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博士(歯学)塙 雅昭 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(歯学)塙   雅昭 学位論文題名

工 ナ メ ル 質 形 成 野 , 及び 成 熟 野 に お け る り ン 酸 の動 態 : 32P− リ ン 酸 オ ー ト ラ ジ オ グ ラ フ ィ ー に よ る 検 討

    学位論文内容の要旨

  オー卜ラジオグラフイーは、全身における様々な物質の分布とそ の代謝経路、及び代謝速度を調べる手段としてすぐれた方法であり、

広く用いられている。しかし注入する標識化合物が水溶性の場合も あり、通常行なわれている組織標本作製過程、っまり固定や脱水、

包埋、薄切等の過程で標識化合物が移動してしまう危険がある。そ こで全身、もしくは組織を急速凍結し凍結薄切、凍結乾燥してX線 フイルムに圧着する方法が試みられてきたが、解像カが低いという 欠点があった。解像力向上のため、薄切した切片に湿式法(ディツ ピング法)で乳剤を貼付する方法が用いられているが、これは水溶 性標識化合物の人工的な移動を引き起こす危険がある。さらに、い わゆるchemography(化学かぷり)発生の危険性も指摘されている。

  エナメル質の形成過程におぃてはカルシウムとりン酸が多量に取 り 込 ま れ る こ と が知 られ ており 、過 去に も45Caや32P、33Pを 用 いた多くのオートラジオグラフイーによる研究が行なわれている。

しかし上記のような技術的制約から、所見の大きく異なる部分がみ られ、未だに見解の一致が得られていなぃ。著者らは近年、カルシ ウ ムの 動態 に関し て、45Caで標識した試料を急速凍結・凍結置換 後 、Epon包 埋し、 乾式法で乳剤貼付を行なうことで、45Caオー卜 ラジオグラフイーで再現性のある安定した結果が得られることを確 立し、従来の報告にみられた所見の不一致をもたらした手技上の問 題点を明らかにすることができた。

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(2)

  エナメル質の石灰化機構を検討する上で、カルシウムとりン酸の 添加様式の異同を探ることは重要と思われる。よって本研究は、工 ナメル質へのりン酸の取リ込み経路を明らかにすることを目的に、

H3[32P]04を 用いて、先 に開発した 急速凍結置 換、乾式乳 剤貼 付法を応用して、ラッ卜切歯のエナメル質形成野、及び成熟野にお けるりン酸の動態を検索したものである。

  実験動物は16日齢Wistar系ラッ卜である。すぺてェーテル麻酔下 で断頭、右側下顎切歯歯胚を摘出し、直ちに液体窒素で冷却した液 体プロパン中に投入し急速凍結した。凍結した歯胚は、あらかじめ 冷 却しておぃ たアセ卜ン (‑80℃)に移し、4日間凍結置換した。

置換後、Epon−812に包埋した。試料はガラスナイフで切歯の長軸方 向に平行に、形成端からエナメル質成熟期に及ぶ未脱灰の連続縦断 切片(厚さ約2 11IT1)を無水的に作成した。成熟期に相当する部位 では、あらかじめ象牙質の大部分を除去してから薄切した。切片は 微 量 の エ チ レ ン グ リ コ ー ル で ス ラ ド グ ラ ス に 貼 付 し た 。   まず、化学かぷりの検討のため、標識物質を投与しなぃ動物から 作 製した切片に、O直接乾式で乳剤貼付したもの、◎切片をコロジ オンの薄膜で被覆してから乾式で乳剤貼付したもの、◎切片に直接 乾式で乳剤貼付し、一定時間感光させたもの、@切片をコロジオン の薄膜で被覆してから乾式で乳剤貼付し一定時間感光させたもの、

の4種 類 を 作 成 し 通 常 の 方 法 に 従 い 現 像 、 定 着 を 行 な っ た 。   次に、動物 にェーテル 麻酔下でH3 [32P] 04(80KBq/g体 重)の 水 溶液を右頸静脈より注入し、10秒、30秒、3分、10分、60分後に 断頭、上記の方法で切片を作製した。切片上をコロジオンの薄膜で 被覆してから乾式法で乳剤を貼付し露出後、現像、検鏡した。エナ

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メル質とエナメル器の細胞上の銀粒子の分布と経時的変化を調べる ために、軟組織上及び硬組織上での銀粒子数の計測並びに統計処理 を行なった。なお一部切片には湿式法で乳剤貼付を行なった標本、

並びにコロジオン膜で被覆せずに直接乾式で乳剤貼付した標本も作 成し、比較検討した。

  切片に直接、及びコロジオン膜で被覆してから乾式法で乳剤貼付 を行なったものでは、いわゆるpositlve chemographyはみられなか った。しかし切片に直接乳剤貼付し、感光させてから現像したもの では、現像後、数時間でェナメル質及び象牙質上の銀粒子が徐々に 消退するという、いわゆるnegative chemographyが観察された。こ れらの現象は、切片をあらかじめコロジオン膜で被覆することによ り発生を防止できた。

  通常の湿式法で貼付したものでは、乳剤の流れた方向に一致して、

試料上からスライドグラス上まで、連続して多量の銀粒子が観察さ れたが、乾式法で乳剤貼付を行なったものでは、現像後の銀粒子は 試料上に留まっており、周囲の切片上にはほとんど観察されなかっ た。よって、32Pーリン酸の人工的移動の防止には、乾式乳剤貼付 法が極めて優れていることが明らかとなった。

  以上の点に留意して、切片をあらかじめコロジオン膜で被覆した のち乾式法で乳剤貼付を行なった標本を用いて、工ナメル質形成野 および成熟野におけるりン酸の動態を検討した。

  形成期では、静注後10秒でエナメル質全層に多量の銀粒子が観察 され、静注後60分群まで同様な傾向が続いた。軟組織上での標識は 弱く、銀粒子が特に集積する部位は観察されなかった。しかし銀粒 子数を計測して定量化して調べた結果、静注後短時間では銀粒子は

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エナヌル質表層に集積する傾向があり、時間の経過とともに、徐々 に深層に向かって分布領域が広がってゆく傾向があることがわかっ た 。以上のこ とから、形 成期においては32P―リン酸はェナメル器 の細胞層を急速に通過してェナメル質に達し、全層にわたって急速 に拡散する一方で、表層から深層へのゆっくりとした移動様式も存 在することが明らかとなった。

  成熟期エナメル芽細胞には、細胞遠位端に波状縁をもっもの(RA) ともたなぃもの(SA)の二種類があり、エナメル質成熟の過程で、交 互に周期的な形態変換を示すが、このような細胞の形態変化に伴う 32Pーリン酸 のェナメル 質への取り込みの様子を検索した。静注後 10秒ではRA領域ではエナメル質全層に、SA領域ではエナメル質の表 層 にのみ銀粒 子が観察さ れた。静注後3分ではRA領域では全層に銀 粒子がみられたが、RA領域の切縁側寄りの部位では銀粒子の分布密 度はRA領域の中央部より非常に少なかった。一方SA領域では、銀粒 子はエナメル質表層に集積する傾向が続いており、全体の銀粒子数 も増加傾向にあった。このようなエナメル芽細胞のRAとSA二種の形 態の領域における銀粒子の特徴的な分布傾向は、60分後のものまで 引き続き観察された。軟組織上では、時間の経過と関連して銀粒子 が特に集積するような領域はみられなかった。このようなことから、

エ ナメル質成 熟期におぃ て32P−リン酸は、エナメル器の細胞の制 御をうけることなくエナメル質に急速に達することと、工ナメル質 へ の32Pーリ ン酸の添加 量とその経時的変動は、エナメル芽細胞の 形 態 変 化 に 密 接 に 関 連 す る こ と が 明 ら か と な っ た 。

(5)

学 位 論 文 審 査 の 要 旨

学 位 論 文 題 名

ニ占土

    エ ナ メ ル 質 形成 野 、 及 び 成 熟 野 に お け るり ン 酸 の 動 態 :     32P− リ ン 酸 オ ー 卜 ラ ジ オ グ ラ フ イ ー に よ る 検 討   エナメル質の形成過程におぃてはカルシウムとりン酸が多量に取 り 込まれ るこ とが 知られ てお り、 過去 にも45Caや32P、33Pを用 いた多くのオ一卜ラジオグラフイーによる研究が行なわれている。

しかし水溶性標識化合物を扱う上での技術的制約から、所見の大き く異なる部分がみられ、未だに見解の一致が得られていなぃ。本論 文提出者はカルシウムの動態に関して、45Caで標識した試料を急 速凍結・凍結置換後、Epon包埋し、乾式法で乳剤貼付を行なうこと で、45Caオー卜ラジオグラフイーで再現性のある安定した結果が 得られることを確立し、従来の報告にみられた所見の不一致をもた らした手技上の問題点を明らかにしている。

  エナメル質の石灰化機構を検討する上で、カルシウムとりン酸の 添加様式の異同を探ることは重要である。よって本研究は、エナメ ル質へのりン酸の取リ込み経路を明らかにすることを目的に、H3 [32P] 04を用 いて 、先に 開発 した 急速 凍結置 換、 乾式 乳剤貼付 法を応用して、ラッ卜切歯のエナメル質形成野、及び成熟野におけ るりン酸の動態を検索したものである。

     

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  実験は、まず16日齢Wistar系ラッ卜を用い、すべてェーテル麻酔 下で断頭、右側下顎切歯歯胚を摘出し、直ちに液体窒素で冷却した 液体プロパン中に投入し急速凍結し、あらかじめ冷却しておぃたア セ卜ン(−80℃)に移し、4日間凍結置換した。置換後、Epon包埋 し、ガラスナイフで切歯の長軸方向に平行に未脱灰の連続縦断切片

(厚 さ約2ヰm)を 無水 的に 作製し た。 切片は微量のエチレングリ コールでスラドグラスに貼付した。

  まず、化学かぶりの検討のため、標識物質を投与しなぃ動物から 作製した切片に、@直接乾式で乳剤貼付したもの、◎切片をコ口ジ オンの薄膜で被覆してから乾式で乳剤貼付したもの、◎切片に直接 乾式で乳剤貼付し、一定時間感光させたもの、@切片をコロジオン の薄膜で被覆してから乾式で乳剤貼付し一定時間感光させたもの、

の4種 類 を 作 製 し 通 常 の 方 法 に 従 い 現 像 、 定 着 を 行 な っ た 。   次 に、 動物 にエ ーテル 麻酔 下でH3[3ZP] 04(80KBq/g体重)の 水溶液を右頚静脈より注入し、10秒、30秒、3分、10分、60分後に 断頭、上記の方法で切片を作製した。切片上をコロジオンの薄膜で 被覆してから乾式法で乳剤を貼付し露出後、現像、検鏡した。銀粒 子の分布と経時的変化を調ぺるために、銀粒子数の計測並びに統計 処理を行なった。なお一部切片には湿式法で乳剤貼付を行なった標 本も作製し、比較検討した。

  化学かぷりを検討した結果、切片に直接乳剤貼付し感光させてか ら現像したものでは、現像後、数時間で硬組織上の銀粒子が徐々に 消退するという、いわゆるnegative chemographyが観察された。こ れらの現象は、切片をあらかじめコロジオン膜で被覆することによ り発生を防止できた。同時に、乳剤貼付の際に発生する3ZP―リン

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酸の人工的移動の防止に、乾式乳剤貼付法が極めて優れていること を明らかにした。コロジオン処理の有無にかかわらずいわゆるposi tive chemographyはみられなかった。

  以上の点に留意して、エナメル質形成野および成熟野にお1、て現 像銀粒子の分布を検索し、独自の方法で決定した各領域中の銀粒子 数を計測、統計処理して32P−リン酸の動態を詳細に検討した。そ の結果、形成期においては32P−リン酸はエナメル器の制御をうけ ることなくエナメル質に急速に達しエナメル質全層にわたって急速 に拡散する一方で、表層から深層へのゆっくりとした移動様式も存 在することを明らかにし、エナメル質成熟期におぃては3ZP−リン 酸は、エナメル器の細胞の制御をうけることなくエナメル質に急速 に達することと、エナヌル質への32P−リン酸の添加量とその経時 的変動は、成熟期エナメル芽細胞の形態変化(RA及びSA)に密接に関 連することを初めて明らかにしている。

  本論文に対して主査並びに副査からその概要について説明を求め 次いで本論文の内容並びに関連のある質問が行なわれた。これらの 試問に関してそれぞれ適切な回答が得られた。また、本研究で示さ れたオー卜ラジオグラフイーに関する技術的な問題点の克服及び、

エナメル質石灰化に関するりン酸の動態については、今後硬組織の 石灰化機構究明に対して大いに貢献するであろうことが高く評価さ れ 、 本 論 文 提 出 者 は 博 士 ( 歯 学 ) に 値 す る と 認 め ら れ た 。

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