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博士(薬学)黎 学 位論文題 名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(薬学)黎 学 位論文題 名

Transgenic Mice Carrying a Human Fetus‑specific CYP3A7 Gene:Establishment,

  Characterization, and Application to Drug Metabolism and Toxicological Study

(ヒト胎児期特異的なチトクロ,ームP4503A7 の毒性学的な役割:

    

ト ラ ン ス ジ ェ ニ ッ ク マ ウ ス を 用 い た 研 究 )

学位論文内容の要旨

  1

.はじめに

  

チトク口ームP450 (P450 またはCYP) は様々な生体外異物の代謝に関与することが知られてい る。P450 は現在までにその一次構造の比較からsuper gene フんミリーを形成しており,これらの 中でCYP3A サブフんミルーはヒトおよび実験動物の肝に存在する最も主要な分子種であり、総

P450

含量の約300h を占めている。C1 ぽ3A により代謝される化学物質は非常に多く、カルシウム 拮抗薬、免疫抑制薬、抗癌薬およぴ発がん物質のアフラトキシンBl (AFBl )等広範囲に渡ってい る。

  CYP3A7

は当研究室においてヒト胎児肝から単離・クローニングし、その分子種はヒト胎児期 に特異的に発現することを明らかにした分子種である。しかし、CYP3A17 の薬理学的な機能、と りわけ毒性学的な役割の詳細は現在まで不明である。そこで著者はCYP3A7 遺伝子を導入したト ランスジ ェニッ クマウスを用い、mWy0 におけるCYP3A7 の毒性学的な機能、特にAFBl の代謝的 活性化および薬物の代謝における役割を検討した。

  2.CYP3A7

遺伝子を導入した卜ランスジェニックマウスの樹立

  CYP3A7 cDNA

の 全長を 含んだ プラス ミドpM56 を マウス のメタ ロチオ ネイン プロモ ーター

(MT‑I

)に 挿入し て発現 プラス ミドpM74 を 構築し た。こ のpM74 をPvuI で消化 した断 片(5.4

kb)

を導入遺伝子としてマウスの受精卵前核ヘマイクロインジェクション法で注入し、トランス ジェニックマウスを作出した。108 匹のBDFl 系founder マウスのうち27 匹(雄性13 、雌性14) にお いて導入遺伝子を、PCR およびサザンブロット解析で確認した。Founder マウスとC57BL/6N 系マ ウスを交配させることにより、六系統のトランスジェニックラインを樹立した。導入遺伝子のコ ビー数は1 個から数100 個であった。

3

.導入遺伝子の発現および臓器分布

  Fl

.F2 マウスを用いて導入遺伝子のmRNA およびタンパクレベルでの発現を検討した。その結 果、M10 系のみが肝発現型であった。これに対し、腎臓にはM10 系を除いて全ての系で発現して い た。ま た、全 ての系において性巣で導入遺伝子mRNA が発現していた。さらに、抗CYP3A7 抗 体を用いたウエスタンブロット分析により、C1 仰3A7 タンバク質の発現を検討したところ、MlO 系マウスの肝および性巣においてタンバク質の発現が認められた。また、MZ 系マウス腎臓におい て導入遺伝子のタンバク質発現も確認した。

458―

(2)

4.臓 器重量 および ホルモ ン類 の血中 濃度

  Ml0系 マ ウ ス の成 長 に 伴 う 各 臓器重 量の 変化お よびテ ストス テロ ン等の ホルモ ン類の 血中濃 度 を 検 討 し た。そ の結果 、雄 性マウ スの肝 および 腎臓、 雌性 マウス の腎臓 および 子宮 の肥大 が確認 さ れたの に対し 、性 巣の有 意な萎 縮が観 察さ´Lた 。さら に、 テスト ステロ ンの血 中濃度が有意に 高 かった 。

  5.導入 遺伝子 の胎 仔期か ら新生 仔期に おけ る発現

Ml0系 マ ウ ス に つ い て 妊 娠13日 目 か ら 生 後2週 間 に か けて の 胎 仔 ま たは 新 生 仔 の 肝 にお け る 導 入 遺 伝 子の 発 現 を 検 討し た 。 そ の 結果 、 導 入 遺 伝子 は 妊 娠14日目 から発 現し 始め、 生後2週間 ま で 高 い 発現 レ ベ ル を 維持 し て い ること が示 された 。その 発現バ ター ンは妊 娠15日目 から 出生前 後 ま で 徐 々に 上昇 し、生 後3日目に 急激に 増加 し、10日 目に一 時的 に減り 、14日目 に再 び増加 した。

ま た 、CYP 3A7の タ ン バク 質 の 発 現 も 認め ら れ た 。 さら に、CYP 3A特異 的な 基質で あるミ ダゾラ ムを 用い、14日齢 新生仔 肝ミク ロゾ ームに おぃて ミダゾ ラム1.‐ 位水酸化酵素活性を確認出来た。

  6,ミ ダゾラ ムの加vivoおよ び加vitroに おける 代謝

  8週 齢 のMl0系 とM2系 マ ウ ス を 硫 酸 亜 鉛で 一 週 間 誘 導し た 後 、 ミ ダゾ ラ ム を2mgg体 重 で腹 腔 内 単 回 投与 し た 。 投 与30分 後 マ ウス の 血 清 中 ミダ ゾ ラ ム の 代 謝物 レ ベ ル をHPLCで測定 した。

そ の結果、ミダゾラムの1 ・位水酸化代謝物(1 .OH‐MZ)のレベルはノントランスジェニックマウ ス と比ぺ 、MlO系マウ スに おいて 有意に 高かっ た。

  さ らに、M10系 マウ ス肝ミ クロゾ ームを 用い 、ミダ ゾラム1. ‐位水 酸化の 速度論 的解析を行った と こ ろ 、MlO系 マ ウ ス に お い て は ノン ト ラ ン ス ジェ ニ ッ ク マ ウス と 比 べ 、 有 意に 高 いmaxが 認 め ら れ た 。 一 方 、Kh1の 値 は ノ ン ト ラ ン ス ジ ェ ニ ッ ク マ ウ ス と ほ ぽ 同 様 で あ っ た 。

  7. AFBiの加vivoにおける代謝的活性化

  8週 齢Ml0系 とM2系 マ ウ メ 、 にAFBi (4mgg体 重 ) を 腹 腔 内 投 与 し 、 魁 珥1DNA付 加 体

(AFBl‐Gua) を指 標と して 、トラ ンスジ ェニッ クマウ スに おける 肝およ び腎臓 のp冊1−Guaレペ ル を 高 速 液 体 クqマ ト グ ラ フ イ 一 (HPLC) を 用 い て 検 討 し た 。 そ の 結 果 、 肝 お よ び 腎 臓 に CnA7を発 現 し て い るM10系 ト ラ冫 ス ジ ェ ニ ック マ ウ ス に おい て は ノ ン トラ ン ス ジ ェ ニック マ ウス に 比 べ 、 肝に お い て 有 意に 高 い 心mlGuaレ ベル が認め られた 。また 、腎臓 にCYP3A7を発現 しているM2系マウスでは腎臓で有意に高いAFBl‐Guaレベルが検出された。

  さ ら に 、ア ル カ リ 溶 出 法で マ ウ ス 肝 およ び 腎 臓 のDNA損 傷 を 検討 し た 。 そ の結 果 、 ノン トラ ン ス ジ ェ ニ ッ ク マウ ス と 比 ペ 、M10系 マウ ス に お い て は肝DNAの損 傷 が 、M2系 マ ウ ス に おい て は腎臓DNAの損傷が有意に高かった。

  MZ系およ びMlO系マ ウスに おぃてglutathioneStransferase(GSD酵素が正常に発現しているかど うか を 確 認 す るた め に ノ ー ザン ブ ロ ッ ト 分析を 行い、GSTが ノン トラン スジェ ニック マウ スと同 様に発現していることを確認した。また、CDNB(1‐chloro―2,4‐dinitro−benzene)を用いGST酵素活性 を測 定 し た 結 果、 ノ ン ト ラ ンス ジ ェ ニ ッ クマウ スと比 較し 、MZ系お よびM10系マ ウス におい てほ ぼ同 様 な 活 性 が認 め ら れ た 。こ れ ら の こ とから 、M2系 およびM10系 トラン スジェ ニッ クマウ スは ヒ ト のT3A7遺 伝 子 の 導 入 に よ りAFBlに 対 す る 感 受 性 が 高 く な る こ と が 強 く 示 唆 さ れ た 。

  8.ま とめ

  ヒ ト 胎 児 特 異 的 なCYP3A7遺伝 子 を 導 入 した ト ラ ン ス ジェ ニ ッ ク マ ウス を 樹 立 し 、CYP3A7の 毒 性 学 的 機 能 お よ び 薬 物 代 謝 酵 素 と し て の 役 割 を 検 討 し 、 以 下 の 知 見 を 得 た 。   1 CYP3A7導 入 遺伝 子はマ ウスの 胎仔期 から新 生仔 期にか けて発 現して おり 、ミダ ゾラム の水     酸化酵 素活性 を有す ること を確 認した 。

  2 CYP3A7導 入 遺伝 子を発 現させ 、加vivoにおけ るミダ ゾラ ムの水 酸化酵 素を有 するこ とを 確     認した 。

  3) CYP3A7導 入遺伝 子を発 現させ 、加virtoお よぴ而vivoにおける」4FBiの代謝的活性化能を示し     た。  459―

(3)

学位論文審査の要旨 主 査    教授    鎌 滝哲 也 副 査    教授    上 野直 人 副査   助教授   渋谷浩司 副査   助教授   横井   毅

学 位 論 文 題 名

Transgenic Mice Carrying a Human Fetus‑specific CYP3A7 Gene:Establishment,  Characterization, and Application to Drug Metabolism and Toxicological Study

( ヒ ト 胎 児 期 特 異 的 な チ ト ク ロ ー ム

P4503A7

の毒 性 学的 な 役 割:

    

ト ラ ン ス ジ ェ ニ ッ ク マ ウ ス を 用 い た 研 究 )

  

チ ト ク 口 ー ム

P450

は 主 と し て 肝 ミ ク 口 ゾ ー ム に 存 在 し薬 物 や毒 物 な ど の解毒 的代謝や 代謝的活 性化を触媒する酵素である。胎児に存在するチトク口 ー ム

P450

は 母 胎 か ら 摂 取 さ れ た 薬 物 な ど の 生 体 外 異 物 を 代謝 す ると 考 え ら れる 。 ヒ トの 胎 児の 肝 臓 には チ トク 口 ー ム

P450

が 存 在す る も のの 、ラッ トなど 実験動物 の胎仔に は存在しないので、ヒトの胎児に存在するチトク口ー ム

P450

の 薬 理 学 的 ・ 毒 性 学 的 な 機 能 の 研 究 は 遅 れ て い た 。

  

本 研 究 で は ヒ ト の 胎 児 に 存 在 す る チ ト ク 口 ー ム

P450

の内 で も主 要 な 分 子 種で あ るCYP3A7 の機能 に関する 研究を中心 に研究を 行い、数 々の新知 見を 得た。 本研究は ヒト胎児 の薬理学的・毒性学的機能に関し有用な概念を提供す るもの であり、 以下に詳 述するように極めて優れた研究成果であると評価され る。

1

CYP3A7

遺 伝 子 を 導 入 し た ト ラ ン ス ジ ェ ニ ッ ク マ ウ ス の 樹 立

    CYP3A7

を コ ード す る

cDNA

全長 を 含ん だ プ ラス ミ ドpAM56 をマウ スヌ夕口 チオネインプロモーター(MT ー1 )に挿入して、発現プラスミドpAM74 を構築した。

こ の プ ラ ス ミ ドを

pvuI

で 消化 し て 得ら れ た 断片 を マウ ス の 受精 卵 前核 へ 注 入し、 トランス ジェニッ クマウスを 作出した 。導入遺 伝子は

PCR

お よびサザン ブ口ット分析で確認した。

2

)導入遺伝子の発現および臓器分布

    CYP3A7

の 発 現を

mRNA

および蛋 白質のレ ベルで調 べた。M2 系の マウスで は

(4)

腎 臓を 初め 多数 の臓器 に

CYP3A7

のmRNA や 蛋白 質が 発現 して いた 。一 方、

Ml0

系 のマ ウス には 肝臓と いく っか の臓 器で

CYP3A7

が 発現 して いた 。Ml0 系の マ ウスは肝臓にCYP3A7 が発現している点で特徴的であった。

3

CYP3A

トラ ンス ジェ ニッ クマ ウス の臓 器重 量およびホルモン類の血中濃度

    Ml0

マウ スの 各臓器重量とホルモンの血中濃度を測定した。その結果、優 勢マウスの肝および腎臓、雌性マウスの腎臓および子宮の肥大が認められ、ま た、精巣の有意な萎縮が観察された。さらに、テストステ口ンの血中濃度が有 意に高かった。

4

)導入遺伝子の胎児期および新生仔期における発現

  

CYP3A7

導 入 遺 伝 子 は妊 娠

14

日 目 か ら 発 現 し 始 め 、 生 後

2

週 間ま で高 い レ ベ ル を 維 持 し て い た 。 正 確 に は 妊 娠

15

日 目 か ら 出 生 前 後 ま で 徐 々 に 上 昇 し 、 生 後

3

日 目 に 急 激 に 増 加 し 、

10

日 目 に 一 時 減り 、

14

日 目に 再び 増 加した。

5

)ミダゾラムのin vivo およびin vitro における代謝

    8

週 齢 の

Ml0

系 マ ウ スと

M2

系 マ ウス に硫 酸亜鉛 を投 与し て誘 導処 置後 、 ミ ダ ゾ ラ ム を

2mg/kg

体 重の 割 合 で 腹腔 内に 単回投 与し た。 投与

30

分 後マ ウ スの 血清 中ミ ダゾ ラム の代 謝物 レベ ルを

HPLC

で定量した。その結果、ミダゾ ラムの1 一位水酸化代謝物(1 ーOH −MZ) のレベルはノントランスジェニックマウ スと比ベ、Ml0 系マウスにおいて有意に高かった。

6

) ア フ ラ ト キ シ ン

Bi (AFB,

) の

in vivo

に お け る 代 謝 的 活 性 化

    8

週 齢Ml0 系お よび

M2

マ ウス にAFBi (4mg/kg) を腹腔内投与し、AFB1 −DNA 付加体(AFB1 −Gua) を指標として、トランスジェニックマウスにおける肝および 腎臓 の

AFB1

Gua

レベルを高速液体ク口マトグラフイー(HPLC) を用いて検討し た 。そ の結 果、 肝に高 い

CYP3A7

の発 現が 見ら れる

Ml0

系 マウ スで は肝 に、 腎 に 高い

CYP3A7

の 発現が 認め られ るM2 系の マウ スで は腎 臓に 高い

AFB1

ーGua レ ベル が検 出さ れた 。さらに、アルカリ溶出法でマウス肝および腎臓のDNA 損傷 を検 討し た。 その 結果 、

Ml0

系マ ウス にお いて は肝DNA の損傷が、M2 系マウス では腎臓で有意に高しゝ

 DNA

損傷が認められた。

    

以 上 の 結 果 か ら 、 ヒ ト 胎 児 チ ト ク ロ ー ム

P450

で あ る

CYP3A7

遺 伝 子 を 導 入し たト ラン スジ ェニ ック マウ スは 薬物 の代 謝やがん原物質の代謝的活性 化を示し、ヒト胎児において同様の薬理学的。毒性学的機能を持つことが推定 された。

    

以上 、本 論文 はヒ ト胎 児に 特異 的に 発現 している

CYP3A7

の薬理学的・毒

性学 的機 能を

CYP3A7

遺 伝子 を導 入し たト ラン スジェニックマウスを作出する

事 に よ り 研 究 し た 。 本 論 文 『

Transgenic Mice CarrylngaHumanFetuS

SpeCifiCCYP3A7Gene

:EStabliShment ,CharaCteriZation ,andAppliCationtO

(5)

Drug Metabolism and Toxicological Study

』に含まれる研究成果は薬学にお

ける基礎および応用のいずれにおいても優れており、博士(薬学)の学位を受

けるに充分値するものと認めた。

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