• 検索結果がありません。

博 士 ( 農 学 ) 横 井 直 人 学 位 論 文 題 名

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "博 士 ( 農 学 ) 横 井 直 人 学 位 論 文 題 名"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

博 士 ( 農 学 ) 横 井 直 人

学 位 論 文 題 名

桑 園 に お け る キ ボ シ カ ミ キ り の 生 態 お よ び 防 除 に 関 す る 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  本 論 文 は8章か ら 成 り, 図43, 表42を含 む総頁 数177の和 文論文 である 。別に 参考 論文20編 が 添え られて いる。

  本研 究は,1950年代 突然全 国的 に桑園 で大発 生する よう になり ,福島 県においても1970年代以 降大 発生を 続けて いる桑 園害 虫キボ シカミ キりに っい て,そ の発生 のメカ ニズムを解明し,効果 的防 除法を 明らか にした 。な お,そ の研究 過程に おい て,雄 の特異 的配偶 行動として,精子置換 の行 動,す なわち ,既に 交尾 してい た他の 精子を 雌の 貯精嚢 から掻 き出し て自分の精子に置き換 える 現象を 甲虫類 で初め て発 見した 。結果 は以下 に述 べる。

  福 島県 におけ るキボ シカミ キり の生活 史

  県 内 にお け る 本 種 の 分布は 標高 約500m以 下の桑 園に限 られて おり, 被害 桑園の 分布は 県内全 域 に及ん でい た。被 害を受 けるク ワは,植え付け当年のものでは,初年度から本種の産卵を受け,

3年目 には枯 死する 株が30%に及 んだ。

  本 県 にお け る 本 種 の 羽化 は ,6月 から10月 と極 めて 長期に わたり ,8月下旬 から9月に かけて 最 盛期と なっ た。一 方,卵 の孵化 は低温 で著 しく抑 えられ ること から ,産卵時期によって越冬時 の ス テ ー ジ が異 な っ た 。本 県の場 合,9月中 旬以 前に産 卵され た場合 は幼虫 態で ,また9月 中旬 以 降産卵 され たもの は全て 卵態で 越冬し た。

  ク ワ株 内にお ける個 体群変 動を みると ,皮層 部内に おける 卵か ら中齢 幼虫にかけてのステージ で ほとん どの 個体が 死亡し た。ま た,ク ワ株 の衰弱 した株 では羽 化率 が高く,健全な株ではほと ん どが死 滅し た。

  成虫の 生態

  桑園内 におけ る成 虫の分 布集中 度は発 生前 期に低 く,後 期に集 中度が 高まるが,これは本種の 行動域 がしだ いに特 定の クワ株 を中心 に形成 される のと ,発生 後期ほ ど低温によって飛翔能カが

281

(2)

低 下 す る ため で あ っ た 。成 熟 成 虫 は ,8月 は1日間 同一ク ワの 周辺に とどま るが,9月 になる と 7日 間 以 上に 伸 び た 。8月 が25℃ 以上 ,9月 が20℃以 上で はクワ 株の幹 部で活 発な 配偶行 動なら び に産卵 行動を 示し, それ 以下だ と全て の個体 は枝 部に上 り,枝 部での 行動は主として摂食,静 止 であり 不活発 であっ た。

  一方 ,未熟 成虫は 羽化後 直ち に飛翔 による 分散を 行った 。こ の場合 ,飛翔 距離は 最大 で80mを 記 録する ものも 認めら れた が,10m以内 が50% を占め た。

  配偶行 動と精 子置換

  本種の 配偶行 動には 嗅覚 性フェ 口モンは介在せず,その行動は雄の徘徊および待ち伏せに依存し て いた 。また ,その 配偶行 動には2っ の特徴 が認 められ た。ひとっは雌雄とも異なった多くのパー ト ナー と交尾 するい わゆる 多回交 尾を 行うこと,他方,羽化後約10日間(未成熟期間)雌は雄との 接 触を 避け, 雄は触 角を使 った探 雌行 動ができなかった。特に後者は本種の配偶行動に触角の果た す 役 割 が 大 きい こ と を 示 す ととも に, 雌体表 から接 触性フ ェ口 モンの 存在が 明らか にされ た。

  本種の 交尾行 動の特 徴は 短時間 の多回 の結合 (前交 尾) と1回の長時間継続する結合(後交尾)

か ら成 ってお り,そ の中, 後交尾 のみ で射精 が認め られた 。さ らに, 交尾中 ,雄は他の雄精子を 掻 き出 す行動 を示し た。こ のこと から ,本種 では交 尾行動 の際 に精子 置換を 行っていると考えら れ た 。 こ れ を証 明 す る た め, 既 交 尾 の 雌 に雄 の 前 交 尾 を行 わ せ 走 査 電子 顕 微 鏡(SEM)に よる 観 察を 行った 。その 結果, 雄交尾 器先 端部は 精子掻 き出し に好 都合の 逆目の 剛毛および一対の突 起 を有 し,既 交尾雄 の精子98%を 雌体内 の受精 嚢から 掻き 出して いるこ とが明 らかにされた。こ の 精 子 置 換 は , ト ン ボ 目 で は 既 に 知 られ て い た も の の甲 虫 類 で は 初め て の 発 見 であ っ た 。

寄主 選択

  本種 のクワ 株への 寄生 にっい て,誘 引物質 の存 在が考 えられ た。従 って, 生理活性物質の探索 を行 った。

  雌成 虫の場 合,ク ワヘ の定位 行動,噛みっき行動,産卵及び摂食行動に区分される。このため,

クワ 株から の揮発 性成分 を抽 出し, それぞ れの行 動との 関係 を調査 した。 その結果,雌個体が産 卵 対 象株 を 選 択 す る際 , ク ワ 株 の衰 弱 株 あ る いは 伐採 株の 揮発性 成分に 誘引さ れた。GLC分析 の結 果,ク ワから は主と して コパェ ンおよ びセス キテル ペン 系物質 類なら びにりナロールが全体 の70% を占め た。ま た, 古くか ら寄生 植物と して 知られ ていた イチジ クから はシネオール,サビ ネン ,オシ メン等 が同じ く70% を占め ,これ らが 混合す ると活 性を示 した。 また,クワ株からの

282

(3)

産卵刺激物質として糖類,フラボノイド類の混合物に活性が認められた。これらは摂食促進物質 としての活性も示した。

  以上のことから,近年の省力養蚕技術体系の中で生じたクワ伐採収穫が,大量の衰弱株と揮発 性誘引物質を発生せしめ,このことがキボシカミキりの異常発生にっながったと結論された。

  防除法

  伐採クワ株が揮発性の誘引物質を放出していることから,伐採クワ株を用いて成虫の誘引・捕 獲を試みた。この方法による防除効果は必ずしも有効といえなかったが,伐採クワ株の周辺に餌 木を置き,そこに産卵させる方法は有効であり,対照に比べ約5倍の産卵数を得,これを焼却さ せることで防除が高まった。

  従来,蚕飼育への影響の少ない3〜4月に薬剤散布を行いキボシカミキリ防除が行われて来た。

本実験でもこの時期に各種の農薬を散布してこの時期のクワ株内の卵および幼虫に対する防除効 果 を 検 討 し た。 最も 有効 な 殺虫 剤は 有機 リン 剤 ,サ イア ノッ クス(CYAP) で あっ た。

  一 方,福島県の本種の生態を考慮して,養蚕期の終了した11月にCYAP散布を行ったところ 3〜4月 の 80% 防 除 効 果 に 比 べ 90% 以 上 と 高 い 殺 虫 効 果 が 認 め ら れ た 。   以上,本論文は,桑園内において近年大発生を続けクワ株に被害を与えているキボシカミキり にっいて,福島県内での生態を明らかにし,異常発生のメカニズムを解明するとともに効果的防 除法を確立した。また,トンボ目では既に知られているライバル雄の交尾した精子を雌の貯精嚢 から掻き出す,いわゆる精子置換を甲虫類で初めて発見する等,学問的にも実用面においても多 大な貢献を行った。

学位論文審査の要旨

  本論文は8章から成り,図43,表42を含む総頁数177の和文論文である。別に参考論文20編が 添えられている。

‑283

彦 須

敏 樊

塚  

  木

飯 森

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

  本 研究は ,桑園 害虫キ ボシカ ミキ りにっ いて, その発 生の メカニ ズムを解明し,効果的防除法 を確 立する 目的 で行っ たもの である。なお,その研究過程において,雄の特異的配偶行動として,

精 子 置 換 の 行 動 を 甲 虫 類 で 初 め て 発 見 し た 。 結 果 の 概 要 は 以 下 に 述 べ る 。

  福島 県にお けるキ ボシカ ミキ りの生 活史

  県 内 に お け る本 種 の 分布 は標高 約500m以 下の桑 園に限 られ ており ,被害 桑園の 分布 は県内 全 域に及 んで いた。被害を受けるクワ1ま,植え付け当年のものでは,初年度から本種の産卵を受け,

3年 目には 枯死す る株 が30%に 及んだ 。

  本 県 に お け る本 種 の 羽 化 は,6月 か ら10月 と 極めて 長期に わた り,8月下 旬から9月 にかけ て 最 盛期 と な っ た 。9月 中 旬以前 に産 卵され た場合 は幼虫 態で, また9月中 旬以 降産卵 された もの は全て 卵態 で越冬 した。 なお, クワ 株の衰 弱した 株では 羽化率 が高 く,健 全な株ではほとんどが 死滅し た。

  成虫 の生 態

  桑園 内に おける 成虫の 発生ピ ークは8月 下旬で あっ た。羽 化当日 の未熟 成虫 は飛翔 による 分散 を行 った。 この場 合, 飛翔距 離fま最大 で80mを記録 するも のも 認めら れたが ,10m以内が50%を 占 め た。 羽 化 後20日 を経 過した 成熟 成虫は ,概し て短い 飛翔 を繰り 返した 。8月が25℃ 以上 ,9 月が20℃以 上では クワ株 の幹部 で活発 な配 偶行動 ならび に産卵 行動 を示し,それ以下だと全ての 個 体 は 枝 部 に 上 り , 枝 部 で の 行 動 は 主 と し て 摂 食 行 動 で あ り , 不 活 発 で あ っ た 。

  配偶行 動と精 子置換

  本種の 配偶行 動には 嗅覚 性フェ 口モン は介在 せず, その 行動は 雄の徘 徊および待ち伏せに依存 し てい た。そ の配偶 行動にfま2っ の特徴 が認め られた 。ひ とっは 雌雄と も異なった多くのパート ナ ーと 交尾す るいわ ゆる多 回交尾 を行 うこと ,他方 ,羽化 後約10日間( 未成熟期間)雌は雄との 接 触を 避ける 行動を 示した 。

  本種の 交尾行 動の特 徴は 短時間 の多回 の結合 (前交 尾)と1回の長時間継続する結合(後交尾)

か ら成 ってお り,そ の中, 後交尾 のみ で射精 が認め られた 。さ らに, 交尾中,雄は他の雄精子を 掻 き出 す行動 を示し た。こ のこと は, 精子置 換が行 われて いる と考え られた。これを証明するた め , 既 交 尾 の雌 に 雄 の 前交 尾を 行わせ 走査電 子顕微 鏡(SEM) により 観察 を行っ た。そ の結果 , 雄 交尾 器先端 部は精 子掻き 出しに 好都 合の逆 目の剛 毛およ び一 対の突 起を有し,既交尾雄の精子

‑ 284

(5)

98%を掻き出していることが明らかにされた。この精子置換は,トンボ目では既に知られていた ものの甲虫類では初めての発見であった。

  寄主選択

  本種のクワ株への寄生にっいて,誘引物質の存在が考えられた。従って,生理活性物質の探索 を行った。このため,クワ株からの揮発性成分を抽出し,雌成虫の行動との関係を調査した。そ の結果,雌個体が産卵対象株を選択する際,クワ株の衰弱株あるいは伐採株の揮発性成分に誘引 されたておりGLC分析の結果,クワからは主としてコパェンおよびセスキテルペン系物質類な らびにりナ口一ルが活性成分として同定され,これらが混合すると活性を示した。また,クワ株 からの産卵刺激物質として糖類,フラボノイド類の混合物に活性が認められた。これらは摂食促 進物質としての活性も示した。

  以上のことから,近年の省力養蚕技術体系の中で生じたクワ伐採収穫が,大量の衰弱株と揮発 誘引物質を 発生せしめ,このことがキボシカミキりの異常発生にっながったと結諭された。

  防除法

  伐採クワ株が揮発性の誘引物質を放出していることから,伐採クワ株を用いて成虫の誘引・捕 獲を試みた。この方法による防除効果は必ずしも有効といえなかったが,伐採クワ株の周辺に餌 木を置き,そこに産卵させる方法は有効であり,対照に比べ約5倍の産卵数を得,これを焼却さ せることで防除効果が高まった。

  従来,蚕飼育への影響の少ない3〜4月に薬剤散布を行いキボシカミキリ防除が行われて来た。

最も有効な殺虫剤は有機リン剤,サイアノックス(CYAP)であった。

  一 方,福島県の本種の生態を考慮して,養蚕期の終了した11月にCYAP散布を行ったところ 3〜4月 の 80% 防 除 効 果 に 比 べ 90% 以 上 と 高 い 殺 虫 効 果 が 認 め ら れ た 。

  以上のように本研究は,学術上の新発見を含んでいるのみならず,桑園害虫の効果的防除法を 確立した点でも高く評価される。

  よって,審査員一同は,別に行った学力認定試験の結果と合わせて本論文の提出者横井直人は 博 士 ( 農 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 十 分 な 資 格 が あ る も の と 認 定 し た 。

参照

関連したドキュメント

[r]

   ( 2 )ホウレンソウの根組織をNAA と GA3 を組み合わせて添加した培 地にお いて 培養す ると 、中心 柱組

0 .minuta の1 系 統の みが トビ イ口 ウン カと ツマグ 口ヨ コバ 工両 方に 対レ抵抗性 を 示し た。 トビイ口ウンカ抵抗性を示した野生イネはO . officinalis の 供

[r]

  

   次に,消化管内で実際に発現している膵プ口テアーゼ活性のin vivo での測定を試みた。すな わち ,キモトリプシ ンに特異的な人工基質であ るbenzoyl 一L −tyrosyl‑p

   本研究では,Me 臣 め£us 属の 1 っの亜属である EMme 臣Z0 ¢Ms

[r]