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博士(水産学)朴 容石 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(水産学)朴   容石 学位論文題名

音響によ るスケト ウダラの行動制御に関する基礎的研究 学位論文内容の要旨

【目的】

   沿岸漁場を有効的に活用して安定した計画的な漁業生産をすること が強く要望されている。日本を始め、各国では、必要な魚類蛋白質を自 給自足するために、作り、育てて、捕る栽培漁業が推進されつっある。

栽培漁業の一形態である海洋牧場において、魚の行動を制御する手段 として、水中音による音響馴致などが注目されている。そのため、魚類 の発音の有無と行動との関係、発音機構、聴覚特性あるいは水中音に対 する行動などを十分把握する必要がある。

   近年、北海道周辺海域におけるタラ科魚類の水揚げが減少し、しかも 大変不安定な状態にある。しかしながら、夕ラ科魚類は亜寒帯海域にお ける主要な魚類蛋白質資源であり、その計画的な資源管理と安定生産が 強く望まれている。従ってタラ科魚類は将来、沿岸海域における栽培漁 業の対象種として非常に有望である。これまで、大西洋産のタラ科魚類 の鳴音と聴覚特性については、数多くの研究が報告されているが、太平 洋産のタラ類については全く不明であった。そこで、北海道周辺海域に 棲息する代表的なタラ科魚類であり、入手が容易なスケトウダラを研究 対象種として選定した。

   本研究では、海洋牧場において音響を用いた魚群行動制御に関する基 礎資料を得るため、スケトウダラの鳴音の機能と発音のメカニズム、発 音筋重量の性・成熟・季節的変化、聴覚閾値と鳴音の特性、聴覚におけ るマスキング効果等を明らかにし、感度の良好な周波数の純音と餌の 組 み 合 わ せ で 魚 を 学 習 さ せ 、 音 響 馴 致 の 可 能性 を 検 討 し た。

【方法】

1 .繁殖行動に伴う鳴音

   成熟卵を持つ、尾叉長が386 ‑ 509 mm の雌5 尾と、尾叉長が376 〜532

(2)

mm の雄 7 尾を実験水槽に入れて観察した。繁殖行動に伴う鳴音はビデ オカメラと水槽内に入れたハイドロフォンを用いて録画・録音した。

2 .発音機構

   スケトウダラを生かしたまま腹部を切開し、発音筋と鰾が観察できる ように食道と内臓を切り除いた。その後、供試魚の頭部・鰾の前部・鰾 の後部・尾部の4 部位に電気刺激を与えて、音の発生の有無を観察した。

3 .発音筋重量の季節的変化

   北海道太平洋側において1 月゜4 月.9 月に採集されたスケトウダラの 鰾に付着している一対の発音筋を摘出して、その湿重量を測定した。発 音筋の発達の度合いを定量的に見るため、柄重量に対する発音筋重量 の千分率を発音筋重量指数(DMI) と定義し、雌雄・成熟度・季節別に発 達の比較に用いた。

4 .聴覚閾値

   魚は60 〜1000 Hz の8 種類の純音の水中音とDC 12V の電気ショックの組 み合わせで条件付けを行った。水槽を挟んで対向させた空中スピーカー から音圧レベルを変化させながら放音し、供試魚の心拍間隔の変化か ら聴覚閥値を求めた。

5 .マスキング効果

   周波数60 〜500 Hz の純音と電気刺激の組み合わせで、魚に条件付けを 行った。背景雑音として与えたホワイトノイズの音圧レベルを一定にし ておいて、刺激音の音圧レベルを変化させ、魚の心拍間隔の変化から聴 覚閾値を求め、その聴覚閾値と雑音レベルの比から臨界比を算出した。

6 .音と餌による学習付け

   尾叉長が385 〜459 mm の雄8 尾、雌5 尾を実験水槽に収容して、水槽内 に設置した水中スピーカーで聴覚感度が良好な200 Hz の純音の放音と 遠隔給餌装置からの給餌の組み合わせによって学習付けを行い、ビデオ 映像から魚の行動を解析し、学習の経過ごとに、放音のみの場合につい て、餌場への出現頻度を放音前・放音中・放音後に分けて解析した。

【結果】

1 .行動と鳴音のパターン

   ーつの鳴音は複数のグラント音で構成され、その周波数成分は行動ご

     ―945 ー

(3)

と に 異 な っ てい た 。 す な わ ち、 雄の 優位 魚が他 の雄 に向 かっ て発す る単 発 の グ ラ ン ト音 ( 威 嚇 音 ) や 他 の 個 体 を接 触 攻 撃 す る 際 に 発す る2‑5 個 の連 続したグラント音(攻撃音)の周波数成分は1000 Hz 以下であり、群れ か ら 離 脱 す る 個 体 に 対 し て 発す る 求 愛 音 や 産 卵 前 の 雌 を追 尾 し な が ら 発 す る 産 卵 音は 数 秒 間 の 連 続 し た グ ラ ント 音 で 、 そ の 周 波 数成 分は

500 Hz

以 下で あっ た。

2

.発音のメカニズム

  

電 気 刺激 に よ っ て 人 為 的 に 発 音 させ る こと がで きるこ とか ら、 発音 筋 の 瞬 間 的 な 収 縮 弛 緩 作 用 が 鰾 壁 を 振動 さ せ 、 こ れ に 鰾 が 共 鳴 する こ と によって音を発していることがわかった。

3

.発音筋重量の変化

  

発 音 筋は 雄 が 雌 よ り 発 達 し て お り、 雄 の場 合は 未成魚 より 成魚 が、 ま た

1

年 の内 では 、繁殖 期が 最も 発達 した。 繁殖 期に 雄成魚 の発 音器 官が 発 達 す る こと は 、 雄 が 繁 殖 行 動 時 に 頻繁 に 鳴音 を発 するこ とと 一致 する 。

4

.聴覚閥値と可聴周波数範囲

  

供 試 魚は60 〜1000 Hz の 音に 反応 し、120 Hz と200 Hz の 純音 に最 も敏 感 で、その平均聴覚閾値は97.7 〜100 .3dB(re lLt,Pa) であった。また、400 Hz 以 上 で は感度 が徐 々に 低下し 、可 聴周 波数 の上限 は| まぽ

1 kHz

と 推定 さ れた。

5

.マスキング現象と臨界比

  

実 験 に用 い た

60 ‑ 500Hz

の 全 周 波数 で マス キン グ現象 が認 めら れた 。 そ の 臨 界 比 は 周 波 数 が

120Hz

以 上 にな る と 急 激 に 増 加 す る が 、

120Hz

以 下では減少した。

6

.学習付けの進行状況と出現頻度

  

学 習 開始 日 か ら

8

日 目 に 反 応 を 示 し、 学 習 が 進 む に 連 れ て 放 音後 に 音 源 付 近 に虫 胃 集 す る 率 が 高 く な り 、音 の みに よる 出現頻 度は

10

28

% で あった。

【考察】

  

ス ケ トウ ダ ラ の 産 卵 は 薄 暮 時 に 、雄 の 盛ん な鳴 音とと もに 行わ れた の

で 、 視 界が 制 限 さ れ て い る 夜 間 の 海中 で は、 個体 の識別 や産 卵行 動に 鳴

音が重要な役割を演じていると考えられる。

(4)

  

鳴 音 の 周 波 数 成 分は

1000 Hz

以 下 に あ り 、 最 大エ ネ ル ギ ー は

150

300 Hz

に ある 。 聴 覚 感 度 は 刺 激 音 が

400 Hz

以 上 では 周波数 とと もに 低下 し、

鳴 音 の 主 成 分 は 聴 覚 感 度 の 良 好 な 周 波 数 帯 と 一 致 し て い る 。

  

ス ケ ト ウ ダ ラ を 音 で 制 御 し よ う と す る 場 合 には 低 周 波 数 の 音 が 好 ま し い が、 海 中 の 背 景 雑 音 を 考 慮 す ると 、 効 率的 に魚群 を制 御す るた めに 放 音 する 音 とし ては 、150 〜

300 Hz

の音 が望 まし い。臨 界帯 域幅 と魚 の聴 覚 感 度を 考 慮 し 、

200 Hz

300 Hz

の純 音 を 使用 するこ とを 想定 すれ ば、

背景 雑音よ りも 各々

44.4 clB

以上、59.6 dB 以上高い音圧が必要である。し か し 、音 圧 が 高 す ぎ る と 威 嚇 音 と なる の で 、魚 を誘集 する ため に放 音す る 音 圧を

130 dB

以 下 に 抑 え る 必 要 があ る 。 背景 雑音を 考慮 した 本実 験で は 、 魚 は 学 習 付 け の 音 を 放 音 す る と 同 時 に 餌 場ヘ 速 や か に 移 動 し て 索 餌 し た後 、 音 源 の 周 辺 で 索 餌 行 動 を見 せ た ので 、音響 学習 によ る後 天的 条件反射を誘発させる可能性が十分考えられた。

  

こ れら の 知 見 か ら 、 将 来 、 太 平 洋産 タ ラ 科魚 類の飼 い付 け漁 場を 造成 し て 資源 を 管 理 し 、 合 理 的 な 計 画 生産 を す るこ とが可 能と 考え られ る。

ま た 、定 置 網 に ス ケ ト ウ ダ ラ の 稚 仔魚 が 多 量に 混獲さ れる が、 これ を防 止 す る た め に 音 で 逃 避 行 動 を 誘 発 さ せ て 、 稚 仔魚 の 初 期 減 耗 を 抑 え る 資源管理の試みにも利用できる。

  

今後、海洋牧場において、有望視されているマダラについて水中音を用いて

制 御 す る た め に は 、 音 源 探 知 能 カ や 学 習 音 の 記憶 能 カ に つ い て も 解 明

す る 必要 が あ る 。 さ ら に 、 沿 岸 漁 場に お け る背 景雑音 のス ペク トラ ムレ

ベ ル と 聴 覚 特 性 と の 関 係 を 予 め 調 べ て お く 必 要 が あ る 。

(5)

学位論文審査の要旨

主 査    教 授 副 査    教 授 副査   助教授

梨 本 勝 昭 高 橋 豊 美 飯 田 浩 二

学 位 論 文 題 名

音 響によるスケトウダラの行動制御に関する基礎的研究

  近年 、特 に海 洋環境と生態系を破壊することなく、海洋生物資源を合理的に管理し な がら 、有 効的 に生 産す るこ とが強 く求 めら れている。200カイリ体制以後、沿岸に お ける 魚介 類の 海洋生物資源が大いに注目されてきている。しかし、これらの海洋生 物 資源 の中 には 、すでに資源量水準が著しく悪化したものが多く、十分利用可能な資 源 量に する ため には禁漁期、禁漁区の設定だけでは不十分で、人為的に魚介類の種苗 を 大量 に生 産し 、これを適正な漁場に放流して、その後に保護を加えつっも自然の海 で 成長 をせ さ、 一定の大きさになった後に漁獲する資源培養型の栽培漁業を積極的に 進 める こと が必 要である。そして、これらの資源を合理的な管理のもとで有効的に活 用 する こと が強 く要望されている。サケ・マスのような特定の魚種について近年目覚 ま しく 大き な成 果が得られているものもある。初期餌料の大量培養技術の開発と大型 水 槽に よる 育成 管理技術の開発によってクルマエビ、マダイ、ガザミ、ヒラメ、カレ イ 類、 ク口 ソイ 、アワビ、ウニなどについては種苗の大量生産が可能になってきた。

そして放流事業も積極的に行われてきている。しかし、これら、栽培漁業の対象とナょ る 多く の魚 種で は十分な成果が得られていない。その原因のーっは人為的に生産した 種 苗を 自然 の海 にそのまま放流しても環境に十分順応できずに初期に大量に死亡する も のが 多く 、ま た放流魚か広く逸散してしまい、放流魚の再捕が十分期待できないこ と であ る。 この ような栽培漁業においては初期滅耗をいかに少なくして、さらに逸脱 を 防止 し、 再捕 率を高くすることが最大の課題となっている。このため音や光によっ て 魚群 を遮 断、 威嚇、駆集、誘導、誘引する行動制御技術の開発が大いに求められて いる。

  水中 にお いて は光や電波に比ぺて音は減衰が少なく広範囲にわたって到達するので 魚 の刺 激と して 音は大いに有効的な手段と考えられる。魚自身も水中音を発生し、外 敵 を威 嚇し たり 、同種の魚が相互に認識し合ったり、仲間同士で危険信号を送ったり す るこ とが 知ら れている。また、古くから十分な科学的な解明はされていないが、漁 民 の経 験に よっ て種々工夫をしていろいろな音を発生し、魚を誘致したり、威嚇した り して 行動 を制 御して漁獲をしている。最近では大分県や長崎県でマダイを音と餌で 学 習す る音 響馴 致を行って、放流後に大きく育ったマダイの再捕率を向上させる事業 が大規模に取組まれている。

  世界 的に は30種位の魚の聴覚特性については測定されているが、日本の沿岸におけ

(6)

る有 用な 栽培 漁業 対象 魚種についての資料は少ない。一般に魚類の可聴周波数範囲は 105000 Hzで 、1001000 1Izの周 波数帯 の音 に敏 感で ある こと が知 られ てい る。

音刺 激に よっ て魚 群を 制御するためには、まず魚の音響生態と魚が感受できる周波数 範囲 や聴 覚閾 値を 知る 必要がある。また、魚の最も敏感に感ずる周波数、背景雑音と 刺激 音の 弁別 能力 、音 源探知能カなども把握する必要がある。特に海洋牧場では水中 音を 利用 する ため には 魚の学習音の記憶カの持続性について十分明らかにすることが 重要である。

  現 在、 北海 道周 辺の スケトウダラは重要な漁業対象種であり、道東および道南の日 本海 、噴 火湾 周辺 海域 では産卵期を中心として、釣り、刺し網漁業が行われている。

しか し、 近年 、こ の海 域での漁獲量は著しく減少し、しかも大変不安定な状態になっ ている。亜寒帯海域における栽培漁業の有望ナょ対象魚種としてはヒラメ、クロソイ、

マツ カワ 、そ の他 のカ レイ類などが注目されている。特に将来、スケトウダラについ ても 栽培 漁業 の対 象種 として考えられ、十分な資源管理のもとで安定的な生産をする ことが大いに期待されている。

  申 請者 はこ のよ うな 視点よルスケトウダラを研究対象として、音響による魚群制御 をす るた めに 必要 な基 礎資料を得るために、スケトウダラを解剖学的に調べ、発音筋 が存 在す るこ とを 確認 し、飼育実験によって威嚇音、攻撃音、産卵音の鳴音を発する こと を調 べた 。そ して 、魚に電気刺激を与えて発音筋を振動させ、鳴音の発生する仕 組み につ いて 解明 した 。また、発音筋重量変化について雌雄別、季節別に調ベ、産卵 時期 の鳴 音発 生と の関 連性について検討した。さらに、純音と電気刺激との組み合わ せによる条件付けを行って心電図を導出し、心拍間隔の変化から聴覚閾値を求めるとと もに臨界比を算出し、マスキング効果にっいて考察した。さらに、鈍音と餌による学習付を 行 い 、 音 に よ る 魚 群 制 御 、 音 響 馴 致 の 可 能 性 に つ い て 検 討 し て い る 。   特に審査員一同が評価した点は以下の通りである。

1. スケ トウダ ラに は発 音筋 が存 在す るこ とを 確認 し、飼育実験によって威嚇音、攻 撃音、産卵音の鳴音を発生することを見っけた点。

2. 発音 筋に電 気刺 激を 与え 、人 為的 に振 動さ せて 、鳴音を発生する仕組みについて 明らかにした点。

3. スケ トウダ ラの 鳴音 は数 個の パス ルか らな るグ ラント音で構成され、周波数の主 成分は150〜300 Hzに存在することを指摘した点。

4. ス ケ ト ウ ダ ラ の 聴 覚 閾 値曲 線を 求め 、周 波数200 Bzが 最も 閾値 が小さ く音 圧約 98 dB(dB relロPa)とな るこ と、 また この 周波 数帯 の音を識別するために臨界比を算 出し 、環 境雑 音よ り45dB以 上高 い音 圧で放 声す る必 要が ある こと を指 摘. した 点。

5. スケ トウダ ラを 音と 餌に よる 条件 付け を行 い、 約8日 程度 で学 習付 けが でき 、音 響による馴致の可能性について検討した点。

  以 上の 諸点 はス ケト ウダラなどを対象にして、音響による魚群行動を制御するため に重要ナょ基礎的知見を得たものとして高く評価できる。

  よ って 審査 員一 同は 本論文が博士(水産学)の学位論文として価値あるものと認定 した。

参照

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