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博士(歯学)佐藤 明 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(歯学)佐藤   明 学位論文題名

    9 , 10‑dimethyl‑l , 2‑benzanthracene (DMBA)    誘発ハムスター頬嚢粘膜癌の発癌過程における マト1J ックスメタロプロテアーゼ発現に関する研究

学位論文内容の要旨

  【緒言】

  マトリックスヌタロプロテアーゼ(matrix metalloproteinase:MMP)は 細胞外基質の分解にかかわる主要なプロテアーゼである.癌研究において は,これまでに癌細胞およびそれらを取りまく細胞が産生するMMPが癌の浸 潤・転移に深く関与することが明らかにされてきた,ところが近年,MMPに よる細胞外基質分解が癌化の初期過程においても重要な役割を担っているこ とが明らかとなり,さらにMMPの過剰発現によって癌化が起こりやすくなる という事実も報告されている.MMPの発現量が癌化と相関するのであれば,

その発現量は口腔自板症などの前癌病変のmalignant potentialを知るうえで の重要な指標となり得る可能性がある.しかし,実際の発癌過程において MMPがどの程度発現し,推移していくかについてはこれまでまったく解明さ れていない.そこで,本研究では口腔粘膜の発癌過程における組織中のMMP 発現量の推移を明らかにする事を目的として,口腔扁平上皮癌での発現が確 認されて いるゼラチ ナーゼ群(MMP−2およびMMP−9)につい て,DMBA誘 発ハムスター頬嚢粘膜癌を用いて検討した.さらに,臨床検体を用いて口腔 白板症および扁平上皮癌でのゼラチナーゼ群の発現を検索し,実験的発癌で の結果と合わせてmalignant potentialの指標になり得るかどうかを検討し た・

  【材料と方法】

  発癌実験 は生後6週齢のゴ ールデンハムスター60匹(DMBA群48匹,対照     ―209―

(2)

群12匹)を用い,DMBA群は0,5%DMBA含有ミネラルオイル溶液を週3回隔 日に,左右頬嚢粘膜全体に均等に塗布した.DMBA塗布開始後4,8,12, 16週の時点で各群ごとに屠殺し,病理組織,RNAおよび蛋白検索用試料を 採取した.対照群はそれぞれの期間ミネラルオイルのみを塗布し,実験群と 同様に試料を採取した,ゼラチナーゼの検出はゼラチンを基質としたザイモ グラフイーにて行った.すなわち,検索試料の蛋白濃度を測定後,0:1%ゼ ラチン含有10%ポリアクリルアミドゲル上で,10vg蛋白を含む検体を4℃,

非還元状態で電気泳動した.ゲルを洗浄後,活性化緩衝液にて37℃,20時 間インキュベートした.その後,ゲルを0.25%クマジープリリアントプルー R250で 染 色 し ,10% 酢 酸 添 加20% メ タ ノ ー ル 溶 液 で 脱 色 し た .   検出されたゼラチナーゼがメタロプロテアーゼであることを確認するた め,各種プロテアーゼインヒピター存在下にザイモグラフイーを試行した.

さらに,MMPとしての諸性質が本研究で検出されたゼラチナーゼでもみら れるかどうかを検討するとともに,ヒトMMP−9cDNA断片をプ口ーブとし てノーザンプ口ット分析を行い,検出ゼラチナーゼの同定を試みた.また,

microdissectionを行い試料を上皮と問質とに分けて回収することにより,

ゼラチナーゼの局在を検討した.

  ヒト口腔白板症4例および扁平上皮癌2例の生検または手術材料を用いて,

ザイモグラフイーならびに抗ヒトMMP―9モノクローナル抗体による免疫組 織 化学 染色 を行い ,臨 床検 体にお ける ゼラ チナ ーゼ発 現を 検索した.

  【結果】

  1.肉眼的および病理組織学的変化

  対照群では全経過を通して肉眼的および病理組織学的に変化はみられな かったが,DMBA群では16週では全例に腫瘤形成がみられ,組織学的には 経時的に上皮過形成から異形成,初期癌を経て浸潤癌にいたる一連の組織像 が観察された.

  2.発癌過程におけるゼラチナーゼの検出

  DMBA誘発ハムスター頬嚢粘膜癌の発癌過程において,2種類のゼラチナ ーゼ活性が検出された.67kDaの活性は対照群にもみられたが,105kDaの 活性はDMBA群にのみ認められ,さらに癌化に伴って発現量は有意に増加し

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ており,癌化と105kDaのゼラチナーゼ発現量との正の相関が認められた.

  3.検出ゼラチナーゼの同定と発現部位

  ImM EDTAに よ ル ゼ ラチ ナ ー ゼ 活 性 の 阻 害 が み られ , ま た 試 料 にImM APMAを加え37℃でインキュベーションした後ザイモグラフイーを行ったと こ ろ,105kDaのパンドは96kDaを経て86kDaに移行し,同様に67kDaのバ.

ン ド は47kDaを 経 て39kDaヘ 移 行 し てい た. さらに ,ヒ トMMP―9cDNA断 片 を用 いたノ ーザ ンブ ロッ ト分析 では4週 および8週群ではMMP−9mRNAの 発現はみられなっかたが,12週群では弱く,16W群では比較的強く発現し,

経時的に増加していた.また,microdissectionによるサンプルのザイモグ ラ フイ ーで は2種類 のゼ ラチナ ーゼ は上 皮, 問質と もに 存在 して いた.

  4. 口 腔 白 板 症 お よ び 扁 平 上 皮 癌 に お け る ゼ ラ チ ナ ー ゼ の 発 現   白板症および口腔癌の臨床検体を用いたザイモグラフイーではMMP―2に ついては白板症および扁平上皮癌の間で大きな発現量の違いはみられなかっ た.しかし,MMP−9の発現は白板症では弱く,扁平上皮癌では比較的強く 認められ,抗ヒトMMP―9抗体による免疫組織化学染色の結果でも同様な結 果であった.

  【考察】

  口腔粘膜の実験的発癌過程における組織中のゼラチナーゼ群の発現量の推 移をザイモグラフイーを用いて検討したところ,2種類のゼラチナーゼ活性 が 検出 され, 特に105kDaの 活性はDMBA群にのみ認められ,さらに癌化に 伴って発現量は有意に増加しており,癌化と105kDaのゼラチナーゼ発現量 との間に正の相関が認められた.しかし,検出されたゼラチナーゼの分子量は ヒトのゼラチナーゼ群の分子量とは異なり,またこれまでハムスターにおける ゼラチナーゼの研究が全くないため,検出されたゼラチナーゼの同定を試み た.その結果,各種プロテアーゼインヒピターによる阻害の有無およびAPMA による分子量の変化などより,これらゼラチナーゼはMMPであり,いずれも 前駆体として組織中に分泌されていることが示唆された.さらに,105kDaの ゼラチナーゼはヒトMMPー9cDNA断片を用いたノーザンプロット分析の結果 等よりMMP−9であると考えられた.また,癌組織では癌細胞自身が産生する MMPに加え,癌細胞が何らかの因子を介して宿主細胞におけるMMPの産生,

(4)

分泌を刺激すると考えられており,本研究でも2種類のゼラチナーゼは上皮,

問質ともに存在していることが確認された.

  ヒト口腔白板症および扁平上皮癌におけるゼラチナーゼ発現倣動物実験の結 果と一致しており,ヒトにおいても白板症から扁平上皮癌への癌化とともに MMP一9の発現量は増加することが示唆され,癌化とMMP一9の発現量は相関す ることが推測された.

  【結語】

  以上の動物および臨床検体を用いた実験結果より,口腔粘膜の癌化とMMP− 9の発現量との相関が認められ,MMP−9の発現量は口腔前癌病変のmalignant potentialの指標となり得る可能性が示唆された.

(5)

学位論文審査の要旨

     学位論文題名

9 ,10‑dimethyl‑l ,2‑benzanthracene (DIVIBA) 誘発ハムスター頬嚢粘膜癌の発癌過程における マト リックス メタロプロテアーゼ発現に関する研究

  審査は,審査担当者全員が一堂に会し,口頭にて行った.まず,論文提出 者に研究の概要の説明を求めた.論文提出者は,論文別刷りに基づき,研究 内容を明快に説明した.

  論文の概要は以下の通りである.

  マトリッ クスメ夕口プ口テアーゼ(matrix metalloproteinase:MMP)は 細胞外基質の分解にかかわる主要なプ口テアーゼである.近年,MMPによる 細胞外基質分解が癌化の初期過程において重要な役割を担っていることが明 らかとなり,さらにMMPの過剰発現によって癌化が起こりやすくなるという 事実も報告されている.しかし,実際の発癌過程においてMMPがどの程度発 現し,推移していくかにっいてはこれまでまったく解明されていない.そこ で,本研究では口腔粘膜の発癌過程における組織中のMMP発現量の推移を明 らかにすることを目的として,口腔扁平上皮癌での発現が確認されているゼ ラ チナ ーゼ 群(MMP―2お よびMMP−9)にっ いて,DMBA誘発 ハムスター 頬 嚢粘膜癌を用いて検討した.さらに,ヒト口腔白板症および扁平上皮癌での MMPの発現を検索し,実験的発癌での結果と合わせてMMP発現量が口腔前癌 病 変 のmalignant potentialの 指標 に なり 得 る かど う かを 検 討し た ,   材料と方法

  発癌実験は生後6週齢のゴールデンハムスターを用い,0.5%DMBA含有ミ ネラルオイル溶液を週3回隔日に頬嚢粘膜に塗布した,DMBA塗布開始後4, 8,12,16週の時点で屠殺し,病理組織,RNAおよび蛋白検索用試料を採取 した.対照群はそれぞれの期間ミネラルオイルのみを塗布し,同様に試料を 採取した,ゼラチナーゼの検出はゼラチンを基質としたザイモグラフイーに て行い,生化学的および分子生物学的方法によりその同定を試みた,また,

microdissectionを行うことにより,ゼラチナーゼの局在を検討した.さら に,ヒト口腔白板症および扁平上皮癌を用いて,ザイモグラフイーならびに 免 疫 組 織 化 学 染 色 を 行 い , 臨 床 検 体 に お け るMMP発 現 を 検 索 し た .

博 男

   

   

田 後

福 向

授 授

教 教

査 査

主 副

(6)

  実験結果および結論

  1.発癌過程におけるゼラチナーゼの検出

  DMBA誘発ハムスター頬嚢粘膜癌の発癌過程において,2種類のゼラチナ ーゼ活性が検出された.67kDaの活性は対照群にもみられたが,105kDaの 活性はDMBA群にのみ認められ,さらに癌化に伴って発現量は有意に増加し ており,癌化と105kDaのゼラチナーゼ発現量との正の相関が認められた,

  2.検出ゼラチナーゼの同定と発現部位

  各種プ口テアーゼインヒビターを用いた実験ではImM EDTAにより活性 阻害 がみられた.また,試料にImM APMAを加えザイモグラフイーを行っ たと ころ,105kDaのパン ドは96kDaを経て86kDaに移行し,同様に67kDa のバ ンドは47kDaを経て39kDaへ移行していた.さらに,ノーザンブ口ッ ト分 析ではMMP―9mRNAの発現は4週および8週群ではみられなっかたが,

12週群では弱く,16W群では比較的強く発現し,経時的に増加していた,

ま た , こ れ ら ゼ ラ チ ナ ー ゼ は 上 皮 , 問 質 と も に 存 在 し て い た ,   3. ヒ ト口 腔 白板 症 およ び 扁平上皮癌 におけるゼ ラチナーゼ の発現   自板症および口腔癌を用いたザイモグラフイーではMMP−2については発 現量に大きな違いはみられなかったが,MMP−9の発現は自板症では弱く,

扁平上皮癌では比較的強く認められ,抗ヒトMMPー9抗体による免疫組織化 学染色の結果も同様であった.

  以上の動物および臨床検体を用いた実験結果より,口腔粘膜の癌化と MMP―9の発現量との相関が認められ,MMP―9の発現量は口腔前癌病変の malignant potentialの 指 標 と な り 得 る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た .

  続いて,審査担当者から本研究およびその関連事項について種々の質問が された,

1)実験法の細部に関して.

2)/ヽムスターのMMPとヒトのMMPとの類似性についてなど,動物実験と 臨床検体との関連に関して.

3)癌細胞 の異型性の 程度とMMP発現との関連,癌病巣におけるMMPの発 現部位すなわち局在について,また,白板症症例の中にもやや強い発現が認 められたものがあったことについてどう考えるかなど,MMP発現と臨床所 見あるいは病理組織所見との関連について.

4)引用論文の内容に関して.

5)本研究 の独創性, 本研究の今 後の発展性および臨床応用について.

  これ ら の 質問 に 対し て ,論 文 提出 者 はそ れ ぞれ 明 快に 回 答した.

  以上より,本論文内容が高く評価されるとともに,本論文提出者は,本研 究を中心に広い知識を有し,博士(歯学)を授与するに値するものと判定さ れた,

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