 675

(4)

  以上のように,著者は混合状態を評価する上で重要な混合速度の定量化の手法と,この 手法を乱流場に適用する際に必要とされる確率モデルを新たに開発し,混合速度の向上と 混合現象の解明に指針を与えている.このことは,流体工学のみならず物質混合を扱う分 野に対して寄与するところ大である.よって,著者は,北海道大学博士(工学)の学位を 授与される資格あるものと認める.

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参照

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