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促進酸化法による排水中の 微量有害有機物質分解プロセスの開発

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(1)促進酸化法による排水中の 微量有害有機物質分解プロセスの開発 Development of Decomposition Process for Trace Quantities of Toxic Organic Compounds in Wastewater Using Advanced Oxidation Processes. 2006 年 2 月 中川 創太.

(2) 促進酸化法による排水中の 微量有害有機物質分解プロセスの開発 Development of Decomposition Process for Trace Quantities of Toxic Organic Compounds in Wastewater Using Advanced Oxidation Processes. 2006 年 2 月. 早稲田大学大学院理工学研究科 中川 創太.

(3) 第1章 緒論 本章では、本研究の背景として促進酸化処理(Advanced Oxidation Processes)の現状と課題を 明らかにし、本研究に関連する既往の研究を概観し、本研究の目的と意義について述べる。. 1.1 本研究の背景 現在、先進国においては毎日 5 万種類以上の化学物質が環境中に放出されているといわれて いる。また、これらのほかにも、ゴミ焼却などの操作において非意図的に生成した化学物質が放出 されている。このようなことから、 工業排水、農業排水、生活排水、病院排水、最終処分場浸出 水などの排水には、様々な種類の有機化合物が含まれており、この内には、低濃度ながらも、発 ガン性、遺伝子損傷性、または内分泌攪乱性などの作用を持ち、環境中の生物に有害な微量有 害有機物質が含まれている場合がある。 このような物質の例としては、ダイオキシン、トリクロロエ チレン、農薬等の有機塩素化合物、およびビスフェノール A などの内分泌攪乱化学物質などがあ る。これらが環境中に排出された場合には、生物分解が進まないことによる環境中への長期残留、 生物に対する毒性がある場合には環境破壊や食物連鎖による二次的汚染が懸念される。 また、 微量有害物質の前駆体となる物質、例えば、トリハロメタン前駆物質となるフミン酸等の多環芳香 族化合物のようなものについても、これらと同様に注意を払う必要がある。 このような排水は、主に下水道を経て、河川、湖沼、海洋などの公共用水域に放流されているも のの、上記化学物質の処理性能と類似した挙動を示すと考えられる COD の除去率は 60〜70%と 低い 1.1)。 また、処理能力は天候の影響を受け、例えば、降雨時は内分泌攪乱作用を有する物 質の一つであるノニルフェノール濃度が晴天時の最大3倍程度に増加するという報告もある 1.3)。 また、日本の河川では、上流から下流にかけて、水道利用のための取水と下水処理水放流を繰り 返す開放型循環が多く、琵琶湖に始まる淀川水系では開放型循環が5回程度繰り返されるとされ ている。 比較的下流では、河川水中に化学物質が累加されている場合も 多い 1.1、1.2)と考えられ、環境汚染のみならず飲料水を介した人体への影響も懸念される。 以上のような背景より、有害物質が公共用水域に排出され続けることは,将来に予想される生態 系および人体への影響を考慮すると大変重要な問題である。 排水または下水におけるこれらの 物質の処理技術は早急に開発・普及させるべき状況といえる。 有害有機物質を処理するための研究は過去から様々なものが行われている。 例えば、分解 処理については、オゾン処理または促進酸化処理のみならず、湿式酸化処理、超臨界水酸化、 電解処理、超音波処理 などについて研究された報告がある例えば 1.4, 1.5, 1.6, 1.7)。 これら の研究は生物難分解性 COD を分解処理できることを早くから明らかにしている。 しかし、環境問. 1.

(4) 題に社会的 関心が集まりはじめた 1970 当時の当面の緊急的な解決課題は BOD 除去であったこと、また、 処理に伴い大量の汚泥が発生するものの凝集沈殿により分離除去できたことより、これまで応用 研究に発展することは殆どなかった。 しかし、今日では、下水道普及および環境基本法・水質汚濁防止法などの環境関連法令の整 備により BOD 除去施設が普及し、COD 除去などの残された問題が顕在化したこと、また、環境問 題関連研究の進展および分析技術の発達により、化学物質が公共用水域に流出し、生態系に悪 影響を与えることが明白となり、排水中 COD および化学物質に関する社会的関心は明らかに高 まっている。 また、現在では、最終処分場の用地取得が困難であり、廃棄物処理においても処 分場の延命化を目的とした灰化更にはスラグ化が進みつつあることを考慮すると、汚泥副生成を 伴わない分解処理方法を開発し普及させることは世の中に貢献すること大であると考えられる。. 1.2 促進酸化法の概要 (1)促進酸化法の特徴 促進酸化法(Advanced Oxidation Processes, 以下 AOP 法ともいう)とは、活性酸素の一種であ るヒドロキシラジカル(・OH)を発生させる排水中有機物分解方法の総称である。 Table 1.1 に代 表的な物質の酸化還元電位を示す 1.8)。 ヒドロキシラジカルは従来の化学酸化処理で使用されて きたオゾン、HClO および過酸化水素よりも酸化還元電位が高い。 また、ヒドロキシラジカルは求 電子的で OH-イオンになりやすい性質を持ち、電子移動反応、水素引き抜き反応、不飽和結合 への付加反応などのラジカル反応を起こす 1.9)。 ヒドロキシラジカルの寿命は共存物質濃度により 異なる。 共存物質が全く存在しない場合においてもヒドロキシラジカル同士の2両化反応により 失活し、(・OH+・OH→H2O2. k=5×109 L mol-1 s-1)ヒドロキシラジカル濃度が1μmol L-1 の場. 合で 200μs とされている 1.10)。 ヒドロキシラジカルと有機物の反応は反応選択性が低いため、排水中の溶存有機物を水と炭 酸ガスにまで完全分解することが原理的に可能である。 従来より用いられてきた酸化処理では、 有機物との反応選択性があり、例えば、オゾン処理では炭素不飽和結合が主たる酸化部分であ った。 促進酸化法では、従来の酸化処理では難分解であった物質も酸化できること、また、TOC 濃度としても減少させることができることが期待できる。 但し、反応選択性が低い故に、ヒドロキシラジカルがヒドロキシラジカル消費物質(スカベンジャ ー)との反応に消費され、対象物質の分解性能が落ちることが欠点として挙げられる(Table 1.2 参照)。 スカベンジャーの代表的なものとしては反応速度定数が高い無機陰イオン CO32-(4× 108 L mol-1 s-1)、HCO3-(2×107 L mol-1 s-1) 、NO2-(>109 L mol-1 s-1)、Br-(>109 L mol-1 s-1)など が挙げられている。 また、処理の目的が COD 低減などの溶存有機物濃度の低減化ではなく、排 水中に存在する特定の有機物の分解である場合は、これ以外の全ての共存有機物もスカベンジ ャーであるともいえる。 促進酸化法には明確な定義はないが、Al-Ekabi らはヒドロキシラジカルを積極的に発生させる. 2.

(5) ための手段の総称を指すとしている. 1.11). 。 Table 1.3 に促進酸化法に属すると考えられる処理方. 法の概要を示す。 促進酸化法のうち代表的な処理方法である UV/O3、UV/H2O2 処理などでは紫外線を用いて いる。 紫外線は電磁波の一種であり、可視光と X 線の間の領域に位置する(波長: 100〜 400nm)。 紫外線は更に近紫外線(UV-A:>320nm)、中紫外線(UV-B:280-320nm)、遠紫外線 (UV-C:<290nm)の3領域に分類され、下記の式に示すように、波長が短いほど光量子エネルギ ーが高まり、より多種類の結合を解離させることが理論上は可能である(Table 1.4 参照)。 但し、 実際の解離反応は、共存分子、分子構造および光強度などの影響を受け、光量子収率は通常極 めて小さい 1.13)。 促進酸化法ではオゾンまたは過酸化水素からヒドロキシラジカルを発生させる手段として紫外 線を用いている。 なお、紫外線の種類は、(a)オゾンが極大吸収波長が 260nm(吸光係数 130 1cm-1、モル吸光係数 3000cm L mol-1)である Hartley 吸収帯を有すること(Figure 1.1. 1.14,1.15). 参. 照)、また、(b)過酸化水素は 290nm 以下の波長で吸収を示すこと(モル吸光係数 19.6cm L mol-1 (at.254nm))より、UV-C である。 これにより、紫外線処理では分解不可能な有機化合物であっ てもヒドロキシラジカルの作用により分解可能となる。 前述したように、促進酸化法は現在のところ明確な定義が定まっていない。 本研究では、以 後特にことわりがない場合は、促進酸化法のうち紫外線、オゾン、過酸化水素のうち2つ以上を組 み合わせる処理方法を指すこととする。. Table 1.1 代表的な物質の水溶液中における酸化還元電位 1.8)(298K、酸性条件) 物質 ・OH O3 H2O2 HClO. 電極反応 ・OH+H++e-=H2O O3+2H++2e-=O2+H2O H2O2+2H++2e-=2H2O HClO+H++e-=1/2Cl2+H2O. 3. 酸化還元電位[V] 2.85 2.07 1.78 1.63.

(6) Table 1.2 ヒドロキシラジカルと各種無機イオンの反応速度 1.12) k [L mol -1 s-1]. k [L mol -1 s-1]. 4.

(7) Table 1.3 促進酸化法の種類と主な反応 種類. 主な反応. 参考文献. UV/O3. O3 + H2O + hν → H2O2 + O2 H2O2 + hν → 2・OH ※1 H2O2 + hν → 2・OH ※2. 1.11). UV/H2O2. 1.11) 1.53). UV/O3/H2O2. H2O2 ⇔ H+ + HO2- (pK=11.65) HO2- + O3 → ・OH + O2- + O2 ※3 ※1 + ※2 + ※3. Fe2+/H2O2. Fe2+ + H2O2 → Fe3+ + ・OH + OH-. 1.11). UV/Fe2+/H2O2. 1.11). UV/TiO2. Fe(OH)2+ + hν → Fe2+ + ・OH Fe2+ + H2O2 → Fe3+ + ・OH + OHH2O+ hν→ ・OH + H+ + e-. 1.11). VUV. H2O + hν→ ・OH + ・H (<190nm). 1.16). EB. H2O + e-→ ・OH + ・H + e-. 1.17). EB/O3. 1.17). O3/MnO2. H2O e-→ ・OH + ・H + e・H + O3 → ・HO3 → ・HO + O2 e-+ O3 → O3O3- + H+→・HO3 → ・HO + O2 ※4. 1.51). O3/AC. ※4. 1.52). O3/H2O2. -. ※4 反応機構は現状では明らかではない. 5.

(8) Table 1.4 各種結合の解離エネルギーおよび解離最大波長 1.13) 結合の種類 C≡N(nitrile) C≡C C=O C=C C=S C-C(aromatic) C-H(acetylene) C-F O-H C-H(ethylene) C-H(methane) Si-O C-O S-H N-H C-C(aliphatic) C-O(ether) C-Cl S=S Si=H Si-C C-N(nitromethane) C-S O-O(peroxide) N-H(hydrazine). 解離エネルギー [kJ・mol-1] 8 8 7 6 5 5 5 4 4 4 4 3 3 3 3 3 3 3 3 3 2 2 2 2 1. 7 3 3 0 3 2 0 9 6 4 1 7 6 6 5 3 3 2 1 1 9 8 7 6 5. 3 7 0 7 9 0 7 8 2 3 0 3 3 3 2 5 0 7 8 4 3 5 6 7 5. 解離最大波長 [nm] 1 3 7 1 4 3 1 6 4 1 9 7 2 2 2 2 3 0 2 3 6 2 4 0 2 5 9 2 7 0 2 9 2 3 2 1 3 2 9 3 2 9 3 4 0 3 5 7 3 6 2 3 6 6 3 7 6 3 8 1 4 0 8 4 2 0 4 3 3 4 4 7 7 7 2. E=h・C/λ・N 但し、E:光量子エネルギー J・mol-1、 h:プランク定数 6.63×10-34 J・s c:光速 3.0×108 m・s-1、. N:アボガドロ数 6.02×1023 mol-1. 6.

(9) Figure 1.1 オゾンの吸収スペクトル 1.14,1.15). 7.

(10) 1.3 促進酸化法に関する既往研究 1.3.1 反応モデル 促進酸化法では、活性酸素が関与するラジカル連鎖反応のなかでヒドロキシラジカルが生成し、 その一部が有機物分解に利用されるとされている。 但し、活性酸素の寿命が ns〜μs オーダー と非常に短いことから、反応モデルに関する研究は困難なものとなっている。 反応モデルの既往研究は、数値解析によりラジカル連鎖反応のシミュレーションを試みるもの、 およびヒドロキシラジカルの実測を試みるものに大別される。 まず、数値解析によりラジカル連鎖反応のシミュレーションを試みる研究は、近年になってコン ピューターの性能が向上したことにより増加している。 研究内容は、ラジカル素反応のうち、パル スレーザートラップ法などにより、実験的に反応速度定数が既知であるものを利用して、仮想空間 上で実際に生じているであろうラジカル連鎖反応を構築し、これをルンゲクッタ法などの数値解析 手段を用いて解くものである。 オゾン処理においては、まず、Weiss1.18)、Stumm1.19)らの研究により オゾンの自己分解においてラジカル連鎖反応が関与することが示唆された。 次に Hoigne らがオ ゾンのラジカル連鎖反応における各ラジカル素反応の抽出およびラジカル種の同定・存在予測を 行い、ラジカル連鎖反応モデル(SBH モデル(研究者名 Staehelin, Buhler, Hoigne に由来))を提 唱した 1.20,1.21,1.22,1.23)。 SBH モデルはそれ以降の研究において、基本的概念としての役割を果たし ている。 なお、SBH モデルを利用したシミュレーションでは、平衡関係にある化学種の平衡は瞬 時に達成される、つまり緩和時間0と仮定している場合が多い。 たとえば、過酸化水素が HO2+H+との平衡関係にある場合(平衡定数 K)、H2O2→HO2- +H+(反応速度定数 k1)と HO2- +H+ →H2O2(反応速度定数 k2)とに分割し、K=k1/k2 とする。 ここで k1,k2 共に未知の値であるので 十分に大きな値を与えている。 森岡ら 1.24)は SBH モデルが現実よりかなり早いオゾン分解速度を 示し、この原因は純水中に存在するリン酸、炭酸および微量有機物がヒドロキシラジカルと反応す るためとしている。 また、これらの影響を考慮した拡張 SBH モデルを提唱している。 促進酸化処 理のうち、O3/H2O2 処理については、SBH モデルで対応することができる。 紫外線を併用する 処理方法では、SBH モデルに光反応を加えたものがモデルとして利用されている。 紫外線が関 与する反応における量子収率の一例を Table 1.5 に示す。 草壁ら. 1.25). は量子収率は共存酸素. 濃度の影響を受けることを指摘している。 Philen1.26)らは気相オゾンの紫外線分解における量子 収率は連鎖反応の影響があるため見かけは約4であったと報告している。 Beltran ら. 1.27). はアント. ラジンを分解処理対象とした検討を行い、シミュレーションから分解効果の87%はラジカル連鎖反 応が関与したものと述べている。. 草壁らはUV/O3 反応槽における物質移動および光反応の. 速度から、紫外線強度の影響について考察している。. 古川ら. 1.28). は O3/H2O2 処理の反応シミ. ュレーションにおいて、SBH モデルの一部を簡素化して迅速に計算結果を得るためのモデルを提 案している。 酢酸ナトリウムを分解対象物質とした場合においては、TOC 分解性能、オゾンガス 吸収率が実験と概ね合致すると述べている。 また、過酸化水素を分割して注入することで分解 性能が向上することを明らかにしている。 宍田ら. 8. 1.29). は酢酸を分解処理対象とした O3/H2O2 処理.

(11) において、実験結果およびシミュレーション結果から、総括オゾン移動容量係数には最適値が存 在すると述べている。 水からヒドロキシラジカルを発生させることができる波長 190nm 未満の真空 紫外線を応用する試みも行われている。. 1.30). 越後. を分解すると報告している。 但し、Brown ら. 1.31). らは、真空紫外線のみでも難分解性有機物. は低圧水銀ランプまたはキセノンエキシマランプ. から発せられる真空紫外線を利用する方法を検討しているが、水そのものに吸収されることから有 効水槽厚みはそれぞれ 300,100μm と極めて薄いことを述べている 1.32)。 いては、上村. 1.33). 紫外線処理装置につ. らがシミュレーションにより溶存オゾンの紫外線分解については通常の浸漬型紫. 外線リアクターでは水槽厚みの影響が極めて大きくデッドゾーンの割合が大きい可能性があること を指摘している。 次に、ヒドロキシラジカルの実測を試みる研究は、ESR 法(電子スピン共鳴装置を用いる方法) についていくつか研究例がある。 野田ら 1.54, 1.55)は UV/TiO2 系およびこれに H2O2 を添加した系に 於いて、活性酸素の生成挙動について調査している。 この結果、(a)UV/TiO2 系では酸素の還 元によりスーパーオキサイドが生成していることおよび水の酸化によりヒドロキシラジカルが生成し ていること、(b)H2O2 を添加した系に於いては、H2O2 の還元によりヒドロキシラジカルが生成すること および H2O2 の酸化によりヒドロペルオキシラジカル(・HO2)が生成すること (c) 量子収率は H2O2 を添加した場合の方が高まること を実験的に確認したとしている。 なお、光源はキセノンランプ であり、370nm または 420nm 未満を遮断するフィルターを介して試料に光線を照射したとしている。 Makino らは、水の超音波処理によりヒドロキシラジカルおよび水素ラジカル(・OH)が生成すること を実験的に確認している. 1.56). 。 内海らは、塩素処理またはオゾン処理において、ヒドロキシラジカ. ルが生成していることを確認したとしている 1.58)。 また、オゾン水から発生するヒドロキシラジカルの 測定においては、回分的な測定方法によりオゾン濃度 20〜100μmol L-1(0.96〜4.8mg・L-1)の条 件において測定可能であり、反応時間 60min におけるヒドロキシラジカルの生成率はモル比で約 1.1%であったと記している。 また、ストップドフローシステムを利用することにより反応速度的解析 を行なったところ、ヒドロキシラジカルの生成速度は 8.7×101[(mol L-1)-1.25 S-1]×[O3[mol L-1]]2.25 で あったと記している 1.57)。 水田らはフェントン反応に於いて生成する DMPO-OH 濃度と H2O2 濃度 の関係について調査している 1.59)。. 9.

(12) Table 1.5 光反応における量子効率 量子効率 mol・quantum-1 0.33(185nm) 0.42(172nm) 0.7(147nm) 0.62 0.6-1.2 0.5 0.5 1.0. 吸光係数 L mol-1 cm-1 3300 19 270. Atrazine+hν(254nm)→Products. 0.05. 2486. e, ad). Benzene+hν(215nm)→Products. 0.1. 533. 1.16). Trichlorethylene+hν(215nm)→Products. 0.3. 7000. 1.16). 2,4,6-Trinitro-toluene+h ν (230nm) → Products Fe(OH)2++ hν(313nm)→Fe2++・OH. 0.001. 18000. 1.16). 0.14. -. 1.40). Fe(OH)2++ hν(360nm)→Fe2++・OH. 0.017. -. 1.40). 反応式 H2O+hν→・HO+・H. O3+H2O+hν(254nm)→H2O2+O2 H2O2+hν(254nm)→2・HO H2O2+hν(200nm)→2・HO. 引用文献 1.31) 1.31) 1.31,1.32) 1.27,1.50,1.34) 1.35) 1.27,1.36,1.37) 1.38) 1.16). 1.3.2 有機物分解および実用例 有機物と促進酸化法で生成するとされているヒドロキシラジカルの反応速度定数は、多くの有 機化合物について調査されている Figure 1.2 にその一例を示す。 高橋. 1.41). らはフェノールなど. 低分子化合物において、オゾン処理では無機化が不可能な物質が UV/O3 処理で無機化すること を報告している。 Peyton1.42)は考案した促進酸化法の反応モデルから、メタノールを分解対象物 質とした場合における処理方法の選択指針を提案しており、紫外線による分解効果が認められな い場合は O3/H2O2 を用いるのがよいとしている。 Yongdi らはフェノールまたはアニリン溶液を対 象としたオゾン処理実験によりそれぞれの凝集分離性が向上し、この過程で二両化反応(カップリ ング反応)が生じていること、および、オゾン処理後そのものでは TOC の減少は認められなかった ことを報告している 1.60)。 促進酸化法の適用先を検討した例としては、堀川ら 1.43)により染色排水の UV/O3 処理において、. 10.

(13) COD,TOC が大きく減少すること、男成 1.44)により数 mg・L-1〜数十 mg・L-1 オーダーのトリクロロエチ レン汚染地下水の浄化に適用できることなどが報告されている。 下水分野においては、下水二次処理水の一部を工業用水または親水・修景用水として再利用 する目的で促進酸化処理が検討される例がある。. 河相ら. 1.45). に「凝集膜ろ過→オゾン→オゾン. /過酸化水素→生物活性炭」という処理フローを行うことにより、水道水並の TOC 濃度が得られる ことを報告している。 宍田らは下水処理水の再利用水製造技術として「凝集膜ろ過(または砂ろ 過)→オゾン/過酸化水素」という処理フローにおいて、オゾン注入率 25〜70mg・L-1、過酸化水 素注入率 0〜8mg・L-1 の範囲を中心にで検討し、過酸化水素注入率には最適値が存在すること、 および溶存オゾン濃度一定制御を行うことにより TOC、COD 除去量および処理水の過酸化水素 濃度の変動が小さくなると報告している 1.61, 1.62, 1.64)。 中本らは工業用水として使用されている水質 レベルを参考にオゾン/紫外線処理の適用性を検討し、CODMn および TOC の大幅な低減が可 能であることを確認している。 また、処理に伴い BOD/TOC が増加することを報告している. 1.66). 。. 加賀美らは、発光波長範囲が 300-420nm(主波長 352nm)であるブラックライトを利用したオゾン/ ブラックライト/二酸化チタン触媒処理においても TOC 分解効果が得られることを報告している 1.69). 。 下水処理水の全量に対して高度処理を行うことを目的としたものでは、阿部らは下水放流水. CODMn7.5mg・L-1 以下を目標として「オゾン→好気性ろ床法」プロセスを検討し、二次処理方法が 担体投入型嫌気-無酸素-好気法(パイロットプラント)の場合では 10mg・L-1 以下、標準活性汚泥 法(実施設)の場合では 12mg・L-1 以下の条件で目標水質が得られたことを報告している 1.68)。 高 橋らはオゾン処理とオゾン/紫外線処理の比較を行いオゾン注入率 50mg・L-1 以下では紫外線併 用効果が殆どなかったと報告している. 1.67). 。 岡本らは二酸化マンガン粒子を充填した塔の下部か. らオゾンガスを散気する処理方法により難分解性 COD、色度、臭気および殺菌に顕著な効果が あることを記している 1.63)。 但し、実用例として主なものは、比較的汚濁が少ない上水または地下水分野においてである。 ヨーロッパの上水処理において有機塩素系農薬の除去を目的としたものが数多くある。 例えば、 フランスでは約 700 カ所でオゾン処理が導入されており、このうち少なくとも 24 カ所でオゾン処理 の後段に O3/H2O2 処理が導入されている。 英国では、約 50 カ所の浄水場で促進酸化処理を導 入している。 米国では地下水中有機塩素化合物の分解方法として促進酸化法を実施した例が ある. 1.46). 。 中山ら 1.47)は O3/H2O2 処理が電着塗装工場排水の再利用方法として実用化したことを. 報告している。 半導体産業では工場排水の一部を UV/H2O2 処理し、水源として再利用している 1.48). 。. 促進酸化処理に伴う有害物質の副生成物に関する研究としては、柴田らが臭化物イオン(Br-) 存在下オゾン処理または UV/O3 処理を行うことで臭素酸イオン(BrO3-)が副生成するのに対して O3/H2O2 処理では副生成が認められなかったことを報告している。. 11. 1.70、1.71). 。.

(14) k [L mol-1 s-1]. Figure 1.2 ヒドロキシラジカルと有機物の反応における反応速度定数の一例 1.49). 12.

(15) 1.4 本研究の目的と意義 前節で述べたように、促進酸化法に関する研究はこれまでにも行われている。しかし、下記に示 すような課題が残されていると考えられる。 まず第一に、ラジカル素反応をもとに仮想空間上でラジカル連鎖反応を構築する反応モデル 的検討は、コンピューターの性能の性能と共に増加し、これまでに十分行われていると考えられる。 このような検討は、学術的に大変貴重である。 但し、分かり得る範囲のデータしか入力できない 性質のものであるため、適用範囲は、組成が比較的単純なモデル排水に限られている。 促進酸 化法が実際に適用される実排水には様々な無機化合物、有機化合物が各様の濃度で含有され ており、実排水の複雑な排水性状を模擬することは不可能である。実排水にも容易に適用可能な 評価方法が課題である。 また、今後は、分解性能の向上を目的とした促進酸化法の改良または 新規なヒドロキシラジカル発生方法の検討も行われるものと考えられる。新たなヒドロキシラジカル 発生手法が出現した場合の評価ツールについても課題が残っている。 第二に、これまでの促進酸化法に関する研究は、有機物の分解性能が従来方法より優れてい ることを示すあるいは強調するものが殆どであり、実用可能な運転範囲を考慮していないものが多 い。 例えば原水の有機物濃度数百 mg・L-1 と高い場合においても、促進酸化法をそのまま適用 している場合があり、酸化剤注入率および紫外線照射量に起因するランニングコストが増加し、実 際的な解決方法とはなり得ないという問題がある。 また、分解性能の評価に適した指標(有機物 の無機化)を優先させて評価しており、排水基準の指標における優位性は十分に示されていない という問題がある。 第三に、促進酸化処理に伴う有機塩素化合物などの有害物質の副生成については、O3 また は H2O2 という酸素系酸化剤の安全性は比較的高いと考えられていることから、知見が少ないとい う問題がある。 排水中の共存物質をも考慮した検討は不足していると考えられる。 第四に、排水中に pg・L-1〜μg・L-1 オーダーと極めて低い濃度で存在する微量有害有機物質 については、これを含む実排水を対象とした場合の適用性が明らかになっていないという課題が ある。 以上の背景より、本研究では、実排水中の微量有害有機物質の分解処理方法として、促進酸 化法を実用化させるために必要と考えられる検討項目、(a)評価方法、(b)処理の効率化、(c)処理 に伴う有害物質副生成およびその抑制方法、および(d)極微量な濃度で存在する有害有機物質 を含む実排水への適用性評価 について研究を行った。 促進酸化法は、既往研究に示されているとおり、水環境において問題となる有機化合物をほぼ 種類を問わずオンサイトで分解するという優れた特性を持つ。 本研究の意義は、微量有害有機物質を対象とした場合の実用レベルにおける適用性を明らか にすること、および新たな適用方法・プロセスを提案することを通じて、水環境における微量有害 有機物質問題の改善に寄与する知見を提供することである。. 13.

(16) 1.5 本研究の構成と内容 本研究は、本第1章および下記の7章から構成される。 第 2 章「促進酸化法により発生するヒドロキシラジカルの実験的定量方法の検討」では、・OH 発 生量を指標とした処理性能の定量的評価を目的とし、ESR(電子スピン共鳴装置)とスピントラッピ ング剤である DMPO(5,5-dimethyl-1-pyrroline ‐N-oxide)を併用する方法を検討した。この結果、 O3 を併用する促進酸化処理については、DMPO が O3 と極めて容易に反応して、・OH 捕捉能力 を喪失する問題があるものの、UV/H2O2 法では、波長 280nm 以下の UV を遮断することで定量 可能であることを明らかとした。更に、この方法では共存無機イオンが・OH の挙動に与える影響も 評価可能なことも明らかにした。 第 3 章「実排水中微量有害有機物質の分解処理への適用」では、促進酸化法を実排水中の微 量有害有機物質の分解処理に応用することを目的として、(1) [最終処分場埋立地浸出水中の微 量有害有機物質を対象とした基礎研究]、および(2) [下水二次処理水中の COD・色度および臭 気を対象とした応用研究] の 2 つの研究を行った。前記(1)では、実排水中の有機物を対象とする 場合においても、対象有機物の分子量に依存することなく、無機化まで酸化分解が可能であるこ とを明らかとし、この高い酸化分解性能は、酸化剤消費量あたりの分解性能は従来同様であるも のの、単位時間あたりの活性酸素発生量が格段に高いことに起因するとする考えを示した。前記 (2)では、促進酸化法の適用性をパイロット規模で評価し、有機物の無機化のみならず、水質汚濁 防止法での評価指標のうち CODMn、色度、臭気、大腸菌、及び一般細菌の指標においても高い 処理性能が得られ、実用性としても高いことも明らかにした。 第 4 章「実排水中微量有害有機物質の凝集分離性の改善への適用」では、有害有機物質の濃 度が比較的高い場合におけるランニングコスト軽減策として、促進酸化法を凝集分離処理の前処 理として適用し、有機物の凝集分離性を改善させる検討を行った。この結果、軽度の促進酸化処 理を行うことにより凝集分離処理における有機物分離性能を、TOC(全有機炭素)除去率として 15%から 29〜37%に向上させることができ、特に分子量が高い有機物の凝集分離性を高められるこ とを示した。本処理プロセスでは、凝集沈殿単独の場合より汚泥発生量を削減でき、なおかつ、促 進酸化処理そのものによる酸化分解効果も得られることから、従来法より実用的であることを示し た。 第 5 章「高塩類濃度排水の促進酸化処理における有機塩素化合物(TOX)副生成およびその 抑制方法の検討」では、塩化物イオン濃度が高い排水を対象として、O3 を利用する促進酸化処 理などを行う場合は、有機塩素化合物(TOX)が副生成する可能性を指摘し、これを実験的に証明 した。また、TOX 副生成を抑制するための方法として H2O2 添加の併用が効果的であることと、そ の反応メカニズムを示した。 第 6 章「排水中内分泌攪乱化学物質の分解処理への適用」では、実排水中に極微量な濃度 (pg・L-1〜ng・L-1 レベル)で存在する有害有機化学物質である内分泌攪乱化学物質(環境ホルモ ン類)の分解処理への適用を目的として、 (1) [ダイオキシン類(DXNs)代替物質を対象とした基. 14.

(17) 礎検討および浸出水中 DXNs を対象とした適用性の調査]、および(2) [洗煙排水中 DXNs および 下水二次処理水中環境ホルモン類の分解処理への適用性の調査] の 2 つの研究を行った。この 結果、前記(1)では、クロロベンゼン類を用いた検討により、促進酸化法の中では UV/O3/H2O2 処 理が最も効果的であることを示し、モデル排水中の極微量な濃度で存在する DXNs をも分解可能 なことを明らかとした。更に、浸出水中に含まれる DXNs を対象とした連続処理実験により、実排水 においても DXNs 分解率約 71%が得られることを示した。前記(2)では、内分泌攪乱化学物質の存 在形態または分子構造が分解性能に与える影響について調査した。まず、洗煙排水中に含まれ る DXNs を対象として、DXNs の存在形態が分解性能に与える影響を検討し、DXNs が付着する浮 遊性懸濁物質(SS)の粒径が分解性能に影響を与えることを明らかとした。また、反応速度が低い 粒径 1.0μm 以上の SS と共に存在する DXNs については、濃縮操作を併用する処理方法が有効 であることを示した。また、DXNs および下水に含まれる代表的内分泌攪乱物質であるノニルフェノ ール、ビスフェノール-A、エストラジオール、エストロンについて、酸化分解における速度定数と分 子構造の関連について調査し、求電子フロンティア軌道の電子密度が極在化しているものの方が 酸化分解を受けやすく易分解性であることを明らかにした。 第7章では、以上の研究結果を総括し、今後の方向性を示した。 参考文献 1.1)松井三郎. 水のリスクと下水道の新しい役割-水循環の視点から-, 月刊下水道, Vol.21, No.6, pp8-13, 1999 1.2)後藤尚弘、胡洪営、藤江幸一. 産業排水の削減対策と最適処理, 用水と廃水, Vol.42, No.10, pp14-19, 2000 1.3)田中修三, 小川明宏. 合流式下水処理場における雨天時のアルキルフェノールの挙動, 用 水と廃水, Vol.44, No.1, 2002 1.4) L. Li, P. Chen, F. Gloyna. Genaralized kinetic model for wet oxidation of organic compounds, AIChE J., Vol.37, pp1687-1697, 1991 1.5) J. W. Tester, H. R. Holgate, F. J. Armellini, P. A. Webley, W. R. Killilea, G. T. Hong, H. E. Barner. Emerging technologies in hazardous water management III, American Chemical Society, Washington D. C., p35, 1991 1.6)Electro decomposition 高橋信行、香月収. オゾン−電解法による低分子有機化合物の処理 (I), 工業用水, Vol.261, pp13-19, 1980 1.7) Y. Nagata, K. Hirai, H. Bandou, Y. Maeda. Decomposition of hydroxybenzonic acids in water by ultrasonic irradiation, Environ. Sci. Technol., Vol.30, No.4, pp1133-1138, 1996 1.8)化学便覧基礎編改訂 3 版, Vol.2, pp473-482, 1984 1.9)中野稔, 浅田浩二, 大柳善彦.活性酸素 生物での生成・消去・作用の分子機構, 共立出版, 16-18, 1988 1.10)日本化学会編. 活性酸素種の化学, 季刊化学総説, No.7, 1990. 15.

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(22) 第2章 促進酸化法により発生するヒドロキシラジカルの 実験的定量方法の検討 本章では、促進酸化法など活性酸素を利用した実排水中有機物の酸化分解方法において、 実排水にも適用可能であり、なおかつ統一的な評価手段を得ることを目的として、促進酸化法で 発生する活性酸素を実験的に定量する方法を検討した結果について述べる。. 2.1 緒言 促進酸化法は、排水中の有機物が水と炭酸ガスにまで完全分解されるなどの特性があり、排 水中 COD または有害有機物の分解方法への応用が進みつつある。. しかし、促進酸化法に関. する研究は、その殆どがモデル排水または実排水を原水とした有機物の分解パフォーマンスを指 標としている。 このため、同一の装置および処理条件であっても原水によって評価が異なるので、 統一的な評価ができないという問題点がある。 また、活性酸素を発生させる新規な処理方法が 出現した場合においても優劣の評価が難しいという問題点もある。 促進酸化法で発生するとされ ている活性酸素が定量的に実測できれば、統一的に評価できる有望な指標にすることが可能とな り、(1)活性酸素発生量と処理条件の関係、(2)活性酸素発生量と有機物分解量の関係 などの 基礎的知見も深まり、(1)促進酸化処理装置の最適化、(2)活性酸素の高効率な利用方法また は発生方法 などの応用研究もより円滑に進むようになると考えられる。 本章では、活性酸素発生量を指標として促進酸化法を評価するための、ヒドロキシラジカルの 定量方法について研究を行った。 特に電子スピン共鳴装置(ESR)を利用した定量方法に着目 して、下記の5項目ついて検討した。 (1) スピントラッピング剤のトラップ率の確認 (2) ヒドロキシラジカル定量条件の検討 (3) UV/H2O2 処理におけるヒドロキシラジカル定量方法の検討 (4) オゾン処理またはオゾンを併用する促進酸化処理におけるヒドロキシラジカル定量方法の検討 (5) 共存無機イオンがヒドロキシラジカル生成に与える影響の評価方法の検討. 2.2 ヒドロキシラジカルの測定方法に関する基礎調査 (1) 活性酸素の種類とその性質 1.9) 活性酸素とは、基底状態の酸素分子以外の活性に富む酸素種を指し、ヒドロキシラジカル(・ OH)、 スーパーオキサイド(O2-)、一重項酸素(1O2)、過酸化水素の4種類があることが明らかとな. 20.

(23) っている。 Table 2.1 に活性酸素の性質を示す。 促進酸化法で主に発生するとされているヒド ロキシラジカルはこれらのうち寿命が ns〜μs と最も短く、反応性が最も高い。 主な反応は、 (1) 有機物から水素ラジカルを引き抜き、水(H2O)を生成する脱水素反応 (2) 電子的な性質、OH-になり易い性質を有することより、有機物の二重結合(π電子)に付 加する付加反応 の 2 種類である。 有機物に対する反応選択性は低く、いずれの反応においても、反応後は有機 ラジカルを生成するとされている。 また、この有機ラジカルは、周囲に存在する分子、例えば酸素 分子などとラジカル連鎖反応を起こし、更に酸化分解反応が進むとされている。 例えば、第 1 章 でも述べたとおり、Beltran らはアントラジンの分解効果のうち、87%はラジカル連鎖反応の寄与によ るものとの見解を示している. 1.27、1.39). 。. スーパーオキサイドは比較的寿命が長く、酸素分子に電. 子が1つ付加した構造であることから主な反応は還元反応である。 一重項酸素は、寿命がμs と 比較的短く、求電子的であるため主な反応は酸化反応である。 但し、電子を対で受け取るので ラジカル連鎖反応は基本的に起こさないとされている。 Table 2.1 活性酸素の性質. 寿命 (オーダ−) 有機物との 反応性 主反応. 連鎖反応の 有無. ・OH (ヒドロキシラジカル) ns〜μs. O2 (一重項酸素) μs. O2(スーパーオキサイド) ms. 非常に高い. 高い. 低い. (1) 脱水素反応 ・OH + RH →R + H2O. 1. 求電子的な 2 電子付 加反応 R-H + 1O2→ROOH. (2)二重結合への 付加反応 Ph-OH + ・OH →・Ph-(OH)2 有. (1)還元反応 C(NO2)4+O2→C(NO2)3 + 2NO2+O2. H2O2 (過酸化水素) d (非常に長い) 非常に低い フェントン反応など遷移金属 イオンとの・OH 生成反応 H2O2+Fe2+→ Fe3+ + OH- + ・OH. (2)求核置換反応 R-X+O2-→ROO・+X-. 無. 無. 無. (2) 活性酸素の測定方法 1.9, 2.7, 2.8) Table 2.2 に水溶液中における活性酸素の主な測定方法を示す。. これらの方法は、主に. 生体内における活性酸素の生成・消失機構の解明に用いられてきたものである。 いずれの方法 も、活性酸素の寿命が非常に短いことから、何らかの有機薬品を活性酸素が発生する系内にあら かじめ存在させ、活性酸素と有機薬品との反応で生成する反応生成物を定量することで活性酸 素を間接的に定量している。 ヒドロキシラジカルの測定方法としては、電子スピン共鳴装置 (ESR)法、p-ニトロソジメチルアニリン法、メチオナール法、サリチル酸法、ジメチルスルホキシド法. 21.

(24) が知られている。 電子スピン共鳴装置(ESR)法では、スピントラッピング剤と呼ばれる試薬とヒドロ キシラジカルとを反応させて長寿命な有機ラジカルを生成させ、有機ラジカル濃度を ESR 装置で 定量することでヒドロキシラジカル濃度を間接的に定量する。 ヒドロキシラジカルの他にも、ス−パ −オキサイド、一重項酸素を検出することができる。 ヒドロキシラジカルの定量性は後述する他の 分析法よりも高いとされている。. p-ニトロソジメチルアニリン法(Figure 2.1 参照)は、ヒドロキシ. ラジカルが p-ニトロソジメチルアニリン(黄色)と反応して無色になることを利用して、波長 440nm の 吸光度の変化から定量する方法である。 等モル反応と見なしてヒドロキシラジカル濃度を算出す るが反応選択性が低いという問題がある。 メチオナール法(Figure 2.2 参照)は、ヒドロキシラジ カルとメチオナールの反応により生成するエチレンガスの発生量からヒドロキシラジカルを定量す る方法である。 サリチル酸法はサリチル酸とヒドロキシラジカルとの反応で生成した 2,5-ジヒドロキ シ安息香酸を液体クロマトグラフィ蛍光検出器により測定する方法である。 DMSO 法は DMSO と ヒドロキシラジカルとの反応で生成するメタンスルファニン酸をジアゾニウム塩によって発色させ、 その吸光度を測定する方法である。 これらのいずれの分析法においても反応選択性に問題があ り定量性は高くないとされている。 なお、O2-、1O2 を定量する場合はウミホタルルシフェリン誘導 体 MCLA 法、またはシトクロム C 還元法を用いる。 ウミホタルルシフェリン誘導体 MCLA 法はス ーパーオキサイドおよび一重項酸素の検出する方法であり、両者の区別はスーパーオキシド消去 酵素であるスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)を添加することで行う。 シトクロム C 還元法は、 シトクロム C がスーパーオキサイドにより還元されることにより 550nm に強い吸収を示すことを利用 する方法であり、スーパーオキサイド選択的に定量することができる。 本研究では、(1)促進酸化法ではヒドロキシラジカルが主に生成するとされていること、(2)ESR 以外の方法は定量性が低いとされていることより、ヒドロキシラジカルの定量性に比較的優れた ESR 法を活性酸素定量方法として選択した。 また、促進酸化法で発生するヒドロキシラジカルを 対象とした場合の ESR 法の適用性について検討することとした。 Table 2.2 水溶液中の活性酸素の測定方法 測定方法 ・OH ESR(スピントラッピング剤併用) p-ニトロソジメチルアニリン法 メチオナール法 ウミホタルルシフェリン誘導体 MCLA 法 シトクロム C 還元法. ○ △ △ × ×. 測定可否 1 O2 △ × × ○ ×. O2△ × × ○ ○. ○・・・定量可能 △・・・定性的な判断は可能なものの定量性に問題がある ×・・・定性および定量不可能. 22.

(25) Figure 2.1 p-ニトソロジメチルアニリン法の概要. Figure 2.2 メチオナール法の概要 (3) ESR 法について 2.1, 2.2, 2.9, 2.10, ) 電子スピン共鳴装置 (ESR)は、不対電子を持つ物質(=ラジカル)含む試料を数千ガウスの 磁場中におき、不対電子のスピンの遷移に伴うマイクロ波(周波数 9.4GHz 程度)の吸収を共鳴現 象を利用して観測することで、不対電子を持つ物質の定性定量を行う装置である。 不対電子の 電子スピンエネルギーは、磁場を加えられた場合にゼーマン分裂(またはゼーマン効果)と呼ばれ る2通りのエネルギー状態をとる。 このエネルギー差に相当する波長のマイクロ波を加えると共鳴 現象が生じることを利用して、共鳴現象が起こる際のマイクロ波の波長と磁界の強さから不対電子 のおかれている状態を把握して定性を行う。また、共鳴現象の強さから不対電子の量を定量する。 Photo 2.1 に、今回用いた ESR の外観を示す。 ESR から直接得られる情報は Figure 2.4 に示す ようなマイクロ波の吸収スペクトルの微分形である(以下、ESR シグナルともいう)。 従って、試料 中のラジカル量は、吸収スペクトルの微分形を 2 回積分した値(以下、エリア値という)と比例する。 この値をラジカル濃度が既知の標準物質の測定結果と比較して試料のラジカル濃度を算出する。 ラジカル濃度が既知の標準物質としては、一般的に TEMPOL(4-hydroxy-2,2,6,6-tetramethyl piperidine-1-oxyl、Figure 2.3)が用いられる。これを所定濃度となるように超純水に溶解させ、ESR で測定して検量線を作成する。. 本実験の主な対象であるヒドロキシラジカルの測定においては、. ヒドロキシラジカルの寿命が ns〜μs と非常に短くヒドロキシラジカル自体の検出は ESR ではでき. 23.

(26) な い 。 こ の た め 、 ラ ジ カ ル と 特 異 的 に 反 応 す る 性 質 を 持 つ DMPO. (5,5-dimethyl-1-. pyrroline‐N-oxide)、または、PBN (N-tert-buthyl-α-phenylnitrone)などのスピントラッピング剤 (Figure 2.5)を予めラジカル発生系に存在させ、スピントラッピング剤とヒドロキシラジカルとの反応 で生成した長寿命ラジカル(以下アダクトともいう)の濃度を測定してヒドロキシラジカルの濃度とし た。 Figure 2.6 にスピントラッピング剤(DMPO)とラジカルの反応モデルを示す。また、Figure 2.7 にスピントラッピング剤として DMPO を用いた場合における各アダクトの ESR シグナルを示す。. Photo 2.1 ESR 装置の外観(日本電子製、RE-1X). Figure 2.3 TEMPOL(4-hydroxy-2,2,6,6-tetramethyl piperidine-1-oxyl)の分子構造 ※:4‑hydroxy‑TEMPOのピーク 60. ※. ※. ※. ピーク高さ[‑]. 40. 20. 0 4‑hydroxy‑TEMPO濃度:1[μM] 4-hydroxy-TEMPO濃度. ‑20. :1[μmol・L-1]. ‑40. ‑60. 336±5[mT]. 磁界[mT]. Figure 2.4 4-hydroxy-TEMPO の ESR シグナルの 1 例. 24.

(27) (a)DMPO(5,5-Dimethyl-1-Pyrroline ‐N-Oxide). (b)PBN(N-tert-Buthyl-α-Phenylnitrone). Figure 2.5 スピントラッピング剤の分子構造. H 3C H 3C. H. +. R・. N O. H. H 3C +. ‑. H 3C. R. N O. ・. Figure 2.6 スピントラッピング剤とラジカルの反応モデル(DMPO). Figure 2.7 スピントラッピング剤として DMPO を用いた場合の ESR シグナルの例 2.13) ( 1G = 0.1mT ). 25.

(28) 2.3 実験方法 2.3.1 促進酸化法で発生する活性酸素の定量方法および定量条件の検討 2.3.1.1 スピントラッピング剤のヒドロキシラジカルトラップ率の確認 促進酸化法以外のヒドロキシラジカル発生手段を利用することにより、スピントラッピング剤のヒ ドロキシラジカル補足率を確認した。 スピンとラッピング剤としては、生体内で発生するヒドロキシ ラジカルの定量に最も汎用的に用いられている DMPO とした。 Figure 2.8 に実験方法のフローシ ートを示す。 ヒドロキシラジカル発生手段としては、富山大学の松郷助教授より入手した NP-III2.4) を用いた。 NP-III は波長が 370nm の光を照射することにより NP-III 1mol からヒドロキシラジカル を 2mol 発生する性質がある(Figure 2.9 参照)。. NP-III は水に溶けにくいことから、まず、100%. アセトニトリル中に NP-III を 2m mol L-1 となるように溶解させた NP-III 原液を作成した。 次いで、 NP-III 濃度 10μmol L-1、DMPO 濃度 20m mol L-1 となるように超純水中に添加した試料を作成し た。 作成した試料を偏平セルに入れて ESR に組み込み、入力電力 500J・s-1 の高圧水銀ランプ ((株)ウシオユ−テック製、UVM501MD)および 370nm 以下の光を遮断するローカットフィルター (シグマ光機(株)製、紫外線用反射型固定式 ND フィルタ)により波長 370nm 以上の光を 0〜120s 照射しつつ、DMPO-OH アダクトの ESR シグナルを観察した。 Table 2.3 に ESR 装置の測定条件 を示す。 ESR の測定条件はマイクロ波出力 8mJ・s-1 で一定とし、磁界を 336±7.5mT の範囲で変 化させるものとした(Gain:10〜400, Sweep Time:2〜8min)。水温は常温とした。 超純水 NP‑III原液. O. O. DMPO. MeO. アセトニトリル(100%) NP‑III NP‑III原液(NP‑III 2mM) -1) (NP-III 2mmol・L. (1)NP‑III原液の調整方法. 偏平セルに試料注入し、 ESRに偏平セルを設置. CH 2 N CH O O OH. 370nm. O. 測定試料 -1 、 DMPO 20mM) (NP‑III 10μM、DMPO (NP-III 10μmol・L 20mmol・L-1 ). O OH. CH MeO N CH 2. NP‑III. DMPO‑OH. (2)トラップ率の確認方法. Figure 2.9 NP-III の・OH 発生モデル 2.4). Table 2.3 ESR の測定条件 ESR装置 偏平セル. 磁界条件 その他条件. DMPO. UV (≧370nm)を0〜120sec照射 しつつ、ESR測定. Figure 2.8 実験方法のフローシート. 定量用標準物質 マイクロ波条件. 2・OH. Frequency Power Field Sweep Width Gain Sweep Time Time Constant. 日本電子(株)製 RE-1X 日本電子(株)製水溶液セル LC12(フラットタイプ) 内容積:130[μL](合成石英製、t0.3mm×w10mm) 4-hydroxy-TEMPO 9.412 GHz 8 mJ・s-1 336 mT 7.5mT 10〜400[-] 2〜8 min 0.03s. 26.

(29) 2.3.1.2 ESR測定におけるスピントラッピング剤濃度および紫外線照射条件の検討 ESR により、ヒドロキシラジカルを定量する場合における、スピントラッピング剤濃度および紫外線 照射条件を検討した。 ヒドロキシラジカルの発生方法は、UV/H2O2 法とした。 (1)実験装置 実験装置は、ESR 装置と紫外線照射装置から構成される。 Figure 2.10 に実験装置の概略を 示し、Figure 2.11.、Photo 2.2 に紫外線照射装置の概略を示す。 また、Table 2.4 に実験装置及 び紫外線照射装置の仕様を示す。 紫外線ランプには入力電力が 500J・s-1 の高圧水銀ランプ ((株)ウシオユーテック製 UXM501MD)を使用した。 なお、光が並行に進む部分において 254nm の紫外線の照射強度を測定したところ 609m J・s-1・cm-2(測定器:トプコン製 UVR-25)であ った。 また、紫外線強度の調整及び短波長の紫外線の遮断には紫外線フィルター(シグマ光機 ㈱製 石英製紫外線用反射型固定式 ND フィルター)を使用した。 なお、これ以降、紫外線フィ ルターのうち、波長 200nm 以上の紫外領域において透過率 1%のものを 1%フィルター、透過率 10%のものを 10%フィルター、透過率 50%のものを 50%フィルターと呼ぶこととする。 また、紫外 透過フィルターのうち透過限界波長 220nm のものを 220nm フィルター、透過限界波長 280nm のも のを 280nm フィルター、透過限界波長 370nm のものを 370nm フィルターと呼ぶこととする。 促進 酸化法で主に用いる光源は低圧水銀ランプ(主波長:254nm)であるが、254nm を透過限界波長と する紫外線フィルターは入手できなかった。 (2)実験方法および実験条件 (2.1)スピントラッピング剤濃度の検討 超純水に過酸化水素および DMPO を所定濃度となるよう添加した試料を作成し、これを偏平 セルに注入し、ESR 装置に設置した。 偏平セル内の試料に紫外線を照射しつつ ESR シグナルを 経時的に観測した。 ESR シグナルが最も明瞭に観測される DMPO 添加条件を決定した。 Table 2.5 に ESR 装置の測定条件を示し、Table 2.6 に実験条件を示す。 実験条件は、過酸化水素濃 度を 10m mol L-1 で一定とし、DMPO 濃度を過酸化水素濃度に対して 1 から 5 倍等量まで変化さ せるものとした。 なお、スピンとラッピング剤濃度を検討する試験では紫外線フィルターは使用し なかった。 なお、水温は常温とした。 (2.2)紫外線照射条件の検討 紫外線照射中の ESR シグナルのピーク高さ(以下、ピーク高さともいう)を経時的に観察し、ピ ーク高さが、最も大きくなる紫外線照射条件を調査した。 ピーク高さを経時的に観測する方法は、 ESR シグナルのピークが認められる条件に磁界条件を固定しつつ紫外線照射を行い、ピーク高さ を連続的に読み取るものとした。 この方法より、ピーク高さが最も大きくなる紫外線照射条件を求 めた。 なお、観測するピークは左から 2 番目のピークとした(Figure 2.12 参照)。 実験条件を Table 2.7 に示す。 また、Figure 2.13 にピーク高さの経時変化の 1 例を示す。 過酸化水素濃度 は 1m mol L-1、DMPO 濃度は過酸化水素濃度に対して 2 倍(モル比)で一定として、紫外線照射. 27.

(30) 条件がピーク高さに与える影響を調査した。 紫外線波長の影響を調査する場合は、220nm フィ ルター及び 280nm フィルターを使用することにより 220nm 未満または 280nm 未満の紫外線を遮断 した。 紫外線強度の影響を調査する場合は、50%フィルター及び 10%フィルターを使用し、紫 外線強度を 10%または 50%に減少させた。 なお、ESR 装置の測定条件は基本的に(2.1)と同様 とした。 水温は常温とした。 Table 2.4 実験装置及び紫外線照射装置の仕様 ESR装置 偏平セル 紫外線照射装置. 紫外線フィルター. 日本電子(株)製 RE-1X 日本電子(株)製水溶液セル LC12(フラットタイプ) (合成石英製、内容積 130[μL]、t0.3mm×w10mm) (株)ウシオユーテック製UXM501MD ランプ仕様:入力電力 500 J・s-1、 Deep UVランプ 電源装置 :XM−5010 AA−A シグマ光機(株)製フィルター (1)紫外線強度調整用 紫外線用反射型固定式 ND フィルター FNDU-50C02-1(透過率 1%) FNDU-50C02-10(透過率 10%) FNDU-50C02-50(透過率 50%) (2)短波長紫外線の遮断 紫外線用反射型固定式 ND フィルター UTF-50S-22U(透過限界波長 220nm) UTF-50S-28U(透過限界波長 280nm) UTF-50S-37U(透過限界波長 370nm). マイクロ波 キャビティー. 偏平セル 紫外線用反射型固定式NDフィルター (交換可能、複数枚装着可能). 反射板. DeepUVランプ 石英製集光レンズ. マイクロ波. キャビティー. 電磁石 UV. 紫外線 (紫外線照射装置より). 偏平セル. ESR装置内 紫外線照射装置. Figure 2.10 実験装置の概略. ESR装置内. Figure 2.11 紫外線照射装置の概要. 28.

(31) (a)紫外線照射装置. (b)ESR 装置内の偏平セルへの紫外線照射状態. Photo 2.2 紫外線照射装置の外観 40 ※. ※. 30. ピーク高さ[-]. 20. ※. ※:DMPO‑OHのピーク. ※. 10 0 H2O2濃度:1[μM] [μmol・L-1] 10%フィルタ −と280nmフィ ルターを装着した場合. ‑10 ‑20 ‑30 336±5[m T]. ‑40. 磁界[mT]. Figure 2.12 ESR シグナルの 1 例. 30. ピーク高さ[-]. 25 20 15 10. UV照射開始. 5 0 0. 1. 2 3 経過時間[min] 経過時間[min]. 4. 5. Figure 2.13 ESR シグナルのピーク高さの経時変化の 1 例. 29.

(32) Table 2.5 ESR の測定条件 項目 測定温度 マイクロ波周波数 マイクロ波出力 中心磁場 磁場掃引幅 変調磁場. 値 室温 9.41[GHz] 8.0[m J・s-1] 335.9[mT] ±5.0[mT] 0.079[mT]. Table 2.6 実験条件(スピントラッピング剤濃度の最適化) Run.. 過酸化水素濃度 [m mol L-1]. 1 2 3. 10. DMPO/H2O2 [mol・mol-1] 1 2 5. 紫外線用反射型固定式NDフィルター. 無し. Table 2.7 実験条件(紫外線照射条件の最適化) Run.. 過酸化水素濃度 [m mol L-1]. 1 2 3 4 5 6 7. 2.3.1.3. DMPO/H2O2 [mol・mol-1]. 1. 紫外線フィルター 無し 220nmフィルター 280nmフィルター 50%フィルター 10%フィルター 280nmフィルター+50%フィルター 280nmフィルター+10%フィルター. 2. ESRによるUV/H2O2処理で発生するヒドロキシラジカルの定量. 促進酸化法の 1 種である UV/H2O2 処理において、ヒドロキシラジカル定量法としての ESR の適 用性の見極めることを目的として実験を行った。 (1)実験装置 Figure 2.14 に実験装置の概要を示す。 実験装置は、吸光光度計用の石英セル(光路長 10mm、高さ 45mm)の底部にマグネットスターラーを設置し、試料水を攪拌しつつ石英セルの側面 から紫外線を照射する構成とした。 紫外線照射後の試料を、偏平セルにサンプリングして ESR 装 置に設置し、ESR シグナルを観察した。紫外線照射は、280nm フィルターを併用して行い、波長 280nm 未満の紫外線は遮断した。 (2)実験方法及び実験条件 実験方法は、超純水に過酸化水素および DMPO を所定濃度となるように添加した試料(全量 2mL)に紫外線を所定時間照射し、ESR 測定または残留過酸化水素濃度の測定を行う方法とした。. 30.

(33) 測定に必要なサンプリング量が不足気味であったこと、および紫外線照射後の各分析を迅速に行 うことから、同条件の試験を 2 度行うことにより、ESR 測定と残留過酸化水素の測定を行った。 過 酸化水素の測定は硫酸チタン法 2.5)で行った。 Figure 2.15 に硫酸チタン法による過酸化水素測 定方法の概要を示す。 実験条件は、過酸化水素濃度が 1〜10m mol L-1、DMPO 濃度が 20m mol L-1、 紫外線照射時間が 0〜120s とした。 ESR 測定条件は前項 2.3.1.2 と同様とした。 なお、 水温は常温とした。 (1)ESR測定 (2)残留H2O2測定. 石英セル. H2O2 DMPO. UV. 撹拌子. スターラー. Figure 2.14 実験装置の概要( UV/H2O2 系) 試料3.2mL. 試料12mL. 20% H2SO4 1.0mL 1M TiSO4 0.6mL. 20% H2SO4 4mL 1M TiSO4 2.5mL 20mLメスアップ. ABS408nm測定 (a). ABS408nm測定 (b)※. (a)・・・H2O2[mg/L]=ABS408nm[-]×76/(セルの光路長[cm]) (b)・・・H2O2[mg/L]=ABS408nm[-]×68/(セルの光路長[cm]) ※ サンプルできる量が特に少ない場合に用いる. 付記 1)H2O2のモル吸光係数ε408nm=750 L mol-1 cm-1 、検出下限:約400μg L-1 2)光透過長10mmの吸光光度セルを使用 3)換算式:ABS=-log(I/I0)=(光透過長[cm])×(H2O2濃度[mol L-1])×750 より算出. Figure 2.15 硫酸チタン法による過酸化水素測定方法の概要. 2.3.1.4 ESRによるオゾンまたはオゾン併用促進酸化処理におけるヒドロキシラジカ ル定量方法の検討 オゾン処理およびオゾンを利用する促進酸化法で発生するヒドロキシラジカルの定量における ESR の適用性を見極めることを目的として実験を行った。 (1)実験装置 Figure 2.16 および Figure 2.17 に、それぞれオゾン処理およびオゾンを利用する促進酸化法 における実験装置および実験方法を示す。 オゾン処理および O3/H2O2 処理における反応槽は テフロン内蓋つきの容積約 7mL のガラス瓶とした。 UV/O3 処理における反応槽は前項 2.3.1.3 と. 31.

(34) 同様の石英セル(光路長 10mm、高さ 45mm)とした。 オゾン水はオゾン発生器((株)荏原製 DCA-1)と撹拌気泡塔型のオゾン溶解装置(ガラス製、容積約 800mL、内径 85mm、水深約 150mm)により予め作成した。 (2)実験方法および実験条件 オゾン処理および O3/H2O2 処理における実験方法は、超純水に DMPO およびリン酸バッファ ー(pH7)を添加・混合後、オゾン水を添加して全量 6.5mL として蓋をし、所定反応時間経過後に ESR シグナルの観察および溶存オゾン濃度の測定を行うものとした。リン酸バッファ-は、オゾンの 自己分解速度が pH により異なることを考慮して添加した。O3/H2O2 処理では DMPO およびリン酸 バッファーを添加する際に同時に過酸化水素を添加した。 オゾン濃度の測定方法はインジゴ法 2.6). とした。 Figure 2.18 にインジゴ法による溶存オゾン濃度の測定方法を示す。 リン酸バッファー. の原液は濃度が 200m mol L-1 の Na2HPO4 および KH2PO4 を pH が 7.0 になるように調合して作成 した。 実験条件は、溶存オゾン濃度;0.3〜32mg・L-1、DMPO 濃度;0.2〜20m mol L-1、リン酸バッ ファー濃度;10〜100m mol L-1、反応時間;0〜120s とした(濃度の値はいずれも混合後のもの)。 溶存オゾン濃度の調整は散気するオゾンガス濃度を変化させることで行った。 ESR の実験条件 は前項 2.3.1.2 と同様とした。 水温は常温とした。 UV/O3 処理における実験方法は、超純水に DMPO およびリン酸バッファーを添加・混合後、オゾン水を添加して全量 2mL として、直ちにパラ フィルムで蓋をして所定時間紫外線照射を行った。この後に ESR シグナルの観察および溶存オゾ ン濃度の測定を行うものとした。 その他の方法はオゾンおよび O3/H2O2 処理の場合と同様とした。 実験条件は、溶存オゾン濃度;4mg・L-1、DMPO 濃度;100m mol L-1、リン酸バッファー濃度;10m mol L-1、反応時間;60s とした。 紫外線照射装置は(株)ウシオユーテック製 UXM501MD とした。 ESR 測定条件は前項 2.3.1.2 と同様とした。 水温は常温とした。 (1)ESR測定 (2)溶存O3測定 オゾン水 DMPO リン酸buffer. O3ガス (O3発生器より). 撹拌・一定時間静置. Figure 2.16 実験装置および方法の概要(オゾン処理) 石英セル. ESR測定 ESR測定. O3 DMPO. UV. リン酸buffer 撹拌子. O3 H2O2 DMPO リン酸buffer. 撹拌・一定時間静置. スターラー. (a)UV/O3. (b)O3/H2O2. Figure 2.17 実験方法の概要(UV/O3 処理、O3/H2O2 処理). 32.

参照

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調 査 結 果 6.1 現地調査結果(水温,DO)

、本研究 、岩手県盛岡市内 、水田 農業水路、 溜池 水田群 下流 溜池 位置 水域 対象 、魚類 生息状況 調査 。調査 結果、以下 明 。1) 属、 、 、. 、 、 3科6種類 農業水路 溜池 間

調査対象地域の地下水の水質型分類

そこで本研究では BFS の水和反応を理解するため にアルカリ刺激剤として消石灰と無水石こうを内割 置換させ,BFS

-40℃まで過冷却して越冬する細胞に 過冷却を促進させる 4 種類のフラボノ イド配糖体および 4

食品中のダイオキシン類( DXNs

中国における水道水源としての基準 全窒素: 1 mg/L, 全リン: 0.05 mg/L. 都市下水

をパプリカの色ごとに示した。 これらは無水物に換算した値である。表 1の水分 含有量をもとに 2007年