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  ・屠      掃

  圃    囑納 図40

ドリッピングの表現

図41

 ドリッピングは絵の具を垂らしたり、流したり、広がらせたり することによる表現の総称であると考えられる。このドリッピン

グにより表現されるかたちにも、統計的なフラクタル性が含まれ ている。

 絵の具を一方向に真っ直ぐに流すと、絵の具は図42のように 鉛直方向に流れていく。しかし、絵の具を流しながら、紙を左右

に傾けたり、ストローで吹いたりすると図43のような表現とな る。このかたちを見てみると、川の流れの分岐や樹の枝分かれと

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図44

図45

図47

図48

同じように見える。そのため、このかたちが統計的なフラクタル であるならば、川の流れの分岐や樹の枝分かれと同様の次元を持 つと言える。

 また絵の具を数滴、高いところがらぽとりと垂らすと、図44 のようなかたちがうまれる。このようなかたちは、絵の具を含ん だ筆を振ってみてもしぶきの跡により似たような表現ができる。

ただ、しぶきの広がりの方向が変化する。そのかたちを見ると、

海岸線とは異なるように感じられるが、外形は統計的なフラクタ ル曲線になっていると考えられる。ここで、このかたちをさらに 拡大してみると、図45のようになる。ここまで拡大してみると、

海岸線とさらに異なるように見える。そして、その突き出たとげ のようなもののかたちをよく見てみる。そこのかたちは、一方向 への流れであるように見える。一方向への流れなら、図43のよ

うなかたちと同様の性質がある可能性も考えられる。フラクタル 性を持っているなら、拡大や縮小をしても同じような構造をして いるといえる。ただ、垂れた時の勢いで広がっただけなら、流れ たとは言えないかもしれない。

 そして、大量の絵の具を水で薄めに溶いて、厚い紙の上に流し ていくと、図47のような表現になる。流れや絵の具の広がりが 多様に重なっている。そして、一度流した絵の具が乾かないうち に、もう一度絵の具や水を流してみると、にじみのような表現も うまれてくる。その場合にはにじみと同様の統計的なフラクタル 性がうまれることもあるだろう。

 ここで、デカルコマニー、にじみ、ドリッピングの表現をまと めてみる。どの表現も絵の具の流れ、にじみ、広がりを表現した ものと考えられる。そのため、流体がかたちの形成に関係してお り、統計的なフラクタル性がうまれると考えられる。

3.3.3 マーブリング表現の多様性

 マーブリングは、一見してみると、最も偶然性の高い表現がう まれるように思われる。私もそういう印象を持っていた。単純に 考えると、以下のようにかたちが形成される。丸くかき混ぜると、

渦のようなかたちがうまれる。そして、ランダムにかき混ぜると、

図48,49のように複雑になる。ただ、マーブリングのかたちは統

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       計的なフラクタル性を含んでいるので、いくらかき混ぜても構造        の複雑さはあまり変わらない。そのため、かき混ぜるほどかたち        の変化がうまれやすいと考えることにする。

      マーブリング表現には、流体の性質である粘性というものが大        きく関わっている。粘性とは、以下のように説明されている。

      「速く変形させようとすると大きな力が必要になります。」

      (註26)

      「粘性が大きいと、乱流になりにくい。」(註27)

      「固体が動いている時には、固体の表面に接している流体も、粘        性のために固体といっしょに動きます。」(註28)

       ここから考えると、粘性の高い溶液を用いて、ゆっくりかきまぜ        ると、かたちの調整を行いやすい。また、変化の速度が遅くなり、

       気に入ったかたちが現れた時に、かきまぜるのを止めることがで        きる。そして、かきまぜるもののかたちを変えてみると、現れる        かたちも変化する。粘性を変える、つまり流す溶液を工夫するこ        とによっても、マーブリング表現の調整ができる。

       うに丸く動かしていくと、渦が一定に並んだような表現がうまれ図50        る。そして、この櫛の使い方を工夫していくと図55〜57のよう        な多様な表現がうまれる。

図51 図52 図53

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   ・1

図54

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図55

図58

図56 図57

そして、粘性の違う液体を使用したり、親油性と親水性の交わら ない性質を利用したりする工夫もできる。また、一度模様ができ てから、新たな溶液を垂らすこともできる。他にも、写し取り方 の工夫や、同じ紙の上に異なる表現を重ねることもできる。以下 に例の図59〜64を示しておく。なお、立体的なマーブリングと 考えられる表現も存在する。いろいろな色のろうを溶かして固め たものは、図58のように断面がマーブリング表現になっている。

(註29)

図59 図60

図61

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図62

3.4可視化による線とかたち

3.4.1本論文における可視化

 「2.7.1」では、複数の多次数の非線形方程式の複雑な組み合 わせによって成り立っている現象を、コンピュータ・シミュレー ションにより数値解析することを示した。この「3.4」では、そ れらのシミュレーションを実際に行ったことにより現れる線と かたちを取り扱う。そして、実際に現れる結果を見えるようにす ることを可視化と呼んでいる。可視化とは以下のように説明され

ている。

「流れに限らず密度、温度、ひずみなどの分布を肉眼、光学顕微 鏡、望遠鏡などによって直接見えるようにすること。」(註30)

「生体の組織を染料で着色して、顕微鏡で観察すること、あるい は不透明な物質の内部をX線で透視することも、広い意味での可 視化に入る。」(註31)

 肉眼、光学顕微鏡、望遠鏡などによって直接見えるようにする、

と説明されているが、その見えるものの全てを本論文における可 視化によるものと扱うわけではない。

 光学顕微鏡、望遠鏡などによって見えるかたちは、確かに肉眼 では見えないかたちかもしれない。しかし、それは単に大きさや 距離の問題である。もとのかたちは、小さくても遠くにあっても、

そのもののかたちを持っている。顕微鏡で見るミジンコのかたち も、「3.1.4」と同じように考えると、自由曲線により囲まれてい る。不透明な物質の内部をX線で透視することにより見えるかた ちも、もともとのかたちを持っている。それらの具体的な例は、

人体の内部をCTスキャンで見る方法である。しかし、人体内部 の器官や構造も、もともとのかたちが存在する。よって、CTス キャンによる可視化は、既にあるかたちを別な方法で見たことに なる。そのためCTスキャンは、本論文における可視化とは扱わ

ない。

 可視化における線とかたちは非線形方程式によって成り立っ ている複雑な現象によりうまれるものとする。あるいは、非線形 方程式による現象とは限らないが、特定の状況下や実験下でない いと形成されない線やかたちである。それらは、温度や濃度、密 80

図65

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「■カ・,イ1Irさしノ=一,. シ 1∫ ,L }4プ,ノJIノ,うア4乙

ソ亡亨81iイ 1:二 二!:、812礼正fヒ   Ilj齢己fヒ  ノ月質.

図66

度、ひずみや応力の分布などである。それらは可視化しないと見 ることができない。ここから以下の文章では、可視化という言葉 は、本論分における可視化を意味する。

 なお、可視化による線とかたちには、偶然性のある線とかたち と共通する部分がある。その線やかたちの形成を理解すれば、あ る程度そのかたちの形成を調整できるものもある。また、統計的 なフラクタル性を含むこともあるだろう。ただ、偶然性のある線 とかたちは、平面的であり、造形表現でよく扱われるものを扱っ ていた。それに対して、可視化による線とかたちは、さらに複雑 であり多様な形成方法がある。そして、造形分野との境界がはっ きり区別できるわけではないが、化学、物理学などの視点で扱わ れることが多い。

3.4.2 コンピュータ以外の可視化

 流体の可視化は、風洞や水槽を用いて、気体や液体を実際に流 すことにより行われる。そして、気体や液体に色を着けたり、微 粒子を混ぜたり、流れていくものの軌跡を追ったりすることによ り、その流れはよく分かるようになる。気体や流体に色を着けて その流れを見えるようにした線は流線と呼ばれる。水の流れの上 の特定の場所から連続的にインクを流しても良い。また、水に浮 く小さなものを特定の場所から流し続けてもよい。それらの様子 を見るだけでも可視化といえる。また、それをカメラやビデオで 撮影することにより可視化は記録される。そして、写真や映像の 一場面を印刷すると、可視化による線やかたちが描き出されるこ とになる。なお、「3.3」で述べたマーブリングなどの表現も一種 の流れの可視化と言える。流れの可視化の例として、図65を示 す。色をつけた液体を、塩水の入った水槽に左右から乱流状態に なるように噴出させている。変化の様子を撮影したもの上から下 に順に示す。

 その他には、温度によって色が変わる物質を利用した可視化が ある。その可視化には温度によって色が変化するある種の液晶や 薬品を利用する。それらを板に塗ったり、溶液に混ぜたりする。

そうすると、熱を加えた時の板の表面や溶液中の温度分布が可視 化できる。

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