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博士(薬学)菅原 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(薬学)菅原 学位論文題名

イオン性薬物の小腸刷子縁膜透過における      膜 電 位 の 寄 与 に 関 す る 研 究

学位論文内容の要旨

  生理 的条件 下でイ オン型 とし て存在 してい る薬物 の消化 管吸 収にお ける刷子縁膜透過機構の解 明,お よび 薬物構 造と膜 透過と の相関 性を 明らか にする ことを 目的 として ,本研究では,種々の 荷電状 態を 有する 薬物( アニオ ン型, カチ オン型 ,両性 イオン 型) の小腸 刷子縁膜透過に対する 膜 の 電 気 的 性 質 ( 膜 表 面 電 位 , イ オ ン 拡 散 電 位 ) が お よ ぼ す 影 響 に っ い て 倹 討 し た 。   また ,これ までほ とんど 検討 されたことがナょかったヒト小腸における薬物の刷子縁膜透過機構 にっい ても 検討し ,得ら れた結 果を動 物実 験の結 果と比 較した 。

  Iイオ ン性 薬物の 膜透過 におけ る膜電 位の 寄与

  イオン 性薬物 をそれ らが有 する 置換基 の違い により ,ア ニオン 型,カ チオン 型および両性イオ ン 型に大 別し ,それ ぞれの 薬物群 の小 腸刷子 縁膜透 過にお よぼす 膜電 位の影 響を検討した。実験 は 小腸上 皮細 胞から 刷子縁 膜を小 胞と して単 離,精 製した 刷子 縁膜 小胞系 を用い, 迅速ろ 過 法 に よる 取り込 み実験 に準拠 して 行った 。この 方法は ,種々 の緩 衝液を 用いることにより,

膜 透過実 験時 のイオ ン環境 や膜電 位等 を人工 的に自 由に変 化させ るこ とがで きるため,非常に有 用 である 。

  本 研 究 では , 膜 の 電 気的 変 化と して ,イオ ン拡散 電位の 誘起とpH変化 にとも なう膜 表面 電荷 密 度の変 化に 着目し て以下 の検討 を行 った。 .

  1.ア ニオ ン型薬 物の膜 透過に おける 膜電 位の寄 与

  まず最 初に, アニオ ン型薬 物と して, ジカル ボン酸 型ロ ・ラク タム系 抗生物 質であるセフチブ テ ンを用 いて 検討し た。セ フチブ テン の酸性条件下での取り込み速度は中性条件下に比べて速く,

ま た,内 向き のプ口 トン勾 配存在 下で は,一 過性の 小胞内 への濃 縮を 示すオ ーバーシュート現象 が 認 め ら れ た。 本 実 験 条 件下(pH5.5ー7.5)では 薬物の 解離状 態には ほと んど変 化はな いこと か ら , こ こ で認 め ら れ た 取り 込 み 速 度 の 変化 は 膜 の 性 質に 起 因 し て いる も のと 考えら れる。

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そこでまず,イオン拡散電位の寄与を明らかにするために,セフチブテンの取り込みに対するイ オノフエアの影響にっいて検討した。その結果,セフチブテンの取り込みはカリウム拡散電位の 影響を受けず,また,拡散電位を消失させたvoltage clampの条件下でもプ口トン勾配の効果 は消失しなかったことから,薬物の取り込み速度の変化はイオン拡散電位に起因するものではな いことが示唆された。次に,膜表面電位の影響にっいて検討したところ,セフチブテンの種々 pHにおける初期取 り込み速度は,螢光プ口ーブ であるANSによルモニターされた膜表面電位 と良好な相関を示した。しかもその相関関係はfセフチブテンに限らず用いたすべてのアニオン 型薬物(セフィキシム,ベンジルペニシリン,s−1006,レンチアプリル)においても同様であつ た。これらのことより,アニオン型薬物の膜透過は,膜表面電荷密度の影響を大きく受けること が明らかとなった。すなわち,中性領域において膜表面電荷が相対的に負に傾くことにより静電 的 反 発 が 強 く な る た め , ア ニ オ ン 型 薬 物 の 膜透 過 の障 害と なる もの と 考え られ る。

  2.カチオン型薬物の膜透過における膜電位の寄与

  次に,カチオン型薬物にっいて同様の検討を行った。チラミン,トリプタミン,ベンジルオキ シトリプタミンはそれぞれ異なる脂溶性を有するカチオン型薬物である。これら薬物の取り込み は,pH変化による違いは認められなかったものの,外向きのプ口トン勾配に依存した取り込み を示した。一方,プ口トン勾配によるトリプタミンの取り込み速度の変化はvoltage clampの 条件下では消失し,さらに,トリプタミンの初期取り込み速度は内部負のカリウム拡散電位の増 大に比例して大きくなったことから,カチオン型薬物の膜透過にはイオン拡散電位が大きく寄与 していることが明らかとなった。

  次に,これらカチオン型薬物の膜電位依存的な取り込みの構造特異性を明らかにする目的で,

トリプタミンの刷子縁膜小胞への取り込みと脂質のみから成るりポソームへの結合それぞれに対 する薬物共存時の阻害効果を検討した。その結果,トリプタミンの取り込みは,三級アミン体で あるグラミンにより競合的な阻害を受け,また,リポソ―ムヘの結合もカチオン型であるべンジ ルオキシトリプトファンにより競合的な阻害を受けた。一方,両性イオン型である卜リプトファ ンやアニオン型であるインドール酢酸ではトリプタミンの取り込みは影響を受けなかった。これ

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表 面電荷 密度 変化い ずれも 影響を 受けな かっ た。一 方,本 実験条 件下 においてカチオン型か両性 イ オ ン 型 の いず れ か の 分子 種て存 在す るエノ キサシ ン(pka(COOH)二 二6.2) では ,カチ オン 型 分子量 の多 い酸性 条件下 でカチ オン型 薬物 と同様 の拡散 電位依 存的 取り込みを示した。これに 対 して, 両性 イオン 型分子 種の多 い中性 条件 下では 膜電位 の影響 をほ とんど受けなかった。これ ら のこと より 両性イ オン型 薬物の 小腸刷 子縁 膜透過 は,ほ とんど が両 性イオン型分子種で存在す る 場 合 に は 膜表 面 電 位 密度 ,イオ ン拡 散電位 いずれ の影響 も受け ない ことが 明らか となっ た。

  H薬物の 小腸 刷子縁 膜透過 におけ る動 物種差

  セ フラジ ンなど のアミ ノセ ファ口 スポリ ンやセ フチブ テン などの 一部の ローラクタム系抗生物 質の 膜透 過機構 にっい ては, プロト ンージペプチド共輸送系の関与が報告がされている。しかし,

アミ ノセ ファ口 スポリ ンの輸 送機構 にっ いては 用いた 動物に より 結果に 違いが 認められることか ら, これ ら薬物 の膜透 過に動 物種差 があ ること も考え られる 。従 って, 本研究 においてはこの点 を明 らか にする ために ,これ までほ とん ど検討 された ことが ない ヒト小 腸より 調製した膜標品を 用い て膜 透過実 験を行 い,ラ ット, 家兎 での結 果と比 較した 。

  そ の結果 ,ヒト ,およ びラ ットで はプロ トン勾 配依存 性の 著しい 透過促 進はセフチブテンでの み認 めら れたの に対し ,家兎 ではセ フチブテン,セフラジンいずれにおいても認められた。また,

取り 込み 阻害実 験での 構造特 異性に おい てもヒ トとラ ットで はよ く類似 し,家 兎では異なってい た こ と か ら , こ れ ら 薬 物 の 膜 透 過 に お い て 動 物 種 差 が あ る こ と が 明 ら か と な っ た 。   結 論とし て,イ オン性 薬物 をァニ オン型 ,カチ オン型 ,両 性イオ ン型に 大別し,これらの小腸 刷子 縁膜 透過に 対する 膜電位 の影響 を検 討した 結果, これま で担 体輸送 系を仮 定して説明づけら れて きた イオン 性薬物 の膜透 過機構 を,薬物と生体膜との物理化学的な相互作用の面から説lvj‑ゴ ける こと できた 。この 機構は 特殊な 輸送 経路に 限定さ れない ため ,薬物 の吸収 性や臓器分布特性 を予 測す るうえ で重要 ナょ基 礎的知 見となり得る。また,これまで一部の薬物の膜透過機構にっい て 認 め ら れ た 報 告 間 で の 違 い を , 動 物 種 差 に . よ り 説 明 づ け る こ と が で き た 。

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学位論文審査の要旨

    主査  教授  栗原堅 三     副査  教授  加茂直 樹     副査  教授  宮崎勝 巳     副査  助教授  三宅 教尚

  申請 者は, 生理的 条件下 でイオ ン型 として 存在し ている 薬物 の消化 管吸収における膜透過機構 の解明 ,およ び薬 物構造 と膜透 過との相関性を明らかにすることを目的として研究を行ってきた。

これら イオン 性薬 物の吸 収機構 を明ら かに するこ とは, これま で薬物 の吸 収性の指標とされてき た゛ pH分配 仮説 に従わ ない吸 収性 を示す 多くの 化合物 の吸 収像を ,普遍的に考察するうえに おいて 極めて 重要 である 。また ,吸収性を高めた経口投与剤開発のための基礎的知見を得るなど,

薬剤学 的にも 重要 な寄与 をなし 得る。 しか しなが ら,イ オン性 薬物の 吸収 機構およびそれらの膜 透過に おける 構造 相関に っいて は未だ 明ら かには されて いない 。従っ て申 請者は,薬物の消化管 吸収を 大きく 左右 する小 腸刷子 縁膜透 過に おける これら イオン 性薬物 に共 通した機構および構造 相 関に っ い て , 動物 種 差も 含め ,2編 にわ たり論 述して いる。 第I編:イ オン性 薬物 の膜透 過に お ける 膜 電 位 の 寄与 … …本 編で はイオ ン性薬 物をそ れらが 有す る置換 基の違 いによ ルア ニオン 型, カチオ ン型お よび 両性イ オン型 の3っに分 類し, それぞ れの 薬物群 の小腸 刷子縁 膜透 過にお よぼす 膜電位 の影 響を検 討して いる。 アニ オン型 薬物の 場合, 刷子縁 膜透 過速度は膜表面電位に より大 きく影 響を 受けた 。すな わち, 膜表 面電荷 密度が 相対的 に負に 傾く 中性領域において薬物 と膜と の静電 的反 発が強 まり, アニオ ン型 薬物の 膜透過 速度は 著しく 減少 することを明らかにし た。一 方,カ チオ ン型薬 物の場 合,そ の膜 透過は イオン 拡散電 位に依 存し ,かっ,これらカチオ ン型薬 物の膜 表面 への結 合(吸 着)に おけ る共通 構造の 認識過 程がこ れら 薬物の膜透過に大きく 影響す ること を明 らかに した。 これら に対 して, 両性イ オン型 薬物の 膜透 過は,そのほとんどが 両性イ オン型 分子 種で存 在する 場合に は膜 電位の 影響を 受けず ,アオ ニン 型薬物において認めら

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物種差……本編では,代表的イオン性薬物であるロ・クラタム系抗生物質を用いて,これまでこ れら薬物の小腸刷子緑膜透過機構に関して認められた報告間の違いを動物種差により説明づけ た。本検討においては同時に,これまでほとんど検討されたことのなかったヒ卜小腸より調製し た 膜 標 品 を 用 い , ラ ッ ト や 家 兎 と の 異 同 性 に っ い て も 明 ら か に し て い る 。   以上のことから本学位論文は,イオン性薬物の小腸刷子縁膜透過機構における構造相関を明ら かにするとともに,経口剤開発のための分子設計においても重要な基礎的知見を与えるものであ り,博士(薬学)を受けるに充分値すると認めた。

参照

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