博 士 ( 理 学 ) 菅 原 一 晴
学 位 論 文 題 名
Analytical studies of accumulation voltammetry based on metal complex format10n ( 錯 形 成 反 応 を 用 い る 濃 縮 ボ ル タ ン メ ト リ ー の 分 析 化 学 的 研 究 )
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
近年,理学, 工学, 医学, 薬学などの多くの分野において微皿成分の挙動に対する 興味が 高まっ ており , 環境 ,生産 の場にお いても モの存 在は大 きな問 題をもたらす場 合がある. 従って, 微量成分に対する分析法の確立は急務である. 現在, 微量金属イ オン を 定 量す る方法 として 原子吸 光分析 ,ICP発光 分析,
質量分 析など が上げ られ,
有機物に対してはクロマトグラフイーや比色法などがある.
電気化 学的分 野にお ける高感度ナょ分析法としては, ポーラログラフィーやボルタンメ トリ―があり, その中でも溶出ボルタンメトリ―は簡便, かっ迅速な方法である. 重 金属イ オンに 関して は陽極溶 出ボル タンメ トリー が行わ れてお り, 電 解による電極へ の濃縮 過程を 含むた めppbレベ ルの検 出がで きる. また, いくっかの陰イオンや有機 物には 陰極溶 出ボル タンメトリーが有効な分析法となっている. しかしながら, これ らの方 法を実 試料へ 適用する 場合,
試料マ トリッ クスか ら生じ る干渉 によって制限さ れる.
例えば , 童金 属イオンにおいては電解中に電極表面上で金属間化合物が生成し たり,
近接し たピー ク電位の溶出ピークのオ―バーラップにより妨害が生じる, この ような 問題点 を解決 するため に多く の試み がなさ れてい るが,
一層の 感度および選択 性の向上が望まれている.
そこで , 本研 究では 有機配 位子ま たは有 機酸金 属塩との 錯形成 反応に基づいて目的 物を選 択的に 電極上 に濃縮するポルタンメトリーの研究を行った. すなわち, 目的重 金属イ オンと 選択的 に錯形成 する有 機配位 子を添 加し,
それを 錯体と して水銀電極上 に濃縮 する方 法と,
化学修 飾カー ボンペー スト電 極上に 修飾剤 との錯 形成反応により
吊り下げ 水銀滴電極を用い た重金属イオンの定 量
目 的 と す る 重 金 属 イ オ ン と 選 択 的 に 錯 形 成 す る 有 機 配 位 子 を 溶 液 中 に 添 加 す る こ と は , 広 い 意 味 で の 化 学 修 飾 電極 の利 用 のー っで あ る. こ の 方法 によ り , 重金 属 イオ ン を 有 機 配 位 子 あ る い は 錯 体 の 吸 着 性 に 基 づ い て 選 択 的 に 水 銀 電 極 上 に 濃 縮 で き る . 銅
(II)は2―(5―プ口モ―2―ビリジルァゾ)―5―(ジェチルフミノ)フェノール(5―Br―PADAP)を 添 加 す るこ と によ り, 銅(II) ー5―Br‑PADAP錯 体 を形 成し 電 極上 に濃 縮 され , そ の還 元 応 答は10―1〜 10ー Mの範 囲 で鋼 (II) の濃 度に 比 例した. 選択的に銅(II)と 錯形成する 2ー( サ リチ リデ ン アミ ノ) チ オフ ェノ ー ル(SATP) を共存させ た場合には, 銅(II)は電極 上 に 選 択 的 に 濃 縮 さ れ 還 元 電 流 の 測 定 に よ り10― 。Mレ ベ ル の 定 量 が 可 能 と な っ た , こ の 原理 は, 他の 重金 属 イオ ンに も 応用 でき る . セレ ン (IV)は2.3ー ジァミノ ナフタレン と 選 択 的 に 反 応 す る の で , こ の 反 応 を 利 用 し て セ レ ン (IV) を 錯 体 と して 電極 上 に濃 縮 し た 後 , ポ ル タ ン メ ト リ ー に よ り 還 元 応 答 を 測 定 す る こ と で10ー .Mレ ベ ル の セ レ ン
(IV)を 定量する分析法を 確立した,
有 機 配 位 子 で 修 飾 し た カ ー ポ ン ペ ー ス ト 電 極 に よ る 重 金 属 イ オ ン の 定 量
. 重 金 属 イ オ ン の 電 極 上 へ の 濃 縮 効 率 を 向 上 さ せ た り , 電 位 を か け る こ と な し に そ れ を 濃 縮 す る た め に , 電 極 中 に 修 飾 剤 を 含 む カ ― ボ ン ペ ー ス ト 電 極 を 用 い 重 金 属 イ オ ン の濃 縮 ボル タン メ トリ ーを 検 討し た. 8.8.− ジ キノ リル ジ スル フィ ド (DQDS) で 修飾 し た カ ー ボ ン ペ ー ス ト 電 極 で は , あ る 電 位 を か け る こ と に よ りDQDSが チ オ オ キ シ ン に 還 元さ れ る, 銅 (II) はチ オ オキ シン と 錯体 を形 成 し電 極上 に 濃縮 され , こ の錯 体 の還 元 波 を 測 定 す る こ と で 銅 (II) を 定 量 す る こ と が で きた . こ の方 法を 橡 準岩 石試 料 中の 銅 の 定 量 に 適 用 し た と こ ろ , 参 考 値 と よ く 一 致 し た. 先 に ,溶 液中 に 添加 したSATPを 修 飾 剤 と し た カ ー ボ ン ペ ー ス ト 電 極 で は , 銅 (II)は 化学 反 応に より 濃 縮電 位な し に電 極 表 面 上 に 銅 (II) −SATP錯 体 と し て 選 択 的 に 濃 縮 さ れ た , 開 発 し た 方 法 に よ り 国 立 環 境 研 究 所 発 行 の 植 物 標 準 試 料 で あ る り ょ う ぷ や 頭 髪 中 の 銅 の 定 量 を 行 っ た と こ ろ , 保 証 値 と よ い 一 致 を 示 し た . チ オ ー ル 基 の 定 量 に 用 いら れて い る2.2. 一 ジチ オジ ピ リジ ン を修 飾剤 と した 電極 を 用い て, 銀(I)の 濃縮 ボ ルタ ンメトリーの検討も 行った. 銀(I) は ジ ス ル フ ア ド 基 と の 相 互 作 用 に よ り 過 塩 索 酸 イ オ ン を 対 イ オ ン と し て 電 極 上 に 濃 縮 さ れ た , 銀 (I) を い っ た ん 還 元 し , そ の 酸 化 波 を 測 定 す る こ と で 定 量 で き た ,
有 機 酸 金 属 塩 で 修 飾 し た カ ー ボ ン ペ ー ス ト 電 極 を 用 い た 含 硫 黄 壷 捲 塑 竺 定 量
一方で , 金属 イオン を修飾 剤とする ことに よって 有機物 の電極 表面上への濃縮が可 能になる と考え られる . すなわち, 有機酸金属塩を修飾剤としたカーボンペースト電 極におい て目的 有機物 が有機 配位子 を置換 するな らば,
目的有 機物は 錯体として電極 上に濃縮 される と予想 される. その一例として, 合硫黄有機物であるシステインは鋼 と錯体を 形成す るので , 銅(II)―シクロヘキシル酪酸塩で修飾したカーボンペースト 電極を用 いてシ ステイ ンのボルタンメトリ―的挙動を検討した, その結果, システイ ンは鋼(
I
)−シ ステイ ン錯体 として 電極上 に濃縮 され, 電位を正方向に掃引すること でモの濃度に依存する銅(I)から鋼(II)への酸化波が観察された. また, アンモニア 綬衝液中 で水銀 電極を 用いコ パルト とシス テイン を共存 させ, 還元応 答を測定すると 接触水索波が観察される, このことは, コバルト(o)−システイン錯体の寄与による と考えら れてい る, こ のようにコパルトはシステインと相互作用を持っので, コパル ト(II) −シク ロヘキシ ル酪酸塩で修飾剤したカーボンペ―スト電極により, システイ ンのボル タンメ トリ一 的挙動を検討した. システインを添加してコパルト(II)を還元 したとき, 生成するコパルト (o)はシステインの濃度に比例した. 従って, コパルト(0)の 酸化波を 測定す ることで10−.Mレベルのシステインの定量が可能となる. ニッ ケルもチ オ―ル やジス ルフィド基を含む有機物と錯体を形成するので, ニッケル(II)
−シ ク ロ ヘ キシ ル 酪 酸 塩で 怪 飾 し た電極 を用い りポ酸 の電気 化学的 挙動に ついての 考 察を行った. リポ酸はニ. ケル(O)―リポ酸錯体として濃縮され, その酸化波を測定 することにより10―.M程度の定量ができる. これらの結果から, チオールやジスルフ ィド 基 を 含 む有 機 物 を 有機 酸 金 属 塩との 相互作 用を用 いて電 極上に 濃縮す ることが で き, 修 飾する 金属イオ ンよって濃縮される金属錯体の価数が異ナょることも示された.
以上の ように , 本研 究では 有機配位 子を溶 液に添 加して 童金属 イオンを錯体として 水銀 電 極 上 に濃 縮 し 還 元応 答 を 測 定する ポルタ ンメト リーと ,有機 配位子 や有機酸 金 属塩 で 修 飾 した カ ー ボ ンペ ― ス ト 電極を 用いて 重金属 イオン または 含硫黄 有機物を 電 極上に濃 縮し,
モれら のredoxを 測定す るボル タンメトリーを検討した, これらの方 法に よ っ て 目的 物 を 高 感度 な ら び に選択 的に定 量でき ,化学 俸飾電 極の適 用範囲も 広 めることができた.
申 請者 は , ポ 機 配 位 子 あ る い 試 み を 行 な っ て を溶 液に 添 加し ,
学位 論文審 査の要旨 主 査 教授 多賀光 彦 副 査 教授 梅澤喜 夫 副 査 教授 中村 博 副査 教授 佐々木陽一
学 位 論 文 題 目
Analyt ical studies of accumulation volt amnetry based on量etal coロplex formatiorn ( 錯形 成反 応 を 用 い る 濃 縮 ポ ル タ ン メ ト リ ー の 分 析 化 学 的 研 究 )
ル タ ン メ ト リ 一 的 分 は 有 機 酸 金 属 塩 と の いる. すなわち, 目 そ れ を 錯 体 と し て 化 学 佳 飾 カ ー ポ ン ペ ー ス
濃 縮 し た 後 , ボ ルタ ン メ 方 法 を 検 討 し た . こ れ ら 高 感 度 分 析 法 を 開 発 し 良 本 論 文 は6章 か ら な る
ト 電 極 を 用 ト リ ― に よ の 方 法 に よ 好 な 結 果 を 申請者は,
析 法 の 感 度 お よ び 選 択 性 の 向 上 を は か る た め に 有 錯 形 成 反 応 に 基 づ い て 目 的 物 を 電 極 上 に 濃 縮 す る 的 重 金 属 イ オ ン と 選 択 的 に 錯 形 成 す る 有 機 配 位 子 吊 り 下 げ 水 銀 滴 電 極 (HMDE) 上 に 濃 縮 す る 方 法 と , い 修 飾 剤 と の 錯 形 成 反 応 に よ り 目 的 物 を 電 極 上 に り 錯 体 の 酸 化 還 元 応 答 を 測 定 す る こ と で 定 量 す る り , 重 金 属 イ オ ン や シ ス テ イ ン , リ ポ 酸 の 選 択 的 得 て い る .
ま ず 第1章 に お い て 溶 出 ポ ル タ ン メ ト リ ー に お け る 利 点 と 問 題 点 を 指 摘 し っ つ , 本 研 究 の 目 的 を 示 し て い る .
第2章 で は , 濃 縮 ボ ル タ ソ メ ト リ ー に っ い て の 概 要 と そ の 原 理 , 装 置 に っ い て 概 説 す る とと もに , 電 極 , 試 薬等 にっ い て述 ぺ てい る ,
第3章は , 2―(5― プ ロモ ―2―ピ リ ジル ア ゾ) ―5― (ジェチルア ミノ)フェノ ール(5−Br―PA DAP) を 溶 液 に 添 加 し , 鋼 (II) を 銅 (11) ー5―Br―PADAP錯 体 と し てHldDE上に 濃 縮し た 後,
モ の 錯 体 の 還 元 応 答 を 測 定 す る こ と に よ り10― .Mレ ベ ル の 銅 (II) の 定 量 を 行 っ た . 鋼
(II) と 選 択 的 に 錯 形 成 を す る2― ( サ リ チ リ デ ン ア ミ ノ ) チ オ フ ェ ノ ー ル (SATP) を 共 存 さ
せた場合には, 感度, 選択性が改善され10−。M程度の鋼(II)の定量を可能とした. こ の原理をセレン(IV)の定量にも適用している. セレン(IV)と2.3―ジアミノナフタレン との錯形成 反応を利用してセレン(IV) をその錯体としてHMDE上に 濃縮し, 還元応答を 測定する高感度分析法を開発している.
第4章においては, 8,8 ージキノリルジスルフィド (DQDS)またはSATPで修飾したカ ー ボン ペー スト 電 極壱 用い て鋼(11)の濃縮ボルタンメトリ ーを検討している.DQDSは 適当な電位 をかけることによルチオオキシンに還元され, 鋼(11)は鋼(Il)―チオキシ ン錯体とし て電極上に濃縮された, そ の錯体の還元波を測定する ことにより鋼(II)を 定量でき, 標準岩石試料中の銅(II)の定量を行っている. SATPで修飾した電極では,
電位をかけ ることなしに化学反応よって 銅(II)が濃縮されること を示している. 確立 した方法を 標準試料中の銅(II)の定量に応用したところ, 保証値とよく一致した. ま た, 2,2.―ジチオジピリジンで修飾した電極での銀(I)の高感度定I法の開発も行って いる. これらの分析法は, 有機配位子中の硫黄が銀(I),鋼(II)などと強い相互作用 を持っことを利用して選択性の向上をはかっている.
第5章で は, チ オー ル 基や ジス ルフ アド 基 を含 む有機物 のボルタンメト1J一的挙動 を銅(II), コバルト(II), ニ.yケル(II)―シクロヘキシル酪酸塩でそれぞれ修飾した カ ーボ ンペ ース ト 電極 を用 いて検 討している, 含硫黄有機 物の一例としてシステイン とりポ酸を遍び, ある電位をかけることにより, それらを鋼(I)一, コバルト(0)―シ ステイン錯 体, ニ・yケル(0)−リポ酸錯体として濃縮できることを見い出した. 加え て , 修飾 する 金 属イ オン の種類 によって生成する金属錯体 の価数が異なることも明ら か にし た, 金 属 イオ ンを 金属錯 体の形で修飾した電極は電 極触媒としては使用されて い るが , 申請 者 の行 った 有機酸 金属塩を修飾剤とした電極 を濃縮ボルタンメトリーに 適用した例 はあまり見られない. この ように, 含硫黄有機物を 有機酸金属塩中の金属 イ オン との 選択 的 錯形 成反 応に 基 づい て電 極上 に濃 縮 する 方法 はユ ニー ク なものであ る,
第6章は, 本論文の総括である.
以上 のように申請者は, HM DEまたは化学修飾カ―ボンペ ースト電極を用いた濃縮ポ タンメトリ ーにより重金属イオン, 含 硫黄有機物の選択的高感度 かっ迅速, 簡便な分 析法を種々 開発した. これらの研究は , 電気分析化学に関する 研究の発展に寄与する と ころ が大である. 参考綸文は , 9編ありいずれも国内外 の権威ある学術雑誌に掲載 されたもの である. ここに審査員一同 は最終試験の結果と合わせ , 申請者が博士(理