• 検索結果がありません。

博士(農学)水井憲雄 学位論文題名

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "博士(農学)水井憲雄 学位論文題名"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

     博士(農学)水井憲雄 学位論文題名

落葉広葉樹の種子繁殖に関する生態学的研究

学位論文内容の要旨

  北海道 の広葉 樹資源 は減 少傾向 にあり ,それ らの育 成, 保続は 重要な 課題である。種子繁殖を 主 とす る樹種 が再生 するた めには ,種 子の供 給が基 本的な 条件 となる 。天然下種更新機構を理解 す る上 で,あ るいは 人工下 種更新 や種 苗生産 を進め るため には ,個々 の樹種の種子繁殖特性を明 ら かに する必 要があ る。

  本論文 では, 北海道 に生 育する 広葉樹 の開花 ・結実 過程 ,種子 の豊凶 ,種子の発芽力維持およ び 保存 方法に っいて 論じた 。

  広葉樹 は性型 ,花型 ,開 花時期,開花期間などが樹種によって異なり,開花様式は多様である。

さ らに ,花粉 媒介方 法も風 媒花や 虫媒 花に分 れ,受 粉様式 も一 様では ない。広葉樹11種にっいて 開 花か ら果実 の生残 過程を 追跡し た。 雌雄異 株の風 媒花で はカ ツラ, 虫媒花はキハダ,雌雄同株 の 風媒 花では シラカ ンバ, ウダイ カン ハ,ダ ケカン バ,虫 媒花 ではア ズキナシ,シナノキ,オオ バ ボダ イジュ ,エゾ ヤマザ クラ, キタ コブシ ,雌雄 雑居株 とさ れてい る虫媒花ではアカイタヤを 対 象に した。

  個体, 個花の 開花時 期や 開花期 間をい くっか の樹種 にっ いて定 量的に 示した。北海道中央部に お け る キ タ コブ シ の 開 花 は4月 下 旬 で あ り, 個 花の開 花期間 は7〜8日間, 個体の 開花期 間は 約 15日間に およぶ 。個体 の開 花は隔 年で増 減する 傾向が みら れた。 工ゾヤ マザク ラは5月上 旬に 一 斉 的 に 開 花 し, 開 花 期 間 は7〜9日 間 であ る 。 キハダ の開 花時期 は6月の中 旬であ る。雌 花は 一 斉 的な 開花で あり, 個花に おいて 花弁 が展開 してい る期間 は約6日間 であ った。 アカイ タヤ, カ ン バ類 ,力` ソラは いずれ も5月上旬 に開花 し, アズキ ナシは5月 下旬に 一斉的な開花を示す。シ ナ ノキ ,オオ バボダ イジュ の開花 は7月中旬 であ る。アカイタヤは個体によって雌雄性が異なり,

ま た花 序内に おける 雌花( 両性花 ), 雄花の 開花順 に違い のあ ること が分かった。雄花のみ開花 す る個 体およ び雄花 とわず かな雌 花を 開花す る個体 と雄花 ,雌 花を開 花する個体の出現頻度はほ ぼ 等 し く , ま た , 開 花 型 は 個 体 サ イ ズ に よ っ て 異 な る こ と は な か っ た 。   果実の 発達過 程では 多く の樹種 におい て果実 が未熟 で脱 落する 現象が 確認された。果実の未熟

418

(2)

脱 落がほ とん どない のはカ ンバ類3種 であっ た。未 熟脱 落が比較的少なかったのはキハダである。

他 の7種は著 しく脱 落し ,経年 的にも 同じ傾 向であ ると みられた。脱落原因を明らかにするため,

キ タコブ シ, 工ゾヤ マザク ラ,キ ハダな どを 対象に 強制受 粉を行 い, 果実の 生残過程を調べた結 果 ,工ゾ ヤマ ザクラ とキタ コブシ は強制 受粉 により 果実の 生残率 は有 意に高 くなった。これらの 樹 種では 自然 条件下 におけ る果実 の未熟 脱落 には花 粉が制 限にな って いる。 キハダは自然条件に お い て 果 実 の 未 熟 脱 落 が 少 な く , 花 粉 が 不 足 す る こ と は ほ と ん ど な い と み ら れ た 。   花 粉が 十分で ないと みられ たキ タコブ シにっ いて, 開花様 式と 結果率 との関 係を調べた。個花 の 開花段 階初 期は結 果率が 著しく 高く, 開花 が進む にっれ て低下 する 傾向を 示した。しかし,開 花 初期に は花 粉媒介 者への 報酬が ないこ とか ら,花 粉が運 ばれる こと はほと んどない。自然条件 下 におい て受 粉する のは開 花後期 に限ら れ, 結果率 が低い ことの 一因 とみら れた。工ゾヤマザク ラ では花 粉媒 介者の 訪花パ ターン を調ベ ,他 家受粉 ,自家 受粉の 生じ やすさ を検討した。花粉媒 介 者が最 初に 訪花す るのは 樹冠外 側が多 く, その後 樹冠内 を移動 する 。この ため樹冠外側では他 家 受粉し やす い傾向 にあっ た。

  繁 殖 に配 分 さ れ る 資 源の 影 響を 調べる ため, キハダ におい て開 花後に 花序周 囲の摘 葉処 理を 行 った。 摘葉 は果実 および 種子の 脱落に たい する影 響は少 なく, 特徴 的なこ とは種子サイズを小 さ くする 反応 であっ た。

  種 子の 豊凶に っいて は,新 しい 豊凶評 価法を 考案し た。そ れを 主な樹 種に適 用して豊凶評価を 行 い,種 子豊 凶習性 を示し た。

  広 葉 樹35種に っい て枝の 長さ50cmを単位 とし, 種子の 豊凶 を調べ た。各 樹種と も同 一個体 を5

〜11年間 継続し た。各 樹種の 平均 種子重 と調査 期間中 におけ る最 多種子 生産年 の生産種子数との 間 には両 対数 グラフ で負の 直線関 係が認められ,また,調査期間中の平均生産種子数との間に_も 同 様の傾 向が 認めら れた。 枝単位 で小種 子は 多産で あり, 大種子 は少 産であ った。両回帰直線を 基 に種子 の豊 凶基準 を定め た。こ の方法 は定 量的で あるこ とから 調査 者の主 観的な誤差が排除さ れ る。さ らに 各樹種 に共通 的な基 準であるこ.とから種内,種間の比較を可能にした。また,相対

(3)

  ミズナラにっいては同一年に北海道全域で豊凶調査を行った。わずかな着果量の個体は北海道 全域に分布するが,並作以上の個体に限定すると,その分布は地域的に集中する傾向が認められ た。 こ れら の結 果は 天然更新や 計画的な人工更新を進めるた めの情報として寄与する。

  土の中における種子発芽カの減衰過程を実験的な方法で明らかにした。また,種子の生存を長 期化する方法を開発した。

  広葉樹32種を林床に埋め,それを定期的に掘出し,制御条件下または苗畑に播種して発芽を調 べた。種子を埋土した期間はカンバ類が6か月単位で2年間,その他の樹種は1年単位で最長3 年間である。苗畑に播種した樹種にっいては発芽調査を2年間継続した。種子発芽カの減衰過程 は樹種によって異なった。短期間で全種子が発芽カを失う型,大部分の種子は短期間のうちに発 表カを失い,一部の種子のみが発芽カを維持する型,大部分の種子が徐々に発芽カを失う型,発 芽カを長く維持する型に分けられた。このような発芽力減衰過程の違いは種子の発芽特性および 休眠性とそれに関わる種皮の構造に起因するとみられた。発芽カを長く維持する型は主として種 子散布を鳥か動物に委ねる樹種であった。

  人工的な制御環境下でカエデ類種子を貯蔵し,その生存を調べた。アカイタヤは埋土種子とし ては生存できなくても乾燥条件下では生存し得ることが分かった。また,ほとんど休眠性を有し ないミズナラ堅果はアルギン酸ナトリウムやプルランなどのコーテイングによって,貯蔵中の発 根 を 抑 え , 乾 燥 死 滅 を 回 避 し , あ る 程 度 の 期 間 は 生 存 さ せ 得 る こ と を 見 出 し た 。   以上の結果から,開花,結実過程を経て訪れる種子の豊凶と種子発芽カの減衰からみた更新の 機会は樹種によって異なることが明らかとなった。撹乱にともなう一斉林および混交林の成立に は種子の豊凶と埋土種子とか更新に寄与することを考慮すると,樹種による種子供給の特徴的な 違いが大きく影響すると考えられた。

420

(4)

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

五 十 嵐 辻 井 滝 川 矢 島

恒 夫 達 一 貞 夫     崇

  本 論 文は4章 から構 成さ れ,図60,表13,引用 文献167,総 頁数147頁 の和文 論文で ある。 別に 参考 論文65編 が添え られ ている 。

  近年 ,北海 道の広 葉樹 資源は 滅少し ,その 育成, 保続 は重要 な課題 である 。種子繁殖を主とす る樹 種の再 生には ,種子 の供給 が基 本的ナょ条件であり,個々の樹種の種子繁殖特性を明らかにす る必 要があ る。本 論文は ,北海 道に 生育す る広葉 樹の開 花・ 結実過 程,種 子の豊 凶,種子の発芽 力維 持およ び保存 方法に っいて 論じ たもの である 。

  1, 性 型,花 型,開 花時 期,開 花期間 ,開花 様式, 花粉 媒介方 法など の異な る広 葉樹11種 につ     いて ,開花 から 果実の 生残過 程を追 跡し た。

  個体 ,個花 の開花 時期 や開花 期間に っいて 定量的 に示 したが ,アカ イタヤ は個体によって雌雄 性 が異 な り , 花 序 内に お け る雌 花( 両性花 ),雄 花の開 花順 に違い のある .こと が分か った 。   果実 の発達 過程で は多 くの樹 種にお いて果 実が未 熟で 脱落す る現象 が確認 され,この現象が殆 ど ない の は カ ン バ 類3種 , 比 較的少 ないの はキ ハダで ある。 他の7種は 著しく 脱落 し,経 年的に も同 じ傾向 であっ た。強 制受粉 を行 い,果 実の生 残過程 を調 べた結 果,工 ゾヤマ ザクラとキタコ ブシ は果実 の生残 率が有 為に高 くな った。 これら の樹種 では 自然条 件下で の果実 の未熟脱落の制 限因 子は花 粉と言 えよう 。繁殖 に配 分され る資源 の影響 を調 べるた め,キ ハダに っいて開花後に 花序 周囲の 摘葉処 理を行 った。 摘葉 は果実 および 種子の 脱落 にたい する影 響は少 なく,種子サイ ズを 小さく した。

(5)

子の豊凶基準を定めた。この方法は定量的であり,各樹種に共通的な基準であるため種内・種間 の比較を可能にし,樹種ごとの豊凶評価基準が得られた。

  種子重―種子数関係の豊凶評価基準により,各樹種l〜2個体の豊凶を評価し,年次推移を明 らかにした。多くの樹種に共通的な特徴として,豊作と凶作は隔年あるいはもう少し長い間隔で 繰り返されること,豊凶差の大きい樹種,小さい樹種があること,個体間で豊凶が同調すること などがあげられた。種子生産間隔を長,中,短期に区分し,各樹種を類型化した。ミズナラにつ いては同一年に北海道全域で豊凶調査を行ったが,並作以上の個体に限定すると,その分布は地 域的に集中する傾向が認められた。

  3.埋土種子の発芽カの滅衰過程を実験的に明らかにした。広葉樹32種の種子を林床に埋め,

それを定期的に掘出し,制御条件または苗畑に播種して発芽を調べた。種子を埋土した期間はカ ンごく類が6か月単位で2年間,その他の樹種は1年単位で最長3年間である。種子発芽カの減衰 過程は樹種によって異なり,4型に類別された。なお,発芽カを長く維持する型は主として種子 散布を烏か動物に委ねる樹種であった。また,ほとんど休眠性を有しないミズナラ堅果はアルギ ン酸ナトリウムなどのコーテイングによって,貯蔵中の発根を抑え乾燥死滅を回避し,ある程度 の期間は生存させ得ることを見出した。

  4.これらの結果から,開花,結実過程を経て訪れる種子の豊凶と種子発芽カの滅衰からみた 更新の機会は樹種によって異なることが明らかとなった。撹乱にともなう‐斉林および混交林の 成立には種子の豊凶と埋土種子とが更新に寄与することを考慮すると,樹種による種子供給の特 徴的な違いが大きく影響するものと考えられるとしている。

  以上のように本研究は,これまで解明されていなかった北海道産落葉広葉樹の開花・結実過程

・種子の豊凶,埋土種子の発芽力減衰にっいて,長期間にわたる実証的研究によって明らかにし たものであり,造林学上また広葉樹育成分野の研究発展に寄与するところ大きいものがある。

  よって,審査員一同は別に行った学力確認試験及び試問の結果と合わせて,本論文の提出者水 井 憲 雄 は 博 士 ( 農 学 ) の 学 位 を 受 け る に 十 分 な 資 格 が あ る も の と 認 定 し た 。

422 ‑

参照

関連したドキュメント

[r]

そ の深度分布 形の解析 によって流域裸地斜面の継続・断続的浸食による土砂供給様式が推測 さ れた。また 、1963 年以降 の年平均 堆積速度

斜 面崩壊の 長期発生 履歴を復元している。斜面を覆うテフラが崩壊によって消失して い る観察結 果に基づ

   ( 2 )ホウレンソウの根組織をNAA と GA3 を組み合わせて添加した培 地にお いて 培養す ると 、中心 柱組

   ダイコ ンの部位および生育時期に よる新鮮重当たりのMTB

[r]

   「結 言」で は,当 地域に おける 森林 資源利 用の展 開過程 を総 括的に 考察し ,山村地域の活性化 を図る ために は, 地域住 民の積 極的な 参加 を基礎

[r]