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博 士 学 位 論 文

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(1)

放射線疫学調査における交絡因子調整の重要性

2019 年 3 月

首都大学東京大学院 人間健康科学研究科 人間健康科学専攻 放射線科学域

研究生番号:17004

氏 名 : 工藤 伸一 指導教員名: 福士 政広

博 士 学 位 論 文

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本研究は、原子力規制委員会原子力規制庁からの委託により公益財団法人放射線影響協 会が実施している「低線量放射線による人体への影響に関する疫学的調査」のデータを利 用している。本研究の成果を博士論文として作成することについては、原子力規制委員会 原子力規制庁(平成29825日付け、事務連絡)および公益財団法人放射線影響協会

(平成29524日付け)の承認を得ている。また、倫理審査については放射線影響協 会放射線疫学調査倫理委員会(平成2329日付け)および首都大学東京研究安全倫理 委員会(平成3014日付け、承認番号:17061)の承認を得ている。

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要 旨

現在の放射線防護基準は、国際放射線防護委員会(International Commission on Radiological Protection、ICRP)の勧告に基づいている。また、この基準は主に短時間に 高線量を被ばくした原爆被爆者を対象とした健康影響調査結果を元に定められている。し かしながら低線量・低線量率の放射線による健康影響については多くの調査が実施された にもかかわらず、不確定な部分が多い。この理由の一つとして、放射線リスクの適切な評 価を阻害する交絡因子の調整が不十分であることが挙げられる。

放射線影響協会では国の委託による放射線疫学調査を1990年より実施している。調査対 象者は19993月末までに放射線業務に従事した日本人であり、このうちの一部の対象者 について生活習慣等のアンケート調査を実施した。アンケート調査の結果、被ばく線量の 増加と共に喫煙率が増加する傾向、即ち喫煙による交絡が見られた。

放射線によるリスク(ここでは死亡)を、被ばくしていない者の死亡率(バックグラウ ンド死亡率)と比べた、1Sv当たりの死亡率増加分の比率として過剰相対リスク(Excess

Relative Risk、以下ERR/Sv)として表した場合、このERR/Svを喫煙調整の前後で比較

すると、ほとんどの死因において喫煙調整がERR/Svを下げる、即ち見かけの放射線リス クが下がるという結果が得られた。交絡因子は喫煙等の生活習慣だけではなく、教育年数 等の社会経済状態(個人の社会階層や経済状態)も交絡因子となり得る。喫煙に加えて、

さらに教育年数も調整した場合、死因によってはERR/Svがほとんどゼロとなった。

被ばく線量の高い集団ほど喫煙率が高いという交絡がもたらされた要因の一つは、職種 と喫煙率の関連である。解析集団を職種別に分類して喫煙率を算出した場合、被ばく線量 が高い保守・補修において高い喫煙率が見られ、被ばく線量が低い事務、設計・研究にお いて低い喫煙率が見られた。さらに各々の職種群の中で被ばく線量と喫煙率を算出したと ころ、いずれの職種においても被ばく線量の高い群ほど高い喫煙率を示した。社会経済状 態の一つの指標である教育年数と被ばく線量との関連を検討した場合、被ばく線量の高い 群ほど教育年数が短い傾向が見られた。このため喫煙による交絡のもう一つの要因は、被 ばく線量の多寡による社会経済状態の相違であることが考えられた。

放射線リスクの検討に当たっては、放射線以外のリスク要因を調整により除外すること が必要であり、本研究で示したデータはその重要性を示している。

(7)

目次

1章 序 論 ... 1

1.1 疫学研究の有用性と問題点 ... 1

1.2 疫学研究の分類 ... 2

1.2.1 症例対照研究(Case control study) ... 2

1.2.2 コホート研究(Cohort study) ... 2

1.3 交絡因子 ... 4

1.4 交絡因子の調整方法 ... 6

1.4.1 限 定 ... 6

1.4.2 マッチング ... 7

1.4.3 層別調整 ... 8

1.4.4 モデリング ... 8

1.5 放射線疫学調査センター設立の経緯 ... 9

1.6 放射線疫学調査センターの組織... 11

1.7 放射線疫学調査の研究工程と対象集団の概要 ... 13

1.7.1 生死確認 ... 14

1.7.2 生活習慣等アンケート調査 ... 14

1.7.3 インフォームド・コンセント調査 ... 14

1.7.4 国際共同研究 ... 15

1.7.5 報告書の公表 ... 15

1.7.6 調査対象者 ... 15

1.7.7 解析対象者 ... 15

1.7.8 死亡者、総観察人年、平均線量 ... 16

1.8 本研究の目的 ... 17

2章 解析に使用したデータ ... 18

2.1 データの概要 ... 18

2.2 生死情報 ... 19

2.3 死因情報 ... 20

2.4 被ばく線量情報 ... 21

2.5 交絡因子情報 ... 23

2.6 調査フロー ... 24

3章 交絡因子の確認と調整効果の定量化 ... 25

3.1 人年計算 ... 25

(8)

3.2 集団特性 ... 27

3.3 解析モデルと交絡因子の調整方法 ... 29

3.4 交絡因子の確認1:項目別リスク推定 ... 31

3.5 交絡因子の確認2:線量との相関 ... 34

3.6 交絡因子による調整効果の定量化 ... 36

3.6.1 喫煙、飲酒、職種、職位、教育年数による調整効果 ... 36

3.6.2 喫煙による調整効果 ... 39

3.7 白血病のsubtype別解析 ... 41

4章 喫煙による交絡の原因 ... 46

4.1 職種と喫煙との関連 ... 46

4.2 被ばく線量と社会経済状態との関連 ... 48

4.3 喫煙を始めとする交絡因子調整の重要性 ... 50

5章 諸外国の調査における喫煙調整の状況と喫煙の間接的な検討事例 ... 54

5.1 諸外国の調査における喫煙調整の状況 ... 54

5.2 喫煙の間接的な検討事例 ... 56

5.2.1 日 本 ... 56

5.2.2 15か国解析 ... 58

5.2.3 INWORKS ... 59

6章 本研究の限界と今後の対策 ... 60

6.1 線量データに関すること:記録線量から臓器線量への変換 ... 60

6.2 エンドポイントに関すること:がん罹患情報の活用 ... 61

6.3 交絡因子情報に関すること:全対象者を対象とした生活習慣等アンケート調査の実 施 ... 63

6.4 インフォームド・コンセントに関すること:opt-outからopt-inへ ... 64

7章 結論 ... 65

参考文献 ... 66

参考資料1:第1次生活習慣等アンケート調査質問票 ... 71

参考資料2:第2次生活習慣等アンケート調査質問票 ... 78

参考資料3:第3次生活習慣等アンケート調査質問票 ... 89

謝辞 ... 91

(9)

1

1章 序 論

1.1 疫学研究の有用性と問題点

放射線による生物影響の検討には幾つかのアプローチがある1)。ミクロの視点から見ると DNA、染色体等をターゲットとした細胞実験がまず挙げられ、細胞実験には人や動物に危 害を与えない、生体分子レベルでの解析ができるというメリットがある。一方で体内には 様々な組織や臓器があり、放射線感受性は細胞毎に異なることが知られているが、その機 序は明らかにはなっていない。このため細胞実験では、全身への影響を評価することは困 難というデメリットがある。

動物実験では細胞実験と同様、人に危害を及ぼさない、さらには個体差の影響を排除で きるというメリットはあるが、当然のごとく人と動物の種の違いのために、得られた結果 をそのまま人には適用できないというデメリットがある。また、動物の飼育環境や予算等 を考慮すると人に近いサルでは数十匹、マウスでも数百匹が実験に使用できる上限である。

人間集団を対象とした疫学研究のメリットは人の集団から直接データを得ることができ、

影響の強さを定量化できることにある。また、時には疾患の原因が不明であっても、その 予防策がわかることもある。ロンドンでコレラが流行した1854年に、John Snow が死亡 者の地域分布に基づいて、コレラが伝染病であり、汚染された共同井戸が流行の原因であ ることを特定したのはコレラ菌が発見される 30 年前のことである。日本においても 1884 年に高木兼寛が、食事の欠陥が脚気の原因となることを(ビタミンB1の不足であることま ではわからなかったが)明らかにした2)。このように有用なデータを提供できる疫学ではあ るが、実験データと違い倫理的、その他の問題により無作為割り付けが困難であるため、

データに不確かさを含む、また研究を繰り返して再現性を確認することもできないといっ たデメリットがある。とりわけ調べようとする要因を阻害する交絡(「1.3 交絡因子」で後 述)の影響は深刻である。

(10)

2 1.2 疫学研究の分類

疫学研究は、その方法によって大きく観察研究と介入研究とに分類することができる2) 観察研究とは、研究対象となる人間集団の健康状態、疾患の罹患状態、生活習慣、社会 経済状態等を観察し、疾患の死亡、罹患等に関与する要因や関与の大きさを明らかにする 研究方法である。1.2.1~1.2.2で後述する症例対照研究(Case control study)、コホート研 究(Cohort study)等がある。

介入研究とは、研究対象となる人間集団に対して、人為的に曝露要因を操作した上で以 後の死亡や罹患等を観察し、その要因による死亡や罹患への関与やその大きさを明らかに する研究方法である。

ここでは、疫学研究において用いられることが多い症例対照研究とコホート研究につい て述べる。なお、疫学では過去に遡ってイベントを調べる研究を「後ろ向き研究」、研究開 始から発生したイベントを調べる研究を「前向き研究」という。

1.2.1 症例対照研究(Case control study)

症例対照研究とは、研究対象とした疾患に罹患(またはその疾患により死亡)した集団

(caseという)と、その疾患を持たない集団(controlという)を設定し、要因曝露の有無、

あるいは曝露の用量群別に死亡・罹患率を比較して要因の関与を調べる方法である。死亡 等のイベントが発生してから過去に遡って要因曝露等について調べることとなるため、後 ろ向き研究となる。

利点として、①短期間に実施できること、②費用が安価であること、③解析対象集団が 少数で済むことなどがある。

欠点として、①対象疾患が通常一つに限られること、②因果関係の時間性がコホート研 究ほどには保証されていないこと、③交絡因子の調整が困難であることなどがある。

1.2.2 コホート研究(Cohort study)

コホート研究とは、研究対象疾患に罹患していない集団を設定、追跡することで、その 集団における死亡・罹患を観察し、要因に対する曝露の有無別、あるいは曝露の用量群別 に死亡・罹患率を比較して要因の関与を調べる方法である。この解析対象集団をコホート と呼ぶ。通常は研究開始後に発生したイベントについて調べるため「前向きコホート研究」

となる。過去の記録を用いてある集団のイベントを調べる方法は、既存資料を利用する点 では後ろ向き研究であるが、因果関係の推論では結果に先だって原因があるため「後ろ向 きコホート研究」と呼ばれる。

コホート研究の利点として、①多疾患について曝露要因への影響を観察できること、② 要因への曝露が疾患発生前に把握されているため因果関係推定の時間性が保証されている こと、③交絡因子の調整が可能であることなどがある。

欠点として、①長い研究期間を必要とすること、②費用が多額であること、③大規模な 集団を必要とすることなどがある。

(11)

3

本研究は前向きコホート研究である。症例対照研究とコホート研究の概念図を図1-1 に、症例対照研究とコホート研究の特徴を表1-1に示す。

図1-1 症例対照研究とコホート研究の概念図

表1-1 症例対照研究とコホート研究の特徴

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4 1.3 交絡因子

交絡とは、調べようとする要因(本研究では放射線影響)以外の要因が結果(本研究で は死亡)に影響を及ぼしていることを指し、この要因を交絡因子と呼ぶ。交絡因子となる

要件は、1)リスクファクターであること、2)説明変数との間に相関を持つこと、の2つであ

3)。例えば、喫煙が死亡率に影響を与えることはよく知られており4)、放射線と死亡との 関連を見る際に喫煙が交絡因子となっている例は図1-2のとおりとなる。交絡因子には 様々な要因がなり得る。例えば喫煙群と非喫煙群を比較して肺がん発生を調べる場合に、

喫煙群において非喫煙群に比べて高年齢者が多く含まれているならば、年齢は死亡に影響 を与える要因であるため年齢が交絡因子となる。

図1-2 喫煙が交絡因子となっている例

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5

放射線リスクを検討する際に、被ばく線量が高い者ほど喫煙率が高いという状況があっ た場合、放射線の影響がなくても被ばく線量が高い者ほど死亡率が高いという、放射線に よる“見かけの傾向”が見られることとなる(図1-3)。放射線リスクを検討するために は、喫煙の影響を除外する必要があり、このことを「喫煙調整」という。調整の方法は次 章「1.4交絡因子の調整方法」で述べる。

図1-3 放射線と喫煙との交絡の例

(14)

6 1.4 交絡因子の調整方法

交絡因子の調整には幾つかの方法があるが、大別すると解析前に行う方法と解析時に行 う方法がある。前者には限定、マッチングなどがあり、後者には層別調整、モデリングな どがある。

1.4.1 限 定

解析集団を交絡因子の有無で分けた集団、例えば非喫煙群に限定するなどの方法である

5)(図1-4)。この場合、喫煙の影響は除外できるが解析集団の規模が縮小するため、検 出力の低下を招くこととなる。また、非喫煙群と喫煙群の特性が異なる場合は選択バイア スが生じ、非喫煙群から得られた結果を喫煙群に適用できないこととなる。

図1-4 限 定

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7

1.4.2 マッチング

解析集団における交絡因子の状況を調べようとする要因で揃える方法である 5)(図1-

5)。例えば被ばく線量の多寡によって喫煙率が異なる場合、線量群間で喫煙率が等しくな るように集団から選択を行う。この場合もやはり、喫煙の影響は除外できるが解析集団の 規模が縮小するため、限定同様検出力の低下を招くこととなる。

図1-5 マッチング

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8

1.4.3 層別調整

解析集団を交絡因子の状況別に分類(=層別)し、各層で解析した結果を要約する多変量 解析の一種である5) (図1-6)。例えば喫煙状況別に喫煙群、非喫煙群と層別して解析し た結果を要約して調整を行う。この場合、解析対象集団全体を用いるため検出力は低下せ ず、解釈も容易である。

図1-6 層別調整

1.4.4 モデリング

解析モデルに交絡因子のデータを与え、見たい要因とは別にその影響を推定する多変量 解析である5)。例えば放射線リスクを検討する際に喫煙のデータを与えると、放射線リスク とは別に喫煙リスクが推定され、推定された放射線リスクからは喫煙の影響が除外(調整)

されることとなる。詳細については「3.3 解析モデルと交絡因子の調整方法」で述べる。

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9 1.5 放射線疫学調査センター設立の経緯

現在の放射線防護基準は、国際放射線防護委員会(International Commission on Radiological Protection, ICRP)の勧告に基づいており、また、この基準は主に短時間に高 線量を被ばくした原爆被爆者を対象とした健康影響調査結果を基に定められている。この ため低線量放射線による健康影響を明らかにするためには、高線量・高線量率からの外挿 ではなく、低線量を被ばくした集団を直接観察した疫学調査が求められ、実際にこれまで 多くの調査研究が実施された620)

しかしながら、このように多くの調査研究が実施されたにもかかわらず、その結果には 不確定な部分が多く、一般世論は元より研究者集団内においてもコンセンサスが得られる ような結論は得られていない。この理由は大きく二つあり、一つは低線量放射線のリスク を確認できるだけの十分な検出力を得ることが困難であること、もう一つは放射線リスク の適切な評価を阻害する交絡因子の調整が不十分であることである。

前者の問題を解決するために、19886月、フランス、リヨンにおいて原子力施設放射 線業務従事者の発がんリスクに関する会議が開催された(後者の問題、交絡因子に関する 日本の対応は「2.5 交絡因子情報」で後述する)。会議の目的は世界各国から放射線業務従 事者のデータを集結し作成した大規模コホートから、より精度の高い放射線リスクを推定 する国際共同研究の実現可能性を検討することであった。会議には発がんリスク解析の研 究者、疫学者、放射線生物学者、そして日本を含む11カ国の原子力産業の代表者が参加し た。この会議においてFeasibility study groupの設立が合意された。

同会議の合意内容を受け、19896月、科学技術庁(当時)は財団法人放射線影響協会

(当時)に「放射線疫学調査の手法等に関する調査研究」を委託した。この調査研究の目 的は、原子力施設従事者を対象とした放射線疫学調査を実施するための研究体制、データ 収集方法等の検討であった。調査の取りまとめである19903月付「放射線疫学調査の手 法等に関する調査研究報告書」21)では、放射線疫学調査の主要な目的は、原子力発電所等の 放射線業務従事者への放射線影響について検討するためにデータを収集・評価することで あり、さらに、この情報を国際共同研究に資すること、とされた。従事者の線量データ、

氏名等の個人データは放射線影響協会放射線従事者中央登録センター(以下、中央登録セ ンター)より提供を受けることが決定されたが、生死の確認方法、生死を確認するための 住所情報の取得方法、死因の確認方法等については更なる検討が必要とされた。また、調 査機関として既存の公益法人に放射線疫学調査の機能を付加することが現実的とされ、国 際協力の推進に当たっての窓口機関としての機能も期待された。

「放射線疫学調査の手法等に関する調査研究報告書」を受け、19904月、科学技術庁 は放射線影響協会に「放射線疫学調査におけるデータ収集・管理方法に関する調査研究」

を委託した。この調査研究の目的は、放射線疫学調査におけるデータ収集・管理方法の具 体的な検討であった。調査の取りまとめである19909月付「放射線疫学調査におけるデ ータ収集・管理方法に関する調査研究報告書」22)では、以下が述べられた。

(18)

10

調査対象者は19893月末までに中央登録センターに登録された従事者とする。

日本国籍を有しない者、被ばく実績のない者は除外する。

従事者の氏名、線量データは中央登録センターより提供を受ける。

生死確認は地方自治体への住民票写しの交付請求により行う。

住民票写しの交付請求のための住所は、対象者が雇用されていた企業より提供を受け る。

死因は人口動態調査死亡票との照合により確認する。

喫煙等の交絡因子に関する情報は調査できないため、解析の際に可能な範囲で考察す る。

5年後に調査結果を公表する。

放射線影響協会は、前述の「放射線疫学調査の手法等に関する調査研究報告書」、「放射 線疫学調査におけるデータ収集・管理方法に関する調査研究報告書」を受け、1990 11 月、放射線疫学調査センターを設立した。

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11 1.6 放射線疫学調査センターの組織

放射線影響協会の組織図(1990年当時)を図1-7に示す。理事長の下、総務部、企画 部、放射線従事者中央登録センター、放射線疫学調査センターがあり、放射線疫学調査は この放射線疫学調査センターが実施している。

図1-7 放射線影響協会組織図(1990年当時)

(20)

12

放射線疫学調査センターにおける各部門の担当業務は以下のとおりである。

業務:事業計画、予算編成、経理等

渉外:関係機関との連絡・調整、プライバシー保護等

広報:文献の収集・データベース管理、広報に関する企画・立案・推進等 調査:生死の確認等

統計:解析・評価、国際共同研究業務等(本研究の著者が所属)

各委員会の審議事項は以下のとおりである。

評価委員会:調査手法、解析手法、解析結果の評価

調査運営委員会:調査計画の策定、調査の実施等における重要事項の検討 倫理委員会:プライバシー保護の観点からの諸事項に関する検討

(21)

13 1.7 放射線疫学調査の研究工程と対象集団の概要

表1-2に放射線疫学調査のこれまでの研究工程と対象集団の概要を示す。

表1-2 放射線疫学調査の研究工程と対象集団の概要

*1:継続中

*2:1988年度末までの従事者を調査対象として設定

*3:1989~1994年度における新規従事者を追加

*4:1995~1998年度における新規従事者を追加

*5:従事者の追加なし

*6:後ろ向き観察人年

*7:前向き観察人年

放射線疫学調査では5年を1つの調査実施期間としている。1990~1994年度の研究を第

Ⅰ期と称し、以降 5 年毎に第Ⅱ期、第Ⅲ期と続く。本研究における死亡を指標とした解析 では最新の結果である第Ⅴ期のデータを使用している。

(22)

14

1.7.1 生死確認

住民票を用いた生死の追跡(データ内容については「2.2 生死情報)で詳述)は、1991 年度より継続して実施している。人員、予算等の関係により単年度に生死を確認できる人 数は5万人程度であるため、単年度では全ての調査対象者約20万人の生死を確認すること ができない。全ての調査対象者の生死確認には4年程度を要する。

1.7.2 生活習慣等アンケート調査

調査の一環として一部の対象者に対して、喫煙等の交絡因子情報を得るための生活習慣 アンケート調査をこれまでに3度実施した(データ内容については「2.5 交絡因子情報」

で詳述)。第1次調査は1997~1999年度、第2次調査は2003~2004年度に実施した。

1次、第 2次アンケート調査の結果、被ばく線量の増加と共に喫煙率が増加する傾向、

即ち喫煙による交絡が見られ、これを調整する必要性が示唆された。アンケート回答者に 対する死亡解析は第Ⅴ期において初めて実施し、喫煙等の調整が放射線リスク推定値を下 げる効果が確認された(「3.6 交絡因子による調整効果の定量化」で後述)。なお、第 3 次調査は2015年度から開始し、現在(201812月)も継続中である。

1.7.3 インフォームド・コンセント調査

放射線疫学調査は1990年に開始したが、開始当初は調査対象者本人に接触せずに実施し た。一方で本疫学調査の実施について調査対象者および調査関係機関の理解を求めること は重要であるとの認識から、原子力事業者等への本疫学調査に係るパンフレットの送付、

原子力業界誌への本疫学調査に係る広告掲載および調査結果のホームページへの掲載等を 通じて、広報活動を実施してきた。

その後、個人情報保護の重要性についての社会的機運の高まりを受け、国は個人情報保 護に関連する法令を整備し、疫学研究が社会の理解と信頼を得て一層社会に貢献するため、

「疫学研究に関する倫理指針(現在は人を対象とする医学系研究に関する倫理指針23)」を 制定し、研究の実施に当たっての個人情報保護に関する基本的な原則を示した。この倫理 指針によれば、本研究のような観察研究に対しては、「インフォームド・コンセントを受け ることを必ずしも要しない。研究の実施についての情報を公開し、研究対象者となること を拒否できるようにしなければならない。」とされていることから、当協会はホームページ に本疫学調査の実施に関する情報を公開してきた。

これまで当協会では本疫学調査に関する情報を積極的に公開してきたが、2003年度に実 施した第 2 次生活習慣調査では、調査対象者本人に直接調査票を郵送したことから、本人 から当協会に本疫学調査に関して多くの問合せがあった。これら本人からの問合わせ状況 を踏まえ、本疫学調査に係る情報の公開を徹底することが必要と判断し、2003 12 月か ら調査対象者本人に対し、本疫学調査についての説明および調査対象者になることへのイ ンフォームド・コンセント調査を実施した。インフォームド・コンセントの取得方式は、

調査対象者に対し放射線疫学調査についての説明資料および放射線疫学調査の対象者とな ることに同意しない旨の申出書等を郵送し、本人が調査の対象者になることについて同意

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15

しない場合には、その旨の申出を受け付けるというopt-out方式とした。

2014331日までに、調査対象者の約6%に相当する12,478人(男性:12,290人、

女性:188人)から申し出があり、申出者についてはその後の生死を追跡していない。なお、

申し出者に関する個人情報の扱いに関しては、放射線影響協会に設置した倫理委員会にお いて審議検討し、既に申出以前に収集した情報は匿名化した上で、今後とも保有すること について承認を得た。

1.7.4 国際共同研究

国際共同研究には日本を含む15 か国から約40万人のデータが提供された。日本からは 第Ⅰ期解析のデータ(114,900 人分)を提供し、従事年数が1 年の者等を除外した83,740 人が解析に使用された。しかしながら日本のデータは社会経済状態の情報がないという理 由で、社会経済状態を調整するがんの解析からは除外され、社会経済状態を調整しない白 血病の解析のみに含まれた。この国際共同研究では2007年にコホート研究の結果を取りま とめた論文が公表された6,7)。当初の予定ではコホート研究の後に症例対照研究等を行うと していたが、現在では事実上消滅している。

1.7.5 報告書の公表

放射線疫学調査では5 年毎に研究結果を取りまとめ、報告書の公表を行ってきた 2430)

1990~1994年度の研究を第Ⅰ期と称し、以降5年毎に第Ⅱ期、第Ⅲ期と続く。第Ⅱ期、第

Ⅲ期では各々第1次、第2次生活習慣等アンケート調査を実施し、報告書の公表を行った

26,28)

1.7.6 調査対象者

調査対象者は第Ⅰ期において1988年度末までの従事者を対象としたが、第Ⅱ期では1989

~1994年度における新規従事者を追加し、第Ⅲ期では1995~1998年度における新規従事 者を追加した。第Ⅳ期、第Ⅴ期では調査対象者の追加を行わなかった。

1.7.7 解析対象者

解析対象者は生死を確認できた者に限られる。第Ⅰ期では調査対象者18万人に対して解 析対象者は114,900人であり、調査対象者の約3分の1は解析対象者とはならなかった。

これは古い時期(概ね1950~1960年代)の従事者の住所情報が古く、「2.2 生死情報」で 述べる住民票の写しの取得による生死確認ができなかった者を多数含むためである。第Ⅳ 期、第Ⅴ期において調査対象者が増えていないにもかかわらず、解析対象者が微増してい るのは新たに生死を確認できた者が若干名発生するためである。

(24)

16

1.7.8 死亡者、総観察人年、平均線量

死亡者、総観察人年、平均線量は表1-2に示すとおりである。第Ⅲ期で追加した調査 対象者、即ち1995~1998年度における新規従事者は被ばく線量が低いため、平均線量は低 くなった。

(25)

17 1.8 本研究の目的

本研究の目的は、低線量放射線による死亡リスク推定値に対する交絡の影響の定量化、

および交絡の原因を検討することにより、放射線疫学調査における交絡因子調整の重要性を示 すことである。

(26)

18

2章 解析に使用したデータ

2.1 データの概要

本研究において解析に使用したデータの範囲と解析集団毎の観察期間を図2-1に示す。

図中の赤は本研究において使用したデータの範囲、黄は解析集団毎の観察期間(「3.1 人年 計算」で後述)を表す。

図2-1 解析に使用したデータの範囲と解析集団毎の観察期間

本研究において使用したデータは図中の赤で示した部分である。死亡を指標とした解析 では20101231日までのデータを使用し、それ以降に入手したデータは使用していな い。一部の集計について第 3 次生活習慣等アンケート調査で入手した交絡因子情報を使用 した。データの詳細については次章以降で述べる。

生活習慣等アンケート調査の回答状況により、個人毎に保有するデータが異なる。この ため解析の目的に合わせて解析対象集団を①全解析対象者、②第1次・第 2次生活習慣ア ンケート回答者、③第 2 次生活習慣アンケート回答者と使い分けた。各々の集団の観察期 間については「3.1 人年計算」で、集団特性については「3.2 集団特性」で後述する。

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19 2.2 生死情報

本研究の調査対象者は、原子力放射線業務従事者被ばく線量登録管理制度への参加事業 者の被雇用者、即ち公益財団法人放射線影響協会放射線従事者中央登録センターに放射線 業務従事者として19993月末までに登録された者のうち、日本国籍を有する者である。

調査対象者の従事施設は商業用発電、研究機関、燃料加工であり、医療従事者は含まれな い。

これら調査対象者について、カナ氏名、生年月日を中央登録センターより、漢字氏名、

住所を対象者が雇用されていた企業より取得し、地方自治体への住民票等の写しの交付請 求により、生死を確認した。生存者については住民票が、死亡者については死亡除票が交 付されることとなっている。転出者については転出除票が交付され、その場合には概ね 1 年以内に転出先住所に住民票等の写しの交付請求を行った。転出除票、死亡除票の保存期 間は住民基本台帳法施行令31)34条により5年と定められているため、住民票により生存 が確認できた者については3~4年間隔で住民票の交付申請を繰り返した。

住民票等の写しの交付請求は1991年より実施されているため、生死情報は1991年以降 のデータが使用可能となっている。

なお、生死情報は男女を問わず取得しているが、20101231日までの生死情報を有 する女性は 1,396 名と少数であるため、本研究における集計、解析では男性のみを対象と した。

(28)

20 2.3 死因情報

死亡が確認できた調査対象者については、統計法 32)に基づき厚生労働省より提供を受け た人口動態調査死亡票との照合により死因を把握した 33)。調査対象者の性別、生年月日、

死亡年月日、死亡時住所コードの4項目を、人口動態調査死亡票に記載されている4項目 と照合し、一致する者の死因を当該死亡者の死因とした(図2-2)。死亡者全体の 0.5%

(第Ⅴ期解析における全死亡者20,519名中110名)については死因を把握できなかった。

これらの死亡者は全死亡の解析には含めたが、死因別の解析には含めなかった。

死因照合は「2.2 生死情報」で述べた生死確認において、死亡を確認できた者について 実施したため、死因情報は1991年以降のデータが使用可能となっている。

図2-2 死因照合の方法

(29)

21 2.4 被ばく線量情報

本疫学調査対象者の多くは原子力発電施設等の放射線業務従事者であり、これら従事者 の被ばく線量は、主に原子炉設備等の定期検査期間中の作業によるものである 34,35)。また 定期検査作業中の被ばく形態は、Co-60、Mn-54等の高エネルギーγ線による均等被ばくが 主体の外部被ばくと考えられている。放射性核種の吸飲摂取による内部被ばくについては、

ほとんど生じていない。また、中性子線量についてはMOX燃料を製造する事業所にほぼ限 定される。内部被ばく、中性子線量が記録された場合には、外部被ばく線量(実効線量)

に合算された。

従事者の被ばく線量については、データの散逸等を防止し一元的に管理するため、原子 力事業者が放射線防護に関連する法律に基づき記録した被ばく線量を中央登録センターへ 登録している。登録されているデータは個人線量等量 Hp(10)であるが、本研究ではこれを 実効線量とみなして使用した。本研究の死亡解析において使用した線量データは、1957~

2010年度の個人毎の年度別の実効線量である。

本研究において、対象者の累積線量は観察期間中の年度別の被ばく線量を加算した時間 依存変数として扱った。観察開始以前に従事実績がある場合は、それまでの累積線量を観 察開始時点の線量とした。線量の累積は年度を通じて均一に被ばくしたと仮定し、対象者 が死亡した年度では全ての線量を死亡日までに均等に累積した。また、検出限界未満の場

合は0 mSvとした。

被ばくからがんの発生には数年以上のずれ(潜伏期)があると考えられているため、こ こでは多くの放射線疫学調査に倣って白血病で2年、その他の疾患で10年の最短潜伏期を 仮定し、線量の累積を最短潜伏期の分だけ遅延させた6,9,12,36)。図2-3は10年の潜伏期を 仮定した例である。

(30)

22 図2-3 潜伏期の仮定方法(10年の例)

t0は従事開始時を表す。従事の継続と共に線量が累積され、潜伏期を仮定しない場合には t1の時点で累積線量が2 mSvとなる(黒で示した線)。一方、潜伏期を仮定するということ は直近の線量は健康影響に寄与しないことを意味し、これは線量の累積を潜伏期の分だけ 遅延させることにほかならない。潜伏期を仮定した場合には t0から潜伏期間(図の例では

10年)は0 mSvとして扱われ、t1の時点での累積線量は1 mSvとなる(赤で示した線)。

このように潜伏期の仮定は、潜伏期を仮定しない場合と比べて累積線量が減少すること となる。

(31)

23 2.5 交絡因子情報

喫煙等の交絡因子に関する情報を取得するため、自記式の生活習慣アンケート調査を第1 次(1997~1999年度)と第2次(2003~2005年度)第3次(2015年~201812月現 在継続中)の3度実施した。第 3次調査のデータは、回答者のうちの死亡者が不明である ため本研究における死亡解析には使用せず、「4.3 喫煙を始めとする交絡因子調整の重要性」

において集計に使用しているのみである。

1997年度から実施した第1次調査26,37)では調査期間中に原子力発電施設等に従事してい た放射線業務従事者を対象として55,271人に調査票を配付した。有効回答のうち「3.1 人 年計算」で後述する解析適合条件を満たす者は46,141人であった(有効回答率 83%)。質 問項目は喫煙、飲酒等とした。

2003年度から実施した第2次調査28)では200371日時点で40歳以上85歳未満の 男性のうち、2002年度までの累積線量が10 mSv以上の者は全員を、10 mSv未満の者は

40%を抽出し、郵送により調査票の配付を行った。73,542 人に配付を行い、有効回答のう

ち解析適合条件を満たす者は41,742人(有効回答率57%)であった。質問項目は第1次調 査とほぼ等しいが、職種、職位、教育年数等が追加された。

1次調査、第2次調査の双方に回答した者が12,441人いるため、回答者は75,442 となった。双方の調査に回答した者は解析の際には第1次調査の回答を使用した。

1次~第3次調査における質問票を参考資料1、2、3として巻末に示す。

(32)

24 2.6 調査フロー

調査のフローを図2-4に示す。中央登録センターより入手したカナ氏名、生年月日等 を元に原子力事業者および関連企業から漢字氏名、住所等の情報を入手し、それらを用い て地方自治体に住民票の写しの交付申請を行う。生存の場合は住民票が交付され、死亡の 場合には除かれた住民票が交付される。除かれた住民票の保管期間は5年であるため、5 以内に次回の交付申請を行う。

死亡が確認できた従事者については、厚生労働省より提供を受けた人口動態調査死亡票 との照合により死因を把握する。

中央登録センターより提供を受けた被ばく線量情報、調査対象者から提供を受けた生活 習慣等アンケート調査に記載された交絡因子情報を用いて、死因別に解析を行う。

図2-4 調査フロー

(33)

25

3章 交絡因子の確認と調整効果の定量化

3.1 人年計算

各調査対象者の生死確認は「2.2 生死情報」で述べた方法により実施するが、その時期 は対象者毎に異なり、また、対象者の中には生死の確認ができなくなる者もいる(脱落と 呼ばれる)。このような事態に対処するため、死亡率の算出に当たっては、その分母として 人年を用いる(分子は観察死亡数)。人年とは対象者の人数と観察期間(年単位)の積であ り、2人を5年観察した場合を10人年(=2人×5年)、また5人を2年観察した場合も10 人年(=5 人×2 年)として、両者を死亡率の分母として同等と扱う。ただし死亡率は放射 線リスクを考えないとしても年齢毎に異なり、また、経年変化によっても異なる。このた め放射線リスクの算出に当たっては、年齢、暦年等の調整を行い、これらの違いによる死 亡率の違いを考慮している(「3.3 解析モデルと交絡因子の調整方法」で詳述)

個人毎の観察人年は、以下に定義する観察開始日から観察終了日までの期間として算出 される。

観察開始日:

(1)全解析対象者

初回住民票の写しの交付日と20歳の誕生日の遅い方。1991年以降に分布する。

(2)第1次・第2次生活習慣アンケート回答者、第2次生活習慣アンケート回答者 生活習慣調査回答日から2年経過した日38) 20歳の誕生日の遅い方。生活習慣 調査回答日から2年経過した日を考慮するのは、生活習慣回答時での健康状態や疾 患などがもたらす回答への影響の可能性を避け、観察開始時の有病率をゼロに近づ けるためである。第1次の回答者は1999年以降、第2次の回答者は2005年以降に 分布する。

1次、第2次の双方に回答した者は、第1次生活習慣調査回答日から2年経過 した日とし、第1次生活習慣調査の回答を使用した。

観察終了日

全ての解析対象集団に共通して、以下のうちの最も早い日。

最終住民票取得日

最終転出日

死亡日

20101231

(34)

26

生活習慣調査回答日から 2 年以内に観察終了日を迎えた者は、観察終了日が観察開始日 以前となるため、観察人年が発生せず解析に含まれない。

解析適合条件

(1)全解析対象者

観察終了日が20歳の誕生日以降である男性。

(2)第1次・第2次生活習慣アンケート回答者、第2次生活習慣アンケート回答者

(1)に加え、生活習慣調査回答日から 2 年を経過した日以降に観察終了日がある こと。

観察期間は個人毎に異なるが、集団毎に以下の分布となっている(図2-1 解析に使 用したデータの範囲と解析集団毎の観察期間)。

全解析対象者:1991-2010

1次・第2次生活習慣アンケート回答者:1999-2010

2次生活習慣アンケート回答者:2005-2010

(35)

27 3.2 集団特性

解析対象集団の概要を図3-1に示す。職種、職位、教育年数については第 2 次生活習 慣調査の回答者のみが有している。このためこれらを使用した解析では第 2 次生活習慣調 査の回答者41,742人を対象とした。

喫煙による調整効果を検討する解析では全回答者75,442人、およびここから喫煙不明を

除外した71,733人を対象とした。また、白血病のsubtype別解析等では喫煙、職種、教育

年数等の情報を有しない者を含めた204,304人を対象とした。

図3-1 解析対象集団の概要

(36)

28

解析対象とした集団の人数、観察終了時における平均年齢、平均累積線量、総観察人年、

使用した解析(章番号)は表3-1のとおりである。いずれの集団においても平均年齢に 大きな違いはなかったが、平均累積線量は全解析対象者がやや低い値を示した。

表3-1 解析対象集団の特性

(37)

29 3.3 解析モデルと交絡因子の調整方法

本研究では放射線、喫煙等のリスク推定にはポアソン回帰 39)を用いた。これは死亡数が ポアソン分布に従うことを仮定してリスクを推定する方法である。本研究では解析の目的 によって幾つかのモデルを使用しているが、以下には「3.6.2 喫煙による調整効果」で使用 したモデルを示す。これは放射線リスクを算出する際に、バックグラウンド死亡率(累積 線量がゼロ、かつ非喫煙者の死亡率)を年齢、暦年、出生年、地域、生活習慣等アンケー ト調査時期、および喫煙、具体的には1)現在喫煙者のPackyear2)過去喫煙者のPackyear、

3)過去喫煙者の禁煙からの経過年数をモデリングで調整するモデルとなっている。カテゴリ ー変数はバックグラウンド死亡率λ0の項で調整し、連続量は exp の項で調整した。また、

禁煙からの経過年数で調整した理由は、経過年数の増加と共に喫煙のリスクが減少するこ とを考慮するためである。モデル中の β が1Svあたりの過剰相対リスク(Excess Relative

Risk:以下 ERR)、即ち放射線リスクを表し、このモデルでは放射線の増加と共に死亡率

が直線的に増加することを仮定している。ERRは相対リスク(Relative Risk:RR)から1 を減じた値であり、死亡率の上乗せ分を示す。例えばERR/Sv0.5であれば、1 Svを被 ばくした場合に死亡率が1.5倍となることを表す。

expの項にはカテゴリー変数を入れることもできる。このモデルに限らず本研究では、年 齢等死亡率が異なることが既知である変数はバックグラウンド死亡率λ0の項で調整し、調 整効果を探索的に検討する変数はexpの項で調整した。

Packyear:1日あたりの喫煙本数/20×喫煙年数と定義される総喫煙量。

(38)

30

λ 死亡率

λ0 バックグラウンド死亡率

(累積線量がゼロ、かつ非喫煙者の死亡率)

age 年齢

cal 暦年

bir 出生年

region 地域

sur 生活習慣等アンケート調査時期(第1次、第2次)

packyear_c Packyear(現在喫煙者)

packyear_f Packyear(過去喫煙者)

tfq_f 禁煙からの経過年数(過去喫煙者)

α1-3 各変数の係数(相対リスク)

β 放射線リスク(ERR/Sv)

radiation 累積被ばく線量

(39)

31 3.4 交絡因子の確認1:項目別リスク推定

交絡因子の要件の一つであるリスクファクターを確認するために、喫煙等の変数別リス クを以下により推定した40)。解析対象者は第2次生活習慣調査回答者41,742人である。ポ アソン回帰モデルを用いて、喫煙、飲酒、職種、職位、教育年数についてはカテゴリー変 数として扱い、基準群に対する他の群の相対リスクを推定した。放射線については連続量 として扱い、0 mSvに対する100 mSvの相対危険を推定した。変数毎の基準群と相対リス ク推定群、およびモデルは以下のとおりである(表3-2)。相対リスクについては90%信 頼区間を算出し、下限値が1を上回る場合、および上限値が 1を下回る場合に有意差があ ると判断した。年齢(20-, 25-, ..., 100+)、地域(北海道・東北、関東、北陸、中部、近畿、

中国、四国、九州)については調整したが、観察期間が2005~2010年と短いため、暦年に ついては調整しなかった。潜伏期は10年を仮定した。

表3-2 変数毎の基準群と相対リスク推定群

変数 基準(群) 相対リスク推定(群)

喫煙 非喫煙 1) 過去喫煙、2)現在喫煙 飲酒 非飲酒 1) 過去飲酒、2)現在飲酒 職種 保守・補修 1) 運転・機器操作、試験・検査

2) 放射線管理、工程管理 3) 事務、設計・研究

職位 担当者 1) 作業班長、2) 技術指導、3)管理・監督 教育年数 13年以上 1) 10~12年、2) 10年未満

放射線 0mSv 1) 100mSv

𝜆 = 𝜆0(𝑎𝑔𝑒, 𝑟𝑒𝑔𝑖𝑜𝑛)𝑒𝑥𝑝(𝛼1𝑖𝑠𝑚𝑜𝑘𝑒𝑖+ 𝛼2𝑖𝑎𝑙𝑐𝑜ℎ𝑜𝑙𝑖+ 𝛼3𝑖𝑗𝑜𝑏 𝑐𝑎𝑡𝑒𝑔𝑜𝑟𝑦𝑖+ 𝛼4𝑖𝑗𝑜𝑏 𝑠𝑡𝑎𝑡𝑢𝑠𝑖

+ 𝛼5𝑖𝑦𝑒𝑎𝑟𝑠 𝑜𝑓 𝑒𝑑𝑢𝑐𝑎𝑡𝑖𝑜𝑛𝑖+ 𝛼6𝑟𝑎𝑑𝑖𝑎𝑡𝑖𝑜𝑛)

λ 死亡率

λ0 バックグラウンド死亡率

age 年齢

region 地域

smokei 喫煙カテゴリー

alcoholi 飲酒カテゴリー

job categoryi 職種カテゴリー

job statusi 職位カテゴリー

years of educationi 教育年数カテゴリー

radiation 累積被ばく線量

α1i-α6 各変数の係数(相対リスク)

参照

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