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博士(農学)林学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士 (農 学)林 学 位論 文題 名

地域における環境経済統合勘定の理論と実証に関する研究 学位論文内容の要旨

  本論文 の目的は,北海道を事例として,環境経済統合勘定と環境財政支出を分析し,自 然資源投 入・賦存状況を把握して,経済活動への自然資源投入の状況を明らかとすること である。 近年地域における自然資源の公益的機能が認識され,新たな価値として評価され ている一 方で,依然として環境汚染・破壊などの環境問題が発生している。特に自然資源 の豊富な 地域においては,経済活動に自然資源が集約的に投入されている。一方,自然資 源保全サ ーピスは公共財的性格が強く,市場の失敗が発生し市場機構を通じて適切な供給 が行えな いため,主に地方自治体によって供給されている。そのため,地方自治体の環境 政策にお ける財政支出(環境財政支出)を分析することによって,地域環境政策の重点施 策をより 明確化できる。

  具体的 な課題には,以下の3点を挙 げる。第一に北海道を対象に環境経済統合勘定を構 築・推計 し,どの産業部門が最も自然資源を多く投入しているのか,どの自然資源の投入 が多いか を明らかにすることである。第二に地方自治体が支出する環境財政支出のデータ を分析し ,地方自治体の環境政策におぃてどの自然資源を保全するための支出が多いのか を明らか にすることである。その上で第三に地域経済計算と環境経済統合勘定の双方を用 いて分析 を行い,自然資源投入という環境要因を考慮した場合と考慮しない場合の地域経 済の位置 づけの相違を明らかにすることである。

  環境経 済統合勘定を推計することによって,今まで全く別問題であった環境問題と経済 成長を同 じ枠組みの中で考えることができ,統一された意思決定をするためのーつの指標 が得られ るようになる。特に地域においては,経済活動における自然資源投入を把握する ことがで きる。一方,環境政策は地域の自然資源を保全する上で非常に重要な役割を果た している 。そのため,自然資源を保全するサーピスの供給という側面から分析するために は , 地 方 自 治 体 の 環 境 政 策 を 分 析 す る こ と も 重 要 で あ る と 考 え ら れ る 。   各章の 内容は次の通りである。第1章では,本論文の課題の提示と分析対象の限定を行 った。第2章では,環境問題に対して 経済学的に接近することの意義を明らかにし,自然 資源の価 値を経済学的に評価することの必要性を論じ,さらに環境評価手法の中でも環境 資源勘定 ,特に環境経済統合勘定の意義を明らかにした。第3章では,本論文において独 自に構築 した新たな勘定体系を提示し,環境経済統合勘定推計の方法,設定した仮定とそ の問題点 を明らかにした。そして,北海道を事例として,提示した環境経済統合勘定を実 際に推計 した。また,以降の考察の前提として,環境経済統合勘定推計の限界を示した。

第4章では,環境経済統合勘定を用い た経済分析を行うための前段階として,従来の地域 経済計算 やその他の経済指標を用いて北海道における経済・産業構造の状況を分析し,そ

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の特 徴を明 らかにした。第5章では,北海道の環境財政支出のデ一夕ベースを構築し,環 境財政支出がどの自然資源に対するものが多いのかなど,環境政策の重点施策を財政支出 面か ら分析 した。第6章では,前章までの分析結果を踏まえ,北海道において環境要因を 考慮 するこ とによっ て,GDPなどに よる地域 経済の 位置づけ がどの ように変わるのか,

また産業構造はどのように変化するのかを国の試算値と比較することによって分析した。

第7章は全体の要約及び結諭とした。

  既存研究になし`本論文の特徴としては,以下の点を挙げることができる。はじめに,本 論文で提示した環境経済統合勘定体系とその推計方法の特徴としては,第一に地域におい て環境経済統合勘定を構築し推計したものである点,第二に地域における環境経済統合勘 定の問題点を解決するため簡略版を提示している点,第三に産業部門別の自然資源投入額 を把 握でき るように 産業部門 を分割 した点, 第四に1995年までの3か 年次の環境経済統 合勘定を推計した点,第五に環境経済統合勘定を実質化し,年次間の比較を可能とした点 である。次に,本論文における環境財政支出集計の特徴としては,第一に既存の環境財政 支出に関する統計資料とは異なり,統一的な定義を定めた上で集計を行っていること,第 二にどの自然資源に対しての支出であるのかという支出対象別に環境財政支出を分類して いるというニっを挙げることができる。

  本論文における分析から導かれる結諭は,以下にまとめられる。第ーの,どの産業部門 が最も自然資源を多く投入しているのか,どの自然資源の投入が多いのかという課題につ いては,第一次産業が全国と比較しても特に自然資源投入が多くなっており,自然資源を 集約的に投入し生産活動が行われていることである。第一次産業に関しては,公益的機能 があると言われ,生産額のみでは測ることのできない価値があると認識されはじめている。

しかしながら,現実には第ー次産業の生産活動においては畜産排水問題はじめとし,農薬 問題,農業廃棄物焼却問題さらには漁業系廃棄物処理問題など様々な環境問題を抱えてい るのも事実である。したがって,第一次産業は公益的機能を持っという側面のみならず,

自 然 資源 を 集 約的 に 投 入し て い る とい う 側 面を も 認 識す る 必 要があ ると思 われる。

  第二の,地方自治体の環境政策においてどの自然資源を保全するための財政支出が多い のかを明らかにするという課題に対しては,北海道における環境財政支出では,水に対す る支出が最も多く,また近年においてもその額は大幅な増加傾向にあること,固定資本形 成支出についても水に対する支出が最も多いことから,水資源の保全のため,施設の整備 が積極的に行われていることが明らかとなった。また,北海道において水に対する支出が 多い要因としては,下水道整備など整備に莫大な費用がかかる事業が行われていること,

水資源の保全自体に多額の費用がかかること,北海道においては水資源の賦存量が多いこ となどが明らかとなった。

  第三の,自然資源投入という環境要因を考慮した場合と考慮しない場合の相違を明らか にするという課題に対しては,日本経済における北海道の位置づけは環境要因を考慮した 場合にも大きく変化することはないこと,産業構造については第一次産業の全産業部門に おけるシェアが低下することが明らかとなった。

  最後に実際の推計の経験から得られる知見から環境経済統合勘定開発の方向性について 論じると,環境経済統合勘定は今後,生産境界を拡大し外部経済効果などを評価できるよ う に す る 方 向 で 開 発 を 進 め て い く こ と が 必 要 で あ る こ と が 明 ら か と な っ た 。

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学位論 文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

出村克彦 黒河  功 吉田文和

(北海道大学大学院経済学研究科)

山本康貴

学 位 論 文 題 名

地域における環境経済統合勘定の理論と実証に関する研究

  本 論 文 は7章 か ら な り , 図33, 表29, 付 表14, 文 献166を 含 む 頁 数196の 和 文論文であ り,別に参考論文4篇が付さ れている。

  本論文の 目的は,北海道を事例として,環境経済統合勘定と環境財政支出を分析し,自 然資源投入 ・賦存状況を把握して,経済活動への自然資源投入の状況を明らかとすること である。近 年地域における自然資源の公益的機能が認識され,新たな価値として評価され ている一方 で,依然として環境汚染・破壊などの環境問題が発生している。特に自然資源 の豊富な地 域においては,経済活動に自然資源が集約的に投入されている。一方,自然資 源保全サー ビスは公共財的性格が強く,市場の失敗が発生し市場機構を通じて適切な供給 が行えない ため,主に地方自治体によって供給されている。そのため,地方自治体の環境 政策におけ る財政支出(環境財政支出)を分析することによって,地域環境政策の重点施 策をより明 確化できる。

  具体的な 課題には,以下の3点を挙げ る。第一に北海道を対象に環境経済統合勘定を構 築・推計し ,どの産業部門が最も自然資源を多く投入しているのか,どの自然資源の投入 が多いかを 明らかにすることである。第二に地方自治体が支出する環境財政支出のデータ を分析し, 地方自治体の環境政策においてどの自然資源を保全するための支出が多いのか を明らかに することである。その上で第三に地域経済計算と環境経済統合勘定の双方を用 いて分析を 行い,自然資源投入という環境要因を考慮した場合と考慮しない場合の地域経 済の位置づ けの相違を明らかにすることである。

  第1章では,本論文の課題の提示と分 析対象の限定を行った。第2章では,環境問題に 対して経済 学的に接近することの意義を明らかにし,自然資源の価値を経済学的に評価す ることの必 要性を論じ,さらに環境評価手法の中でも環境資源勘定,特に環境経済統合勘 定の意義を 明らかにした。第3章では, 本論文において独自に構築した新たな勘定体系を 提示し,環 境経済統合勘定推計の方法,設定した仮定とその問題点を明らかにした。そし

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て,北海道を事例として,提示した環境経済統合勘定を実際に推計した。また,以降の考 察の前 提として,環境経済統合勘定推計の限界を示した。第4章では,環境経済統合勘定 を用いた経済分析を行うための前段階として,従来の地域経済計算やその他の経済指標を 用いて 北海道における経済・産業構造の状況を分析し,その特徴を明らかにした。第5章 では,北海道の環境財政支出のデータベースを構築し,環境財政支出がどの自然資源に対 するも のが多いのかなど,環境政策の重点施策を財政支出面から分析した。第6章では,

前章ま での分析結果を踏まえ,北海道において環境要因を考慮することによって,GDPな どによる地域経済の位置づけがどのように変わるのか,また産業構造はどのように変化す るのか を国の試算値と比較することによって分析した。第7章は全体の要約及び結論とし た。

  本論文における分析から導かれる結論は,以下にまとめられる。第一の,どの産業部門 が最も自然資源を多く投入しているのか,どの自然資源の投入が多いのかという課題につ いては,第ー次産業が全国と比較しても特に自然資源投入が多くなっており,自然資源を 集約的に投入し生産活動が行われていることである。第一次産業に関しては,公益的機能 があると言われ,生産額のみでは測ることのできない価値があると認識されはじめている。

しかしながら,現実には第一次産業の生産活動においては畜産排水問題はじめとし,農薬 問題,農業廃棄物焼却問題さらには漁業系廃棄物処理問題など様々な環境問題を抱えてい るのも事実である。したがって,第一次産業は公益的機能を持っという側面のみならず,

自然 資 源 を 集約 的 に 投入 し て いる と い う側 面 を も認 識す る必要 があると 思われ る。

  第二の,地方自治体の環境政策においてどの自然資源を保全するための財政支出が多い のかを明らかにするという課題に対しては,北海道における環境財政支出では,水に対す る支出が最も多く,また近年においてもその額は大幅な増加傾向にあること,固定資本形 成支出についても水に対する支出が最も多いことから,水資源の保全のため,施設の整備 が積極的に行われていることが明らかとなった。また,北海道におぃて水に対する支出が 多い要因としては,下水道整備など整備に莫大な費用がかかる事業が行われていること,

水資源の保全自体に多額の費用がかかること,北海道においては水資源の賦存量が多いこ となどが明らかとなった。

  第三の,自然資源投入という環境要因を考慮した場合と考慮しない場合の相違を明らか にするという課題に対しては,日本経済における北海道の位置づけは環境要因を考慮した 場合にも大きく変化することはないこと,産業構造については第一次産業の全産業部門に おけるシェアが低下することが明らかとなった。

  以上のように、本研究は地域における環境経済統合勘定を推計した先駆的研究であり、

また北海道経済活動における環境資源管理のあり方は評価するものであり、環境問題に学 術的、政策的に寄与する意義は大きい。

  よって審査員一同は、林岳が博士(農学)の学位を受けるのに十分な資格を有するもの と認めた。

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参照

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