線とかたちの分類と体系化 -再現性に注目して-
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(2) 線とかたちの分類と体系化 一再現性に注目して一 専攻 コース. 教科・領域教育学専攻 芸術系・美術コース. 学籍番号. MO6263G. 氏名. 松岡賢二. 1.問題の所存とその背景 現在、多様な線やかたち全てを、造形におけ. る1つの視点で網羅した分類や体系化は存在 していないように感じられる。そのように、か たちの分類や整理が様々であり、決定的な分類 方法が確立されていない理由は、多くの視点か ら多様に挙げることができる。. クタル理論を利用することにより、多くの線と かたちを共通の性質(フラクタル性)で並行に 扱うことができるようにした。さらに、1種類. の線やかたちにより構成されているものを扱 うことにした。. そして、再現性に注目して分類した。再現性 という性質は、どのような線やかたちに対して も並行である。かたちの成立や性質に関わらず、 再現できるかできないかという明確な分類が できる。あるいは再現方法や描画の特徴により 分類できる。完全には再現できないものについ ても、それらの描き方について整理した。この ようにして、再現性についての分類以下の細分 化に、現在までの分類を組み合わせて体系化を. まず、線やかたちの種類や扱い方、形成方法 が大変多様であることがあげられる。かたちが 扱われる分野も、造形、幾何学、自然科学、物 理学、生態学など多様にある。また、目に見え るものだけではなく、理念的に考えられるもの もあり、かたちというものは無限に考えられる。 さらに平面でも空間でもそれらを扱うのでよ り多様になる。また、線やかたちそのものの定 義や用語の扱い方が一定ではないことも整理 をより困難にしている。そして、薪たなかたち が生まれてきていることもあげられる。フラク タル理論の発達により、フラクタル性を持った かたちというものカミ生まれてきた。それと同時 にコンピュータの発達により、フラクタル図形 等の新たな線やかたちを視覚化できるように なってきた。また、位相幾何学(トポロジー) によっても、新たな視点でのかたちの扱いが可. 2.1 再現性について. 能になっている。. 2.2 作図による線とかたち. 上記をまとめると、数値化と客観性という結 論になる。どのような説明であれば、あるいは どこまで説明できれば満足するのかというこ とがはっきりしていない。つまり、全てのかた ちを共通に定量化できる数字と単位が存在し ていないことが理由であると考えられる。. 2.4 2.5 2.6 2.7. 2.分類するための工夫と方法. 第3章完全には再現できない線とかたち. 扱う線とかたちは、平面として見えるものと した。理念的なものも便宜的に目に見えるもの として扱った。そして、線の分類と体系化を利 用した。かたちは線により囲まれていたり、線 の重なりや集合により形成されていたりする。 さらには、かたちの中に線を含めることもでき る。ゆえに、線の分類と体系化が、かたちの分 類と体系化に応用できると考えた。また、フラ. 行った。. 3.論文の構成 第1章現在の分類と体系化 1.1 線とは何か. 1.2 かたちとは何か. 1.3 現在の分類と体系化とその課題. 第2章再現できる線とかたち. 2.3製図による線とかたち プログラム言語による線とかたち 解析幾何学における線とかたち フラクタルとは何か 数学的に正確なフラクタル図形. 2.8 コンピュータ・シミュレーションによる線とかたち. 3.1 3.2 3.3 3.4. 自由曲線とそれにより描くかたち 自然界における統計的なフラクタル 偶然性のある線とかたち 可視化による線とかたち. 第4章分類と体系化のまとめ 4.1 分類と体系化. 4.2 分類表と体系化の時代的考察 4.3 今後の課題.
(3) 4.論文の概要 本論文は、造形、幾何学、形態学、物理学、 生態学など多様な文献購読がもとになってい る。しかし、線とかたちを造形表現のために扱 うことを常に意識している。線とかたちを平面 に絞って扱うことにするので、主に構成、絵画、 デザインの造形に関連することになる。そして、 造形表現の基礎としての構成学の、基礎研究と して本論文を位置づけておきたい。 第1章では、造形的視点と幾何学的視点を踏 まえながら、線やかたちとはどういうものかを 整理した。かたちに関する用語の整理をすると ともに、本論文における線とかたちの定義づけ を行った。また、現在までの分類と体系化の例 を示した。. 第2章では、再現性という意味を最初に整理 して、本論文における再現の意味を定義した。 その定義は「既にある、目に見える一つの線や かたちを、もとの線やかたちとずれがなく重な るものを描き表わすこと」とした。その再現の 意味とは、描く方法を客観的にフローチャート に記述できること、言い換えればアルゴリズム 化できることとした。描く方法とは、点や線や かたちを正確に自由に移動させることとした。 その具体的な方法として、作図、製図、方程式 を満たす点の軌跡の描画、プログラム言語によ る描画、コンピュータ・シミュレーションを扱 った。それぞれの方法については、描画に使用 する道具や表示方法、描き方の特徴に違いがあ る。また、再現できるかたちの種類の多さや複 雑さも異なる。ところが、それぞれの方法が異 な含ているように見えても、描いていく原理が 同じものもある。このような再現方法の差異や 特徴についても、線とかたちの説明と同時にま とめていった。. そしてこの章では、再現できる線とかたちの 分類を示した。また、その分類された線とかた を再現方法から整理した。再現できる線とかた ちは、大きく幾何学的な線、数学的に正確なフ ラクタル図形、コンピュータ・シミュレーショ ンによる線とかたちとした。幾何学的な線は、 作図、製図、解析幾何学によるものに分類した。 数学的に正確なフラクタル図形は、完全な自己 相似性を持ったものと複素平面に描画される ものに分類した。コンピュータ・シミュレーシ ョンについては、統計的なフラクタルと、それ 以外に分類した。そして、その分類以下の細分 化も示した。複素平面上に描画されるフラクタ. ル図形は、複素数を含む方程式により描画され る。シミュレーションによるかたちの大部分は、 複数の;複雑な多次数の非線形方程式(一次方程 式以外)の組み合わせにより描画されている。 第3章では、完全には再現できない線とかた ちの分類を示した。再現できないといっても、 自然界における統計的なフラクタルを除いて は、もとと同じように見えるという、再現に近 い人為的な表現は可能であるとした。それらを、 自由曲線とそれにより描くかたち、自然界にお ける統計的なフラクタル、偶然性のある線とか たち、可視化による線とかたちの4つに大きく 分類した。それらの分類領域については、確実 な境界線を引けたわけではない。しかし、自然 的と人為的という分類や、描く方法の差異、統 計的なフラクタル性や偶然性の有無などによ り、それぞれの特徴を述べた。. 自由曲線については、具象的なものの輪郭線 と抽象的な線(抽象的なものの輪郭線)の2つ に分けてみた。さらに、生態学的、目的性や偶 然性などにより自由曲線の細分化を試みた。自 然界における統計的なフラクタルでは、自然界 に存在するかたちや現象、人体の複雑な構造、 植物や動物の器官などの複雑なかたちを扱っ た。偶然性のある線とかたちでは、造形表現に 利用される偶然性のある人為的なかたちを扱 う。例として、マーブリング、デカルコマニー、. にじみ、ドリッピングなどの流体の流れがもと になる表現を扱った。そして、そのかたちに含 まれるフラクタル性について検証した。可視化 による線とかたちでは、本論文の定義による可 視化をもとにしたかたちを扱った。. 第4章では、第1章の先行分類と、第2、3 章の内容をもとに、線とかたちの分類表を作成 した。そして、その分類と体系化の考察を行っ た。そして、そこから浮かび上がった今後の課 題を示した。それらは、この分類と体系化の再 検討や、さらなる細分化された研究である。そ れぞれの各章の項目ごとに、さらなる研究が可 能である。. なお、この分類と体系化は、コンピュータに よる描画の進歩とフラクタル理論の発展によ り可能となったものである。今後、新たな画期 的な客観的なかたちの扱い方の視点が発見さ れれば、新たな分類と体系化が考案できる可能 性がある。ただ、再現性と描画方法による整理 は、今後も利用できると考えられる。 主任指導教員 杉山直樹 指導教員 高木厚子.
(4) 線とかたちの分類と体系化 一再現性に注目して一. はじめに. 1. 第1章 現在の分類と体系化. 2. 1.1線とは何か. 2. 1.1.1本論文における線 1.1.2 線の幾何学的な意味. 1.1.3線の造形的な意味. 1.2かたちとは何か. 6. 1.2.1かたちに関する用語の整理漢字から 1.2.2かたちに関する用語の整理英語表記から 1.2.3かたちと形態と形体 1.2.4本論文におけるかたち 1.3 現在の分類と体系化とその課題. 11. 1.3.1現在の分類と体系化 1.3.2現在の分類と体系化の課題 1.3.3分類を困難にさせる理由 1.3.4分類するための工夫と方法. 第2章再現できる線とかたち 2.1 再現性について. 19. 19. 2.1.1再現性についての先行事例 2.1.2 本論文における再現. 2.2作図による線とかたち. 22. 2.2.1ユークリッド幾何学における線と円 2.2.2 作図. 2.2.3ユークリッド幾何学における角 2.2.4ユークリッド幾何学における多角形 2.2.5 円と直線によるかたち. 2.3製図による線とかたち 2.3.1本論文における製図 2.3.2手描きの製図道具 2.3.3手描きの製図による線やかたち. 28.
(5) 2.4 プログラム言語による綜とかたち. 31. 2.4.1コンピュータにおける製図 2.4.2プログラム言語の例 2.4.3軌跡を利用できるプログラム言語 2.4.4プログラム言語による描画の特徴. 2.5解析幾何学における練とかたち. 36. 2.5.1座標 2。5.2 直線:と円と楕円. 2.5.3 2次曲線. 2.5.4その他の多様な曲線 2.5.5螺旋 2.5.6 解析幾何学における描画. 2.6 フラクタルとは何か. 44. 2.6.1 フラクタル. 2.6.2特徴的な長さを持たないかたち 2.6.3フラクタル次元の求め方 2.6.4 フラクタル次元の意味. 2.6.5統計的なフラクタル 2.7 数学的に正確なフラクタル図形. 50. 2.7.1数学的な正確なフラクタル 2.7.2 コッホ曲線. 2.7.3枝分かれ曲線 2,7.4ペアノ曲線 2.7.5方面式によるフラクタル図形の描画 2.8. コンピュータ・シミュレーションによる線とかたち 57. 2.8.1 コンヒ。ユータ・シミュレーション. 2.8.2流体に関するシミュレーション 2.8.3カオスに関するシミュレーション 2.8.4その他のシミュレーション. 第3章 完全には再現できない線とかたち 3.1 自由曲線とそれにより描くかたち 3.1.1 自由曲線とは何か 3.1.2 自由曲線により描く. 3.1.3 自由曲線による抽象的なかたち 3.1.4 自由曲線による具象的なかたち. 3.1.5生物のかたちと幾何学の関連性. 62 62.
(6) 3.2 自然界における統計的なフラクタル. 70. 3。2.1 自然界における統計的なフラクタル. 3.2.2統計的なフラクタル以外の構造. 3.3偶然性のある線とかたち. 74. 3.3.1偶然性のあるかたちと統計的なフラクタル 3.3.2 偶然性のある表現技法. 3.3.3マーブリング表現の多様性. 3.4可視化による線とかたち. 80. 3.4.1本論文における可視化 3.4.2 コンピュータ以外の可視化 3.4.3 コンピュータに表示する可視化. 第4章 分類と体系化のまとめ 4.1分類と体系化. 85 85. 4.1.1分類と体系化の表 4.1.2 各分類の細分化. 4.2 分類と体系化の時代的考察. 93. 4.2.1分類と体系化の時代的背景 4.2.2 新たな分類と体系化の可能性. 4.3今後の課題. 95. 4.3.1今後の課題. おわりに. 96.
(7) はじめに 私はかたちというものに、自分のデザイン制作や絵画制作を通 して強く興味を持つようになった。私のかたちに対する興味は、. 幾何学的なもの、ドリッピングやにじみやデカルコマニーなどの モダンテクニック、フラクタル図形の順に広がってきた。そして、. 手描きとCGを並行して行ってきた。そのような中で、いかに思 い通りにかたちを描くか、また、いかに偶然的なかたちを扱うの か、ということを常に考えていた。そのような中で出会ったもの が、構成学であり形態学であった。そして、かたちの分類と体系 化という研究に出会うことができた。. 本研究では、線とかたちの独自の分類と体系化を構築しようと 取り組んだものである。独自の視点として再現性に注目した。内 容としては、線とかたちを再現できるものと、完全には再現でき. ないものに大きく2押した。そして、再現できるものを再現方法 により分類した。そして、再現できないものも描き方によって細 分化した。また、それらの分類の下に、先行分類を組み入れてい る。そのようにして、分類と体系化に取り組んだ。 本論文では、具体的な分類と体系化を示す前に、関連用語の整 理を行った。まずは、線とかたちの本論文での定義づけを示した。 そして、先行分類の調査を行い、その課題を明らかにした。また、. 本論文における再現の意味について示した。 本論文は、造形学、形態学、早撃、幾何学、物理学など多様な 文献購読がもとになっている。しかし、線とかたちを造形表現の ために扱うことを常に意識している。線とかたちを平面に絞って 扱うことにするので、主に構成、絵画、デザインの造形に関連す ることになる。そして、構成学の基礎研究として、本論文を位置 づけておきたい。. そして、本論文では、実際の線とかたちを数多く掲載している。. それらは、見るだけでも線とかたちの多様性を感じられるように、. という意識を持って掲載したものである。また、それらの線とか たちを応用した造形表現も掲載した。そして、できる限りそれら の線やかたちを自分で実際に描き、造形表現も行った。. 1.
(8) 第1章 現在の分類と体系化 第1章では、実際の分類と体系化を行う前の、基礎的事項の整 理を最初に行う。具体的には、線やかたちの多様な意味を踏まえ た上で、本論文における線とかたちの定義づけをする。また、か たちに関する用語の整理をする。そして、現在までのかたちの分 類と体系化を示すことにより、問題の所存とその背景を明らかに する。そして、それらの現状を踏まえた上で、かたちの分類と体 系化を行うための工夫を行う。. 1.1線とは何か 1.1.1本自選における線 本論文における線は、「点が動いた後の軌跡である。そして、. 目に見えるかたちの輪郭線である。または目に見える平面と平面 の境界線である。」と定義づけておく。その定義は、以下に示し た線の幾何学的な意味や、造形的な意味から成立させた。. 本研究における線は、2次元上の平面にしぼって考えていく。 3次元の空間に存在する線や、立体の辺や稜線などは、それをあ る一定の向きから見たものとして、平面に置き換えていく。そう することによって、全ての線を平面上でとらえていくことができ る。ここで、境界線についての分かりやすい例を示しておく。図. 図1. 1のように、半透明の色紙を2∼3枚、少しずらして重ねると境 界線としての幅のない線が見える。. .・●・.●●●・ ●. ●. ●. ●. ” 、 、 ち 、 ’ 3. ●・..:・=..・●. 線については、実際には線が描かれてはいないが、線があるよ うに見える場合がある。点が狭い間隔で並んでいて、線のように 見えるような線は橋渡し線と呼ばれる。橋渡し線については、「実. 際には線が存在しなくても恣意性を許さない一種の橋渡し線が. 図2. 見え、図形の輪郭線となり、…中略」(註1)と説明されている。. 図2のような場合は、確かに2つの交わる円周があるように見え る。このような線も、確かに知覚できるので、線として取り扱う。. 乙ム リ 図3. 橋渡し線は、連続した点の集合により線が形成されることを示し ている。. また、図3のような場合にも、実際には存在しない白い正三角 2.
(9) 形と、その輪郭線があるように見える。このような線は主観的輪. 郭線(註2)と呼ばれる。確かに正三角形があるように見えるの で、目に見えるかたちとして取り扱う。そして、その輪郭線も当 然取り扱う。. また、輪郭線の働きとして、図と地を分化させる働きがある。. 図4. 図4はルビンの壺であり、黒い部分に注目すると、向かい合った 人の顔に見える。白い部分に注目すると、白い壺に見える。それ ぞれ交互に見え、同時に見ることはできない。一方の形が見えて いる時、他の領域は単なる背景となり、形として見られる部分の 背後に広がって見える。図と地については、「形として浮き出し てくる部分を図(figure)とし、背景となる部分を地(ground) と名づけて区別した。」(註3)と説明されている。このような考. え方からも、輪郭線は平面と平面との境目であるといえる。 そして、極端に細長い長方形は、面積があり、かたちとしても 扱うことができる。しかし、線のように見えるので、線として扱 うこともできる。かたちとして扱った場合には、輪郭線があると 考えることもできる。同様に、筆やパステル等で描いた線や水滴 の流れた跡は、幅の差や変化があるが、線として扱うことができ る。もちろんかたちとして扱うこともできるし、そのかたちの輪 郭線を線として取り扱うこともできる。. 1.1.2 線の幾何学的な意味 現代数学では、点とは何か、線とは何かという定義は行わない。. そのかわり、点や線の満たすべき性質や相互関係を規定すること によって、全体として間接的に点、線を定義している。. ユークリッド幾何学では、「定義2.線とは幅のない長さであ る。」(註4)「定義3.線の端は点である。」(註5)のように線を. 定義している。幅のない、というところからは、数学的な線は理 論的には目に見えないと言える。解析幾何学上で考えても、点は 位置を表すものであり、大きさを持たないので見えない。ユーク リッド幾何学においても、線は大きさ、つまり面積を持たないも のとされている。ただ、ユークリッド幾何学における線も、解析 幾何学における線も便宜上、視覚化することができる。 解析幾何学では、線は方程式を満たす点の動く軌跡の集合であ 3.
(10) る。軌跡は「点がある条件を満たしながら動くとき、その点の描. く図形である」(註6)と数学上では定義されている。ある条件 というのは、その描く点が、f(x,y)=0を満たすことである。. 方程式については、「軌跡がx,y[f(x,y)=0の形に書け るときには、f(x, y)=0をこの軌跡の方程式といい、この 方程式はこの軌跡を表す。」(註7)と説明されている。別の言い 方をすれば、その方程式の解である数値を満たす点の集合である。. なお、この方程式の表記方法は、直交座標の場合である。解析幾 何学では他にも座標の表現方法があり、方程式の表記も異なる。 しかし、ある等式を成立させる点の集合が軌跡であるという意味 は変わらない。. 1.1.3 線の造形的な意味. カンディンスキーの著書『点・線・面抽象芸術の基礎』とパウ ル・クレーの著書『無限の造形』と『教育スケッチブック』の記 述をもとに、線の造形的な意味を整理していく。 カンディンスキーは、線の形成について、最初に以下のように 述べている。. 「幾何学上、線は眼にみえぬ存在である。線は動く点の軌跡、し たがって点の所産である。」(註8). 「線は運動から生まれる一しかも、点そのものが内蔵している完. 全な静止を破壊することによって。そこには、静的なものから動 的なものへと飛躍がある。」(註9). この文章からも、線は点の動く軌跡であると言える。ただ、この 場合の点の移動は自由である場合も含まれる。 また、カンディンスキーは、直線と曲線について、以下のよう に述べている。. 「外部から加わる力が点を或る方向へ動かす時、線の最初の型が 実現する。その際、一度とられた方向は永久不変、且つまた線は、. まっすぐの道を無限に進む傾向を持つ。これが直線である。」 (註10). 「単純な曲線、これはもともと直線なのであるが、たえず側面か ら加わる圧力により、直線コースから逸されたもの。」(註11). 外部から加わる、という言葉については、表現者の造形活動によ. 4.
(11) り線に力が加えられることを意味していると考えられる。そして、. 曲線とは、力により直線が曲げられて作られたものだと解釈でき る。なお、このようなカンディンスキーによる線の扱い方につい ては、「3.1.2」で自由曲線を扱う時に再び参考にする。. クレーは、以下のように述べている。. ’. ‘. 図6 とができる。《純粋培養された》線というのは、空間上に点が現. 図5. れ移動していくことを意味していると考えられる。 また、クレーは、能動的な線、中間的な線、受動的な線という 呼び方を用いて線を3つに分類している。能動的な線については、 「目的なしにそれ自身できままに散歩する。」(註13)「決められ. た点の間を動くように定められたもの。」(註14)と説明されて いる。「きままに」と「定められた」という言葉から、2つの説 明には意味の違いがあるように感じられるが、能動的な線は、ど. 図8. 図7. ちらも点の移動により成立していると言える。中間的な線につい ては、「これらの図は線的性質を有する。しかし、最終的に形成 されるとこの線的特性はすぐに平面表象にとって代えられる。」. (註15)と説明されている。図5,6を見てみると分かりやすい が、中間的な線は、かたちの輪郭線を形成する途中の線と言って よいだろう。受動的な線は、「平面を作る活動(進みつつある線). 図9. から生ずる。」(註16)と説明されている。図7,8を見ると、線 の移動によりかたちが生まれている。線の集合により面を作り出 せることの説明であると言える。例えば図9,10は直線によって、. 図11は自由曲線の集合によって面が作り出されている。また、. 図12のように、立体的に見える面を形成することもできる。そ 図11. 図10. して、線の始点と終点を結んだり、線を交差させたりした時には・ 閉曲線がうまれ、かたちの輪郭線となる。この場合も、線の移動. 蜘. 図12. 5.
(12) 1.2かたちとは何か 1.2、1かたちに関する用語の整理漢字から かたちという言葉からはすぐに「形」や「型」などの漢字が思 い浮かぶ。そみため漢宇辞典(註17)で、「かたち」という言葉. について調べてみた。すると、かたちと読める漢字は16個ある と分かった。その中から常用漢字に当てはまる漢字を調べてみた。. その漢字は、「容、形、溶、状、像、象、貌」である。その7つ の漢字と,「型」と「姿」という漢字をさらに調べてみた。さらに. 調べた理由は、型という漢字は、かたちと関連が深いと考えられ るからである。また、7つの漢字を調べていくと、「姿、すがた」. という言葉が多く見つかったからである。以下にその漢字の説明 を記していく。. 像…本物の人物や、事物になぞらえてつくった彫刻や鋳物。仏 像、銅像。似る、形が似ていること。 容…中にものを入れる、取り込む。中身、中に入っているもの。. 形、姿。格好。受け入れる。空の枠の中に物を入れること。 また、その中身。人間のからだの輪郭の中におさまったすが たも容:姿という。. 形…かたち、外にあらわれた姿。ようす、外観。地勢、物事の 情勢。かたどる。もののかたちを写し取る。. 溶…とける、とかす、中に入れて混ぜ込む。溶け込む。 状…すがた、かたち。物事のかたち、ようす。形状、状態。 かたち作る、かたちをなす。すがたを形容する。ありさまを のべる。事実や様子を述べる=書面、手紙。. 象…かたち、すがた。外にあらわれたすがた。しるし。かたど る。かたちを似せる。なぞらえる。ぞうの姿を描いたもの。 貌…かたち、顔の形や姿。また、おぼろげにつかめたありさま。. 外にあらわれたようす。かたどる。人やもののあらましの姿 をあらわす。. 型…かた、鋳物をつくるときに使う、粘土製の鋳型。転じて広 く、基準となる一定のわく。模型、類型、のり。基準となる 形や模様。また、模範。武術や演芸で基準となるしぐさや歌 6.
(13) い方。典型。形やサイズの種別。. 姿…すがた。人の顔やからだのようす。転じて広く、ものの形 やようす。すがたを整える。身づくろいをする。. このように、かたちを意味する漢字は色々あるが、細かい意味 での違いがある。ただ、「形」が最も広い意味でもののかたちを 表す。「型」は、かた、と読むようにものの鋳型や原型の意味が ある。また、変形しないかたちに用いられる。像、象、貌は、人 や生き物のかたちを表す意味が強い。容は、かたちとも読むが、 内容や容器という熟語があるように、かたちの中を意味する。状 は、かたちの様子、状態を表す。. 1.2.2 かたちに関する用語の整理 英語表記から. かたちに関する用語も数多い。かたちという言葉を国語辞典で 調べると、以下のように説明されている。 「物体が平面、または空間を占めている有様。外見に現れた様子、. 形体、外形。人の容貌や姿態、人の顔の有様、顔立ち。美しい顔 立ち、美貌、またその人。物時の状態や傾向、図面、模様。実質 が伴わない形式、外面的、形ばかり。まとまった状態、整った有 様。」(註18). この説明を見ても、かたちという言葉に含まれる意味の多様さ が分かる。ただ、この説明では、型という変形しないかたちを現 す言葉は出てきていない。しかし、上記の漢字による説明から考 えても、かたちという意味に、型の意味が含まれていると言って よい。. 『現代デザイン辞典2003』(註19)では、「形態」という言葉 に含まれる意味と、その英語表記がまとめられている。そして、. その英語表記を2種の英和辞典(註20,21)で調べてみた。そし て、それらの調べたことをもとにして、かたちに関する英語表記 を以下に整理していく。上記の漢字と重なる部分もあるが、整理. のために記すことにする。整理した表1を次のページにまとめて いるが、形態の意味を含めて、かたちには非常に多様な意味が含 まれていることが分かる。. 7.
(14) 形態に含まれる意味 i現代デザイン辞典より). 外形. その意味の英語表記 i現代デザイン辞典より). shape. 英和辞典でその英語の意味を. イべたもの 形、形状、外形。姿、様子、状態、. `作る 像. build image. 建築された、組み立てられた、肖像、. p 様相. appearance. 外観、外見、情勢、現象. 図形. figure. 人の姿、物の姿、図形、図、画像. 輪郭. contour. 輪郭、外面、外形、等高線. 構成. configuration. 形状、地形、配置、配列. 構造. structure. 構造、構成、建築物、組織. 憩ode 1. 模型、原形、見本、型作る、手本に. ㌧一ρ“. cAノレ. キる タイプ. type. 型、類型、種類、典型、活字、字体. 型. 搬ould. 型、鋳型、流し型. 型=方法. method. 方法、様式、やり方. プロセス. process. 進行、過程、手順、製法. 様式. style. 様式、方法、型、スタイル、文体、. フ裁 変形、変換. metamorphose. 変形、変態、変化. 狽窒≠獅唐?盾窒高≠狽奄盾. ゲシュタルト. gestalt(ドイツ語である). 形、形状、形態、姿、人影. i註22). パターン. pat’tern. 模範、手本、原型、模型、型紙、鋳. ^模様、柄、図案、傾向、基本型 組織. organization. 組織、有機的組織体、団体、結合. 有機体=生命体. organism. 有機体、生物、生体. 比例. proportion. 部分、割合、つり合い、調和. 均衡. balance. 平衡、均衡、調和、調整. 秩序. order. 秩序、定例、命令、注文、要求. 諸関係の体系. system of relations. 体系、組み立て、系統、関係、交渉. 表1 8.
(15) 1.2.3 かたちと形態と形体. 形態と形体には、どちらもかたちの意味に含まれるが、意味の 違いがある。『新版デザインハンドブック』の中で、山口正城は. は以下のようにまとめている。「この2っの用語は同じ意味と考 えて良いが、形体は英語のshapeと同様にある特定の個別の形を いい、形態は、それより広く、形一般をさす場合がある。すなわ ち、形態は英語のfomに当るものである。」(註23) 『新構成学』でも、三井秀樹が以下のようにまとめている。「形 体と形態も本来は同じ形を表す用語と考えてもよいが、形体とは、 からだや姿を指すある特定の個別の形を表わす言葉である。」 (註24). 「形態は特定の形を越えた広い意味での形の概念を表わした用 語と捉えてよい。形態の態は、動植物の生態系や生態学の態と同 様、その形の姿やありさま、ふるまいから、周辺の形の置かれた 状況や環境を含めた意味を持つ。」(註25). 『新版デザインハンドブック』や、『デザインの基礎』(註26) 『Basic Design 1』(註27)『視覚デザインの原理』(註28)では、. 形態の分類という言葉が使われている。このように、従来はかた ちの分類の意味では、形態という言葉が使われてきている。しか し、『新構成学』では形体の分類という言葉が使われている。形 体という言葉が使われているその理由については、「形を造形学 的にそれぞれ掘り下げ、検証していく意味から、「形態」ではな く、あえて「形体」と表記していく。」(註29)となっている。. そのため、特に意味を持たせなければ、形態と形体のどちらの言 葉を使っても良いと言える。. また、formとshapeの意味の違いについて、以下のように説 明している英和辞典もある。. 「formとshapeは同意で用いることもあるが、厳密にはfom はある種類のものに共通する典型的な形をいう。Shapeは個々の ものが持つ特有の形をいう。例えば、一般に「さかなの形」とい う時は、formを用いるが、特定の魚、「ヒラメの形」などという 時には、shapeを用いる。」(註30). 上記の様々な引用からは、形と形体と形態、Fomとshapeの 意味の細かな違いがあるということが分かる。しかし、本論文で. 9.
(16) は、一般的なかたち(形態、form)と個別のかたち(形体、 shape). の両方を扱うこととする。ゆえに、形態と形体の両方の意味を込 められるように、かたちという言葉を用いることとする。ここか ら以下の文章中では、かたちという表記の場合には、形体と形態. の両方の意味を含めているとする。英語表記についてはshape よりも広い意味を表すformを用いることにする。なお、線につ いては、もっとも一般的な1ineを用いることにする。. 1.2.4 本降文におけるかたち. 本研究におけるかたちは、2次元上の平面で考えていく。3次 元の空間に存在するものや、立体などは、それをある一定の向き から見たり、切り取った断面を見たりして、平面に置き換えてい く。そうすることによって、全てのかたちを、平面上でとらえて いくことができる。これらの視点は線と同様である。 そして、線とは何か、の文章でも述べたが、線の集合や移動に より面を作り出すことができる。ここで、点の移動した軌跡によ る線の成立から考えてみると、図13,14のように、面は線の移動 した軌跡とも言える。その図では、四角形や丸いかたちが形成さ. 図13. れたように見える。つまり、かたちというものは、点や線の移動 した軌跡、集合により形成されることもあると言える。 以上のような考察から、本論文におけるかたちというものを以 下のように定義づけておく。「目に見える視界全てのものの中か ら、点や線の集合や連続、軌跡により形成されたもの、輪郭線や 境界線により囲まれたものを任意に取り出したもの。」とする。. 取り出すということは、図と地の関係により、無定形としての視 界から、図として知覚することである。また、それらのかたちが 組み合わされて個別のかたちが形成されている場合も、かたちと. 図14. して取り扱うこととする。. 10.
(17) 1.3 現在の分類と体系化とその課題 1.3.1現在の分類と体系化. 現在、かたちについては様々な分類方法が存在する。また、あ るかたちと、それ以外のかたちに分ける分類方法も存在する。そ して、それらの分類が組み合わされて体系化されているのである。 以下に主な分類方法を示していく。. 人工と自然 これは、かたちの成立に目を向けた分類である。人工のかたち とは「人間の意志によって手を加えられたもの、人間によって新 しくつくりだされたもの」(註31)であり、自然のかたちは「人 間の意志や欲求とは関係なく形成される。いわば自己形成によっ. て成立するもの…中略…一定不変の状態に留まることなく、た えず変化し運動している。」(註32)ものである。変化し運動し ているという意昧は、自然界の生物などの移動や成長によりかた ちが変化していくことを表す。また、無生物についても、自然現 象や地形の変化により、長い目で見るとかたちが変わっていく。 人工的とは、人為的という言い方もできる。また、人為的なかた ちは、意識的に成立させたかたち、偶然的に成立させたかたち、 という分類もできる。. 具象と抽象 概念による分類では、具象的なかたちと抽象的なかたちに分け られる。絵画の分類にもこの概念が用いられる。ただ、具象と抽 象の境目は明確にはできない。『Basic Design 1』では、抽象的. な考えが生み出した形を、幾何学的形態、オーガニック形態、オ ートマチック形態、不規則形態に分類している。また、具象形態 を自然形態と人工形態に分類している。. 理念と現実 現実的なかたちとは「目に見えるか、触れえるかして実際に感 じかたち」(註33)である。それに対して、理念的なかたちとは、. 「視覚や触覚に直接感じ得ないかたち」(註34)である。また、 理念的なかたちは、「人間が自由にイメージできる形」(註35). や「数学の関係式によって作りだす形」(註36)という扱いも方 11.
(18) されている。数学の関係によって作りだす形とは、幾何学的なか たちということもできる。また、理念的なかたちは、純粋形態と 呼ぶこともできる。純粋形態は、「理念的・幾何学的形態を感じ 得るように直観化したものである。」(註37)と説明されている。. つまり、純粋形態は、理念的なかたちを便宜的に見えるようにし たものである。なお、これまでに出てきた「人工と自然」「具象 と抽象」「理念と現実」の分類を組み合わせた体系が、表2,3の ようになっている。. 「純門門購灘:)一麗二三二 形 纏 ヒ=エ鶯髭畿. 〉環翼的形懇. 表3 有機と無機 有機的なかたちは、オーガニック形態とも呼ばれる。これらの かたちは、自然界や生物の滑らかな曲線や曲面が基本となってい る。そのかたちは、「純粋な数学的法則による形とは違っている が、自然界に存在するまた別個の法則により支配されている。」 (註38)ものである。それらの法則は、自然現象による影響や、. 生体器官を維持、保護するための合理的都合により支配されてい る。ただ、自由曲線からも有機的な感じを受けるし、幾何学的な かたちの組み合わせや変形により形成されたかたちからも、有機 的なイメージを生み出すこともできる。有機的なかたちについて は、「視覚的にも流動的快感を生み出している。」(註39)と述べ. られている。つまり、有機的なかたちとは、かたちを見た時に、 曲線の柔らかさや滑らかさから生命感、暖かいイメージを感じさ せるものの総称と言えるだろう。それに対して、無機は冷たい機 械的な印象を受ける。ただ、印象の感じ方は個人により異なるの で、完全な分類領域を作るのは難しい。 12.
(19) 生物と無生物 有機的なかたちの細分化に、生物のかたちというものが含まれ る。生物のかたちと対を成すものに、無生物のかたちというもの がある。その説明としては、「一方に生命があり、他方に生命が ない。」(註40)と説明されている。もちろん生命があるのは、 生物である。無生物については、「生命単位となる個体がないし、 固体化という有機的組織作用を持たない。」(註41)ものである。. 体の生物としての組織の集合が、生物のかたちである。自然形態. は、生物と無生物に分類することができて、生物の形態は表4の ように動物形態と植物形態に細分化できる。. 偶然的と不規則的 偶然的なかたちとは、アクシデント形態、オートマチック形態 とも呼ばれる。それらは「ある程度のかたちは予想しながらも、. 図15. 偶然的に表現されるかたちである。」(註42)と説明されている。 a. にじみやかすれ、ドリッピング、マーブリング、デカルコマニー などのモダンテクニックによる表現は、それらのかたちが現れる o. C. d. 主な表現とされている。また、偶然的な効果に近い表現として、 不規則的なかたちがある。不規則的なかたちとは偶然的な効果に. 図16. b. e. 近い表現となるものである。例えば、紙をちぎったり、適当にハ サミで切ったり、線香で焼き切ったりしてできる表現がある。こ. の2つの分類についても、完全な分類領域を作るのは難しい。で きるかたちに意外性が現れるという共通点があるからである。. 積極的と消極的 積極的なかたちは、「確実に知覚し得るように直観化された形 態である。」(註43)消極的なかたちは、「理念的形態そのものと. 見るべき状態にあるもの。」(註44)である。消極的な線の例と. しては、図15のような幅のない線があげられる。図16では、直 線ab、 cd、 be、 deと円弧acが黒い面と背景となる白い面の境界. 線であり、幅のない線である。点についても、各頂点と交点0 は大きさを持たない消極的な点である。図17のような場合も、 13.
(20) 右にある線の集合により左にあるようなかたちが見える。この場 合は消極的なかたちである。つまり、点の連続した集合により線 として見えるものや、点や線の集合や重なりによりかたちとして 見えるものは、消極的なかたちである。この視点を用いると、橋 渡し線も消極的な線といえる。なお、この分類は『新版デザイン ハンドブック』と、この項目の説明に引用した『デザインの基礎』 の中でしか見つけられていない。. あるかたちと、それ以外のかたちに分ける方法には、以下のよ うなものがある。. 定形と非定形 定形とは、「はっきりした形をもつ平面形である。」(註45)「言. 葉で正しく言い表せる形だけではなく、自由な平面形も、あるま. とまりを持ち独立してみとめられるものは定形を持つといえ る。」(註46)と説明されている。例として、正方形、三角形、. 円形などの幾何学図形があげられている。自由な平面形という言 葉からは、自由曲線で囲まれたかたち、いわゆるオーガニック形 態というイメージが浮かぶ。 ただ、『新構成学』では、定形のかたちは、幾何学的的形態と、. 複雑系の数学モデルとされている。(註47)そのため、定形は幾 何学的形態と複雑系の数学モデルだけに限定されるのか、自由な 平面形も含まれるのかについては、はっきりさせることはできな い。つまり、現状では定形と非定形の完全な分類領域を作るのは 難しい。そこで、幾何学的曲線と直線により囲まれたかたちは、 定形に含まれるという扱いにしておく。. そして、無定形という概念も存在する。無定形とは、「天空だ とか、絵画などの余白(スペース)のように明確にその形を規定 し得ないか、あるいは規定する必要のないもの。」(註48)と説 明されている。無定形の平面は、図と地の関係における地を現し ているとも考えられる。. 幾何学と非幾何学 幾何学的なかたちは、「必ず何か数的法則のもとに生み出され た形で、最も強い秩序をもち、規則的であり、単純、明快な造形 的感情を生む。」(註49)ものである。その名の通り、ユークリ 14.
(21) ッド幾何学、解析幾何学によってうまれる線やかたちによって形 成される幾何学図形のことである。そして、幾何学的なかたちは、. 直線形態と曲線形態という分類(註50)もできる。これらの分 類は、そのかたちの輪郭線が直線であるか、曲線であるかという 視点からの分類である。. 孤立図形と孤立していないかたち 孤立図形は、「他のものと繋がっていないで独立して存在する 形。」(註51)である。例として「丸や三角や四角などの幾何学 的な図形、地上の石ころや草木など」(註52)があげられている。. 例から考えると、孤立図形は、輪郭線が閉曲線や閉曲線に近い個 別のかたちといえるだろう。孤立していない形の例としては、「互. いに絡みあったひもとか、床にしきつめたタイル、電話線のネッ トワークなど」(註53)があげられている。つまり、1つのかた ちで成立しているわけではなく、いくつかのかたちが重なったり 組み合わさったりした関係のことを意味していると考えられる。 なお、この分類は、私が調べた中では、この項目で引用した『か たちの不思議』の中でしか見つけられていない。. 1.3.2 現在の分類と体系化の課題. 現在までの分類方法では、多様な線やかたちを1つの視点で網 羅した分類や体系は存在していないように感じられる。そして、 全ての線やかたちを網羅していなくても、ある特定の領域のかた. ちを徹底的に細分化しようとした試みもあまりないように感じ られる。例えば、幾何学的なかたちの細分化や、有機的なかたち. の細分化などである。そのため、1つの視点で網羅した分類や体 系と、それぞれの分類の細分化を組み合わせた体系を組み合わせ ることにより、さらなるかたちの整理が可能になるだろう。 現在、最も多くの種類のかたちを扱い、多くの分類視点を組み 合わせた幅広い体系は、三井秀樹により作られていると言えるだ. ろう。次のページに示すその体系(表5)では、前項で述べてい たような分類である、理念と現実、自然と人工、定形と非定形、 有機と無機などの分類が組み合わされている。また、偶然的なか たちも体系に組み込まれている。そして、フラクタル図形も扱わ れており、複雑系という項目に属している。 15.
(22) この三井秀樹の体系にも疑問点が浮かぶ。人工形体については、 「声問がつくるあらゆる形やパターン。芸術、デザインなどの造. 形はこれにあたる。」(註54)と述べられている。これでは、領 域が広く、分類があいまいである。また、非定形の分類の説明が 「意識的に作られた非定形のフォルム」(註55)となっているが、. この説明では人工形体と重なる部分がある。このように気になる 部分があるが、三井の分類は、フラクタルを含め、多くのかたち の種類と分類視点を扱っているため、参考分類になると感じられ る。私の行っていく分類と用語が異なるが、重なる部分もあり、 参考にしていくことにする。. 翫[器二∴::::::::::∴ Goomotri‘轟1餓odel of. (o而Ple箕5ystem. 理念的形体 Me邑l Fo「m. 有機的形体城………一二うか噂曲線に翻まれた形体 Orga“i‘Fom. l. 奔定形. 偶然的形体 L..__..懸識的につくられた非憲形のフォルム. 8rro9“lar Fo煎. Aこ‘磁e籍tal Fαm :. 不規則形体… 警rreg回虚ar烏rm. 形体. 有機的形体…・………動物や三物の有機的な形 。㎎a纏iζ. Fom. 自然形体. 無機的形体……・……目然界の無生物の形. 網a軸ral Fo「向隔. horg節i‘Fo糊. 偶然的形体・…………アクシデント形体やオートマチック 敵dd㎝t固1㎞. パターンなど偶発釣に生じる形. 現実的形体 Real』rm. 複雑系の形体…・……自然現象にみられるフラクタル形や ㎞留(㎝ρ鰍g拠m カオスの現融など. 表5. 人工形体……………一‘…・……………人間がつくるあらゆる形やパターン 鰍鵬cial Form. 芸術、デザインなどの造形はこれにあたる. 16.
(23) 1.3.3 分類を困難にさせる理由. かたちの分類、整理が様々であり、決定的な分類方法が確立さ れていない理由は、いくつも考えられる。. まず、線やかたちの種類や扱い方、形成方法が大変多様である ことがあげられる。かたちが扱われる分野も、造形、数学、図学、. 物理学、形態学、生態学等、多様にある。そして、それぞれの分 野において深く研究されている。また、目に見えるものだけでは なく、理念的に考えられるものもあり、無限にかたちというもの を考えられる。さらに平面でも空間でもそれらを扱うのでさらに 多様になる。また、線やかたちそのものの定義が一定ではないこ とも、整理をより困難にしている。言語的に考えても、かたちに 関する用語は多数ある。そして、かたちという言葉そのものの意 味もとても広い。. そして、新たなかたちが生まれてきていることもあげられる。. 70年春からのフラクタル理論の発達により、自然界における生 物や現象の複雑なかたちや、偶然性のあるかたちなどの中に、フ ラクタルという性質が共通のものとして提唱された。そして、そ れらの性質を持ったかたちを、新たな種類のかたちと捉えること ができるようになってきた。つまり、フラクタル性を持ったかた ちというものが生まれてきた。それと同時にコンピュータの発達 により、フラクタル図形等の新たな線やかたちを視覚化できるよ うになってきた。そして、フラクタル性(自己相似性)という性 質により、現在までは関連性のなかったかたちを結びつけられる ようになった。また、位相幾何学(トポロジー)によっても、新 たな視点でのかたちの扱いも可能になっている。 形態学の代表的な研究者である高木隆司は、多様なかたちの形 成の原因を整理することの難しさを、以下のような言葉を用いて 述べている。. 「どのような説明であれば、あるいはどこまで説明できれば満足 するのかということがはっきりしていない。」(註56). 「形というものを科学的に表現する方法がまだ確立されていな い。」(註57). 「形そのものの研究が独立した発展するためには、形の特性を直 接表現できるような新しい定量化が必要なのである。今のところ、 17.
(24) それらは科学として体系化されるほど豊富ではない。」(註58). これらの言葉からまとめてみる。そうすると、全てのかたちを 客観的に並行して扱うことができないこと、つまり全てのかたち を共通に定量化できる数字と単位が存在していないことが、かた ちの分類や整理が様々であり、決定的な分類方法を確立できない 理由である。. 1.3、4 分類するための工夫と方法. これまでは、現状の分類方法と課題、分類が困難な理由をまと めてきた。それでも、分類と体系化をさらに進めていくために、 以下のような工夫をしていく。. 線とは何か、かたちとは何か、の部分でも述べたが、扱う線と かたちは、平面として見えるものとする。理念的なものも便宜的 に目に見えるものとする。そして、線の分類と体系化を利用して いく。かたちは線により囲まれていたり、線の重なりや集合によ り形成されていたりするからである。また、線はかたちに包含す ることもできるので、線の分類と体系化が、かたちの分類と体系 化に応用できる。また、フラクタル理論を利用する。それにより、. 多くの線とかたちを共通の性質(フラクタル性)で並行に扱うこ とができる。. また、1種類の線やかたちにより構成されているものを扱うこ とにする。実際に身の回りに存在する線やかたちは、何種類もの 線やかたちによって成り立っている。かたちのというものは、多 種類の輪郭線により囲まれているものも多い。それらは現状では、. 2種類以上の線によって成り立っている、という扱いに留めてお く。. そして、本論分の題目にもあるように、再現性に注目して分類 していく。再現性という性質は、どのような線やかたちに対して も並行である。かたちの成立や性質に関わらず、再現できるかで きないかという明確な分類ができる。あるいは再現方法により分 類できる。また、完全には再現できないものについても、描画方 法やかたちの形成により整理、分類していく。そのようにして、 再現性と再現方法の分類以下の細分化に、現在までの分類を組み 合わせて体系化していく。. 18.
(25) 第2章 再現できる線とかたち 第2章では、再現性についての説明、定義づけをまずは「2.1」 において行う。「2.6」では、今回の分類の重要な視点となるフラ. クタルについての基本的な内容を整理する。そして、この章全体 としては、再現の方法とその方法により再現される線とかたちを まとめる。. 再現方法を示していく順序は、「2.2」においては作図を示す。. そして「2.3」では製図を、「2.4」ではプログラム言語による描 画を示す。「2.5」では、解析幾何学の基礎的な内容を整理すると. ともに、方程式を満たす軌跡の描画による再現を示す。次に、 「2.6」でまとめたフラクタル図形についての再現を「2.7」で示 す。「2.7」では、数学的に正確なフラクタル図形の再現方法を、. 手描きによるものから、コンピュータを使ったものまで数種類示 す。そして「2.8」では、コンピュータ・シミュレーションによ り、さらに複雑なかたちを扱う。このように、項が進むにつれて、. 複雑なかたちの再現を扱うようになる。しかし、一見すると複雑 に見えるかたちでも単純な構造になっているものや、簡単な規則 により描けるこものもある。全体的には、道具を用いた手描きか ら、機械を用いたもの、コンピュータを用いたものというように、 描画方法が変化する。. 2.1再現性について 2.1.1再現性についての先行事例 幾何学的なかたちが再現可能であることは、すぐに考えること ができる。そして、かたちの再現性については、断片的ではある が、先ほどの分類で登場した三井秀樹の著書『新構成学』と、朝 倉直巳の著書『ジェオメトリックアート入門』で述べられている。. 三井秀樹は以下のように述べている。. 「円や正方形のように半径や一辺の長さがわかれば誰でも正確 に描ける形であり、これはいつでも再現できるという意味から、 再現性のある形と、それ以外の石ころや雲のような形のように非 再現性の形に分類する方法も考えられる。」(註1). 19.
(26) 長さという言葉が述べられており、長さの単位という客観的な視 点が向けられている。. 朝倉直巳は、以下のように述べている。 「幾何形態は、再現可能という特色を持っている。」(註2). 「機器はすべて法則的に動き、また、その量を測ることができる. から、そういう手段を媒介してっくられる幾何形態も、法則的、 可四這である。したがって、この意味で客観化できる形態である。. 客観化できるというのは、正確に複製をつくりうるという意味で ある。」(註3). 客観化できるということは、再現性の大切な視点である。また、 機器という言葉が用いられており、製図機械やコンピュータがそ れらに含まれると考えられる。. 上記以外にも、幾何学的なかたちは再現できる、と単純に述べ られている文献や研究は多いだろう。ただ、その再現の定義や方 法が明確には示されてはいないと思われる。. 2.1.2 本論文における再現. 本研究の再現を、「既にある、目に見える一つの線やかたちを、. もとの線やかたちとずれがなく重なるものを描き表わすこと」と 定義する。ただ、裏返さないともとのかたちと重ならないかたち は、再現できたものとは扱わない。その再現の意昧とは、描く方 法を客観的にフローチャートに記述できること、言い換えればア ルゴリズム化できることとする。アル:ゴリズムとは、「ある仕事. を計算機にさせるとき、その計算機が制御できる各種の基本機能. をうまく組み合わせ、仕事を行わせる操作手順」(註4)と説明 されている。その仕事とは、「点や線を正確に、自由に移動させ. ること」(註5)である。ただ、この仕事には、かたちを正確に 自由に移動させることも含まれるとする。フローチャートとは、 その仕事の内容を示す操作手順である。プログラムのためのフロ. ーチャートには、JIS(目本工業規格)の規定もある。ただ、. 再現方法の記述は、JISの規定と同様でなくても客観的に分か ればよい。. その方法は、作図、製図、方程式を満たす点の軌跡の描画、プ. 20.
(27) ログラム言語による描画、コンピュータ・シミュレーションの5 種類とする。ここでは、手描きの作図や製図で誤差があったとし ても、それは再現と扱う。そして、光学的再現や物理的再現は本 論文における再現とは認めないこととする。光学的再現というの は、写真撮影、写真製版、コピー機によるコピー、スキャナ機械 によるスキャンなどである。物理的複製というのは、スタンピン グやフロッタージュなどである。. 他には、自由曲線による写し描きも再現とは認めない。あるい は、ある自由曲線や統計的なフラクタル曲線をスキャナで取り込 み、コンピュータのモニターに表示させたとする。その表示倍率 をどんどん拡大していき、線を拡大して、その線の上を直線で細 かくなぞっていくとする。そうしてから縮小表示にすれば、もと の線を再現できたように見える。そして、そのなぞる動作をヒス トリー機能により記録していけば、その記録はフローチャートの ようにも見える。しかし、それぞれの線はもとの線とは別の種類 の線であり、直線の連続した折れ曲がりにすぎない。もとの自由 曲線や統計的なフラクタル曲線とは線の種類が異なっている。 それぞれの方法を区別したのは、描画に使用する道具、表示方 法に違いがあるからである。また、再現できるかたちの種類の多 さや複雑さが異なるからである。そして、かたちの描き方やその 目的に対して、それぞれ特徴があるからである。ところが、それ ぞれの方法が異なっているように見えても、線を描いていく原理 が同じものもある。. 21.
(28) 2.2作図による線とかたち 2.2.1ユークリッド幾何学における線と円 作図とは、ユークリッド幾何学における作図のことを意味する。. そして、本論文における作図の意味も、それと同様である。ユー クリッド幾何学における線やかたちの扱い方には、ユークリッド 幾何学独自の決まりがある。ユークリッド幾何学では、「ユーク リッド言論」内の23個の定義がその決まりのもとになる。 線については、「定義2.線とは幅のない長さである。」(註6). 「定義3.線の端は点である。」(註7)と述べられている。そし. て、ユークリヅド幾何学における直線の特徴は、単位を用いた長 さを規定しないことである。つまり、長さを測って直線を引いた り、直線の長さを測ったりすることはできない。. 円については、「定義15.円とは一つの線にかこまれた平面図 形で、その図形の内部にある一点からそれへひかれたすべての部 分が互いに等しいものである。」(註8)「定義16.この点を円の 中心と呼ばれる。」(註9)と説明されている。. 円の直径については、「定義17.円の直径とは、円の中心を通 り、両方向で円周によって限られた任意の部分であり、それはま た円を二等分する。」(註10)と述べられている。また、「定義18.. 半円とは直径と、それによって切り取られた弧とによって囲まれ た図形である。半円の中心は円のそれと同じである。」(註11). と述べられている。そこから、ユークリッド幾何学では、独自の 円の定義づけがされていることが分かる。一般に現在の円は、1 点からの距離が等しい点の集合と定義されている。そして、直線 と同様に、長さという単位を用いないので、円の半径や直径の長 さを測ったり、半径の長さを決めて円や弧を描いたりすることは できない。. 現在、曲線というと、自由曲線や解析幾何学上の曲線等の様々 な種類の曲線が取り扱われる。しかし、ユークリッド幾何学では、. 直線と円周と円弧しか扱わない。. 2.2.2 作図. 作図で使用できる道具は、定規とコンパスだけである。そして、. 22.
(29) 定規については、目盛りがないもの、または目盛りを付けてはい けないものとされている。そのため定規は、直線を引くことがで. きる、目盛りの存在しない道具と言える。コンパスとは、2点間 の長さを維持できる道具である。そして、定規とコンパスで行え るのは、次の3種の基本操作である。(註12). 1 与えられた二点を結ぶ直線を引き、二直線の交点を作図す ること。. H 与えられた二点を結ぶ直線と、中心および半径が与えられ た円との交点を作図すること。 皿 中心と半径が与えられた二つの円の交点を作図すること。 A. また、任意の点と点を直線で結ぶこと、線分を延長して延ばす. 、. ♂. こと、任意の場所を円の中心にすることができる。 ㌧/. な一一一 \D.. ユークリッド幾何学において、直線と円と弧は、作図により誤 差の範囲内で完全に再現できる。直線の長さについては、コンパ スをディバイダとして扱えば、その長さを維持することができる。. 図1. その長さを維持していれば、同じ長さの直線を再現できる。. また、円の中心についても、図1のように作図を用いると、中心 点の位置を特定することができる。弧についても図2のようにす 弓. ると、長さが分かる。直線と同じように、点Aにコンパスの針を. /. 刺し、点Bまで脚を伸ばせば良い。. A. 図2. これらの作図を組み合わせることにより、ユークリッド幾何学 における線は全て再現できる。. 2.2.3ユークリッド幾何学における角. B. ユークリッド幾何学では、角度についても、単位を使って表す. D. ことはしない。角度については、「定義8.平面角とは、平面上 A. E. c. にあって互いに交わり、かっ一直線をなすことのない二つの線相. 図3. 互の傾きである。」(註13)と幾何学原論に書かれている。. 与えられた角を作図により再現することは可能である。図3,4. Y. のように∠BACは、コンパスと定規を用いることにより、∠Y. ..〆φ. X. W. 図4. XZ=∠BACとなる∠YXZを描くことができる。 Z. ただ、直角については、特定の大きさのある角として扱う。原 論の定義では、直角を以下のように定義している。 「定義10.直線か、直線の上に立てられて接角を互いに等しく. 23.
(30) するとき、等しい角の双方は直角であり、上に立つ直線はそのた め直線に対して垂線と呼ばれる。」(註14). 90度の直角は、垂直線の作図により作り出すことができる。 ただ、この説明では、角度を実際の数値を使って表しているが、 ユークリッド幾何学では実際にその数値は扱わない。また、角の 2等分線は作図できるので、ある角が与えられたら、その半分の 大きさを持つ角は作図できる。そして、作図を用いても、任意の 大きさの角度を、組み合わせによってある程度は表すことはでき ると言える。. そして、平行についてはこう述べられている。 「定義23.平行線とは、同一の平面上にあって、両方向に限り なく延長しても、いずれの方向においても互いに交わらない直線 である。」(註15). 平行線も作図によって再現できると言える。その作図の方法は、. 無数にあるが、最も単純なのは、一本の直線から、垂直線を2本 作図すれば良い。. 2.2.4 ユークりッド幾何学における多角形. ユークリッド幾何学で扱う線は直線と円と弧である。ユークリ ッド幾何学における「かたちは、それらの線で囲まれたかたちであ. る。ユークリッド幾何学では、直線で囲まれたかたちを、直線図 形と呼んでいる。それは、以下の定義に述べられている。. 「定義19.直線図形とは、線分にかこまれた図形であり、三辺 形とは3つの、四辺形とは四つの、多辺形とは四つより多くの線 分にかこまれた図形である。」(註16). これらは、現在の三角形、四角形、多角形のことである。そし て、定義の21,22では、以下のようなかたちが紹介されている。 それらは、三等辺三角形、工等辺三角形、不等辺三角形、直角三 角形、鋭角三角形、鈍角三角形、正方形、長方形、菱形、偏菱形、. 梯形である。(註17)これらのかたちのうち、三等辺三角形は、 正三角形を意味している。また、偏菱形は平行四辺形を、梯形は、. いわゆる上記以外の四角形を意味している。台形も、梯形に含ま れていると言える。. なお、上記のかたちは全て、作図により描くことができる。ま. 24.
(31) た、一つのかたちが与えられるとそれと同じかたちを、作図によ. り再現できる。実際の作図を以下の図5∼15に示しておく。 /. \./. 図6二等辺三角形. 図5三等辺三角形. 図8直角三角形. 図7不等辺三角形. /1. i 、、. @. /. A 、. 密. 一→一・』. 図9鋭角三角形. 6.. 図12長方形. 図11正方形. 図10鈍角三角形. へ. ㌦. 〆. \こ. 図13菱形. 図15梯形. 図14偏菱形. ここで、正方形より辺数が多い、正多角形について考えてみる。. 正多角形には作図により描けるものと描けないものがある。正六. 角形は円をもとにすると図16のように簡単に作図できる。正人 角形は正方形をもとにすると図17のように作図できる。正五角 形も図18のように作図により描くことができる。 N. 5 6」 3 削1 13. 5. F 〆「。. 0 ノ :/. ε. \. ㍉o. 診’. 〆. \. ●. 罷●禽膨⑦停口. 正五角形の作図 (番号順に描く). 図16. 図17. 図18 25.
(32) そして、各辺の垂直二等分線と正多角形の外接円の交点を頂点. とすることにより、ある正多角形の2倍の辺数を持つ正多角形を 作図することができる。ここで、辺の垂直二等分線を利用する作. 図法から考えてみると、ある正多角形が与えられた時、その2の n乗倍の辺数を持つ正多角形は作図できると言える。実際には、. 数学的な規則(註18)にもとづいて作図により描ける正多角形 の辺数は決まっている。例えば、正65537角形も作図可能である。. ただ、作図により描くことはできない正多角形についても、一 度ある正多角形が与えられれば、そのかたちを再現することはで きる。外接円を再現する。そして、コンパスを用いて一辺の長さ を維持する。そして円周を等分すればよい。. 2.2.5 円と直線によるかたち. 図19のような扇形は、直線と弧に囲まれた代表的なかたちで ある。ある扇形を与えられると、その扇形を作図により再現でき. る。中心角が180度の半円のかたちは、先ほど出てきた定義18 に示されている。また、直角も明確な角度を持つので、90度、 270度の中・O角を持った扇形も任意に作図できる。. 弧と弧により成り立っているかたちもユークリッド幾何学で は描くことができる。無限にかたちがあるが、例として図20∼ 22のようなものがある。それらのかたちも作図により再現でき る。. /! 、. 凝_ 図19. 図20. /. (. /. _ノ. γ. 図21. \. 図22. 26.
(33) そして、直線と弧を組み合わせることにより、ユークリッド幾. 何学でも多様なかたちを描くことができる。図23∼26は、その 例であり、様々な模様が生み出される。 そして、その模様の中で、部分を自由に取り出すと、例として 赤い輪郭線で囲まれたかたちが現われる。それらのかたちは全て、 作図により再現可能である。. \. 図23. 図24. /. 図25 一一一. \ \ 、. \. ノ .ノ. /’. 図26. 27.
(34) 2.3製図による線とかたち 2.3.1本草文における製図 製図は、18世紀にモンジュにより創始された画法幾何学と、 19世紀に発達した射影幾何学と、投象法(投影法とも呼ばれる) をもとに発展してきた。それらの製図の内容を簡単にまとめると、. 出. 「平面である紙の上に、2つ以上の指示をもつ物体を表現する。」. 1. つの視点からだけでその形体を把握できる。あるいは、いくつか. の立体の形体とそれらの位置と距離の関係を平面に表現するこ とである。そして、製図に必要な事は、「図面を見る人に、明瞭 で確実な情報を与えるということ。」(註20)である。つまり、. ≒. 1. 誰が見ても客観的に理解できることが必要である。そして製図は. 1. 現在、機械製図、設計製図、造船製図、服飾製図などの工業製図 を主に意味する。それら製図の記号、図の描き方、数字の表記方. 法などは、日本ではJIS(日本工業規格)により製図規格が早 月27. められている。また世界では、ISO(国際標準化機構)により. Y. 製図規格が定められている。(註21). 噛ド吻図. K凹. なお、造形分野では、投射投影図、等角投影図、1点透視図法 2. や2点透視図法、第3角法などがよく利用される。これらは製図 Y 一一KR の基礎となるものである。造形分野で使用する場合は厳格な製図 @ I腫 (】. 11. x. Ku. R. 1 F、. R右側面図. 11澗図. 図28. 投影図、等角投影図、1点透視図法、2点透視図法の簡単な説明. z. 1. 規則に依らなくても有効に使用できる。図27は、上から、投射 F瞠J麗 となっている。第3角法は図28のような表記であり、工芸、彫. H. 刻、立体などの図面を表すために用いられる。1つの立体を、平. Ai、 K漁黙鷲期惣鰍見てレ姻29の立体を 、. ノ. 」 /Gしかレ本論文における姻よ工業製図のような意味やJI 4コ F. T s、ISOの規格にはとらわれない。本論文では3次元空間にあ る立体も一点から見て平面として扱う。ゆえに、1つの視点から. ll.面. 図29. の見方である。また、再現できる線とかたちを用いて描いていく ことを製図とする。その描き方は手描きでもよいし、コンビュー 28.
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