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交絡因子による調整効果の定量化

ドキュメント内 博 士 学 位 論 文 (ページ 44-49)

第 3 章 交絡因子の確認と調整効果の定量化

3.6 交絡因子による調整効果の定量化

3.6.1 喫煙、飲酒、職種、職位、教育年数による調整効果

累積線量の増加に伴う死亡率の上昇を表す指標として、以下に示すERRを算出し、喫煙、

飲酒、職種、職位、教育年数の調整による、ERR/Svの変動の程度を確認した。

ここでの解析対象者は第2次生活習慣調査の回答者 41,742人である。観察期間が2005

~2010年と短いため、暦年については調整しなかった。

被ばく線量カテゴリー:<5, 5-, 10-, 20-, 50-, 100+ mSv 潜伏期:10年

基本調整(年齢、地域のみの調整)

𝜆 = 𝜆0(𝑎𝑔𝑒, 𝑟𝑒𝑔𝑖𝑜𝑛)(1 + 𝛽・𝑟𝑎𝑑𝑖𝑎𝑡𝑖𝑜𝑛)

基本調整に加えて喫煙等を調整した場合

𝜆 = 𝜆0(𝑎𝑔𝑒, 𝑟𝑒𝑔𝑖𝑜𝑛)𝑒𝑥𝑝(𝛼𝑖・𝑠𝑚𝑜𝑘𝑒𝑖)(1 + 𝛽・𝑟𝑎𝑑𝑖𝑎𝑡𝑖𝑜𝑛)(喫煙調整)

𝜆 = 𝜆0(𝑎𝑔𝑒, 𝑟𝑒𝑔𝑖𝑜𝑛)𝑒𝑥𝑝(𝛼𝑖・𝑎𝑙𝑐𝑜ℎ𝑜𝑙𝑖)(1 + 𝛽・𝑟𝑎𝑑𝑖𝑎𝑡𝑖𝑜𝑛)(飲酒調整)

𝜆 = 𝜆0(𝑎𝑔𝑒, 𝑟𝑒𝑔𝑖𝑜𝑛)𝑒𝑥𝑝(𝛼𝑖・𝑗𝑜𝑏 𝑐𝑎𝑡𝑒𝑔𝑜𝑟𝑦𝑖)(1 + 𝛽・𝑟𝑎𝑑𝑖𝑎𝑡𝑖𝑜𝑛)(職種調整)

𝜆 = 𝜆0(𝑎𝑔𝑒, 𝑟𝑒𝑔𝑖𝑜𝑛)𝑒𝑥𝑝(𝛼𝑖・𝑗𝑜𝑏 𝑠𝑡𝑎𝑡𝑢𝑠𝑖)(1 + 𝛽・𝑟𝑎𝑑𝑖𝑎𝑡𝑖𝑜𝑛)(職位調整)

𝜆 = 𝜆0(𝑎𝑔𝑒, 𝑟𝑒𝑔𝑖𝑜𝑛)𝑒𝑥𝑝(𝛼𝑖・𝑦𝑒𝑎𝑟s 𝑜𝑓 𝑒𝑑𝑢𝑐𝑎𝑡𝑖𝑜𝑛𝑖)(1 + 𝛽・𝑟𝑎𝑑𝑖𝑎𝑡𝑖𝑜𝑛)(教育年数 調整)

𝜆 = 𝜆0(𝑎𝑔𝑒, 𝑟𝑒𝑔𝑖𝑜𝑛)𝑒𝑥𝑝(𝛼1𝑖・𝑠𝑚𝑜𝑘𝑒𝑖+ 𝛼2𝑖・𝑦𝑒𝑎𝑟 𝑜𝑓 𝑒𝑑𝑢𝑐𝑎𝑡𝑖𝑜𝑛𝑖)(1 + 𝛽・𝑟𝑎𝑑𝑖𝑎𝑡𝑖𝑜𝑛)(喫煙、教育年数調整)

𝜆 = 𝜆0(𝑎𝑔𝑒, 𝑟𝑒𝑔𝑖𝑜𝑛)𝑒𝑥𝑝(𝛼1𝑖・𝑠𝑚𝑜𝑘𝑒𝑖+ 𝛼2𝑖・𝑎𝑙𝑐𝑜ℎ𝑜𝑙𝑖+ 𝛼3𝑖・𝑗𝑜𝑏 𝑐𝑎𝑡𝑒𝑔𝑜𝑟𝑦𝑖+ 𝛼4𝑖・𝑗𝑜𝑏 𝑠𝑡𝑎𝑡𝑢𝑠𝑖+ 𝛼5𝑖・𝑦𝑒𝑎𝑟s 𝑜𝑓 𝑒𝑑𝑢𝑐𝑎𝑡𝑖𝑜𝑛𝑖)(1 + 𝛽・𝑟𝑎𝑑𝑖𝑎𝑡𝑖𝑜𝑛)(喫煙、飲酒、職 種、職位、教育年数調整)

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λ 死亡率

λ0 バックグラウンド死亡率

age 年齢

region 地域

smokei 喫煙カテゴリー

alcoholi 飲酒カテゴリー

job categoryi 職種カテゴリー

job statusi 職位カテゴリー

years of educationi 教育年数カテゴリー

αi 各カテゴリーの係数(相対リスク)

β 放射線リスク(ERR/Sv)

radiation 累積被ばく線量

年齢、地域、喫煙、飲酒、職種、職位、教育年数のカテゴリーは「3.4 交絡因子の確認:

項目別リスク推定」で述べたとおりである。

本モデルはERRと累積線量radiationとの関係に直線性を仮定している。ERRは単位を

/Svとし、累積線量に伴ってERRの増加を片側5%で検出するため90%信頼区間を求め、

信頼区間の下限値が0より大きい場合、および上限値が0より小さい場合に有意差がある と判断した。解析結果を表3-4に示す30,43)

表3-4 変数毎の調整効果

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基本調整のERR/Svは0.78 (90%CI(以下同): -0.65, 2.20)であり、これをさらに飲酒で 調整した場合、ERR/Svはほとんど変わらなかった(0.77 (-0.65, 2.20))。このことからリ スクファクターであっても線量との相関が弱い場合には、調整効果はほとんど無いことが わかる。職種、職位で調整した場合、ERR/Svは各々0.71 (-0.75, 2.16)、0.57 (-0.84, 1.98) と幾分下がり、教育年数による調整は0.42 (-0.94, 1.79)と、それらより強い調整効果を示し た。喫煙による調整は0.31 (-1.03, 1.65)と最も強い調整効果を示し、点推定値は基本調整に 比べ半分以下となった。

調整効果の強い喫煙、教育年数を組み合わせて調整した場合、ERR/Svは0.08 (-1.22, 1.39) とほぼゼロとなったが、上記の変数を全て調整した場合には0.23 (-1.14, 1.61)と喫煙、教育 年数のみの調整より大きな値となった。このことから調整効果の弱い変数を調整効果の強 い変数と組み合わせて調整した場合には、調整効果の強い変数の調整効果が弱められると いえる。

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3.6.2 喫煙による調整効果

前章では変数毎のリスクの大きさや累積線量との相関の強さにより、放射線リスクの推 定値への調整効果が変わることを示した。しかしながら信頼区間には重なりがあり、調整 により有意性が変わってはいない。これは解析対象者を第2次生活習慣等調査回答者41,742 人に限定したことによる検出力の不足に起因している。喫煙情報は第1次、第 2次生活習 慣等回答者の双方が有しているため、これらから喫煙情報が不明の者を除外した71,733人 を対象として以下のモデルを用いた。

被ばく線量カテゴリー:0, >0, 1-, 2-, 3-, 5-, 7.5-, 10-, 15-, 20-, 25-, 50-, 100-, 200+ mSv 潜伏期:全死亡0年、慢性リンパ性白血病を除く白血病2年、その他の疾患10年

𝜆 = 𝜆0(𝑎𝑔𝑒, 𝑐𝑎𝑙, 𝑏𝑖𝑟, 𝑟𝑒𝑔𝑖𝑜𝑛, 𝑠𝑢𝑟)𝑒𝑥𝑝(𝛼1・𝑝𝑎𝑐𝑘𝑦𝑒𝑎𝑟_𝑐 + 𝛼2・𝑝𝑎𝑐𝑘𝑦𝑒𝑎𝑟_𝑓 + 𝛼3・𝑡𝑓𝑐_𝑓) (1 + 𝛽・𝑟𝑎𝑑𝑖𝑎𝑡𝑖𝑜𝑛)

λ 死亡率

λ0 バックグラウンド死亡率

age 年齢

cal 暦年

bir 出生年

region 地域

sur 生活習慣等アンケート調査時期(第1次、第2次)

packyear_c Packyear(現在喫煙者)

packyear_f Packyear(過去喫煙者)

tfq_f 禁煙からの経過年数(過去喫煙者)

α1-3 各変数の係数(相対リスク)

β 放射線リスク(ERR/Sv)

radiation 累積被ばく線量

死因別に喫煙による調整前後のERR/Svおよび90%信頼区間を算出した結果を表3-5 に示す 36)。信頼区間の下限値がゼロを上回る場合、および上限値がゼロを下回る場合に有 意差があると判断した。表中の赤字は有意に高いERR/Svを表す。

40 表3-5 喫煙による調整効果

全死亡、全疾患、非新生物疾患において、喫煙調整前 ERR/Sv は有意に高かったが、喫 煙調整後は ERR/Sv が減少し、有意差はなくなった。白血病を除く全がんの喫煙調整前

ERR/Svは有意差はないが、喫煙調整により点推定値は0.80から0.29へと64%減少した。

肺がんについても喫煙調整により点推定値は1.94から0.94へと52%減少した。慢性リン パ性白血病(Chronic Lymphocytic Leukemia: CLL)を除く白血病は観察死亡数が少ない

ため、ERR/Svが収束しなかった。表では最終推定値を示しているが、この数値には幾分の

不確かさを含む。

このように喫煙調整は放射線リスク推定値に大きな影響を与えるため、放射線による健 康影響の検討に当たっては喫煙データを収集し、調整する必要があると考えられる。

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