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早 稲 田 大 学 審 査 学 位 論 文 ( 博 士 )

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Academic year: 2022

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早 稲 田 大 学 審 査 学 位 論 文 ( 博 士 )

MEMS 技 術 を 応 用 し た 水 晶 高 感 度 傾 斜 角 セ ン サ の 最 適 設 計 ・ 製 造 プ ロ セ ス の 研 究

幸 坂 扶 佐 夫

早 稲 田 大 学 大 学 院 情 報 生 産 シ ス テ ム 研 究 科

2 0 1 3 年 2 月

(2)

- 目 次 -

1 章 序 論 ... 1

1.1 研 究 の 背 景 ... 1

1.1.1 傾 斜 角 測 定 の 特 徴 ... 2

1.1.2 加 速 度 セ ン サ と 傾 斜 角 セ ン サ に つ い て ... 3

1.2 高 分 解 能 傾 斜 角 セ ン サ の 特 徴 ... 4

1.2.1 高 分 解 能 傾 斜 角 セ ン サ の 現 状 ... 4

1.2.2 高 分 解 能 傾 斜 角 セ ン サ と MEMS 技 術 ... 5

1.3 研 究 の 目 的 ... 7

2 章 水 晶 の 材 料 特 性 ... 8

2.1 水 晶 の 基 本 特 性 に つ い て ... 8

2.2 水 晶 の 機 械 強 度 特 性 測 定 ... 9

2.2.1 試 験 用 試 料 の 製 作 ... 9

2.2.2 試 験 方 法 と 最 大 応 力 ... 11

2.2.3 試 験 結 果 ... 13

2.3 水 晶 の 微 細 加 工 特 性 測 定 ... 16

2.3.1 実 験 用 フ ォ ト マ ス ク の 設 計 製 作 ... 16

2.3.2 実 験 結 果 と 微 細 加 工 の 限 界 値 ... 17

2.4 ま と め ... 20

3 章 傾 斜 角 セ ン サ 基 本 構 成 の 検 討 ... 21

3.1 測 定 検 出 方 式 の 検 討 ... 21

3.2 セ ン サ 構 成 案 の 検 討 ... 22

3.3 基 本 構 成 と 差 動 検 出 方 式 の 検 討 ... 25

3.4 基 本 構 成 の ま と め ... 26

4 章 傾 斜 角 セ ン サ の 最 適 設 計 ... 27

4.1 バ ネ 部 変 位 特 性 の 解 析 ... 27

4.2 静 電 容 量 検 出 部 の 解 析 ... 30

4.2.1 電 極 部 の 静 電 容 量 計 算 式 の 導 出 ... 30

4.2.2 差 動 方 式 と 電 極 構 成 の 検 討 ... 31

4.2.3 非 対 称 櫛 歯 電 極 に よ る 差 動 構 成 の 検 討 ... 33

4.3 最 適 設 計 の 検 討 ... 36

4.3.1 設 計 目 標 値 の 検 討 ... 36

4.3.2 最 適 設 計 の た め の パ ラ メ ー タ 抽 出 ... 37

(3)

4.3.3 最 適 設 計 に よ る 計 算 例 ... 37

4.4 ま と め ... 40

5 章 傾 斜 角 セ ン サ の 製 作 ... 41

5.1 製 作 プ ロ セ ス の 概 要 ... 41

5.1.1 形 状 加 工 プ ロ セ ス と 電 極 形 成 プ ロ セ ス の 検 討 ... 41

5.1.2 製 作 プ ロ セ ス の 全 体 フ ロ ー 図 ... 42

5.2 電 極 形 成 の た め の キ ー プ ロ セ ス 開 発 ... 44

5.2.1 リ フ ト オ フ 用 レ ジ ス ト の パ タ ー ニ ン グ 方 法 ... 44

5.2.2 水 晶 エ ッ チ ン グ 後 の Au-Cr 薄 膜 除 去 ... 47

5.2.3 Cr-Au-Cr 3 層 薄 膜 と 電 極 パ タ ー ン 形 成 方 法 ... 47

5.2.4 側 面 電 極 分 離 に よ る 静 電 容 量 作 成 ... 48

5.3 製 作 プ ロ セ ス の 詳 細 ... 49

5.3.1 レ ジ ス ト 露 光 用 フ ォ ト マ ス ク の 製 作 ... 49

5.3.2 水 晶 エ ッ チ ン グ 用 Au-Cr 薄 膜 パ タ ー ニ ン グ プ ロ セ ス ... 50

5.3.3 電 極 パ タ ー ン 形 成 用 リ フ ト オ フ プ ロ セ ス ... 53

5.3.4 静 電 容 量 作 成 の た め の 側 面 電 極 分 離 プ ロ セ ス ... 57

5.4 傾 斜 セ ン サ の パ ッ ケ ー ジ ン グ ... 58

5.4.1 実 装 方 法 の 検 討 ... 58

5.4.2 実 装 用 パ ッ ケ ー ジ の 設 計 試 作 ... 59

5.4.3 実 装 プ ロ セ ス ... 60

5.5 ま と め ... 63

6 章 傾 斜 角 セ ン サ の 評 価 ... 64

6.1 評 価 シ ス テ ム の 構 築 ... 65

6.1.1 傾 斜 角 校 正 装 置 の 製 作 ... 65

6.1.2 評 価 用 静 電 容 量 検 出 回 路 の 試 作 ... 66

6.1.3 評 価 用 セ ン サ モ ジ ュ ー ル 作 成 ... 68

6.2 傾 斜 セ ン サ の 評 価 ... 69

6.2.1 変 位 量 測 定 に よ る 基 本 特 性 評 価 ... 69

6.2.2 測 定 シ ス テ ム の 動 作 確 認 評 価 ... 70

6.2.3 傾 斜 セ ン サ の 傾 斜 角 測 定 結 果 ... 72

6.2.4 測 定 デ ー タ の 解 析 評 価 ... 74

6.3 ま と め ... 75

(4)

7 章 傾 斜 角 セ ン サ 動 特 性 の 解 析 評 価 ... 76

7.1 FEM に よ る 固 有 振 動 特 性 の 解 析 ... 77

7.1.1 FEM 解 析 モ デ ル の 作 成 ... 77

7.1.2 FEM に よ る 固 有 振 動 モ ー ド と 固 有 振 動 数 解 析 ... 80

7.2 非 平 行 電 極 の 動 特 性 解 析 ... 83

7.2.1 理 論 解 析 に よ る 解 析 式 の 導 出 ... 84

7.2.2 解 析 式 を 用 い た 非 平 行 電 極 の 動 特 性 計 算 ... 88

7.3 解 析 式 検 証 の た め の 実 験 方 法 検 討 ... 91

7.3.1 気 体 の 粘 度 に つ い て ... 91

7.3.2 過 渡 応 答 特 性 と 減 衰 比 ... 94

7.3.3 実 験 装 置 の 設 計 製 作 ... 95

7.4 実 験 結 果 ... 97

7.4.1 セ ン サ 過 渡 応 答 特 性 の 測 定 ... 97

7.4.2 測 定 デ ー タ と 減 衰 比 ... 98

7.4.3 測 定 デ ー タ に よ る 解 析 式 の 検 証 ... 99

7.5 ま と め ... 102

8 章 結 論 ... 103

謝 辞 ... 106

参 考 文 献 ... 107

研 究 業 績 ... 109

(5)

1 章 序 論

1.1 研 究 の 背 景

傾 斜 角 は 「 水 平 か ら の 傾 き 角 」 と 説 明 さ れ る 。 そ の 「 水 平 」 に つ い て は 「 水 面 の よ う に 傾 き が な く 平 ら な 状 態 」 と い う こ と に な り 感 覚 的 な 表 現 と し て 用 い ら れ る 言 葉 の よ う で あ る 。し か し 、物 理 的 な 意 味 合 い と し て は「 重 力 方 向 に 垂 直 な 面 」 を 水 平 面 と 呼 び 、 こ の 「 水 平 面 か ら の 傾 き 角 」 が 傾 斜 角 と い う こ と に な る 。 そ し て 、こ の 傾 斜 角 を 測 定 す る 機 器 を「 傾 斜 計 」ま た は「 傾 斜 角 測 定 器 」、そ の 中 で も 水 平 か ど う か に 着 目 し て 測 定 す る も の を 「 水 準 器 」 と 呼 び[ 1 ]、 そ れ ら の 測 定 器 の 検 出 部 を 傾 斜 角 セ ン サ と 呼 ぶ こ と に な る 。

傾 斜 角 の 測 定 が 要 求 さ れ る 場 合 の 多 く は 、 水 平 か ら の 傾 き に よ っ て 生 じ る 重 力 の 正 弦 成 分 が 問 題 視 さ れ る 場 合 で あ る 。 こ の 重 力 の 正 弦 成 分 が 建 築 物 や 構 造 物 に 横 方 向 の 力 を 発 生 さ せ て 変 形 や 歪 な ど の 問 題 に つ な が る た め に 、 こ れ ま で に も 0.001°以 上 の 分 解 能 を 有 す る 高 分 解 能 傾 斜 角 セ ン サ が 開 発 さ れ 、そ れ を 組 み 込 ん だ 傾 斜 角 測 定 器 が 商 品 化 さ れ て 市 場 に 提 供 さ れ 利 用 さ れ て い る 。 し か し 、 こ れ ら の 高 分 解 能 傾 斜 角 セ ン サ は 微 小 な 重 力 正 弦 成 分 を 高 感 度 で 検 出 す る と い う 測 定 条 件 の た め 、 使 い 方 に 熟 練 を 要 す る こ と と 構 成 が 複 雑 に な っ て し ま う こ と か ら 、 大 き さ や コ ス ト の 面 に お い て 問 題 が 指 摘 さ れ 改 良 が 期 待 さ れ て い る 分 野 で あ る 。

従 来 か ら 、 水 準 器 に 代 表 さ れ る 傾 斜 角 測 定 は 建 築 の 分 野 や 道 路 ・ 橋 梁 な ど の 土 木 分 野 な ど で 利 用 さ れ て き て い る と い う イ メ ー ジ が 強 い が 、 近 年 の 社 会 産 業 構 造 の 高 度 化 に と も な い 各 種 分 野 で 傾 斜 角 の 測 定 が 重 要 視 さ れ る よ う に な っ て い る 。 た と え ば 、 デ ィ ジ タ ル 機 器 や モ バ イ ル 機 器 の 発 展 に と も な い 、 そ れ ら 機 器 の 高 機 能 化 の た め に 機 器 に 内 蔵 可 能 な 小 型 傾 斜 角 セ ン サ が 要 求 さ れ る よ う に な っ て い る 。 ま た 、 ク レ ー ン や 輸 送 な ど の 産 業 機 器 の 分 野 に お け る 姿 勢 監 視 や 姿 勢 制 御 用 と し て 、 そ し て 製 造 現 場 に お い て は 、 高 性 能 機 器 や 小 型 高 性 能 部 品 を 製 造 す る た め の 製 造 装 置 (半 導 体 製 造 装 置 や 高 精 度 加 工 装 置 等) の 水 平 状 態 を 維 持 管 理 す る た め に 小 型 高 分 解 能 の 傾 斜 セ ン サ が 求 め ら れ る よ う に も な っ て き て い る 。

こ の よ う な 背 景 か ら 、 モ バ イ ル 機 器 や ゲ ー ム 機 器 、 カ ー エ レ ク ト ロ ニ ク ス の 分 野 に お い て は MEMS (MicroElectroMechanical System) 技 術 を 用 い た 小 型 低 コ ス ト の 加 速 度 セ ン サ が 開 発 さ れ 、 こ れ ら の 加 速 度 セ ン サ が 傾 斜 角 セ ン サ と し て 利 用 さ れ る 例 も 出 て き て い る が 、 傾 斜 角 セ ン サ の 分 野 で は 従 来 か ら の 方 式 の セ ン サ が 使 わ れ て き て お り 、 と く に 微 小 重 力 変 化 を 検 出 す る 高 感 度 傾 斜 角 セ ン サ に お い て は 小 型 低 コ ス ト の セ ン サ は 見 当 た ら な い の が 現 状 で あ る 。

(6)

1.1.1 傾 斜 角 測 定 の 特 徴

傾 斜 角 は「 水 平 面 」言 い 換 え れ ば「 重 力 方 向 」が 基 準 に な る 物 理 量 な の で 、「 温 度 」 や 「 長 さ 」 や 「 質 量 」 な ど 他 の 物 理 量 と は 異 な り 、 上 位 の 校 正 機 器 (標 準 器) が 存 在 し な い 特 殊 な 測 定 対 象 で あ る と い え る 。そ し て 、角 度 (rad、deg) の 単 位 に つ い て も 、[rad]は 半 径 と 同 じ 長 さ の 円 弧 が な す 角 、 ま た[deg]は 一 周 の 1/360 と 定 義 さ れ て い る だ け で あ り 、 こ れ も 標 準 器 が 存 在 す る わ け で は な い 。 つ ま り 、 傾 斜 角 に つ い て は 頼 る べ き 上 位 機 器 が な い 、 言 い 換 え る と 自 ら の 手 で 精 度 (確 度) を 確 認 検 証 で き る 物 理 量 と 捉 え る こ と も で き る 。

よ く 知 ら れ て い る 気 泡 管 式 の 水 準 器 を 例 に す る と 、 図 1-1 の よ う な 反 転 測 定 法 に よ り 水 準 器 の 水 平 誤 差 を 検 出 で き 、 さ ら に そ の 水 準 器 を 置 く 定 盤 の 水 平 も 確 認 で き る[ 2 ]。 こ の 方 法 は 水 準 器 を 扱 っ た こ と が あ る 技 術 者 に は 常 識 と な っ て お り 、 日 常 的 に 測 定 時 に は 無 意 識 に 行 っ て い る 作 業 で も あ る 。 こ の よ う に 、 傾 斜 角 測 定 に お い て は 上 位 の 校 正 機 器 を 用 い る こ と な く ゼ ロ 点 の 自 己 校 正 が 可 能 な た め 、 図 1-1 の よ う に 一 部 の 水 準 器 で は 自 己 校 正 の た め の 調 整 機 構 を 設 け て い る も の も 存 在 す る 。

こ の よ う な 特 徴 か ら 、 一 般 の セ ン サ に 要 求 さ れ る 「 精 度 」 と い う 概 念 は 傾 斜 角 セ ン サ の 場 合 は 重 要 視 さ れ な い 傾 向 が あ り 、 精 度 と い う 仕 様 よ り 「 分 解 能 」 あ る い は 「 感 度 」 と い う 仕 様 が 性 能 を 表 す 指 標 に な っ て い る 。

・ 水 準 器 が 正 し く 定 盤 も 水 平 元 位 置

反 転 位 置

・ 水 準 器 が 正 し く 定 盤 の 水 平 が 狂 っ て い る 元 位 置

反 転 位 置

・ 定 盤 が 水 平 で 水 準 器 が 狂 っ て い る 元 位 置

反 転 位 置

・ 水 準 器 も 定 盤 の 水 平 も 狂 っ て い る 元 位 置

反 転 位 置

図 1-1 反 転 測 定 法 に よ る 誤 差 の 検 出

【 調 整 機 構 付 き 水 準 器 】

(7)

1.1.2 加 速 度 セ ン サ と 傾 斜 角 セ ン サ に つ い て

従 来 か ら 傾 斜 角 を 測 定 す る セ ン サ と し て 加 速 度 セ ン サ を 用 い る 行 為 は 特 に 違 和 感 な く 行 わ れ て き て い る 。 気 泡 管 の よ う に 零 位 法 的 に 使 わ れ 、 且 つ 目 視 で 利 用 す る 機 器 は セ ン サ と は 呼 ば な い と い う 通 念 が あ る の で あ ろ う 。 そ し て 、 物 理 量 を 電 気 信 号 に 変 換 す る も の を セ ン サ と 位 置 付 け た 場 合 「 傾 斜 角 測 定 → 重 力 加 速 度 変 化 の 測 定 → 加 速 度 セ ン サ 」 と い う 流 れ に な る の も 不 自 然 で は な い 。

傾 斜 角 セ ン サ と い え ど も 加 速 度 変 化 を 測 定 し て い る こ と に 変 わ り は な い の で 加 速 度 セ ン サ の 範 疇 に 含 ま れ る と 考 え る こ と も で き る が 、 加 速 度 セ ン サ の 場 合 は 高 感 度 の も の で も 重 力 1G (9.8m/s2) の オ フ セ ッ ト 分 を 考 慮 し て 設 計 さ れ る の に 対 し て 、 傾 斜 角 セ ン サ は 水 平 面 に 対 す る プ ラ ス マ イ ナ ス の 角 度 測 定 範 囲 を 前 提 に 設 計 さ れ る と い う 側 面 か ら も 傾 斜 角 セ ン サ と 加 速 度 セ ン サ の 違 い が 理 解 で き る 。 こ れ を 表 に す る と 表 1-1 の よ う に 整 理 さ れ る 。

表 1-1 加 速 度 セ ン サ と 傾 斜 角 セ ン サ

加 速 度 セ ン サ 傾 斜 角 セ ン サ

特 徴 加 速 度 の 検 出

(加 速 度 ~ 衝 撃 ま で)

傾 斜 角 の 検 出

(重 力 加 速 度 の 正 弦 成 分) 測 定 領 域 1G よ り 大 き い 加 速 度 0.1~0.0001°(~10- 6G)

セ ン サ 種 々 の 方 式 の セ ン サ 実 用 化 (MEMS セ ン サ も 実 用 化)

特 殊 な 方 式 の セ ン サ (MEMS セ ン サ は 見 当 た ら な い)

今 、 高 感 度 加 速 度 セ ン サ に 分 類 さ れ る 測 定 範 囲 2G の 加 速 度 セ ン サ に つ い て 考 察 し て み る 。セ ン サ 測 定 範 囲 の 10- 4を 分 解 能 と 仮 定 し た 場 合 、そ の 値 は 2G×10- 4= 0.0002G と な り 、 こ れ を 傾 斜 角 に 換 算 す る と sin- 1(0.0002) = 0.01°と な る 。

一 方 で 、 角 度 の 単 位 と し て 角 度 秒 が 最 も 小 さ な 角 度 の 単 位 と し て 使 わ れ る こ と が あ る 。1 角 度 秒 = 1°/60’/60” = 0.0003°で あ る こ と か ら 、 角 度 測 定 セ ン サ の 分 野 に お い て は こ の 値 が 最 も 小 さ な 値 の 目 安 と し て 扱 わ れ て き て い る 。

こ れ ら の 値 と 各 種 カ タ ロ グ の 値 を 参 考 に 傾 斜 角 測 定 の セ ン サ に つ い て 分 解 能 と い う 観 点 か ら 大 き く 分 類 す る と 次 の よ う に な る 。

・加 速 度 セ ンサ

・傾 斜 角 セ ンサ

・ 高 分 解 能 傾 斜 角 セ ン サ

・センサ以 外 の測 定 方 法

0.1° 0.01° 0.001° 0.0001°

測 定 分 解 能

図 1-2 測 定 分 解 能 と セ ン サ の 分 類

(8)

1.2 高 分 解 能 傾 斜 角 セ ン サ の 特 徴

1.2.1 高 分 解 能 傾 斜 角 セ ン サ の 現 状

低 分 解 能 傾 斜 角 セ ン サ の 領 域 は 加 速 度 セ ン サ の 分 野 と 渾 然 一 体 と な っ て お り 、 デ ィ ジ タ ル カ メ ラ や モ バ イ ル 機 器 に 搭 載 さ れ て い る 水 平 検 出 機 能 や ゲ ー ム 機 器 に 搭 載 さ れ て い る 同 機 能 な ど は MEMS 加 速 度 セ ン サ が そ の 機 能 を 担 っ て い る 。

そ の よ う な 状 況 下 か ら 、 傾 斜 角 セ ン サ と し て 開 発 商 品 化 さ れ て い る も の は 、 そ の 大 部 分 が 高 分 解 能 セ ン サ に 分 類 さ れ る 。 代 表 的 な 商 品 例 を 表 1-2 に 示 す 。

(1) サ ー ボ 式 傾 斜 セ ン サ

傾 斜 に よ っ て 振 り 子 が 振 れ る と き の 変 位 を コ イ ル や 磁 気 的 な 方 法 で 検 出 し て 、 そ の 変 位 が ゼ ロ に な る よ う に フ ィ ー ド バ ッ ク を か け る 方 式 で あ る 。 フ ォ ー ス バ ラ ン ス 式 と 呼 ば れ る こ と も あ る 。 変 位 を ゼ ロ に 保 つ こ と に よ り 機 械 的 な 摺 動 部 の 摩 擦 や 感 応 部 の 応 力 を 低 減 で き る こ と か ら 、 従 来 か ら 高 精 度 セ ン サ や 高 信 頼 性 を 要 求 す る セ ン サ に 採 用 さ れ る こ と が 多 い 方 式 で あ る 。 し か し 、 フ ィ ー ド バ ッ ク 要 素 に 関 わ る 構 成 部 品 が 多 く な り 、 複 雑 で 精 密 な 組 み 立 て が 必 要 な た め 高 価 に な っ て し ま う と い う 問 題 が あ る 。

(2) 差 動 容 量 式 傾 斜 セ ン サ

バ ネ で 支 え ら れ た 可 動 部 の 電 極 と 、 可 動 部 を 挟 む よ う に 位 置 す る 二 つ の 固 定 電

方 式 サ ー ボ 式 差 動 容 量 式 磁 気 式 気 泡 式

概 観

形 状 日 本 航 空 電 子

JEWELL

スプリング式

液 封 入 式

PASICO

坂 本 電 機 分 解 能 0.0028°

0.00006°

0.001°

0.001° 0.0005° 0.001°

0.0002° 寸 法

[mm]

25×25×H46 79×35×H38

φ24×H11

67×54×H22 49×49×H25 84×70×H46 φ50×19 メ ー カ 日 本 航 空 電 子

JEWELL SEIKA 村 田 機 械 PASICO

坂 本 電 機 表 1-2 高 分 解 能 傾 斜 セ ン サ の 商 品 例

(9)

極 の 間 で 構 成 さ れ る 二 組 の 静 電 容 量 の 変 化 を 利 用 す る 。 ま た 、 二 組 の 電 極 が 組 み 込 ま れ た 容 器 に 液 体 が 封 止 さ れ た 構 造 の も の も あ る 。 い ず れ も 、 傾 斜 角 が 印 加 さ れ る と 一 方 の 静 電 容 量 は 増 加 し 片 方 の 静 電 容 量 は 減 少 す る 構 成 に な っ て い る の で 、 そ れ ぞ れ の 静 電 容 量 の 差 か ら 傾 斜 角 を 検 出 す る 。 コ モ ン モ ー ド ノ イ ズ が 検 出 部 で 打 ち 消 さ れ る 差 動 方 式 に な っ て い る の で 、 種 々 の 外 乱 が 除 去 で き る こ と か ら 高 分 解 能 化 を 実 現 し て い る 。 サ ー ボ 方 式 に 比 べ て シ ン プ ル な 構 成 で あ る が 、 材 料 や 部 品 精 度 、 各 部 の 組 み 立 て 精 度 な ど 、 高 度 な 設 計 製 造 ノ ウ ハ ウ が 要 求 さ れ る 。 (3) 磁 気 式 傾 斜 セ ン サ

振 り 子 の 変 位 を 磁 気 誘 導 方 式 に よ り 誘 導 電 圧 の 位 相 差 に 変 換 し て 、 そ の 位 相 差 を 時 間 計 測 す る こ と に よ り 高 分 解 能 化 を 実 現 し て い る 。 時 間 計 測 と い う 方 式 を と っ て い る た め に AD 変 換 器 を 用 い ず に 高 分 解 能 の デ ィ ジ タ ル 処 理 が 可 能 だ が 、 本 質 的 に は 振 り 子 の 変 位 を 測 定 し て い る こ と に な る の で 、 振 り 子 の 支 持 系 や 検 出 系 の 設 計 や 組 み 立 て に は か な り の 配 慮 が 必 要 に な る 。

(4) 気 泡 式 傾 斜 セ ン サ

図 1-1 に 示 す 旧 来 か ら の 気 泡 管 と 基 本 原 理 は 同 じ で あ る が 、 気 泡 管 は 目 視 あ る い は 光 学 的 な 方 法 で 気 泡 の 位 置 を 検 出 し て い る の に 対 し て 、 電 気 的 に 気 泡 の 位 置 を 検 出 す る こ と に よ り 傾 斜 セ ン サ を 実 現 し て い る 。 方 式 と し て は 非 常 に 単 純 で あ る が 、 高 分 解 能 化 の た め に は 気 泡 の 位 置 を 極 め て 微 小 な レ ベ ル で 検 出 す る こ と に な る た め 、 気 泡 が 接 す る 容 器 の 表 面 精 度 、 表 面 状 態 、 液 体 の 表 面 張 力 の 影 響 、 そ れ ら の 温 度 に 対 す る 挙 動 な ど 、 未 知 の パ ラ メ ー タ が 多 く 潜 ん で お り 、 高 分 解 能 で 安 定 な セ ン サ を 実 現 す る た め に は 多 大 な ノ ウ ハ ウ が 要 求 さ れ る セ ン サ と い え る 。

こ れ ら の 例 の よ う に 、 高 分 解 能 セ ン サ は 重 力 方 向 に 対 す る 加 速 度 の 変 化 を 検 出 す る こ と を 基 本 に 研 究 お よ び 開 発 さ れ て き て お り 、 加 速 度 変 化 が 微 小 で あ る こ と か ら 高 感 度 を 実 現 す る た め に 複 雑 な 構 成 を 強 い ら れ て い る 。 そ し て 、 い ず れ の 例 に お い て も 「 部 品 」 を 組 み 立 て て 製 作 す る 方 法 と い う 意 味 で は 同 じ で あ り 、 小 型 化 と 低 コ ス ト 化 と い う 観 点 か ら は 限 界 が 感 じ ら れ る の は 否 め な い 。

1.2.2 高 分 解 能 傾 斜 角 セ ン サ と MEMS 技 術

小 型 低 コ ス ト 化 と い え ば 、 近 年 の マ イ ク ロ 加 工 技 術 の 進 展 を 背 景 に 製 品 化 が 相 次 い で い る MEMS 技 術 が 上 げ ら れ る 。 そ の MEMS 市 場 に つ い て は い く つ か の 統 計 情 報 が 報 告 さ れ て い る が 、( 財 ) マ イ ク ロ マ シ ン セ ン タ ー で は 2015 年 で 1.5 兆 円 、2020 年 で 3.1 兆 円 に 成 長 す る と 予 想 し て い る[ 3 ]。 そ の 中 で も 加 速 度 セ ン サ や 角 速 度 セ ン サ (ジ ャ イ ロ セ ン サ) に つ い て は 研 究 開 発 に 取 り 組 ん で い る 研 究 者 や 企 業 も 多 く 、 特 に 加 速 度 セ ン サ は そ の 市 場 規 模 の 大 き さ か ら 大 企 業 が 参 入 し て 各 種 MEMS 製 品 が 提 供 さ れ て い る 。

(10)

1) MEMS 加 速 度 セ ン サ の 現 状

MEMS 加 速 度 セ ン サ は 測 定 範 囲 が 2G 前 後 の 高 感 度 型 と 呼 ば れ る も の か ら 数 百 G と い う 衝 撃 検 出 用 ま で 幅 広 く ラ イ ン ナ ッ プ さ れ て い る 。 そ の 中 の 高 感 度 型 の も の に つ い て 、主 要 企 業 で あ る Analog Devices社 (ADXL203) と ST Microelectronics 社 (LIS3DH) の 製 品 の 仕 様 を 分 解 能 と い う 視 点 で 整 理 し た の が 表 1-3 で あ る 。

表 1-3 高 感 度 MEMS 加 速 度 セ ン サ の 仕 様

ど ち ら も 分 解 能 は 1mG と な っ て お り 、重 力 1G の オ フ セ ッ ト が 前 提 の 環 境 下 で 使 用 す る 加 速 度 セ ン サ と し て は 分 解 能 の 一 つ の 区 切 り の 値 の よ う で あ る 。 高 感 度 傾 斜 角 セ ン サ に 要 求 さ れ る 分 解 能 と し て は 二 桁 ほ ど 足 り な い 値 で あ り 、 設 計 の 思 想 を 見 直 さ な い と 高 感 度 セ ン サ 化 は 困 難 と 考 え ら れ る 。

2) MEMS セ ン サ と 高 感 度 化 に つ い て

こ こ で 、MEMS セ ン サ と 高 感 度 化 の 関 係 に つ い て 検 討 し て お く 。 メ カ ニ カ ル な 方 法 で 検 出 す る 加 速 度 セ ン サ の 場 合 に は 、 感 度 の 指 標 と し て 「 力 と バ ネ の 変 位 」 の 関 係 を 検 討 し て み る の が 定 性 的 に 理 解 し や す い 。 図 1-3 の よ う に 、 単 純 な 系 に つ い て 考 え て み る 。

こ の よ う に 、 相 似 形 で 寸 法 を 変 え る と 、 そ の 変 位 量 は 寸 法 の 二 乗 に 比 例 す る こ と に な る 。つ ま り 、寸 法 を 1/10 に 小 型 化 す る と 変 位 量 は 1/10 で は な く 1/100 に ま で 低 下 し て し ま う と い う こ と が 定 性 的 に 理 解 で き る 。

こ れ が MEMS 技 術 で メ カ ニ カ ル な 高 感 度 セ ン サ を 開 発 す る 上 で の 重 要 な ポ イ ン ト で あ り 、 小 型 高 感 度 化 を 指 向 す る と き の 大 き な 壁 に な る の で 設 計 時 に は 十 分 な 検 討 を 要 す る 必 要 が あ る 。

型 名 測 定 範 囲 感 度 ノ イ ズ 分 解 能(傾 斜 角) ADXL203 ±1.7G 1000 mV/G 1 mVr m s 1 mG ( =0.057°) LIS3DH ±2G 1 mG/digit --- 1 mG ( =0.057°)

l : バ ネの 長 さ

I : バ ネの 断 面 二 次 モ ーメ ント w : 重 量 (質 量×重 力 加 速 度) x : 変 位

w

x l

図 1-3 寸 法 と 変 位

] [ ]

[ ,

] [ ,

]

[ 3 4 2

3

m x m

I m l m w

EI wl x

変 位 ∝

長 さ[m]で 次 元 解 析

(11)

1.3 研 究 の 目 的

シ リ コ ン (Si) を 用 い た MEMS セ ン サ は 破 竹 の 勢 い で そ の 用 途 や 市 場 を 広 げ て い る 。 そ の 背 景 に は 半 導 体 製 造 技 術 の 進 歩 と 半 導 体 製 造 装 置 の 高 性 能 化 が 大 き く 寄 与 し て い る 。 し か し 、 そ れ ら 半 導 体 製 造 装 置 や そ の 装 置 を 維 持 管 理 す る た め の イ ン フ ラ に は 膨 大 な 投 資 が 必 要 と な る 。し た が っ て 、Si の MEMS セ ン サ は 投 資 を 回 収 で き る だ け の 大 き な 市 場 が 不 可 欠 と い う 本 質 的 な 宿 命 を 背 負 っ て い る 。 MEMS 加 速 度 セ ン サ 、 角 速 度 セ ン サ な ど 、 一 つ の 製 品 当 た り の 生 産 量 は 数 十 万 個

~ 数 百 万 個 と い う 超 大 量 生 産 が 見 込 め る も の を 指 向 す る こ と に な る 。

一 方 で 、MEMS 技 術 を 応 用 す る こ と で 小 型 高 性 能 化 が 期 待 さ れ る セ ン サ や デ バ イ ス は 多 く 存 在 す る は ず で あ る が 、Si の MEMS 製 造 に は 向 か な い 中 少 量 生 産 品 の 場 合 に は そ の 恩 恵 を 受 け る こ と が で き な い と い う 大 き な 問 題 が 存 在 す る 。

MEMS 技 術 を 用 い て 微 細 加 工 す る 方 法 を 大 き く 分 類 す る と 、 ウ ェ ッ ト エ ッ チ ン グ 技 術 と ド ラ イ エ ッ チ ン グ 技 術 の 二 つ の 方 法 が あ る 。 マ イ ク ロ マ シ ン 技 術 の 黎 明 期 は ウ ェ ッ ト エ ッ チ ン グ 加 工 が 主 流 で あ っ た が 、Si は エ ッ チ ン グ 異 方 性 が 大 き く な く 高 ア ス ペ ク ト 比 の 微 細 加 工 が 困 難 な た め 、 徐 々 に ド ラ イ エ ッ チ ン グ 加 工 に 移 行 し て 現 在 に 至 っ て い る 。

Si の マ イ ク ロ マ シ ン 技 術 と は 別 に 、水 晶 の マ イ ク ロ マ シ ン 技 術 も 同 様 に 発 展 し て き て い る 。 水 晶 の 場 合 は 時 計 用 の 音 叉 振 動 子 を ウ ェ ッ ト エ ッ チ ン グ で 加 工 す る こ と か ら は じ ま り 、現 在 で は 角 速 度 セ ン サ や 力 セ ン サ な ど い く つ か の MEMS 製 品 が ウ ェ ッ ト エ ッ チ ン グ 加 工 で 生 産 さ れ て い る 。 こ れ は 、 水 晶 の ウ ェ ッ ト エ ッ チ ン グ 異 方 性 が Si に 比 べ て 非 常 に 大 き い た め に 、ウ ェ ッ ト エ ッ チ ン グ で も 高 ア ス ペ ク ト 比 の 加 工 が 可 能 な こ と が 大 き く 影 響 し て い る 。

ウ ェ ッ ト エ ッ チ ン グ は ド ラ イ エ ッ チ ン グ に 比 べ る と 製 造 装 置 へ の 投 資 が 小 規 模 で す む た め 、 大 量 生 産 だ け で は な く 中 小 量 生 産 品 に も 適 用 可 能 で あ る こ と か ら 、 種 々 の セ ン サ や デ バ イ ス の MEMS 化 の 可 能 性 が 期 待 で き る 。

本 研 究 で は 、 ウ ェ ッ ト エ ッ チ ン グ で 高 ア ス ペ ク ト 比 の 微 細 加 工 が 可 能 な 水 晶 MEMS 技 術 を 応 用 し て 、MEMS 化 が 困 難 と 考 え ら れ て い た 高 感 度 傾 斜 角 セ ン サ を 開 発 す る こ と を 目 的 と し た 。

具 体 的 に は 、 ウ ェ ッ ト エ ッ チ ン グ に よ る 水 晶 微 細 加 工 の 加 工 限 界 を 調 べ る た め の 実 験 を は じ め 、 異 方 性 エ ッ チ ン グ 特 有 の 各 種 エ ッ チ ン グ 面 が セ ン サ の 性 能 に 及 ぼ す 影 響 を 検 討 す る こ と 、 そ し て 高 感 度 傾 斜 角 セ ン サ の 最 適 設 計 、 な ら び に 試 作 評 価 の た め の セ ン サ 製 造 プ ロ セ ス の 開 発 を 行 い 、 試 作 し た セ ン サ の 特 性 評 価 を も っ て 高 感 度 傾 斜 角 セ ン サ の 実 現 性 を 示 す こ と を 目 的 と す る 。

(12)

2 章 水 晶 の 材 料 特 性

水 晶 を MEMS セ ン サ の 材 料 と し て 採 用 す る た め に は 、水 晶 の 基 本 的 な 特 性 に つ い て 調 べ て お く 必 要 が あ る 。 本 章 で は 、 単 結 晶 と し て の α 水 晶 の 「 基 本 特 性 」 を は じ め 、メ カ ニ カ ル セ ン サ の 設 計 に 欠 か せ な い「 水 晶 の 機 械 強 度 特 性 」、お よ び 実 用 レ ベ ル で 実 現 可 能 な 水 晶 の 「 微 細 加 工 特 性 」 に つ い て 述 べ る 。

2.1 水 晶 の 基 本 特 性 に つ い て

鉱 物 と し て の 水 晶 は 宝 石 や 装 飾 用 と し て 珍 重 さ れ て き た が 、1880 年 に キ ュ リ ー 兄 弟 に よ り 圧 電 効 果 が 報 告 さ れ て か ら 工 業 用 の 材 料 と し て 着 目 さ れ る よ う に な っ た 。 そ の 後 、 水 晶 発 振 器 が 主 要 な 用 途 と し て 発 展 し て き て 、 今 日 の デ ィ ジ タ ル 時 代 に お い て は 、ほ ぼ 全 て の デ ィ ジ タ ル 機 器 に 水 晶 発 振 器 (水 晶 振 動 子)が 搭 載 さ れ て い る と 言 っ て も 過 言 で は な い 。 そ し て 、 水 晶 は 発 振 器 以 外 に も フ ィ ル タ や 表 面 弾 性 波 (SAW : Surface Acoustic Wave) デ バ イ ス な ど 圧 電 性 を 利 用 し た も の の 他 に 、 光 軸 (Z 軸) 方 向 に 対 す る 光 の 旋 光 性 を 利 用 し た 位 相 差 板 な ど の 光 学 部 品 、 ま た ウ ェ ッ ト エ ッ チ ン グ に お け る 異 方 性 を 利 用 し た MEMS デ バ イ ス な ど い ろ い ろ な 用 途 に 利 用 さ れ て い る 。 さ ら に は 、 水 晶 を 溶 融 し て ガ ラ ス 状 に し た 溶 融 石 英 も 、高 強 度 と い う 特 性 を 利 用 し た 機 能 部 品 、光 学 的 な 透 明 さ を 利 用 し た 光 学 部 品 、 低 線 膨 張 係 数 と い う 特 性 を 利 用 し た 耐 熱 性 部 品 、 等 々 優 れ た 材 料 と し て 利 用 さ れ て い る 。

工 業 用 の 人 工 水 晶 の 育 成 に 成 功 し た の は 戦 後 1945 年 の こ と で あ る 。高 温 高 圧 下 で 育 成 す る た め 、 そ の 育 成 炉 で あ る オ ー ト ク レ ー ブ の 大 型 化 が 進 み 本 格 的 な 量 産 が 可 能 に な っ た の は 1970 年 代 に な っ て か ら で あ り 、国 際 的 に 人 工 水 晶 の 品 質 基 準 も 策 定 さ れ た 。国 際 的 に は IEC 60758[ 4 ]、国 内 で は JIS C 6704[ 5 ]に「 異 物 許 容 個 数 」

「 エ ッ チ チ ャ ネ ル 密 度 」「 赤 外 線 吸 収 係 数 」が 規 定 さ れ て お り 、そ れ ら の 規 定 に し た が っ て 検 査 グ レ ー ド 分 け さ れ て 市 場 に 提 供 さ れ る よ う に な り 、 現 在 で は 非 常 に 高 品 質 で バ ラ ツ キ の な い 人 工 水 晶 が 安 定 的 に 供 給 さ れ る よ う に な っ て い る 。

と こ ろ で 、 水 晶 が 発 振 器 に 大 量 に 利 用 さ れ て き て い る の は 、 そ の 発 振 周 波 数 の 安 定 性 に あ る 。発 振 周 波 数 が 安 定 で あ る た め に は Q値 が 高 い こ と が 要 求 さ れ る が 、 水 晶 は Q 値 が 106 を 超 え る 値 を 示 す 材 料 で も あ る 。Q 値 と は 共 振 の 尖 鋭 度 で あ る が 、 物 理 的 な 意 味 と し て は 内 部 損 失 の 逆 数 で あ り 、 内 部 損 失 が 非 常 に 小 さ い 材 料 と い う こ と に な る 。 こ れ は 、 機 械 材 料 と い う 視 点 か ら は 非 常 に 優 秀 な 弾 性 体 で あ る こ と を 意 味 し て お り 、 金 属 に み ら れ る よ う な ク リ ー プ や 疲 労 劣 化 は 無 視 で き る ほ ど に 少 な い 理 想 的 な 弾 性 材 料 と 位 置 付 け ら れ る 。

本 研 究 で 着 目 す る 水 晶 の 特 性 は 圧 電 性 で は な く 、Siよ り 大 き な 異 方 性 を 持 つ「 エ ッ チ ン グ 異 方 性 」 と 、 こ の 「 弾 性 体 」 と し て の 優 秀 な 特 性 で あ る 。

(13)

2.2 水 晶 の 機 械 強 度 特 性 測 定

水 晶 の 機 械 強 度 に つ い て の 報 告 例 は 非 常 に 少 な い 。 水 晶 の 工 業 的 な 用 途 が 発 振 器 や 光 学 素 子 な ど に 多 く 、 機 械 強 度 が 要 求 さ れ る よ う な 分 野 へ の 応 用 例 が 少 な い た め と 考 え ら れ る 。 ま た 、MEMS 技 術 に よ る 水 晶 デ バ イ ス が 開 発 さ れ る よ う に な っ て き た 近 年 に お い て も 、 そ れ ら は 圧 電 的 に 微 小 変 位 で 動 作 す る デ バ イ ス が 多 い た め 、 水 晶 の 応 力 限 界 値 に 言 及 す る 必 要 性 が 少 な か っ た も の と 推 定 さ れ る 。 し か し 、 本 研 究 は 加 速 度 入 力 に 対 す る 変 位 を 検 出 す る セ ン サ で あ る た め 、 過 大 な 加 速 度 (衝 撃) が 印 加 さ れ た 場 合 の た め に も 応 力 限 界 値 を 知 っ て お く 必 要 が あ る 。

機 械 強 度 の デ ー タ に つ い て は 、古 く は 1928年 に 発 刊 さ れ た“International Critical Tables (ICT)”[ 6 ]に そ の 値 を 見 い だ す こ と が で き る 。 そ し て 、1992 年 に IEEE-UFFC で 提 示 さ れ た 定 数 表“The Constants of Alpha Quartz”[ 7 ]の 数 値 も ICT と 同 じ 値 で あ る こ と か ら 、 そ の 間 は 新 し い 強 度 デ ー タ が 提 供 さ れ て い な い こ と に な る 。

一 般 的 に 、 細 い フ ァ イ バ や 結 晶 な ど 内 部 欠 陥 が 少 な い 材 料 で は 、 そ の 強 度 は 表 面 状 態 に 左 右 さ れ る と 考 え ら れ る 。 表 面 の 微 少 ク ラ ッ ク が 破 壊 の 起 点 に な る 場 合 が 多 い こ と か ら 、 表 面 の 微 少 ク ラ ッ ク が 少 な く 且 つ 表 面 積 の 小 さ い 物 、 つ ま り マ イ ク ロ 加 工 で 製 作 さ れ る よ う な 加 工 方 法 と 加 工 寸 法 の 試 料 を 用 い て 測 定 さ れ た デ ー タ が デ バ イ ス 開 発 に は 有 用 で あ る 。 し た が っ て 、 我 々 は マ イ ク ロ 加 工 さ れ た 微 小 試 料 で 機 械 強 度 測 定 を 行 い 、 こ れ ら の デ ー タ の 有 用 性 を 検 討 し た[ 8 ]

2.2.1 試 験 用 試 料 の 製 作

本 研 究 で 開 発 す る セ ン サ は 、 エ ッ チ ン グ の 異 方 性 を 有 効 に 利 用 す る た め に 水 晶 結 晶 軸 の Z 軸 に 垂 直 な 面 で 切 り 出 し た Z 板 と 呼 ぶ ウ ェ ハ を 使 用 す る 。

図 2-1 天 然 水 晶 と Z 板 Z 板

(14)

Quartz Wafer Cr,Au Thin-film 1) Sputtering

2) Photoresist Coating

3) Exposure and Development

4) Thin-film Etching

5) Quartz Wafer Etching

Photoresist

UV Exposure and Development Photoresist is removed

after Thin-film Etching

Anisotropic property (slope surface appear)

そ の 水 晶 Z 板 ウ ェ ハ を 用 い て 図 2-2 の プ ロ セ ス で 加 工 し た 試 験 サ ン プ ル の 形 状 を 図 2-3 に 示 す 。

こ の プ ロ セ ス は 水 晶 の 加 工 プ ロ セ ス と し て は 最 も 基 本 的 な も の で あ る 。 本 研 究 で 製 作 し た セ ン サ の 製 作 プ ロ セ ス は 後 述 す る こ と に な る の で 、 こ こ で は 図 2-2 の 基 本 プ ロ セ ス に つ い て 簡 単 に 触 れ て お く 。

1) 洗 浄 し た 水 晶 ウ ェ ハ に ス パ ッ タ に よ り Cr と Au の 薄 膜 を 付 け る 2) フ ォ ト レ ジ ス ト を ス ピ ン コ ー ト す る

3) 試 料 形 状 パ タ ー ン の フ ォ ト マ ス ク と 露 光 機 を 用 い て 、レ ジ ス ト を 露 光 し て 現 像 液 で 現 像 す る

4) Auと Cr薄 膜 を 専 用 の エ ッ チ ン グ 液 で エ ッ チ ン グ す る と 試 料 形 状 パ タ ー ン と 同 じ Au-Cr の 薄 膜 パ タ ー ン が 形 成 さ れ る

5) そ の 後 水 晶 の エ ッ チ ン グ 液 に 浸 す と Au-Cr の 試 料 形 状 パ タ ー ン が マ ス ク と な り 、 同 じ 形 状 の 水 晶 片 が 図 2-3 の よ う に エ ッ チ ン グ 加 工 で き る

図 2-2 試 験 サ ン プ ル の 試 作 プ ロ セ ス

100µm

5mm

X Y

Z [ T=50µm ]

60° A

A’

(A-A’断面Æ表2-1)

100µm

5mm

X Y

Z X Y

Z [ T=50µm ]

60° A

A’

(A-A’断面Æ表2-1) 図 2-3 試 験 サ ン プ ル の 形 状

(15)

Quartz piece String

Weight

Electronic balance

Pull-up

Holding piece Quartz piece String

Weight

Electronic balance

Pull-up

Holding piece

使 用 す る 水 晶 エ ッ チ ン グ 液 は 弗 化 水 素 酸 (HF) と 重 弗 化 ア ン モ ニ ウ ム 溶 液 (NH4HF2)の 2 種 類 が あ る 。 各 々 の エ ッ チ ン グ 液 で は 異 な っ た エ ッ チ ン グ 異 方 性 が 現 れ る の で 、 そ の 断 面 の 走 査 型 電 子 顕 微 鏡 (SEM : Scanning Electron Microscope) 写 真 を 表 2-1 に 示 す[ 8 ]。 試 料 サ ン プ ル は 弗 化 水 素 酸(HF)で エ ッ チ ン グ し た も の な の で 、 図 2-3 の A-A’断 面 が 表 2-1 の HF & Y-Section に な る 。

2.2.2 試 験 方 法 と 最 大 応 力

強 度 試 験 は 「 引 張 強 度 試 験 」「 曲 げ 強 度 試 験 」「 ね じ り 強 度 試 験 」 の 3 種 類 に つ い て 行 っ た 。 こ の よ う な 微 小 サ ン プ ル 用 の 試 験 機 は 見 あ た ら な い の で 、 全 て 自 作 の 試 験 セ ッ ト で デ ー タ を 取 得 し た 。

(1) 引 張 強 度 試 験 方 法

曲 げ 強 度 や ね じ り 強 度 の 試 験 に 比 べ て 引 張 強 度 試 験 は 非 常 に 難 し い 試 験 で あ る 。 と く に こ の よ う な 微 小 試 料 で は 引 張 荷 重 以 外 に 曲 げ 荷 重 が 作 用 し て し ま う こ と が 避 け ら れ な い 。 図 2-4 の よ う に 試 料 に お も り を 印 加 す る 方 法 を 考 え 、 で き る だ け 試 料 へ の 曲 げ 応 力 が 低 減 で き る よ う に 、 吊 る す た め の ワ イ ヤ に は 曲 げ 剛 さ を 無 視 で き る よ う に 絹 糸 を 使 用 し た 。

表 2-1 エ ッ チ ン グ 液 と 断 面 形 状

図 2-4 引 張 強 度 試 験 方 法

(16)

Steel base L Magnet

X W Quartz piece

T L

Steel base Magnet

X W Quartz piece

T

Rotation Axis

Quartz piece

Steel blocks

Magnets Fixed support

θ-Table

Rotation Axis

Quartz piece

Steel blocks

Magnets Fixed support

θ-Table

試 料 に 印 加 さ れ る 荷 重 は 、 電 子 は か り の 重 り の 減 量 か ら 得 る こ と が で き 、 引 張

強 度 σm a xは 次 式 か ら 求 め る こ と が で き る 。

S Wmax

max =

σ

[Pa] ... (2-1)

Wm a x : 破 断 時 の 荷 重 [N]

S : 試 料 の 断 面 積 [m2] (2) 曲 げ 強 度 試 験 方 法

曲 げ 強 度 試 験 は 3 点 曲 げ 試 験 法 が 一 般 的 で あ る が 、 試 料 片 が 非 常 に 小 さ い た め に 、 こ こ で は 図 2-5 の 方 法 で 試 験 を 行 っ た 。 研 磨 さ れ た エ ッ ジ を 有 す る 鉄 製 の 台 に マ グ ネ ッ ト で 試 料 を 固 定 し 、 自 由 端 を マ イ ク ロ メ ー タ に 取 り 付 け た ニ ー ド ル で 押 し 曲 げ 、 試 料 が 破 断 し た と き の 変 位 Xm a x か ら(2-2)式 に よ り 最 大 曲 げ 応 力 σm a x

を 計 算 す る 。

2 max

max 2

3 X

L

= ET

σ

[Pa] ... (2-2)

Xm a x : 破 断 時 の 変 位 [m]

E : 試 料 の 縦 弾 性 係 数 [Pa]

T, L : 試 料 の 厚 さ と 長 さ [m]

(3) ね じ り 強 度 試 験 方 法

剪 断 強 度 に 相 当 す る 試 験 で あ る が 、 ト ー シ ョ ン バ ー 型 や ね じ り 変 位 型 の デ バ イ ス の 場 合 に 必 要 と な る デ ー タ で あ る 。 図 2-6 の よ う に θ テ ー ブ ル の 回 転 中 心 に 試 料 の 下 部 を 固 定 し 、 上 部 は ス タ ン ド に マ グ ネ ッ ト で 固 定 し た 。

図 2-5 曲 げ 強 度 試 験 方 法

図 2-6 ね じ り 強 度 試 験 方 法

(17)

試 料 が 破 断 し た と き の 回 転 角 度 か ら 最 大 剪 断 応 力 を 計 算 す る が 、 試 料 の 断 面 形 状 (表 2-1 の HF & Y-Section) で は 最 大 応 力 の 計 算 が 困 難 で あ る 。そ こ で 、等 価 的 な 矩 形 断 面 形 状 に 近 似 し て 最 大 剪 断 応 力 を 求 め た 。 最 大 剪 断 応 力 τm a xは 矩 形 長 辺 の 中 点 に 発 生 し(2-3)式 で 計 算 で き る 。

⎪⎪

⎪⎪⎬

⎪⎪

⎪⎪⎨

=

= b

a n n

b G

n cosh 2

1 1 1 8

,, 3 ,

1 2

2 max

max

θ π

τ π

[Pa] ... (2-3)

θm a x : 破 断 時 の 回 転 角 度 [rad]

G : 試 料 の 横 弾 性 係 数 [Pa]

a, b : 試 料 の 短 辺 と 長 辺 [m]

2.2.3 試 験 結 果

(1) 引 張 強 度 試 験 結 果

図 2-7 に 引 張 強 度 試 験 の 結 果 を 、 図 2-8 に 破 断 部 の SEM 写 真 を 示 す 。

得 ら れ た デ ー タ は 201~1130 MPa と 大 き く ば ら つ い た が 、ICT の 値 91 MPa に 比 べ る と 大 き な 値 に な っ て い る 。こ れ ら 14 デ ー タ の 中 で 大 き な 値 の サ ン プ ル と 小 さ な 値 の サ ン プ ル の 破 断 部 を 観 察 す る と 、小 さ な 値 の サ ン プ ル は 図 2-8 (b)の よ う に 小 さ な 溝 状 の 傷 が 見 ら れ る 。 こ れ は 、 水 晶 エ ッ チ ン グ 時 に Au-Cr の パ タ ー ン 不

100µm

50µm

X軸 Y軸 Z軸

100µm

50µm

X軸 Y軸 Z軸

(a) 1128 Mpa (b) 201 MPa 図 2-8 破 断 部 の 拡 大 写 真

図 2-7 引 張 強 度 試 験 結 果 引張強度

0 1 2 3 4 5 6

0 500 1000

最大応力 [MPa]

サン 9 1MPa (ICT)

(18)

良 に よ り ギ サ ギ サ の 傷 状 に エ ッ チ ン グ さ れ て し ま っ た た め で あ る 。 し た が っ て 、 図 2-8 (a)の よ う な 良 好 な エ ッ チ ン グ サ ン プ ル で は 1000 MPa 以 上 の 強 度 が 期 待 で き る が 、 こ れ ら の デ ー タ だ け で は 確 定 的 な 結 論 を 出 す こ と は で き な い 。

(2) 曲 げ 強 度 試 験 結 果

図 2-9 に 曲 げ 強 度 試 験 の 結 果 を 示 す 。

全 て の 試 験 サ ン プ ル が 固 定 部 の 最 大 応 力 発 生 部 で 破 断 し て い る こ と か ら 、 比 較 的 再 現 性 の よ い 試 験 が 行 わ れ た と 考 え ら れ る 。 値 と し て は 1100~2200 MPa と 非 常 に 大 き な 値 が 得 ら れ て い る 。ICT の 値 130 MPa に 比 べ て 約 一 桁 大 き な 値 で あ る 。

こ の 試 験 サ ン プ ル の 断 面 を 調 査 し た 中 で 図 2-10 に 示 す も の が 観 察 で き た 。水 晶 に は 劈 開 性 は な い が 、 古 く か ら 鉱 物 学 者 の 間 で は 「 劈 開 性 は な い が r 面 で 割 れ る こ と が あ る よ う だ 」 と 言 わ れ て い る 。 し か し 、 実 験 的 に は 確 認 さ れ て お ら ず 「 そ の よ う な こ と も あ る よ う だ 」 と い う 程 度 の 認 識 の よ う で あ る 。 こ の 写 真 か ら 角 度 を 測 っ て ミ ラ ー 指 数 を 求 め る と お お よ そ(0111)と な り 、図 2-1 の r 面 の ミ ラ ー 指 数 と 一 致 す る 。 劈 開 性 と は 関 係 な い 事 象 で あ る が 、 稀 に こ の よ う な 結 晶 面 が 現 れ る こ と が あ る と い う 意 味 で 興 味 深 い 写 真 で あ る 。

(3) ね じ り 強 度 試 験 結 果

図 2-11 に ね じ り 強 度 試 験 の 結 果 を 、 図 2-12 に 破 断 部 の SEM 写 真 を 示 す 。 10 個 の サ ン プ ル の 中 で 、7 個 は 図 2-12(a)の よ う に 梁 端 部 で 破 断 し て い る が 、3

Y Z

r?

図 2-10 曲 げ 強 度 試 験 破 断 部 曲げ強度

0 1 2 3 4 5

0 500 1000 1500 2000 最大応力 [MPa]

サン

13 0Mpa

図 2-9 曲 げ 強 度 試 験 結 果 (ICT)

(19)

ねじり強度

0 1 2 3 4 5

0 500 1000 1500 最大応力 [MPa]

サン 試料梁部で 破断

個 は 梁 端 で は な く 梁 端 か ら 離 れ た 梁 部 で 破 断 し て い た 。 通 常 は 応 力 集 中 が 発 生 す る 梁 端 部 で 破 断 す る は ず な の で 、 梁 部 で 破 断 し た 3 個 に つ い て は 何 ら か の エ ッ チ ン グ 不 良 に よ る 傷 状 の 異 常 部 が 存 在 し た も の と 推 定 さ れ る 。

以 上 の よ う に 、 三 種 類 の 強 度 試 験 を 行 っ た 結 果 と し て 、 - 引 張 強 度 試 験 は 試 験 が 難 し く デ ー タ に バ ラ ツ キ が 生 じ る 。

- エ ッ チ ン グ の 不 良 に よ り 生 じ た 傷 状 の 異 常 部 が 強 度 低 下 に 大 き く 影 響 す る 。 こ の よ う な 傾 向 が 確 認 で き た 一 方 で 、 試 験 サ ン プ ル 程 度 の 寸 法 で 且 つ エ ッ チ ン グ 加 工 で 作 ら れ た 水 晶 デ バ イ ス に つ い て は 、 加 工 が 良 好 に 行 わ れ た も の に つ い て は 1000 Mpa を 強 度 の 目 安 の 値 と し て 採 用 で き る も の と 考 え ら れ る 。

図 2-11 ね じ り 強 度 試 験 結 果

(a) 梁 端 部 の 破 断 (b) 梁 部 の 破 断 図 2-12 破 断 部 の 拡 大 写 真

(20)

2.3 水 晶 の 微 細 加 工 特 性 測 定

水 晶 の 微 細 加 工 技 術 を 用 い て MEMS セ ン サ を 開 発 す る 上 で 、実 用 レ ベ ル で 加 工 可 能 な 加 工 限 界 を 定 量 的 に 事 前 確 認 し て お く 必 要 が あ る 。 こ こ で は 、 実 際 の 水 晶 ウ ェ ハ と 加 工 装 置 を 用 い て 、 ウ ェ ハ 厚 さ よ り も 小 さ い 幅 を 持 つ 高 ア ス ペ ク ト 比 の 構 造 体 に つ い て 、 そ の 幅 を パ ラ メ ー タ に 露 光 用 マ ス ク の 寸 法 と エ ッ チ ン グ 加 工 後 の 寸 法 に 関 し て 調 査 を 行 い 、 具 体 的 な 加 工 限 界 を 見 極 め る 。

2.3.1 実 験 用 フ ォ ト マ ス ク の 設 計 製 作

水 晶 の エ ッ チ ン グ 特 性 に つ い て は 既 に い く つ も の 研 究 デ ー タ が あ り 、 エ ッ チ ン グ 後 の 断 面 形 状 に つ い て も 詳 細 に 調 べ ら れ て い る[ 9 ] [ 1 0 ]。 し か し 、 微 細 構 造 体 を エ ッ チ ン グ で 加 工 す る 場 合 に は 、 露 光 用 マ ス ク の 寸 法 と エ ッ チ ン グ 後 の 水 晶 構 造 体 の 寸 法 の 関 係 に つ い て 明 ら か に す る 必 要 が あ る が 、 こ れ ま で に そ の よ う な デ ー タ の 報 告 例 は な い 。 基 本 的 な 加 工 プ ロ セ ス で あ る 図 2-2 に お い て 、 露 光 用 マ ス ク の 寸 法 に 対 し て 次 の 要 因 に よ り 最 終 的 な 水 晶 の 寸 法 が 決 ま る 。

(1) 露 光 現 像 に よ る レ ジ ス ト パ タ ー ン の 痩 せ 細 り

露 光 時 に 光 の 回 り 込 み に よ り マ ス ク の 内 側 に 光 が 入 り 込 む こ と と 、 現 像 時 に 現 像 液 に 未 露 光 の レ ジ ス ト が 微 量 に 溶 解 す る こ と に よ り 、 マ ス ク パ タ ー ン に 比 べ て レ ジ ス ト パ タ ー ン が 細 く な る の が 一 般 的 で あ る 。

(2) Au-Cr 薄 膜 の オ ー バ ー エ ッ チ ン グ

Au と Cr の 薄 膜 は レ ジ ス ト 膜 に 覆 わ れ て い な い 部 分 を エ ッ チ ン グ に よ り 除 去 す る が 、 こ の エ ッ チ ン グ プ ロ セ ス に お い て レ ジ ス ト 膜 の 下 ま で エ ッ チ ン グ が 進 行 す る オ ー バ ー エ ッ チ ン グ 現 象 に よ り 、 レ ジ ス ト パ タ ー ン よ り 細 い Au-Cr 薄 膜 パ タ ー ン に な っ て し ま う 。

(3) 水 晶 の エ ッ チ ン グ

水 晶 を エ ッ チ ン グ す る と き に 、 加 工 す る 厚 さ 方 向 (Z 軸 方 向) に 対 し て 垂 直 の 方 向 (X 軸 方 向)、つ ま り Au-Cr 薄 膜 の 下 部 に も エ ッ チ ン グ が 進 む 。こ れ は エ ッ チ ン グ 異 方 性 に 関 す る 研 究 デ ー タ か ら 知 る こ と が で き る 。図 2-13 の よ う に 、余 分 な 結 晶 面 が エ ッ チ ン グ 除 去 さ れ て 高 ア ス ペ ク ト 比 の 断 面 形 状 が で き る ま で 長 時 間 エ ッ チ ン グ を 行 う と 、 こ の X 軸 方 向 の エ ッ チ ン グ 量 は 数 μm に 至 る こ と に な る 。

図 2-13 水 晶 エ ッ チ ン グ の 進 み 方 Z 軸 方 向 の

エッチン グ

余 分 な 結 晶 面 のエッチ ング

X軸 方 向 に エッチン グが 進 む

Au-Cr マス クパターン

(21)

こ れ ら(1)(2)の 痩 せ 細 り の 量 は 各 々1μm 前 後 の 微 小 量 で あ り 、露 光 時 間 や 現 像 時 間 、 ま た エ ッ チ ン グ 液 の 温 度 や エ ッ チ ン グ 時 間 に よ っ て も 変 わ る こ と や 、μm オ ー ダ の 構 造 体 を 扱 う 機 会 が な か っ た こ と か ら 、 こ れ ま で は 詳 細 に は 調 べ ら れ て こ な か っ た 。し か し 、本 研 究 で は 数 μm の 構 造 体 を 設 計 す る 可 能 性 が あ る こ と か ら 、 具 体 的 に マ ス ク を 設 計 製 作 し て 水 晶 の エ ッ チ ン グ を 行 い 、 エ ッ チ ン グ 後 の 水 晶 の 断 面 寸 法 を SEM で 測 定 す る こ と に よ り 微 細 加 工 の 特 性 を 定 量 的 に 調 べ た[ 1 1 ]

作 成 し た フ ォ ト マ ス ク の パ タ ー ン を 図 2-14 に 示 す 。最 も 重 要 な パ タ ー ン は ※ 印 の も の で 、使 用 す る 水 晶 ウ ェ ハ の 厚 さ が 100μm で あ る の に 対 し て 、線 状 の パ タ ー ン の 幅 が 水 晶 エ ッ チ ン グ 後 に 10μm と な る よ う に 予 想 し て 数 種 類 の 幅 の パ タ ー ン を 作 っ て あ る 。 そ の 他 、 セ ン サ の 設 計 に 必 要 に な る と 考 え ら れ る 多 く の テ ス ト パ タ ー ン も 組 み 込 ん で あ る 。

2.3.2 実 験 結 果 と 微 細 加 工 の 限 界 値

こ の マ ス ク を 用 い て 、図 2-2 と 同 様 の プ ロ セ ス で 厚 さ 100 μm の 水 晶 ウ ェ ハ を エ ッ チ ン グ 加 工 し た 。 エ ッ チ ン グ 液 と し て は 高 ア ス ペ ク ト 比 の 加 工 に 向 い て い る 重 弗 化 ア ン モ ニ ウ ム 溶 液(NH4HF2)を 用 い た 。

エ ッ チ ン グ 後 の ※ 印 部 分 の 拡 大 写 真 が 図 2-15(a)で あ る 。写 真 紙 面 に 垂 直 方 向 の 水 晶 ウ ェ ハ 厚 さ が 100 μm、 写 真 の 左 右 方 向 の 梁 幅 が 約 10 μm、 そ し て 上 下 方 向 の 梁 長 さ が 2 mm で あ る 。

そ し て 、 こ の 線 状 の 細 い 梁 の Y 軸 に 垂 直 な A-A’断 面 は 、 図 2-15(b)の よ う な 形 状 寸 法 に な る と 予 想 し て い た 。

図 2-14 微 細 加 工 評 価 用 フ ォ ト マ ス ク

使 用 する 水 晶 ウ ェハ の結 晶 軸 と マスクの 位 置 関 係

X Y

(22)

マ ス ク に は 16, 14, 12μm の 3 種 類 の 幅 の 梁 パ タ ー ン を 作 っ て あ り 、 そ の 3 種 類 に つ い て エ ッ チ ン グ 後 の 微 細 梁 の 断 面 を SEM で 観 測 し た 。(図 2-16)

マ ス ク の パ タ ー ン 幅 16 μm 14 μm 12 μm 測 定 値 (上 下 平 均) 6 μm 4 μm 2 μm

(a) 微 細 梁 の 拡 大 写 真 (b) 断 面 寸 法 の 予 想 図 図 2-15 エ ッ チ ン グ 後 の 微 細 梁

図 2-16 微 細 エ ッ チ ン グ 加 工 に よ る 梁 断 面 寸 法

水晶ウェハの厚さ100μm

10μm 予 想 図

表 裏 マ ス ク の ア ラ イ メ ン ト の ず れ

Au-Cr マ ス ク

A A’

A A’

水晶ウェハの厚さ100μm 23°

10μm こ の 線 状 梁 の 面 が こ の 面

X Z

(23)

表 と 裏 の マ ス ク ア ラ イ メ ン ト に 2~3 μm の ず れ が 生 じ た た め に 写 真 の よ う に 上 下 に 段 差 が 生 じ て い る が 、 実 験 の 目 的 か ら 大 き な 問 題 は な い 。

マ ス ク の オ ー バ ー エ ッ チ ン グ や 水 晶 の X軸 方 向 エ ッ チ ン グ 量 が 予 想 以 上 に 大 き か っ た た め に 、10 μm の 仕 上 が り 幅 の 予 想 に 対 し て 2~6 μm と い う 結 果 に な っ た が 、 こ の 結 果 か ら 想 像 以 上 の 高 ア ス ペ ク ト 比 の 加 工 が 実 現 可 能 で あ る こ と も 判 明 し た 。こ れ ら の デ ー タ か ら 、余 分 な 結 晶 面 の エ ッ チ ン グ が 終 了 し て 図 2-16 の よ う な 高 ア ス ペ ク ト 比 の 状 態 ま で 至 る た め に は 、 エ ッ チ ン グ 後 の 寸 法 に 比 べ て マ ス ク 寸 法 を 約 10 μm 大 き く 設 計 し て お く 必 要 が あ る こ と を 示 唆 し て い る 。

実 験 の 再 現 性 を 確 認 す る た め に 、 幅 18μm に マ ス ク を 再 設 計 試 作 し て 一 連 の 実 験 を 行 い SEM で 観 測 し た 結 果 が 図 2-17 で あ る 。 表 裏 の マ ス ク ア ラ イ メ ン ト の ず れ も な く 予 想 通 り の 幅 8 μm の 綺 麗 な 梁 断 面 が 観 測 さ れ 、 実 験 の 再 現 性 、 つ ま り 自 作 プ ロ セ ス の 再 現 性 と そ の 微 細 加 工 の 限 界 レ ベ ル が 確 認 で き た 。

図 2-17 高 ア ス ペ ク ト 比 の 梁 断 面 写 真 8 μm

(24)

2.4 ま と め

本 章 で は 、水 晶 を MEMS セ ン サ の 材 料 と し て 用 い る 場 合 の 基 本 的 な 特 性 に つ い て 述 べ た 。

水 晶 は 圧 電 性 を 利 用 し た 用 途 が 主 で あ る た め 、 そ の 性 質 を 利 用 し た デ バ イ ス や セ ン サ の 基 本 的 な 特 性 に つ い て は 数 え 切 れ な い ほ ど の 報 告 例 が あ る 。そ の た め か 、 水 晶 の 機 械 的 な 特 性 や 、 異 方 性 エ ッ チ ン グ に つ い て の 研 究 報 告 は 非 常 に 少 な い の が 実 状 で あ る 。

こ こ で 述 べ た 機 械 強 度 特 性 に つ い て は 、 実 験 の 結 果 か ら 1000 MPa を 機 械 強 度 の 目 安 に 設 定 で き る こ と が わ か っ た 。 メ カ ニ カ ル な セ ン サ や デ バ イ ス を 開 発 設 計 す る 場 合 に 機 械 強 度 は 重 要 な 基 本 デ ー タ に な る 。 弾 性 特 性 を 利 用 す る と き の 許 容 応 力 範 囲 の 設 定 や 強 度 限 界 設 定 ま た 疲 労 破 壊 特 性 な ど 、 機 械 的 な 特 性 を 設 計 検 討 す る と き の 基 本 と な る も の で あ る 。 こ の 機 械 強 度 デ ー タ を も と に 、 い ろ い ろ な 検 討 か ら 安 全 係 数 を 決 め て 、 そ の 安 全 係 数 を も と に 使 用 す べ き 応 力 範 囲 を 設 定 す る と き の 基 本 デ ー タ に な る も の で あ る 。

ま た 、 微 細 加 工 特 性 に つ い て も 、 ケ ミ カ ル な ウ ェ ッ ト エ ッ チ ン グ と い う 手 法 で は 実 現 性 が 見 え な か っ た 高 ア ス ペ ク ト 比 の 加 工 が 可 能 で あ る こ と を 実 験 デ ー タ が 示 し て く れ た 。 エ ッ チ ン グ 断 面 形 状 が 二 等 辺 三 角 形 の よ う に な る の で 、 パ タ ー ン 幅 を 極 限 ま で 小 さ く し て も 二 等 辺 三 角 形 部 分 が 残 っ て し ま う こ と や 、 マ ス ク の ア ラ イ メ ン ト 誤 差 、 薄 膜 の エ ッ チ ン グ ば ら つ き な ど を 考 慮 す る と 、 実 用 的 な 微 細 パ タ ー ン 幅 の 限 界 は 水 晶 エ ッ チ ン グ 後 で 5~10 μm の 間 が 妥 当 な 値 と 判 断 で き る 。

ま た 、 こ れ ら の 実 験 検 討 デ ー タ は 本 研 究 の た め だ け で は な く 、 今 後 の 水 晶 に 関 係 す る 研 究 の 基 礎 デ ー タ と し て 活 用 で き る も の と 考 え る 。

(25)

3 章 傾 斜 角 セ ン サ 基 本 構 成 の 検 討

高 感 度 傾 斜 角 セ ン サ の 具 体 的 な 設 計 に 入 る 前 に 、 ど の よ う な 方 式 と ど の よ う な 構 成 の セ ン サ を 指 向 す る の か 検 討 し て お く 必 要 が あ る 。 本 章 で は 設 計 計 算 を 行 う た め の 具 体 的 な 方 式 と 基 本 構 成 に つ い て の 検 討 結 果 に つ い て ま と め る 。

3.1 測 定 検 出 方 式 の 検 討

第 1 章 に お い て 、 傾 斜 角 と は 「 水 平 面 に 対 す る 傾 き 」 と 述 べ た が 、 検 出 す る 対 象 と い う 側 面 か ら 分 類 す る と 次 表 の よ う に 整 理 す る こ と も で き る 。

検 出 対 象 検 出 方 法 測 定 方 式 例

重 力 方 向 重 力 方 向 を 探 す 零 位 法 気 泡 式 、 重 錘 式 重 力 加 速 度 変 化 分 重 力 加 速 度 の 正 弦 成 分 加 速 度 測 定

地 面 や 地 殻 の 変 動 地 点 の 相 対 的 な 変 化 大 掛 か り な シ ス テ ム

傾 斜 角 を 電 気 信 号 に 変 換 す る た め の セ ン サ と い う 視 点 で こ の 分 類 表 を 見 る と 、

「 小 型 」「 高 感 度 」の セ ン サ と し て は 、前 章 で 述 べ た よ う に 加 速 度 の 測 定 が 適 し て い る と い う こ と が 改 め て 認 識 で き る 。

次 に 、加 速 度 変 化 を 電 気 信 号 と し て 検 出 す る た め の 検 出 方 式 に つ い て 検 討 す る 。 測 定 対 象 は 加 速 度 で あ る が 、 加 速 度 は[m/s2]と い う 単 位 を も つ 物 理 量 で あ り 、 こ の 単 位 を 直 接 測 定 す る 方 法 は 見 当 た ら な い 。 何 ら か の 質 量 を 用 意 し て 、 加 速 度 に よ り 質 量 に 生 じ る 力 を 検 出 す る と い う 方 式 に な る 。 こ の 力 を 検 知 し て 電 気 信 号 に 変 換 す る た め の 測 定 物 理 量 と い う 視 点 で 分 類 す る と 表 3-2 の よ う に な る 。

測 定 量 検 出 方 法

歪 ・ 応 力 歪 ゲ ー ジ 、 ピ エ ゾ 抵 抗 、 固 有 振 動 数 、etc

変 位 ト ラ ン ス 、 光 、 超 音 波 、 渦 電 流 、 静 電 容 量 、etc

温 度 温 度 検 出

温 度 測 定 と い う 方 式 は 、 密 封 さ れ た 容 器 の 中 の 気 体 に 温 度 差 (気 体 質 量 差) を 与 え て 、 加 速 度 に よ り 気 体 が 移 動 す る と き の 温 度 変 化 を 検 出 す る と い う 特 殊 な 方 法 で あ る 。Si の MEMS 加 速 度 セ ン サ は ピ エ ゾ 抵 抗 式 か 静 電 容 量 式 と 言 っ て よ い ほ ど こ の 2 種 類 の 方 式 に 集 中 し て い る 。 小 型 で シ ン プ ル な 構 成 と い う こ と か ら 必 然 的 な 傾 向 と 考 え ら れ る 。 と く に 、 熱 雑 音 と い う 測 定 限 界 を 左 右 す る 抵 抗 体 が 存 在 し な い 静 電 容 量 式 は MEMS セ ン サ に と っ て 非 常 に 優 れ た 検 出 方 法 と い え る 。

本 研 究 で 採 用 す る 検 出 方 式 も 静 電 容 量 方 式 と し 、 高 感 度 化 つ ま り S/N 比 を 高 め る た め に 「 差 動 方 式 」 の 構 成 を 取 り 入 れ る こ と と す る 。

表 3-1 傾 斜 の 検 出 対 象 で の 分 類

表 3-2 検 出 方 法 の 分 類

(26)

X Y

入力

結晶軸

検出

X

Y X Y

X Y

入力

結晶軸 検出

X Y

入力

検出

結晶軸

X Y

X Y

X Y

入力

検出

結晶軸

3.2 セ ン サ 構 成 案 の 検 討

加 速 度 変 化 を 質 量 で 力 と し て 受 け と め 、 そ の 力 で 生 じ る 変 位 を 静 電 容 量 方 式 で 検 出 す る と い う 構 成 に つ い て 具 体 的 な 形 を 想 定 し て 特 徴 を 整 理 し て み る 。

以 下 の 比 較 検 討 で は 、 そ れ ぞ れ の 構 成 に お い て 外 形 寸 法 は 5×5 mm、 ウ ェ ハ の 厚 さ は 100 μm と 仮 定 し て 概 略 計 算 し て あ る 。

(1) 振 子 型

こ の 構 成 は 高 ア ス ペ ク ト 比 の バ ネ 特 性 を 有 効 活 用 で き る 変 位 方 向 で あ り 比 較 的 変 位 は 大 き い が 、 電 極 が ウ ェ ハ の 厚 さ 方 向 の 壁 面 に な る た め 静 電 容 量 が 小 さ い と い う 難 点 が あ る 。 そ の た め に 図 3-1 の よ う に 多 数 の 電 極 を 持 つ 櫛 歯 電 極 が 必 須 と な り 、 差 動 構 成 を 実 現 す る た め の 電 極 分 離 方 法 は 重 要 な 研 究 課 題 に な る 。

振 子 型 団 扇 型 ね じ り 型

外 観 構 成

特 徴

・ 一 枚 構 成

・ 静 電 容 量 小

→ 櫛 歯 電 極 化

・ 高 ア ス ペ ク ト 比 → 変 位 大

・ 三 枚 構 成 → 組 立 難

・ 静 電 容 量 大

・ 厚 さ 方 向 変 位 → 変 位 小

・ 三 枚 構 成 → 組 立 難

・ 静 電 容 量 大

・ ね じ り バ ネ → 変 位 大 表 3-3 構 成 案 の 外 観 と 特 徴 の 推 定

- -

3.5mm5mm

4mm

3mm

X 5mm Y

- - - -

3.5mm5mm

4mm

3mm

X 5mm Y

C1-1C2-1C1-2C2-2 X Z

C1-1C2-1C1-2C2-2 X Z

図 3-1 振 子 型 の 検 討 図

100µm 曲げ方向

エッチング面 表面 断面

100µm 曲げ方向

エッチング面 表面 断面

100µm

エッチング面 表面 断面

X Y

結晶軸

入力

検出

X

Y X Y

結晶軸

入力

検出

X

Y

結晶軸

入力

検出

X

Y X Y

結晶軸

入力

検出

(27)

3.5mm

4mm

3mm

X Y

3.5mm

4mm

3mm

X Y

X

Y

C C

11

C C

22

100µm

エッチング面 表面 断面

100µm 曲げ方向

エッチング面 表面 断面

曲げ方向 (2) 団 扇 型

静 電 容 量 が 二 枚 の ウ ェ ハ の 面 間 で 構 成 さ れ る の で 大 き な 静 電 容 量 が 得 ら れ る 。 板 間 の ギ ャ ッ プ は 実 用 レ ベ ル と し て 5μm 程 度 が 想 定 で き る が 、差 動 構 成 に す る た め に は こ の ギ ャ ッ プ を 維 持 し て 三 枚 構 成 に す る 必 要 が あ る 。 電 極 の 外 部 へ の 引 き 出 し 方 法 に 工 夫 が 必 要 に な る こ と に 加 え て 、 組 立 や パ ッ ケ ー ジ ン グ な ど コ ス ト 的 な 面 で も 問 題 を 抱 え て い る 。 バ ネ の 変 位 方 向 が ウ ェ ハ の 厚 さ 方 向 に な る た め に 高 ア ス ペ ク ト 比 の 特 長 が 生 か さ れ な い の も 性 能 的 な 面 で 問 題 と な る 。

(3) ね じ り 型

団 扇 型 と 同 様 の 三 枚 構 成 で あ り 、 電 極 の 引 き 出 し や 組 み 立 て な ど コ ス ト 的 な 問 題 も 同 様 に 抱 え て い る 。 し か し 、 バ ネ の ね じ り 変 形 を 利 用 す る こ と で 高 ア ス ペ ク ト 比 の バ ネ の 利 点 を 活 用 で き る の で 三 種 類 の 中 で は 最 も よ い 特 性 が 期 待 で き る 構 成 案 で あ る[ 1 2 ]

以 上 の 構 成 案 と 各 々 の 寸 法 を も と に 、 加 速 度 が 印 加 さ れ て い な い と き の 初 期 容 量 値 C0 お よ び 1°の 傾 斜 角 が 印 加 さ れ た と き の 容 量 変 化 率 (感 度) ΔC/C0 を 概 略 計 算 し た 結 果 を 表 3-4 に 示 す 。 最 適 設 計 を 考 慮 し た 計 算 で は な い の で 、 各 々 の

図 3-2 団 扇 型 の 検 討 図

X

4mm Y

3.5mm

1.5mm

X

Y X

4mm Y

3.5mm

1.5mm

C

1

C

2

C

1

C

2 100µm

エッチング面 表面 断面 ねじり方向

100µm エッチング面

表面 断面 ねじり方向

図 3-3 ね じ り 型 の 検 討 図

(28)

値 の 絶 対 値 を 議 論 す る の で は な く 相 対 比 較 す る た め の も の で あ る 。

初 期 容 量 値 感 度 [ΔC/C0] 振 子 型 3~5 pF 1~2% / deg 団 扇 型 20~30 pF ~1% / deg ね じ り 型 20~30 pF 2~3% / deg

予 想 と 同 じ 傾 向 を 示 す 値 と な っ た が 、 最 も 重 要 な 感 度 に つ い て は 予 想 に 反 し て 大 き な 違 い は 出 な か っ た 。 詳 細 な 最 適 設 計 を 行 え ば 上 記 計 算 結 果 よ り 改 善 さ れ る と 思 わ れ る が 、 基 本 構 成 を 選 択 す る 判 断 に 大 き な 影 響 は な い 。

団 扇 型 は 選 択 肢 か ら 除 か れ る の は 明 ら か と し て 、 振 子 型 と ね じ り 型 を 比 較 し た と き に 、 数 値 的 な 優 位 性 よ り も 構 成 が シ ン プ ル で あ る と い う 理 由 に よ り 振 子 型 が 選 択 さ れ る の は 疑 う 余 地 が な い と 考 え る 。

し か し 、 振 子 型 は 外 見 と し て は シ ン プ ル な 構 成 に み え る が 、1 片 の 水 晶 デ バ イ ス に 全 て の 機 能 を 作 り 込 む こ と に な る の で 、 多 く の 研 究 課 題 を 抱 え て い る 構 成 で あ る こ と も 明 ら か で あ る 。

表 3-4 概 略 計 算 結 果

参照

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