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博士(薬学)尾原 巧 学.位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(薬学)尾原   巧 学.位論文題名

作 用機序に 基づくヌ クレオ シド系抗 生物質 ネプラノ シン A    の 構 造 変 換 : 抗 RNA ウ イ ル ス 剤 の 開 発 を 目 指 し て

学位論文内容の要旨

  最 近、 生体 の重 要な 代謝 過程の ーつ であ るメ チル 化反 応の制御に中心的な役割を担う Sーadenosyl・L‑homocysteine hydrolase (SAHase)が、RNAウイルスに対する化学療法の標的 酵素として注目されている。

    ヌク レオ シド 系抗 生物 質であるネプラノシンA (NPA)は、SAHaseに対して現存化合物   中で最も強い阻害活性(ICs0=0.004 ptg/ml)を有することから、著者はNPAをりード化合 物 と し て SAHase阻 害 活 性 に 基 づ く 抗 ウ イ ル ス 剤 の 合 成 研 究 に 着 手 し た 。     NPAは 少な くと も三 種類 のadenosine (Ado)代謝に関与する酵素、即ち、SAHase,Ado kinase (AK)お よびAdo deaminase (AD)と 相互 作用 する 。NPAの強い抗ウイルス活性はそ の 強 カ なSAHase阻 害 活 性 に 基 づ く も の で あ り 、 一 方 、NPAは 強い 細胞 毒性 およ ぴ抗 腫 瘍 活 性 を 示 す が、 こ れ に はAKに よる りン 酸化 経路 が深 く関与 する こと が指 摘さ れて い   る 。ま た、NPAはADに より 速や かに 脱ア ミノ 化さ れ、 生物活 性を 示さ ない ネプ ラノ シ   ンD (NPD)へ と変 換さ れる 。著 者は これ らの 知見 を踏 まえて、NPAの構造変換に取り組   んだ。

1)AD抵抗性NPA等価体

    まず 、AD抵抗 性を 有す る誘導体を得る目的で2・位ハロゲン置換体を設計・合成し、

AD抵 抗 性NPA等 価 体 と し て の 特 徴 を 有 す る2. フ ル オ ロNPA (FNPA)を 見 い だ し た 。     FNPAは 子 牛小 腸 由 来 のADに よる 脱ア ミノ 化を 受け ず、ウ サギ 赤血 球由 来のSAHase   を阻害(ICso=0.21 yg/ml)し、かつNPAと同等の強い抗ウイルス活性を示したが、宿主細 胞に 対し 殺細 胞作 用( 増殖 してい ない 細胞 に対 する 毒性 )を 有す るな ど、NPAと 同等 の 強い 細胞 毒性 を示 した 。こ のよう にNPAの2‑位 の修 飾で はADに 抵抗 性と なっ たも のの 、 細胞毒性は軽減しなかった。

2)特異的SAHase阻害剤の創製

    以上 のこ とか ら、ADに 抵抗性 であ るだ けで はな くAKの基質にもならない誘導体、即   ち 、特 異的 にSAHaseを阻 害する 誘導 体を 創製 でき れば 、そのものは抗ウイルス剤とし て好 適と 考え た。 そこ で、NPAと相互作用する上記の三種の酵素がいずれもAdoの5|‐位 水酸基を認識することから、Adoの51一位に相当するNPAの6|‐位周辺を修飾することで、

SAHase,AKお よびADの 基質 認識の 差別 化が 可能 では ない かと推論し、NPAの6 .位を変 換した誘導体を設計・合成した。

(2)

    6| ―位水酸 基を持た ない誘導体にはSAHase阻害活性は認められず、SAHaseを強く阻害   するには、NPAの6|一位水酸基は重要であることが示唆された。

    NPAの6|ー位水 酸基近傍 の三次元 的環境が先 に述べた三つの酵素との相互作用に重要   であると考え、6|‐位水酸基近傍のコンフォメルョンを操作することで、これら酵素による認識   の差別化が可能ではないかと推論し、6 ̄一位炭素上に置換基を有する6'‑CーアルキJレNPA   誘 導体を設 計・合成 した。ま た、アデニ ン環と一 級水酸基との相対配置を変化させる目   的 で 、NPAの6| ‐ 位 を 一 炭素 増 炭し た6. ‐ ホモ ロ ―グ(HNPA)を設 計 ・ 合成 し た。

    その結果、特異的なSAHase阻害剤と考えられる誘導体として、(6|R)―61‑C‑メチルNPA   (RMNPA), (6'R)‑6. ‑C‑エ チ ニ ル NPA (RENPA)お よ びHNPAを 見 い だ し た 。     こ れらはSAHaseの 阻害に基 づき強いin vitro抗ウイルス活性を示し、かつ、ADによる 不 活化を受 けず、し かもこれ らの誘導体 は宿主細 胞に対する殺細胞作用を示さなかった。

    ま た、これ らの誘導 体のSAHase阻害 活性はNPAの1/200程度であ るにもか かわらず、

NPAを 上 回る 強 カな 抗 ウ イル ス 活性 を 示 した が 、 この こ とtまこ れ ら の誘 導 体がADによ   る不活化を受けないことを反映した結果と考えられる。

    6|‑C‑アルキルNPA誘導体では、(6|S)―配置でメチル基を有するSMNPAのみが脱アミノ 化 を 受 け た が 、 ( 6|R) 一 配 置 の も の は 全 く 脱 ア ミ ノ 化 を 受 け な か っ た 。     またSAHaseに対して、(6|R)‑配置でメチル基およびエチニル基を有するものが強カな 阻 害活性を 示し、置 換基が嵩高くなるほど阻害活性は低下した。一方、(61S).配置のも   の は い ず れ も SAHase阻 害 活 性 お よ び 抗 ウ イ ル ス 活 性 を 示 さ な か っ た 。     こ の こ とか ら6| −位 近 傍 の三 次 元的 環 境 が、 上記の 三種の酵 素のうち 少なくと も SAHaseお よ び ADの 基 質 認 識 に と っ て 重 要 で あ る こ と が 明 ら か と な っ た 。 3)NPA誘 導 体 の 抗 ウ イ ル ス 活 性 あ る い は 抗 白 血 病 活 性 とSAHase阻 害活 性 との 相 関 性     縦 軸にSAHase阻害 活性を横軸に抗ウイルス活性(measles)をプロットした結果により、

SAHase阻 害活 性 と抗 ウ イ ルス 活 性と の 間 に相 関 性 があ る こと を 明 らか に した 。 また同 様 に 、 縦軸 にSAHase阻 害活性を 横軸にp388マ ウス白血 病に対する 増殖抑制 作用をプ ロツ   ト した 結 果に よ り 、SAHase阻害 活性と細 胞増殖抑 制作用との 間にも相 関性があ ること   を明らかにした。

4)AK欠損細胞に対する作用

    AK欠 損細 胞 に対 す る 効果 を 検討 し た 結果 か ら も、NPAの細 胞増殖抑 制作用に はその SAHase阻 害活 性 が寄 与 し てい る 事が わ か った 。 ま た、 特 異的 なSAHase阻 害 剤と 考え ら   れ るRMNPAお よ びRENPAの 細 胞 増 殖 抑 制 作 用 は 、AKの 関与 を 受け ずSAHase阻 害 に基 づ き 発 現 し た こ と が 示 唆 され た 。従 っ て 、NPAの 細 胞増 殖 抑制 作 用 はAKによ る り ン酸 化 を 介 す る も の と 、SAHase阻 害 に よ る も の の 和 と し て 発 現 し たも の と 考え ら れる 。     ま た 、NPAは 強 い殺 細 胞 作用 を 有す る が 、SAHaseの 特異的阻害 剤と考え られる誘 導 体 に は その よ うな 作 用 はな く 、こ の こ とか らNPAの殺細 胞作用に は主にり ン酸化に よる 毒性発現経路が関与するものと推論した。

5)in vivoウイルス感染治療効果

    特 異 的 なSAHase阻害 剤 と 考え ら れるRMNPAを 用 いて牛 口内炎ウイ ルス感染 マウス対

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する感染治療実験を試みた。

   その結果、 NPA 投与群は無効であったのに対し、 RMNPA 投与群では明らかに延命効 果を示し、これにより特異的なSAHase 阻害剤が抗ウイルス剤となりうる可能について 明らかにした。

   以上示したように著者は、NPA がSAHase 阻害に基づき抗ウイルス活性および細胞増 殖抑制 作用を示し 、AK によるり ン酸化を介 して殺細胞 活性を示すことを解明し、

SAHase 阻 害 剤 の 抗 ウ イ ル ス 剤と し ての 有 効 性と 限 界に つ いて 明 らか に した 。

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学位論文審査の要旨 主 査    教 授    松 田    彰 副 査    教 授    大 塚 榮 子 副査    助 教授    井上 英夫 副査    助 教授    周東    智      学 位 論 文 題 名

作用 機序に基 づくヌ クレオシ ド系抗 生物質ネ プラノシ ン A      ‐    .

   の 構 造 変 換 : 抗 RNA ウ イ ル ス 剤 の 開 発 を 目 指 し て

最近 、 生体 の 重 要な 代 謝過 程 の ーつ で あ るメ チ ル化反応 の制御に 中心的な役割を担うS‑adenosyトL‑homocystelnehydrolaSe(SAHaSe)が、

RNAウ イ ルス に 対 する 化学療法 の標的酵素 として注 目されて いる。

  尾 原 巧 は 、 ヌ ク レ オ シ ド 系 抗 生 物 質 で あ る ネ プ ラ ノ シ ンA

(NPA)は、SAHaseに対して現存化合物中で最も強い阻害活性(IC恥ニ=ニ 0.004m飢m) を 有 するこ とから、NPAをりード化 合物とし てSAHase 阻 害 活 性 に 基 づ く 抗 ウ イ ル ス 剤 の 合 成 研 究 に 着 手 し た 。   NPAは少なく とも三種類 のadenosine(Ado)代謝に関与する酵素、

即ち、SAHase,Adokinase(AK)およびAdodeandnase(AD)と相互作用 す る 。NPAの 強 い抗 ウ イ ルス 活 性 はそ の 強カ なSAHase阻 害 活性 に 基づくも のであり、 一方、NPAは強い細胞毒性および抗腫瘍活性を、

示す が 、こ れ に はAKに よる り ン酸 化 経 路が 深 く関 与するこ とが指 摘 さ れ て い る 。ま た 、NPAはADによ り 速や か に 脱ア ミ ノ化 さ れ 、 生物活性 を示さない ネプラノ シンD(NPD) へと変換 される。これら の知 見 を踏 ま え て、NPAの論理 的構造変換 に取り組 んだ結果 、以下 のような成果を得た。

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  1)AD抵抗性NPA等価体

ま ず、AD抵抗性を 有する誘導 体を得る 目的で2一 位ハロゲ ン置換体 を 設計 ・ 合成 し 、AD抵 抗 性NPA等 価体とし ての特徴 を有する2‐フ ルオロNPA (FNPA)を見いだした。

  2)特異的SAHase阻害剤の創製

ADに 抵 抗 性 で あ る だ け で は な くAKの 基 質に も な らな い 誘導 体 、 即 ち、 特 異的 にSAHaseを 阻 害 する 誘導体を 創製でき れば、そ のも の は抗 ウイルス 剤として好 適と考え た。そこ で、NPAと相 互作用す る上記の三種の酵素がいずれもAdoの5 ・位水酸基を認識することか ら、Adoの5.ー位に 相当するNPAの6.‐位周辺を修飾することで、

SAHase,AKおよ びADの 基 質認 識 の差別 化が可能 ではない かと推論 し、NPAの6,・位を 変換した 誘導体を設 計・合成した。その結果、

特異的なSAHase阻害剤として、(6.R)‑6 ‑c―メチルNPA (RMNPA),

(6 R)−6 ‑GエチニルNPA (RENPA)および6.−オモローグ(HNPA)を 見いだ した。ま た、これ らの構造活 性相関研究から、NPA6 ー位近 傍の三 次元構造 が、上記 の三種の酵 素の基質認識にとって重要であ ることを示した。

  3) 抗 ウ イ ル ス 活 性 あ る い は 抗 自 血 病 活 性 とSAHase阻 害 活 性 NPA誘導体 の生物活 性を詳細に 検討した 結果、抗 ウイルス 活性ある い は抗 自 血病 活 性 とSAHase阻 害と の間に相 関性があ ることを 明ら かにした。

  4) AK欠損細胞に対する作用

  AK欠 損細 胞 に対 す る 効果 を 検討 し た 結果 か らNPAの 細 胞増 殖 抑 制 作用 に はそ のSAHase阻 害 活 性が 寄 与し 、 ま た、NPAは強 い 殺 細 胞 作 用 に は 主 にAKに よ う る り ン 酸化 が 関 与す る こと を 示 した 。

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  5 )in vivo ウイルス感染治療効果

  RMNPA を用いて牛口内炎ウイルス感染マウス対する感染治療実

験を試みた結果、NPA 投与群は無効であったのに対し、RMNPA 投

与群では明らかに延命効果を示し、これにより特異的なSAHase 阻

害 剤 が 抗 ウ イ ル ス 剤 と な り う る 可 能 性 を 明 ら か に し た 。

   これらの成果は、抗ウイルス剤の医薬化学に大いに寄与するもの

で、博士(菜学)の学位を授与するに値するものと判断した。

参照

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