博 士 ( 薬 学 ) 野 村 学 位 論 文 題 名
誠
制癌性ヌクレオシド3 −エチニルシチジンに関する 医薬化学研究:大量合成法の確立、構造活性相関、
及びプロドラッグ化
学位論文内容の要旨
1
. は じ め に3
‐ エ チ ニ ル シ チ ジ ン(ECyd)
はRNA
ポ リ メ ラ ー ゼ 阻 害 を 作 用 機 序 と し 、 加vztro
及 びin vivo
で 強 カ な 制 癌 活 性 を 有 す る ヌ ク レ オ シ ド 系 代 謝 拮 抗 剤 で あ る1
。ECyd
の臨 床 開 発 を 進 め る た め 、 そ の 大 量 合 成 法 を 確 立 す る と と も に 、 優 れ た 制 癌 活 性 を 有 す るECyd
を 母 化 合 物 と レ た 有 用 性 の 高 い 制 癌 剤 の 創 製 を 試 み た 。 種 々 の 糖 部 修 飾ヌ クレ オ シ ド を 合 成 し 構 造 活 性 相 関 を 検 討 す る と と も に 、 癌 組 織 へ の 作 用 選 択 性 の 向上 を志 向 し た 種 々 の プ 口 ド ラ ッ グ 化 を 実 施 し た 。2
. ECydの大 量 合成 法2当 初 の
ECyd
合 成 経 路 で 使 用 さ れ て い る ク 口 マ 卜 グ ラ フ イ ー に よ る 精 製 及 び 毒 性 の 高 い試 薬を 回避 し た大 量合 成法 の確 立 を行 った 。1,2.〇 イソ プ口 ピリ デ ン‑D
ー キシ口ース を原 料と し、 結 晶性 の良 好な5
゜ 〇‑(4‑ク 口 口ベ ンゾ イル)糖を中間体とレて選 択した。各 種 グ リ コ シ ル ド ナ ー を 合 成 し 、 シ リ ル 化 核 酸 塩 基 と のVorbruggen
グ リ コ シ ル 化 反 応 を 検 討 レ た 。 イ ソ ブ チ リ ル オ キ シ 基 が 有 効な 脱 離基 及び 隣接 関与 基 とな るこ とを 見出 し 、ECyd
の大 量合 成 法に 利用 した 。3
. 構 造 活 性 相 関 °2
‐ 又 は3
. 修飾 ヌク レオ シド を 種々 設計 ・合 成 し、 マウ ス自 血病L1210
細 胞 及び ヒ 卜 咽 頭 癌KB
細 胞 に 対 す る 細 胞 増 殖 抑 制 効 果 を 評 価 し た 。3
‐ 置 換 基 の嵩 高さ は その 制 癌 活 性 に 大 き く 影 響 し た 。 ま た 、ECyd
の ェ チ ニ ル 基 の 位 置 異 性 及 び 立 体 異 性 、 更 に 水 酸 基 除 去 誘 導 体 に 増殖 抑制 効果 が観 察 され なか った こ とよ り、 制癌 活性 に は3 ロ ‐工 チ ニ ル リ ボ 型 構 造 が 必 須 で あ る こ と を 明 ら か に し た 。 さ ら に 、4 a‑
修 飾ヌ クレ オ シド の 制 癌 活 性 を 系 統 的 に 評 価 す る た め 、 種 々 の 置 換 基 を 有 す る デ オ キ シ シ チ ジ ン 及 び シ チ ジ ン 誘 導 体 を 合 成 した 。こ の際 、Wittig反 応条 件下 、 中間 体で ある4
‐ホ ルミ ル 体の 糖 部 が 環 拡 大 し 、 ジ ヒ ド ロ オ キ セ ピ ン ヌ ク レ オ シド が生 成す る興 味 深い 反応 を見 出 した 。4 a‑
修 飾 デ オ キ シ シ チ ジ ン 誘 導 体 の 抗 白 血病 作用 の 強さ は、4 a‑
置 換基 の嵩 高 さに 逆 相 関 し て い る も の と 考 え ら れ た 。 さ ら に 、4 a‑
エ チ ニ ル デ オ キ シ シ チ ジ ン は 強 い 抗HIV
活 性 を 有 す る こ と が 明 ら か と な り 、 臨 床 のAIDS
治 療 で 問 題 と な っ て い る 耐 性HIV
株 に 対 し て も 抗 ウ イ ル ス 活 性 を 示 す こ と が 明 ら か に さ れ た4
4
. ECydのプロドラッグ化4.1
.葉酸結合体5‑ 265―
癌細胞で過剰発現して いる葉酸レセプターの基質認識特異性は低く、葉酸のみなら ず種々の葉酸結合体も認 識される。葉酸結合体には癌組織集積性が期待できるが、葉 酸は難溶性であり、汎用 性の高い結合体合成法は存在していなかった。そこで、葉酸 の
a‑
カルボン 酸が2.卜リメチルシリルエ チル基で、2位が2‑TMS‑エ卜 キシカルボニ ル基で保護された中間体 を開発した。低沸点溶媒に溶解し、シリカゲルカラムク口マ 卜グラフイーで精製可能 なこの中間体を用いて、種々の葉酸‑ECyd誘導体及び葉酸結 合アミダイト試薬を合成 した。しかし、得られた葉酸‑ECyd結合体の培地中での安定 性は低く、葉酸レセプタ ーによる取り込みは観察されず、さらなるりンカーの検討が 必要であると考えられた 。4.2.
生 体 内 還 元 一 加 水 分 解 機 構 を 利 用 し た 癌 組 織 へ の 作 用 選 択 性 向 上6
癌組織において観察される還元反応 の亢進と低pHの両者を利用して、癌組織で選択 的に活性化されるECydプロドラッグの 創襲を試みた。生体内還元反応によりニト口基 が電子供与性のアミノ基に還元される ことにより、アセタール部の加水分解が促進さ れ、ECydが生成することを期待して、 種々のニト口ベンズアルデヒドアセタール誘導 体を設計・合成した。癌組織を想定し たpH 6.5、及び正常組織を想定したpH 7.4の緩 衝液中のアセタール誘導体の安定性を 検討した。ニト口体は両緩衝液中で安定であっ た。非環状アミノアセタール体はpH7.4よりもpH6.5において効率的に加水分解反応が 進行しECydが生成したことから、癌組 織での選択的な活性化が期待できる。また、ラ ット肝由来S‑9 mixを用いた還元実験を行ったところ、二ト口体は、対応するアミノ体 又は4.ア ミノベンズアルデヒドに変換された。この結果は、設計したプ口ドラッグが 生 体 内 還 元 を 受 け 、 癌 組 織 に お い て 選 択 的 に 活 性 化 さ れる 可能 性を 示唆 する 。4.3
リン脂質誘導体の合成とりポソー ム製剤への応用癌組織 血管は透過性が亢進しており、高分子やりポソーム等の粒子が滞留しやすい。
癌 組織 集積 性の
DDS
と して 注目 され てい るり ポ ソー ム封 入に 適切 な脂 溶性ECyd
誘導 体 とし て、 リン 脂 質型誘導体を合成した。リン 脂質型誘導体は、ホスホリバーゼDを 用 いた ジア シル ホ スフ ァチ ジル 基転 移反 応7を 利用 して 合成 した 。リ ン脂 質誘導体DPPECyd
は安 定な りポ ソー ムを 効率 的に 形成 し た。DPPECydリポソームは、 マウス大 腸癌Colon 26皮下移植マウス系において、ECyd本体よりも強い固 形癌増殖抑制効果を 示し、ECyd|」ン脂質誘導体がりポソーム化に有効な誘導体であ ることを見出した。(1) Hattori, H.; Tanaka, M.; Fukushima, M.; Sasaki, T.; Matsuda, A. J. Med. Chem. 1996, 39, 5005‑5011.
(2) Nomura, M.; Sato, T.; Washinosu, M.; Tanaka, M.; Asao, T.; Shuto, S.; Matsuda, A.
Tetrahedron 2002, 58, 1279‑1288.
(3) (a) Hattori, H.; Nozawa, E.; Iino, T.; Yoshimura, Y.; Shuto, S.; Shimamoto, Y. Nomura, M.;
Fukushima, M.; Tanaka, M.; Sasaki, T.; Matsuda, A. J. Med. Chem. 1998, 41, 2892‑2902.
(b) Nomura, M.; Shuto, S.; Tanaka, M.; Sasaki, T.; Mori, S.; Shigeta, S.; Matsuda, A. J. Med.
Chem. 1999, 42, 2901‑2908. (c) Nomura, M.; Endo, K.; Shuto, S.; Matsuda, A. Tetrahedron 1999, 55, 14847‑14854.
(4) Ohrui, H.; Kohgo, S.; Kitano, K.; Sakata, S.; Kodama, E.; Yoshimura, K.; Matsuoka, M.;
Shigeta, S.; Mitsuya, H.J. Med. Chem. 2000, 43, 4516‑4525.
(5) Nomura, M.; Shuto, S.; Matsuda, A.J. Org. Chem. 2000, 65, 5016‑5021.
(6) Nomura, M.; Shuto, S.; Matsuda, A. Bioorg. Med. Chem. 2003, 11, 2453‑2461.
(7) Shuto, S.; Itoh, H.; Uda, S.; Imamura, S.; Fukukawa, K.; Tsujino, M.; Matsuda, A.; Ueda, T.
Chem. Pharm. Bull. 1988, 36, 209‑217.
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学位論文審査の要旨 主査
副査 副査 副査
教授 教授 助教授 助教授
松 田 彰 小 林 淳 一 森 田 博 史 周 東 智
学 位 論 文 題 名
制癌性ヌクレオシド 3 ―エチニルシチジンに関する 医薬化学研究:大量合成法の確立、構造活性相関、
及びプロドラッグ化
3
− エ チ ニ ル シ チ ジ ン(ECyd)
はRNA
ポ リ ヌ ラ ー ゼ 阻 害 を 作 用 機 序 と し 、in vitro
及 びin vivo
で 強 カ な 制 癌 活 性 を 有 す る ヌ ク レ オ シ ド 系 代 謝 拮 抗 剤 で あ る 。 本 研 究 で は ,ECyd
の 臨 床 開 発 の た め に 、 そ の 大 量 合 成 法 を 確 立 す る と と も に 、 優 れ た 制 癌 活 性 を 有 す るECyd
を 母 化 合 物 と し た さ ら に 有 用 性 の 高 い 制 癌 剤 の 創 製 を 試 み た 。 種 々 の 糖 部 修 飾 ヌ ク レ オ シ ド を 合 成 し 構 造 活 性 相 関 を 検 討 す る と と も に 、 癌 組 織 へ の 作 用 選 択 性 の 向 上 を 志 向 し た 種 々 のプ □ ド ラッ グ 化 を 実施 し た 。1. ECyd
の 大 量合 成 法当 初 の 合 成 経 路 で 使 用 さ れ て い る ク □ マ ト グ ラ フ イ ー に よ る 精 製 及 び 毒 性 の 高 い 試薬 を 回 避し た 大 量合 成 法 の 確立 を 行 った 。
1
,2
―( ナイソ プ□ピリ デン−D−キ シ□ ース を 原 料と し 、 結晶 性 の 良 好な