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博士(理学)小池良光 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(理学)小池良光 学位論文題名

Structure of 曇 H‑hypernucleus

(! H ― ハイパ―核の構造)

学位論文内容の要旨

   最近の原子核研究分野において、ストレンジネスを持ったハドロンを含む原子核の研究 に多くの興味が向けられている。すなわち、通常の原子核についての理解に基づぃてA −ハイ パー核、E →ハイパー核、さらに最近では二重A や三一ハイパー核についての研究が開始されて 来た。これらのハイパー核は自然界では弱崩壊により壊れてしまうが、最近の実験の進展に よルハイパー核の人工的な生成が可能になり、それらの性質が調べられるようになった。

     ここでは、ストレンジネスS‑ ー1 を持つハイペロン( AIE ).の中で、アイソスピン3 重 項状態に属するE ーハイペロンを含むy −ハイパー核に注目する。E −ハイペロンと核子(N )の 間のポテンシャルは、EN 散乱の実験データが少なぃために実験データだけから決めること ができなぃ。特に、ポテンシャルのスピン依存性についてはスピン観測量についての実験が 無いのでわかっていなぃ。こうした実験の状況から、ポテンシャルを決めるためには理論的 なモ デル を導 入す る必 要が あ る。 Nijmegen やBonn グループは豊富なNN の散乱データを 利用し、結合定数に対してS び(3) ,またはS び(6) 対称性を仮定してハイペロン一核子間ポテ ンシャルを導いた。これらのグループは、定性的な特徴として強いスピン・アイソスピン依 存性を持つ E −N 間ポテンシヤルを提案した。

     このE‑N 間ポテンシャルの強いスピン・アイソスピン依存性により、 E −ハイパー核内で のE ―ハイペロンと残りの核との間ボテンシャルが、E‑ ハイパー核のスピン・アイソスピン状 態に依存する場合がある。Harada らはこのE ―核間ポテンシャルのスピン・アイソスピン依 存性の例が ENNN 系において、 4He( 静止K+ ,7r+) 反応における 7r 十と7r −のエネルギースペク トラムの形の違いとして見られることを指摘した。また実験との比較において、 Nijmegen モデル D ボテン シャルに基づぃたSAP ポテンシャルを用いて求められた万スペクトラムは、

実験結果と定性的な一致を示している。この理論と実験との定性的な一致は、y ーN 間ポテン シャルが強いスピン・アイソスピン依存性を持つことと解析に用いられたE ーN 間ポテンシャ ルの信頼性を意味している。

   本研究は、E ― N 間ポテンシャルの強いスピン・アイソスピン依存性に基づぃて、他のE ― ハイパー核における E ―核間ポテンシャルのスピン・アイソスピン依存性を理解することを目 的と する 。上 で述 べた ENNN の 4 体 系以 外の E ハイ パー 核と して 、ENN 系は ポテンシャル 以外にモデルを導入する必要がないので不定性が少ないとぃう利点を持っている。また、最 も基本的な系として ENN 系を理解することは、軽いE ―ハイパー核を統一的に理解する上で 極めて重要であると考えられる。

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  ENN系 に つ い て は こ れ ま で 以 下 の 研 究 が な さ れ て い る 。GarcilazoはE−NN系 に お い て 束 縛 状 態 が な い こ と を 示 し て い る 。 ま た 、StadlerとGibsonはBonnグ ル ー プ が 提 案 し た ENポ テ ン シ ヤ ル を 用 い て こ の こ と を 議 論 し て い る 。AfnanとGibsonは ア イ ソ ス ピ ンT=

0, ス ピ ンS ‑ 1/2の 状 態 が 最 も 引 力 的 で あ る と の 考 え に 基 づ ぃ て 、Ad散 乱 に よ っ て そ の 状 態 を 観 測 す る こ と の 可 能 性 に つ い て 調 べ た 。DoverとGalはEN +AN転 換 過 程 に お け る ス ピ ン ・ ア イ ソ ス ピ ン の 選 択 貝IJを 考 慮 し て 、(T =1,S:1/2) 0ENN系 の 状 態 の う ち で 特 に 核 子 対 の ア イ ソ ス ピ ンTNN 0, ス ピ ンSNN二 ニ1の 状 態 が 、 寿 命 が 長 く 最 も 束 縛 し や す い 候 補 で あ る と ぃ う 主 張 を 行 っ た 。 し か し な が ら 、(T=1,S=1/2)の 状 態 に は(TNN二 ニ ニ11 SNN二 ニ01の 状 態 の 状 態 も あ り 、 こ れ ら の2つ の 状 態 の カ ッ プ リ ン グ に よ っ て さ ら に 引 力 的 な 状 態 が 生 じ る 可 能 性 が あ る 。 こ の よ う に 、ENN系 に お い て 最 も 引 力 的 な 状 態 に つ い て 統 一 し た 見 解 が 無 い の が 現 状 で あ る 。 し た が っ て 、 こ の 問 題 を 解 決 す る た め に 、(T=l,S:1/2) の 状 態 の2つ の チ ャ ネ ル 間 の カ ッ プ リ ン グ の 効 果 に つ い て 調 べ る 必 要 が あ る 。 さ ら に 、Eハ イ ペ ロ ン の3つ の 異 な る ア イ ソ ス ピ ン 成 分 の 状 態(E十 , ぷ ,Eー ) 間 の 大 き な 質 量 差 と ク ー ロ ン ポ テ ン シ ャ ル に よ ル ア イ ソ ス ピ ン 対 称 性 が 破 ら れ る 可 能 性 が あ る 。 し た が っ て 、 こ の チ ャ ネ ル カ ッ プ リ ン グ に つ い て 最 終 的 な 結 諭 を 得 る た め に は 、y‑ハ イ ペ ロ ン 間 の 質 量 差 と ク ー ロ ンカ を考慮 しなけ れぱ ならな ぃ。

    こ の 研 究 で は 、ENN系 と し て 墨Hハ イ パ ー 核 に 注 目 し 、 エ ネ ル ギ ー ,ANNチ ャ ン ネ ル ヘ の 転 換 幅 や 波 動 関 数 の 広 が り な ど の 物 理 量 を 計 算 し 、 墨H− ハ イ パ ー 核 の 構 造 に 対 す るE−ハ イ ペ ロ ン 間 の 質 量 差 と ク ー ロ ン カ の 効 果 を 詳 細 に 調 べ る 。 現 実 的 なENポ テ ン シ ャ ル と し て は、4EHe(K―, 汀土) 反応 の解析 で用い られたSAPを 用い る。

    ENN系 を 解 く 方 法 と し て は 、Kamimuraの 組 替 え チ ャ ネ ル の 方 法 を 用 い る 。 墨Hハ イ パー 核は、[pn(3S1)○E0],[nn(1恥)○E十],[pn(1恥)○Eo]および[pp( ̄恥)○Eー]のチャネ ルに よって 構成さ れる ので、 この4チャ ンネル の連立 方程 式を解 く。

    EN間 ボ テ ン シ ヤ ル と し て は 、Nijmegenモ デ ルDと モ デ ルFに そ れ ぞ れ 基 づ ぃ たSAP− 1とSAP−Fを 用 い た 。 そ れ ぞ れ のE―N間 ポ テ ン シ ヤ ル に 対 し て 、3EHハ イ パ ー 核 に お い て 、 ゾ =1/2+の 束 縛 状 態 を 得 た 。 こ の 状 態 は 計 算 で 取 り 入 れ た4つ の 状 態 の う ち 、 主 に [prl(3Si) ○l:o], [nn(1馬 ) ○E十 ] お よ び[ppC So)○Eー ] の3つ の チ ャ ネ ル に よ っ て 構成 さ れ る 。[prl(3Si) ○Eo]の チ ャ ネ ル は 他 の2つ の チ ャ ネ ル と 結 合 す る 。[pn(3Si) ○p] と

[nn(1島 ) ○E+] の チ ャ ネル 間 の闇値 エネ´ レギー の差 は[pri(3S1) ○l:o]と [pp(1烏) ○E−]の チ ャ ネ ル 間 の そ れ に 比 べ て か な り 大 き ぃ に も か か わ ら ず 、 前 者 の チ ャ ネ ル の 間 の カ ッ プ リ ン グ か ら の エ ネ ル ギ ー へ の 寄 与 は 後 者 の チ ャ ネ ル 間 の カ ッ プ リ ン グ に 比 べ て 無 視 で き な ぃ ほ ど 大 き ぃ 。 実 際 、 前 者 の カ ッ プ リ ン グ は こ の3EHの 状 態 の エ ネ ル ギ ー や 波 動 関 数 の 広 が り を 大 き く 変 え る 。 こ こ で 、 こ の3つ の チ ャ ネ ル の 間 の カ ッ プ リ ン グ がENN系 を 束 縛 さ せ る ほ ど 引 力 的 に 作 用 し てkゝ る こ と が 明 ら か に な っ た 。 ま た こ の 強 い カ ッ プ リ ン グ に よ っ て 、 ア イ ソ ス ピ ン は 近 似 的 に 非 常 に 良 い 量 子 数 に な っ て い る (〜 96% ) こ と が 分 か っ た 。     以 上 の 結 果 に 基 づ ぃ て 、 こ の 研 究 で は 、ENNの3体 系 の 研 究 に お い て こ れ ま で 認 識 さ れ て い な か っ たT‑lの 状 態 に お け る チ ャ ネ ル 間 の カ ッ プ リ ン グ の 重 要 性 を 指 摘 し た 。 ま た 、 こ の 研 究 結 果 は 軽 いE‐ ハ イ パ ー 核 をE‑核 間 ポ テ ン シ ヤ ル の ス ピ ン ・ ア イ ソ ス ピ ン 依 存 性 とぃ う立場 から統 一的 に理解 できる ことを 示唆 してい る。

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学位論文審査の要旨

主 査    教 授    和 田    宏 副査    教 授    石川健 三

副査    助 教授    加藤 幾芳 副査    講 師    大西    明

副査    助 教授    岡部成玄(情報処理教育センター)

学 位 論 文 題 名

Structure of 呈 H‑hypernucleus

(!H ―ハイパ一核の構造)

  最近の原子核研究分野 におぃて、ストレンジネスを持ったハドロンを含む原子核の研究に多くの興味が向け られている。すなわち、 通常の陽子・中性子(核子)からなる原子核の1つの核子がAやE粒子に置き換えられた ストレンジネスS=―1を持 ったA―ハイパー核やE−ハイパー核、さらに最近では、ストレンジネスS〓−2を持っ た二重Aや三一ハイパー核についての研究に関心が寄せられて来ている。これらのハイパー核は自然界では弱崩壊 により壊れてしまうが、最近の実験の進展によルハイパー核の人工的な生成が可能になり、それらの性質が調べ られるようになったものであり、それによってハドロン多体系についてより統一的な理解が可能となりつっある。

  本論文は、ストレンジ ネスS=ー1を持つハイペロン(A,E)の中で、アイソスピン3重項状態に属するE―ハ イペロンを含むE‑ハイパー核を理論的に研究したものである。

  E−ハイパー核を研究す る上で基礎になるE‑ハイペロンと核子(N)の間の相互作用は実験的に未だ十分に解明 されていない。そこで、実験データに加え、クォーク模型等に基づぃて幾っかのE−N間ポテンシャルが提案され て い る。Harada等は 、E粒 子 を含 む4体系 (A‑4) の研 究を 通じ て 、SAP‑1およ びSAP‑Fと呼 ばれ るE−N間 ポテンシャルを提案した。本論文の目的は、Harada等が提案した強いスピン・アイソスピン依存性を持つSAP−1 お よ びSAP‑FのE―N間 ポ テ ン シ ヤ ル に 基 づ ぃ て 、E粒 子 を含 む3体系(A=3;NNE)を 精 確に 解い てそ の 構 造を解明すること、また 、その結果から逆に用いたE‑N間ポテンシャルの性質を定量的に確立することである。

  E粒 子 を 含 む3体 系(A=3;NNE)につ いて は 、束 縛状 態が 存在 す るか どう か、 ある い は束 縛状 態が 存 在 しない場合でもどのような状態がう|力的な状態になり得るか、実験的にも理論的にもまだ統一した理解が得られ てkユない。DoverとGalはl:;N‑+AN転換過程におけるスピン・アイソスピンの選択貝IJを考慮して、(T〓11S= 1/2)のENN系の状態のうちで特に核子対のアイソスピンTNN二ニ0,スピンS,NN−−1の状態が、最も束縛しやす い候補であると主張した。しかし、(T〓1,S=1/2)の状態には(昂N 1,5,NNニニ0)の状態の状態もあり、こ れらの2つの状態の結合に よってさらに引力的な状態が生じる可能性がある。したがって、この問題についての 理解を得るためには、NNE3体系およびその部分系に全てのスピン・アイソスピン状態を陽に取り込んだ分析が 必要 であ り、 とりわけDoverとGmの主張を 確かめる為には、(T=1,S〓1/2)の状態の2つのチャ ネル問の 結合を正確に解かなければならない。その際、E‐ハイペロンの3つの異なるアイソスピン成分の状態(E十,E0, E→)間の質量差とクーロンポテンシャルがアイソスピン対称性を破る可能性があり、それらの効果についても正 確に取り扱ったチャネル結合系のSchr甜ingerequationを解かなけれぱならない。

  本 論 文 の 著 者 は 、SAP‐1とSAP‐FのENポ テン シヤ ルを 用い て 、ENN3体 系にKamimura等 によ って 開 発 された組替えチャネルの 方法を適用して、精確に解き 上げた。特に、ENN3体系の 状態の中で、最も引力的な

71 ‑

(4)

状 態 と し て 得 ら れ る 墨Hハ イパ ー 核 の ゾ =1/2+状 態 に 注 目 し、 そ の エ ネ ル ギー ,ANNチ ャ ン ネ ル への 転 換 幅 や 波 動関 数 の 広 が りなど の物理 量を分 析し 、墨H―ハ イパー 核の構 造を理 論的に 解明 した。 この分 析にお ぃて 、E− ハ イ ペ ロ ン 間 の 質 量 差 と ク ー ロ ン カ の 効 果 が 著 者 に よ っ て は じ め て 詳 細 に 調 べ ら れ た 。   本 研 究 で 得 ら れ た 特 筆 さ れ る 結 果 は 、1)ENN3体 系 の 状 態 の 中 で 、 墨Hハ イ パ ー 核 のJ =1/2+状 態が 最 も 引力的 である こと 、2) その状態における引力的構造は、[pri(3Si)○Eo],[nn(1烏)○E十]および[pp(l烏)〇E―]

間 の結 合 に よ っ て引 き 起 こ さ れる こ と 、3)そ の結合 は、各 チャネ ル間 の大き な聞値 エネル ギー の差に も関ら ず、

3EHの エ ネ ルギ ー や 波 動 関数 の 広 が り に 大き な 影 響 を 与え る こと 、4)また 、強 いチャ ンネル 間の結 合によ って 、 系 全 体 の ア イ ソ ス ピ ン が 非 常 に 良 い 近 似 的 量 子 数 に な っ て い る ( 〜 96% ) こ と が 示 さ れ た 。   こ れ は 要 す る に 、:CNNの3体 系 に つ い て こ れ ま で 認 識 さ れ て い な か っ たT=1の 状 態 に お け る チ ャ ネ ル 間 の 結合 が 極 め て 重要 で あ る と いう 新 知 見 を 得た も の で あ り 、豊H系 に 引 力的 状 態(J =1/2+) が 出 現 す ると いう 結 諭はE‐ ハ イ パー 核 の 研 究 分野 に 対 し て 強い ス ピ ン ・ アイ ソ ス ピ ン 依 存性 を 持 っ たEN間 ポテン シャル の特徴 に 基づく もので あり その貢 献する ところ 大な るもの がある 。

  よ っ て 著 者 は 、 北 海 道 大 学 博 士 ( 理 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 が あ る も の と 認 め る 。

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参照

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