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博士(医学)柴田雅彦 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(医学)柴田雅彦 学位論文題名

ヒ ト 内 在 性 レ ト 口 ウ イ ル ス ERV3 外 被 組 換 え 蛋 白 に 対す る単クロン抗体の特異性に関する研究

学位論文内容の要旨

  ヒ ト内在 性レ ト口 ウイ ルス(HER V)と その 関連 配列 はヒトゲノムの約1%を占めると され ,一部 の内 在性 レト ロウイ ルス は現 在で も生体 内で 何らかの役割を果たす蛋白と して発現している可能性が示唆されてきた.一方,マウスにおいては内在性レトロウイ ルス が直接 自己 免疫 疾患 発症に 関与 して いる だけで なく ,免疫発生に深く関わる内因 性ス ーパー 抗原 とな って いることなどが明らかとなってきた.本研究では1コピー型ヒ ト 内 在性 レ ト ロ ウ イ ル ス で あ るERV3(HERV―R)に 注 目 し た .ERV3は 外 被蛋 白を コー ドす る領域(env)内 に長 い読み 取り 枠(ORF:open reading flame)をもち,mRNA発現が 確認 され,cDNA解析 から ウイル ス遺 伝子 のみ ならず 遺伝 子制御に関わる遺伝子と類似 性 を 持つ 宿 主 遺 伝 子 の 配 列 を 組 み 込ん だ長 いmRNAも 報告さ れて いる ,しか し未 だに その 蛋白レ ベル での 発現 ,機能 や疾 患と の関 わりに つい ては不明である.そこでERV3 env領域 の組 換え 蛋白を 大腸菌発現システムを用いて作製し,それを免疫源とした単ク ロン 抗体の 作製 を行 い, その抗 体を 用い た生 体内ERV3分 子の検索,さらにこの組換え 蛋 白 と自 己 免 疫 疾 患 患 者 血 清 の 反 応性 につ いて 検索 しERV3が自 己抗 原とな り得 るか どうかについて検討したのでここに報告する.

  ERV3env領 域 は 長 いORFを 疎 水 性 部 分を 除 く よ う に 組 換 え , 大 腸菌 発 現 ベ ク タ ー pET22bに組み込んだ.  宿主大腸菌に形質転換しIPTG (is opropylthio‑galactosida se)で 誘導 後に集 菌, ベリ プラ ズム領 域蛋 白を 抽出 した. アフ イニテイカラムクロマトグラ フ イ ーで 組 換 え 遺 伝 子 の 大 き さ か ら想 定さ れる40kDaお よび それよ りも 小さ い20kDa の位 置に見 られ る蛋 白を 精製し た. これ らの 蛋白はIPTG誘導をしない場合には精製さ れな いもの であ るほ か, 精製の 時間 経過 によ り40kDa蛋白の減少,20kDa蛋白の増加が 見ら れ,20kDaの 蛋白は40kDaの 分解 され たも のであ る可 能性が考えられた.精製した 組換 え蛋白lOOUgをマウ スに免疫し,  同マウスから脾細胞を採取しPEG(polyethylene glycol)を用 いて 常法に 従いミエローマ細胞と細胞融合し培養した.増殖したハイブリ ド ー マの培 養上 清は 固相 化した 精製 組換 え蛋白 を用 いてELISA法 によ り抗体 産生 の有 無の 検討を 行っ た. スク リーニ ング によ り組 換え蛋 白に 高反応を示す株をクローニン グ し ,抗ERV3 env単 クロ ン抗体1G7を得 た. この 抗体 の免疫 グロ ブリ ンサブ クラ スは IgGlであった.

新鮮 手術材 料か ら副 腎, 副腎腺 腫, 褐色 細胞 腫さら に分 娩直後の新鮮胎盤組織から全

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RNAを 回収した.全RNAはERV3 envの1.7kb断片をプローブとしてノザン解析を行つ た.胎盤で以前から報告されているのと同様に9.Okb,7.3kb,3.5kbのmRNAを確認した が,その発現は個体間差が見られた,一方,正常副腎,原発性アルドステロン症患者の 副腎皮質腺腫では胎盤特異的とされている7.3kb以外の9.Okb,3.5kbのmRNAを確認し たが,褐色細胞腫ではノザン解析レベルでの明らかな発現は検出されなかった.上記で 得たものと同じ検体から可溶化蛋白分画を抽出し.一次抗体として精製単クロン抗体 (1G7)を用いてウエスタン解析を行った.  免疫源とした組換え蛋白に対しては40kDa, 20kDaの両方にその反応が確認され,20kDaの産物は40kDaの特異的分解産物である可 能性が支持された.一方,組織から抽出した可溶化蛋白では高発現胎盤,副腎,副腎腺 腫に180kDa,170kDaの2つのバンドを確認したが,mRNA発現の確認されなかった褐 色細胞腫には明らかなバンドは検出されず,ERV3が生体内で蛋白として発現している 可能性が示唆 された.得られた180kDaおよび170kDaの蛋白はERV3 env遺伝子のORF から考えられる62kDaに対して大きなサイズであった.しかし,同ORF配列内に8箇所 の糖鎖結合配列が存在し,糖鎖の結合により分子サイズが大きくなっている可能性や 二量体,三量体の形成の可能性,他の分子との結合あるいは9.Okbの大きなmRNAの存 在よ ル シス 型の 結 合蛋 白 を認 識 して いる 可能性もあり 今後の検討課 題である.

北海道赤十字血液センターより供与された健常者献血者から分離した血清およぴ北 大第2内科より供与された全身性エリテマトーデス(SLE)患者およぴ慢性関節リウマ チ(RA)患者からの 血清について固相化したERV3env組換え蛋白を利用したELISA法 を用いて反応性を検討した,健常者の吸光度の平均値は0.201,SLE患者で0.319,RA患 考で0.152であったが,SLE患者では一部に高い反応性を示す症例が存在し,各群を比

.ミすると健常者やRA患者に比べて弱いながら統計学的な有意差をもってその高反応 性が支持された.さらにその反応性は患者血清中のC4レベルと負の相関を,抗DNA抗 体の抗体価とは正の相関をとーもに有意に認めた.しかし,CH50やIgG値,IgM値,抗核 抗 体 , 自 血 球 数 , 投 与 ス テ ロ イ ド 量 な ど と の 相 関 は 見 ら れ な か っ た . 内在性レトロウイルス産物が自己免疫疾患患者の血清中自己抗体の対応抗原となり うるかという疑問に対しては,以前からマウスにおいてその病因の一端を担う例が報 告されている.これらモデル動物の例から考えて,ヒトにおいても内在性レト口ウイル ス産物が自己抗原のーっとして何らかの形で.自己免疫疾患の病因に関与している可能 性が考えられる.ヒトにおいてはmRNA発現レベルでの検討はぃくっか報告されてい るが明らかな関与を示唆する結果は得られていない.本研究においてSLE患者特に2症 例についてそ の血清中にERV3env組換え蛋白と高い反応性を示す抗体の存在が確認 され,少なくとも一部のSLE患者においてはERV3産物が自己抗原となりうると考えら れた.さらにSLE患者全体の反応性が血中のC4レベルと負の相関,抗DNA抗体の抗体 価と正の相関を示すことよりSLEの病勢と関連する可能性をも示唆する.もちろん,今 後症例数を増やすと共に本研究でSLE患者血清中に見いだされた抗体の真の対応抗原 がERV3ウイルス産物なのか検討していく必要があるが,本研究はヒト内在性レトロウ イルス産物が自己抗原としてSLEの病態に何らかの形で関与している可能性を示唆す るものとしてその意義は深い.

本実 験で作 製したERV3env領域を利用 した組換え蛋 白及び単クロ ン抗体はERV3が

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生体内でどのような発現をし,またどういう機能,役割を果たしているかを解明してい く上で大変有用である.さらに今後の自己免疫疾患における内在性レトロウイルスの 役割を研究する上でのーつの糸口となるものと考えられる.

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

ヒ ト内 在性 レ .ト ロウ イル ス ERV3 外被組換え蛋白に 対す る単 クロン抗体の特異性に関する 研究

  ヒ ト内 在 性レ ト ロ ウイ ル ス(HERV)と その 関 連 配列 は ヒトゲノ ムの約1% を占める と さ れ 、一 部 の内 在 性 レト ロウイルス は生体内 で何らか の役割を 果たす蛋 白として 発 現 し てい る 可能 性 が 示唆 されてきた 。一方、 マウスに おいては 内在性レ ト口ウイ ル ス が 直接 自 己免 疫 疾 患発 症に関与し ているだ けでなく 、免疫発 生に深く 関わる内 因 性スーパ ー抗原と なっている ことなど が明らか となって きた。本 研究では1コピー 型 ヒ ト 内 在 性 レ ト ロ ウ イ ル ス で あ るERV3(HERV‑R)に 注 目 し た 。ERV3は 外 被蛋 白 領 域(env)内に長 い読み取 り枠(ORF:open reading flame)をもち 、mRNA発現が 確認さ れ て い るが 未 だに そ の 蛋白 レベルでの 発現、機 能や疾患 との関わ りについ ては不明 で ある。本 研究はERV3 env領 域の組換え 蛋白を大 腸菌発現システムを用いて作製し、

そ れ を 免疫 源 とし た 単 クロ ン抗体の作 製を行い 、その抗 体を用い た生体内ERV3分子 の 検 索 、さ ら にこ の 組 換え 蛋白と自己 免疫疾患 患者血清 の反応性 について 検索した も のである 。

ERV3 env領 域 の 長 いORFの う ち 疎 水 性 部 分 を 除 い た 約lkbを 大 腸 菌 発現 ベ ク ター pET22bに 組 み込 ん だ 。宿 主 大腸 菌 に 形質 転 換 しIPTGで 導 入遺 伝 子 の発 現 を誘 導 後 に 集 菌 、 ベ リ プ ラ ズ ム 領 域 蛋 白 を 抽 出 し た 。 ア フ イ ニ テ イ カ ラ ムク ロ マ トグ ラ フ イ ー で精 製 する と 組 換え 遺 伝子 の 大 きさ か ら想 定 さ れる40kDaおよ びそれよ りも 小 さ い20kDaの蛋 白 を 精製 す るこ と が でき た 。 これ ら の蛋白 はIPTG誘導を しない場 合 に は 精 製 さ れ な い も の で あ る ほ か 、 精製 の 時間 経 過 によ り40kDa蛋 白の 減 少 、 20kDa蛋白 の 増加 が 見 られ 、20kDaの 蛋白 は40kDaの 分解 された ものであ ると考え ら れ た:精製 した組換 え蛋白をマ ウスに免 疫し,そ の後脾細 胞を採取 しPEGを用い て常 法 に 従 いミ エ ロー マ 細 胞と 細胞融合し 培養した っ増殖し たハイブ リドーマ の培養上 清 は 固 相化 し た精 製 組 換え 蛋 白を 用 い てELISA法に よ ルスク リーニン グし、組 換え

夫 敬

隆  

  光

池 木

小 吉

授 授

教 教

査 査

主 副

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蛋白に高反応を示す株1G7を得た。この抗体の免疫グロブリンサブクラスはIgGlで あったョ

  新鮮手術材料から副腎、副腎腺腫、褐色細胞腫さらに新鮮胎盤組織からRNAを回 収し、ERV3 envの1.7kb断片をプ口ーブとしてノザン解析を行った:胎盤で9.Okb、 7.3kb、3.5kbのmRNAを、正常副腎、副腎皮質腺腫では9.Okb、3.5kbのmRNAを確認 したが、褐色細胞腫では明らかな発現は検出されなかった。上記で得たものと同じ 検体から可溶化蛋白分画を抽出し一次抗体として精製単クロン抗体(1G7)を用いてウ エスタン解析を行った。免疫源とした組換え蛋白に対しては40kDa、20kDaの両方に その反応が確認され、20kDaの産物は40kDaの特異的分解産物である可能性が支持さ れた。一方、組織から抽出した可溶化蛋白では胎盤、副腎、副腎腺腫に180kDa、 170kDaの2つのバンドを確認したが、褐色細胞腫には明らかなバンドは検出されな かった。得られた180kDaおよび170kDaの蛋白はERV3 env遺伝子のORFから考えら れる62kDaに対して大きなサイズであり、今後の検討課題であるがERV3が生体内で 蛋白として発現している可能性が示唆された。

  健常者から分離した血清および全身性エリテマトーデス(SLE)患者および漫性関節 リウマチ(RA)患者からの血清について固相化したERV3組換え蛋白を利用したELISA 法を用いて反応性を検討したョSLE群では一部に高い反応性を示す症例が存在し、

健常群やRA群に比べて統計学的有意差をもってその高反応性が支持され、少なくと も一部のSLE患者においてはERV3産物が自己抗原となりうると考えられたっさらに その反応性は患者血清中のC4レベルと負の相関を、抗DNA抗体の抗体価とは正の相 関 を と も に 有 意 に 認 め SLEの 病 勢 と 関 連 す る 可 能 性 も 示 唆 し た っ   口頭発表において、免疫科学研究所の柿沼教授より内在性レトロウイルスのー般 的特徴、ERV3のヒトゲノムにおける存在様式、加齢によるERV3蛋白発現の相違等 について、小池教授よりERV3蛋白の構造、組換え蛋白をターゲットとしたELISA法 による血清中抗体の測定の方法論等に関して質問があったが、申請者は概ね妥当な 回答を行った。

  ヒト内在性レトロウイルスERV3の蛋白としての発現に関して、あるいはヒト内在 性レトロウイルス蛋白と自己免疫疾患に関する報告はなく、作製したERV3 env領 域 を利 用し た組換 え蛋 白及 び単 クロン 抗体 はERV3が 生体内 でど のような発現 を し、 また どうい う機 能、 役割 を果た して いる かを 解明し てい く上で意義は 大 きいっ以上より本論文は博士(医学)の学位授与に値するものと判定する:

参照

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