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博 士 ( 医 学 ) 菅 原 照 夫 学 位 論 文 題 名

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 菅 原 照 夫

学 位 論 文 題 名

産婦 人科領域におけるステ口イドスルファターゼに関する研究 ー と く に 、 そ の 臨 床 応 用 に つい て 一

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

1    研 究 目 的

  血 液中に 存在 する硫 酸ステ 口イド ホルモ ンは 不活性 で、組 織局所においてステロイドスルファ タ ー ゼ ( 以 下 STSと 略 す ) に よ り 脱 硫 酸 化 を 受 け て 活 性 ホ ル モ ン と な る 。   STSによ り脱硫 酸化 を受け たエス トロゲ ンが卵巣癌および子宮内膜癌の発生と増殖に関与するこ と が報告 されて いる。 本酵 素は血 中濃度 が非常に低いため、従来の活性測定法( H標識したデヒ ド 口工ピ ァンド ロステ ロン(DHA)硫 酸を基 質と して、 酵素反 応で生じた標識DHAを測定)ではその 臨 床応用 は不可 能であ った 。そこ で、STSを精製し、それに対する抗体を作製し、その抗体を用い てSTSの 酵素免 疫測定 法(ELISA)を確 立し 、婦人 科領域 のSTS関連疾 患と くに婦 人科悪 性腫瘍の診 断 に臨床 応用す ること を本 研究の 目的と した。

  さ らに、 先天 性の皮 膚疾患 である )澡色 体性魚鱗癬はSTS欠損によって発症するが、先天性魚鱗 癬 患者複 数例に ついて 、抗 体を用 いた酵 素蛋白 レベ ルおよ び遺伝子レベルでの検索により病因の 解 明を目 的とし た。

II  研 究 材 料 お よ び 方 法

  STS精製はDibbeltら(19 86)の方法を一部改変して行ない、ヒト正期産正常分娩後の胎盤を用いた。

  ELISAによる 血清中 のSTSの測 定は、60例の婦 人科悪性疾患(子宮頚部扁平よニ皮癌30例;0期:

12例,I期:9例 ,II期 :2例 ,III期:7例 、子宮 内膜腺 癌17例 ;I期 :10例,II期:4例,III期:

2例,IV期 :1例、原 発性上 皮性卵 巣癌13例;I期:5例 ,II期:2例 ,III期:3例,IV期:3例)を 対象にした。また、矧と色体性魚鱗癖症6例を研究対象とした。

  抗STS抗体 の作製 は、家 兎に免 疫し 、得ら れた抗 血清か らIgG画分を精製した。抗体の特異性の

(2)

検 定 はWestem法に よ る 免 疫 染色 で 確 認 し た。 抗STS IgG Fab. とぺル オキシ ダーゼ との抱 合は Yoshitakeら (1982)の方 法によ った。STSのELISA法はマイク口夕イタープレートに抗STS IgGを加 え 、洗浄 の後、患者血清100ロ1を加え、さらにぺルオキシダーゼ抱合Fab.を加えた後、発色させて 490nmの波 長で 吸光度 を測定 した。

  一 方、X染色体性魚鱗癬症例(case1)の分娩後の胎盤のSTSifi性を測定し、酵素蛋白の欠損か否か を 検討す るため に、Western法 を施 行した 。胎盤 のホモジェネートをSDS‑PAGEにかけ、ニトロセル ロ ー ス 膜 に転 写 後 、 抗STS抗体を 用いた 免疫 染色を 行なっ た。STS酵素 のmRNAの 検討に は、 魚鱗 癬 患 者(STS欠 損 症 )皮膚 組織 の培養 線維芽 細胞か らRNAを抽 出し、M‑MLV逆 転写 酵素を 作用さ せ てcDNAを合 成し、PCR法 によっ てそ の一・ 部を増 幅した 。

  っ ぎに、 魚鱗 癬患者 (6例)の 白InL球DNAについ てエ クソン1お よびエクソン10をPCRiL‑により 解 析した 。STS全遺伝 子のSouthemブ 口ッ ト解析 では制 限酵素EcoRIで反応 させた のち、 アガ 口ー ス 電気泳 動を行 なぃ 、変性 させた のちナ イロン 膜に 転写し た。ブ ローブ は全長のSTS cDNAをラン ダ ムプラ イマー 法で ヤ標 識したものを川いた。ハイブリダイズ後、オートラジオグラフィを行な っ た。

I I I研 究 結 果

1.STSの精製

  ヒト 正常胎 盤100gよ り120倍の精 製度お よぴ6%の 収量で1.7mgのSTSが得られた。得られた精製 標品はSDS−PAGEで分子量63.000の均一なバンドを示した。

2.STS抗体の特異性

  精製 途中 のConASepharose溶 出画分 につい てWesternブロ ットを 行な ぃ、抗STS IgGを用い て免 疫染色した結果、STSに相当する分子量の単一バンドが染色された。

3.ELISA法の測定感度ならびに再現性

  測定可能範囲は10‑1,500n g/mlであった。再現性は変動係数にて評価したが、intra‑assay7.9ゲ。,

inter‑assay 6.5%で,いずれも10010以内であった。

4.婦人科悪性腫瘍患者における血清中STS濃度

  正常 婦人(control)では74.5土1.6ng/ml(Mean土SE,n=69)にたぃして、子宮頚癌では117.8土14.5 ng/ml(n=30,pく0.05)、子宮内膜癌では166.0土34.Ong/ml (n=17,pく0.05)、原発性上皮性卵巣癌では 17 6.1士22.6ng/ml(n=13,pく0.01)であり、担癌患者血清中のSTSは有意に高かった。また、臨床進 行期別の検討では差は認められなかったが、子宮内膜癌I期(197.1土50.7; n=10,Pく0.05)および、卵 巣 癌I期(168.6土33.1;n=5,Pく0.05)で は 、 正 常 婦 人 に 比 べ 有 意 に 高 値 を と っ た 。 5.先天性魚鱗癖患者(STS欠損症)における酵素蛋白の検討

  Westcmプ ロッ ト法を 施行し た結果 、患 者胎盤 ではSTS蛋白 に該当 する63KDのバン ドは 認めら れ

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なか った 。

6.先 天性 魚鱗癖 患者 におけ る本 酵素のmRNAの 検討

  RT‑PCRを 施 行 し た 結 果 、 正 常 男 性 線 維 芽 細 胞 で は275bpの 増 幅 産 物 が 認 め ら れ た が 、 患 者 線 維 芽細 胞で は観察 され なかっ た。

7.先 天性 魚鱗癬 患者 におけ る増 幅エク ソン の解析

  正常 男 性 お よ び 正 常 女性 ( 対 照 ) で はPCRによ り214bp(エ ク ソ ン1) 、414bp( 工 ク ソ ン10)の 増幅 産 物 が 得 ら れ た が 、 魚 鱗 癖 患 者6例 のDNAに つ い てPCRを 施 行 し た 結 果 、 対 照 で 得 ら れ た 増 幅 産 物 は いず れも 検出す るこ とはで きな かった 。

8.先 天性 魚鱗癬 患者 のSouthem解析

  Southernブ口 ットを 行った結果、正常男性では20,159,6.1,4.9,4.2,3.6,3.1,2.6,2.2ならびに 1.5kbの バン ドが認 めら れた。 正常 女性で は159,6.1,4.94.2,3.6,3.1,2.6な らびに2.2kbのバン ドが 認め られた 。

  し か し な が ら 、 魚 鱗 癬 患 者 で は209,362.2,1.5kbの バ ン ド し か 観 察 さ れ な か っ た 。

IV考   察

  STSの 酵 素 活 性 測 定 法 は H標 識 し たDHA硫 酸 を 基 質 と し て 、 酵 素 反 応 で 生 じ た 標 識DHAを 測 定す る も の で あ る 。 血 清 中 の 本 酵 素 の 測 定 は 困 難 で あっ た が 、 今 回 独 自に 開 発 し た 測 定 法(ELISA) を 用 い る こ と に よ り 、m清LpSTSの 定 量 が 可 能 と な っ た 。STSが 血 中 に 出 現 す る 機 構 は 未 だ 不 明 で あ る が 、 破 壊 さ れ た 癌 組 織 か ら の 逸 脱 あ る ぃ は 分 泌 亢進 の 機 構 が 考 え られ る 。 い ず れ に せ よ今 回 開 発 し EUSAを 用 い る こ と に よ り 、 血 中STSが 婦 人 科 領 域 の 悪 性 腫 瘍 患 者 で 高 値 を と る こ と が は じ め て ポ さ れ た 。

  ま た 、 本 酵 素 の 欠 損 症 で あ るX染 色 体 性 魚 鱗 癖 に つ い て 酵 素蛋 白 の 生 成 と 遺 伝 子発 現 の 双 方 か ら 検 討 を 加 え た 結 果 、 調 べ え た 症 例 で は 本 酵 素 のmRNAもWestem法 に よ る 酵 素 蛋 白 も 検 出 さ れ な か っ た 。 本 酵 素 は10の エ ク ソ ン か ら 成 る が 、STS欠 損 症6例 に 対 す るPCR法 を 用 い た 解 析 で は ぃ ず れ もS1S遺 伝 子 の エ ク ソ ン1lOに 相 当 す る 増 幅 産 物 が 得 ら れ な か った こ と よ り 、S1S遺 伝子 の 欠 失 が 疑 わ れ 、Southern法 に よ っ て 確 認 さ れ た 。

  本 研 究 に よ り 本 邦 に お い て もSTs欠 損 症 の 多 く が 遺 伝 子の 欠 失 に よ る こ と が推 察 さ れ た 。 こ のこ と は 、 本 研 究 で 用 い たPCR法 は ア イ ソ ト ー プ を 使 用 せ ず に 先 天性 魚 鱗 癖 の 診 断 を 確実 に し 、 病 因 を 特 定 す る こ と が で き 、 今 後 本 症 の 出 生 前 診 断 に 導 入 さ れ る 可 能 性 を 現 実 の も の と し た 。

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学位論文審査の要旨

  血液中の硫酸ステ口イドホルモンは不活性で,組織においてステ口イドスルファターゼ(以下 STS)により脱硫酸化を受けて活性化する。本酵素は,血中濃度が非常に低いため3H標識した デ ヒ ド口 工ピ アン ド 口ス テ口ン(DHA)硫酸を基質と して,酵素反応で生じた標 識DHAを測 定する従来の活性測定法は臨床応用が不可能であった。そこで,申請者はSTSを精製し,それ に 対する抗体を作製し,STSの 酵素免疫測定法(ELISA)をは じめて確立して,婦人科領域悪 性腫瘍すなわち子宮頚部扁平上皮癌30例,子宮内膜腺癌17例,原発性上皮性卵巣癌13例の60例を 対 象 に 血 清STS値 測 定 の 診 断 的 意 義 を 検 討 す る こ と を 研 究 の1っ の 目 的 と し た 。   さらに,STS欠損によって発 症するX染色体性魚鱗癬患者6症例にっいて,抗体を用いた酵 素 蛋 白レ ベル およ び 遺伝 子レベルでの検索により 本疾患の病因の解明をも目的 とした。

  抗STS抗体の作製にあたって は,ヒト正期産正常胎盤(100g)よりSTS (1.7mg)を精製し,

家 兎 に免 疫し ,得 ら れた 抗血清からIgG画分を精製 した。得られた精製標品はSDS一PAGE で 分子量63,000の均一なバンドを示した。STS抗体の特異性を検定するために,精製途中の ConASepharose溶 出画 分に っい てWesternブ口 ット を行い,抗STS IgGを用いて 免疫染色 した。その結果,STSに相当する分子量の単一バンドが染色され,その特異性が確認された。

  抗STS IgGをマイク口タイタープレー卜に加え,洗浄の後,被検血清100彫を加え,さらに ペ ルオキシダーゼ抱合Fab を加えた後,発色させ て490nmの波長で吸光度を測 定するSTS のELISA法を申請者は独自に開発した。本測定法の測定可能範囲は10一1,500ng/mEで,in. tra―assay7.9%,interーassay6.5%の変動係数で,再現性は良好で臨床応用に供されること が判明した。

  正常婦人では74.5土1.6ng/mE(Mean土SE,n二二69)にたいして,子宮頚癌では117.8土14.5 ng/mE(n−30,pく0.05),子 宮内膜癌では166.O土34.Ong/mE (n=17,pくO.05),原発性 上皮性卵巣癌では176.1土22. 6ng/mE(n二ニ13,pくO.01)であり,担癌患者血清中のSTSは有 意 に高値を示した。とくに子宮内膜癌I期(197.1土50.7;nー10,pくO.05),卵巣癌I期(16 8.6土33.1;n=5,pく0.05)では,正常婦人に比ベ有意に高値を示し,腫瘍マーカーとして

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郎 三

征 信

本  

  沼

藤 西

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

の可能性が示唆された。

  次いで, 先天性魚鱗癬患者(STS欠損症)における酵素蛋白をWesternブ口ット法にて検討 した結果, 患者胎盤ではSTS蛋白に該当 する63KDのバンドは認められなかった。魚鱗癬患者 に おけ る本 酵 素のmRNAをRT―PCRに より 検 討し た結 果, 正常 男 性線 維芽 細胞 では275bp の 増幅 産物が 認められたが,患者線維芽 細胞では観察されず,STSの 正常mRNAが形成され ないめたに 酵素蛋白が欠損していることが判明した。正常人ではPCRにより214bp(工クソン 1) ,414bp( 工ク ソン10)の増 幅産物が 得られたが,魚鱗癬患者6症 例のDNAにっいてPCR を 施行 した 結 果, 正常 人で 得ら れた増幅 産物はいずれも検出するこ とはできなかった。

  そこで,STS遺伝子の解析を目的にSouthern blottingを行った結果,工クソン7,6,10, 8,2に相当する6.1,4.9,4.2,3.1,2.6kbのバンド,工クソン1に相当する15kb,工クソ ン3,4,5に相当する9 kbのバンドの消 失が6症例すべてにおいて観 察された。従って,本 症の原因がSTS遺伝子全体の欠失によることが本邦においても初めて証明されたので,工クソ ン1からは214bp,工クソン10からは414bpの領域を増幅するプライ マーを作製し,PCRによ る微量試料による出生前診断の可能性にっいて検討した。その結果,本症患者においてはすべて 予想される増幅産物は得られなかった。

  発表 に際 し ,西 教授 からELISA作 成にFabを標 識し た 理由,Southern blottingに用い たプローブ の種類とSTS遺伝子と異なる 塩基配列の似た別の遺伝子とのク口スハイブリダイ ゼーション にっいて,またPCRにおけるnon−specific bandにっいて質問があった。柿沼教 授から,X染色体性魚鱗癬症の臨床症状とSTS遺伝子欠損との関係,本症の遺伝子異常の人種 差にっいて ,小林教授からは血清STS値 の性差とその比が女性と男性とで2対1にならない理 由,また,STS欠損症Carrierの血清値による検出の可能性にっいて,さらに,石橋教授から はコレステロールスルファ夕一ゼとデヒド口工ピアンド口ステ口ンスルファターゼとの関係,コ レステ口ール硫酸と子宮癌との関係にっいて質問があったが,申請者は概ね適切に解答した。

  また その 後 ,副 査の 西教 授, 柿沼教授 には個別に審査をうけ合格 の判定を下された。

  以上 ,本研 究は血清STSのELISA法を世 界に先駆けて開発し,STSが 婦人科癌,ことに腺 癌の腫瘍マ一力一としての有用性をもっことをはじめて提唱し,また遺伝子解析のされていな か った 本邦のX染色体性魚鱗癬のDNA解析 を施行しPCR法による出生前 診断の可能性を具現 化した意義の高い臨床研究と判断された。

参照

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