第 3 章 交絡因子の確認と調整効果の定量化
3.4 交絡因子の確認1:項目別リスク推定
交絡因子の要件の一つであるリスクファクターを確認するために、喫煙等の変数別リス クを以下により推定した40)。解析対象者は第2次生活習慣調査回答者41,742人である。ポ アソン回帰モデルを用いて、喫煙、飲酒、職種、職位、教育年数についてはカテゴリー変 数として扱い、基準群に対する他の群の相対リスクを推定した。放射線については連続量 として扱い、0 mSvに対する100 mSvの相対危険を推定した。変数毎の基準群と相対リス ク推定群、およびモデルは以下のとおりである(表3-2)。相対リスクについては90%信 頼区間を算出し、下限値が1を上回る場合、および上限値が 1を下回る場合に有意差があ ると判断した。年齢(20-, 25-, ..., 100+)、地域(北海道・東北、関東、北陸、中部、近畿、
中国、四国、九州)については調整したが、観察期間が2005~2010年と短いため、暦年に ついては調整しなかった。潜伏期は10年を仮定した。
表3-2 変数毎の基準群と相対リスク推定群
変数 基準(群) 相対リスク推定(群)
喫煙 非喫煙 1) 過去喫煙、2)現在喫煙 飲酒 非飲酒 1) 過去飲酒、2)現在飲酒 職種 保守・補修 1) 運転・機器操作、試験・検査
2) 放射線管理、工程管理 3) 事務、設計・研究
職位 担当者 1) 作業班長、2) 技術指導、3)管理・監督 教育年数 13年以上 1) 10~12年、2) 10年未満
放射線 0mSv 1) 100mSv
𝜆 = 𝜆0(𝑎𝑔𝑒, 𝑟𝑒𝑔𝑖𝑜𝑛)𝑒𝑥𝑝(𝛼1𝑖𝑠𝑚𝑜𝑘𝑒𝑖+ 𝛼2𝑖𝑎𝑙𝑐𝑜ℎ𝑜𝑙𝑖+ 𝛼3𝑖𝑗𝑜𝑏 𝑐𝑎𝑡𝑒𝑔𝑜𝑟𝑦𝑖+ 𝛼4𝑖𝑗𝑜𝑏 𝑠𝑡𝑎𝑡𝑢𝑠𝑖
+ 𝛼5𝑖𝑦𝑒𝑎𝑟𝑠 𝑜𝑓 𝑒𝑑𝑢𝑐𝑎𝑡𝑖𝑜𝑛𝑖+ 𝛼6𝑟𝑎𝑑𝑖𝑎𝑡𝑖𝑜𝑛)
λ 死亡率
λ0 バックグラウンド死亡率
age 年齢
region 地域
smokei 喫煙カテゴリー
alcoholi 飲酒カテゴリー
job categoryi 職種カテゴリー
job statusi 職位カテゴリー
years of educationi 教育年数カテゴリー
radiation 累積被ばく線量
α1i-α6 各変数の係数(相対リスク)
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白血病を除く全がんにおける変数毎の相対リスクと 90%信頼区間を図3-2に示す。縦 軸は相対リスクを示し、相対リスクが2の場合、死亡リスクが基準群に比べて 2倍高いこ とを意味する。観察死亡数は978であった。
図3-2 変数毎の相対リスクと90%信頼区間
喫煙では、非喫煙に比べて有意に高い相対リスクが現在喫煙、過去喫煙で観察された。
飲酒では非飲酒に比べて有意に高い相対リスクが過去飲酒で観察されたが、現在飲酒の相 対リスクは非飲酒と同程度であった。職種では保守・補修と比べて他の職種がやや低い相 対リスクを示したが、有意差はなかった。職位では担当者と比べて作業班長がやや高く、
技術指導、管理・監督がやや低い相対リスクを示したが、有意差はなかった。教育年数で は 13 年以上と比べて、教育年数が短くなる毎に相対リスクの単調増加傾向を示した。10 年未満では有意に高かったが、その相対リスクは喫煙、飲酒より小さかった。放射線にお
ける0mSvに対する100mSvの相対危険は0.98 (90%CI: 0.88, 1.09)であり有意差はなかっ
た。交絡因子の要件であるリスクファクターという観点では喫煙、飲酒が大きなリスクを、
職種、職位が小さなリスクを、教育年数は職種、職位より大きく、喫煙、飲酒より小さな リスクを示したといえる。なお、職種、職位、教育年数については、社会経済状態(Socio Economic Status: SES)と呼ばれ、それら自体がリスクを持つというよりは、それらの違 いによる生活習慣等の違いが、死亡率の差異となって現れていると考えられている。Wardle らはSESの高い集団は低い集団に比べて、喫煙傾向が少なく、運動習慣や果物・野菜の摂 取が多いことを示している 41)。本解析のモデルでは各変数が相互に調整しているため、放
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射線のリスクは喫煙、飲酒、職種、職位、教育年数(およびバックグラウンドで調整した 年齢、地域)を調整した結果となっており、喫煙のリスクは喫煙以外の変数で調整した結 果となっている。
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